本日の一品

ノイキャンことはじめにどうぞ、オーバーイヤーヘッドホンAnker「Space NC」

 混み合った電車内で、イヤホンやヘッドホンから漏れてくる音楽。マナー広告でもひんぱんに取り上げられる問題ではあるが、電車の、特に地下鉄などでは「ゴーッ」という雑音が大きいため、音量を大きくしないと音楽が聞こえない、という言い訳をしたくなる気持ちはわからなくもない。

 そのようなときに便利なのが、ノイズキャンセリング機能(外部の音を専用マイクで拾い、その波長を打ち消す「逆位相」の音を出力することにより、騒音を聞こえにくくするもの、以下ノイキャン)付きのアイテムなのだが、なかなかどうしても値段が張るため購入へのハードルが高い。

 そんな中、バッテリーや充電用ケーブルなどで知られているAnkerがオーディオ分野に参入し、ワイヤレスノイキャン付きヘッドホンを売り出した。「Soundcore Space NC」(以下、Space NC)だ。Amazonなどでの販売価格はなんと1万4980円。しかも税込。ノイキャン付きヘッドホンの最高峰とも言えるBOSE QuietComfortシリーズが4万円近いことを考えると、いかに安価かわかるのではなかろうか。

 さっそく取り寄せてみた。高級感のある外箱を開けると、まずはトラベルポーチが、そしてそれをさらに開けると本体と、それからポーチ内のメッシュポケットに充電用ケーブルとAUXケーブルが収められている。

箱を開けるとすぐに現れるトラベルポーチ。結構大きい
それを開くとSpace NC本体が折り畳まれて収められている
隙間を埋めるように、ケーブル類がメッシュポケットに格納

 「ワイヤレスなんだから、AUXケーブルはいらないのでは?」と思う人もいるかもしれないが、一時的にいつもとは違う音源から聞きたいときなどに、わざわざペアリングをし直すのが面倒なので、意外とこれが役に立つのだ。筆者のような仕事をしている場合だと、ICレコーダーの音を確認するのにも、AUXケーブル同梱だとありがたく感じる。マイク付きコントローラーを搭載しており、有線接続で電話の応答もできるところもポイントが高い。

有線接続できるタイプは多いが、そのほとんどが音再生専用。マイク付きコントローラー内蔵で、音声通話ができるのが好印象

 しかも、Bluetooth接続時だけでなく、有線接続した状態でもノイキャンをオンにできるのが、これまたありがたい。連続再生時間はBluetooth接続時の約20時間から約50時間へと倍以上になる。片道1時間の通勤であれば、Bluetooth接続で約2週間、有線接続で約1カ月ほどもつ計算だ。もっとも大抵の人は、帰宅後すぐに充電するのだろうが。

 このSpace NC、対応コーデックが明らかにされていないが、少なくともaptx(遅延が少ない)やLDAC(Bluetoothでもハイレゾ相当の音質)には対応していない。音質以外の部分で、手元にあるSONY「MDR-100ABN」と比べてみた。価格差が倍以上あるため、Space NCの分はかなり悪いと予想してしまうのだが……。

左がSpace NC、右がMDR-100ABN。カップの大きさはMDR-100ABNのほうが大きく見えるが、パッドはSpace NCのほうが大きいようだ

 聞き比べてみると、歩いて移動しているときの風切り音、電車に乗っている際の「ゴーッ」という音や空調の音、アスファルトに切りつけられるタイヤの音など、MDR-100ABNがほぼ消してくれるのに対し、Space NCは“抑えているなぁ”という印象。逆に、車内アナウンスなど人の声に関しては、Space NCのほうが少しくぐもってしまい、聞こえづらく感じた。

 ちょうどレビュー中に、家の目の前の道路に生えている街路樹の伸びすぎた枝の伐採作業が行われていたのだが、チェーンソーのような「バリバリバリ」といった音ではどちらも同程度にしか抑えられなかった。

 装着感でいえば、MDR-100ABNでは耳の一部が潰されてしまうのだが、Space NCはすっぽりと耳全体を覆ってくれ、はなはだ良好。「これなら絶対に音漏れしないだろう」という安心感もある。しかし、すっぽり感が強いため、ノイキャンのスイッチをオンにしたときの、カップ内が真空になったような、減圧されたような感覚が、MDR-100ABNよりも強い。

 操作性について言えば、Space NCは「タッチ操作対応」と謳っているが、反応する場所が小さいのか、慣れが必要だと感じた。NFCやマルチペアリング、マルチポイントに非対応、というところも残念。接続するスマートフォンがひとつしかなく、常に手に持っているというのであれば全く問題はないのだろうが。

折りたたみ&スイーベル機構で厚みを取らずコンパクトに収納できる
充電用microUSB端子とAUXケーブル接続端子。カバーなどはついていない
ノイズキャンセリングのオン・オフはスイッチで行う。感覚的にわかりやすい
電源ボタンと受話ボタン。その間にはLEDランプがあり、色や点滅で状態を示す

 ノイキャンの強さや操作性はさておき、外部の音をある程度遮断でき、音量を抑えられ、音漏れを阻止したい、という人がはじめて購入するノイキャンヘッドホンとしてはまずまずだし、何より購入のハードルが低いところが良いのではないか、と感じる製品だった。

製品名販売元購入価格
Soundcore Space NCAnker1万4980円