テルミンで遊んでる俺

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


テルミンいろいろ

 最近はテルミンにハマっておりまして。1919年にロシアのテルミンさんがお作りあそばした“世界最初の電子楽器”ですな。ご存知の方も多いと思うが、コレ、本体に触れずに音を奏でられる電子楽器である。

世界で最もユーザーが多いかもしれないテルミンことmoog MusicのEtherwave Theremin。本体から伸びる金属棒に手を近づけると、音階と音量を調節しつつ演奏できる学研から発売されているテルミンPremium。比較的に安価だが、音階・音量とも調節できる本格的なテルミンだ大人の科学マガジンvol.17のふろく、テルミンmini。もしかすると、この3つのなかで最も演奏が難しいテルミンかも!?

 ここ何年かは静かなテルミンブームのようで、以前と比べると日本で入手できるテルミンの種類が増えている。テルミンではないが、テルミンのように鍵盤や弦に縛られない感覚で演奏できるケロミンという電子楽器もあったりする。

 で、テルミンで遊んでる俺なんですけど、最初はテルミンしたいゼ!! という感じでもなかった。てのは、オモシロそーだからと買ってみた大人の科学マガジンvol.17ふろくのテルミンmini(上の写真の赤いヤツ)で、いきなりテルミンに挫折したのである。

 もームツカシ過ぎ!! と。初めて手に入れたテルミンにソッコー超高いハードルを感じた。でも、あのよーな、こー、モノシンセのゆっくりしたポルタメントのような響きってイイなぁ、とは思っていた。

 それから数カ月経後、擦った揉んだはナイんですけど、あるとき、オンド・マルトノ(Ondes Martenot)という楽器を演奏してみてぇーッ!! という欲が出た。これもまた独特の音色で、ポルタメントな旋律で、てか、刑事コロンボのテーマ曲の口笛みたいな音を奏でられる楽器だ。が、その後調べたら、なんかもうこの楽器を作っている人いない(?)ようで、中古で買っても1000万円とかするらしく、もはや伝統芸能な世界っつーか拙者とは別世界の楽器のようで諦めモード。

 そこで、再度やはりテルミンが楽しいんじゃないだろうか、というコトで手を出したという次第である。以降、拙者が触れたテルミンをいくつか挙げつつ、ド素人テルミン野郎の立場でその印象を書いてみたい。

テルミンminiに挫折した理由

 前述のように、初めて自分のモノとして手に入れたテルミンは、大人の科学マガジンふろくのテルミンminiである。拙者的な印象をぶっちゃけて書くと、コレ、テルミンってこんなカンジのモノってのを知るにはいいかもしれないが、テルミンの音や演奏感覚を期待して買うと比較的に肩を落としやすいような気がする。

学研のテルミンmini。卓上サイズの超小型テルミン(もどき)で、テルミンの基本的な動作を体感できるキット(自分で組み立てるふろく)であるテルミンminiも、一般的なテルミンと同様、演奏前にはチューニングが必要。トリマコンデンサと思われる部品を付属のトリマドライバーで調整するが、これがまたシビア電池駆動で、小型のスピーカーを内蔵する。スピーカーのサイズもあり、お世辞にもイイ音とは思えない。でも「独特の音」とは言える。テルミンを演奏するため、というより、テルミンを一応体験できるというキットですな

 YouTubeでテルミンの動画なんか見たりすると、一種の癒し系なサウンドを多々聴ける。そんなスタンスでテルミンminiを手にすると、えーっコレ全然テルミンじゃない~、みたいな。

 テルミンを使うには演奏前のチューニングが必要になる。アンテナと手の距離で音階をコントロールする楽器なので、どの程度手を近づけたら音が出始めるかを調整するんですな。この作業、フツー的なテルミンにおいては難しいモンではなく、状況が悪くても30秒もあれば済んだりする。

 が、テルミンminiの場合、チューニングがけっこー大変&面倒。また、チューニングを終えて演奏しても、出せる音域が狭めで、演奏自体のハードルも高いのであった。そして拙者、すぐ挫折。

 その後、テルミンminiにプチ改造(大人の科学マガジンに掲載されている方法)を行い、出せる音階の幅が少し広くなって演奏も少々しやすくなったが、んむむむぅ……と満足には至れなかった。

 でも、テルミンminiでガシッとキマった演奏をしちゃう人も多い。マトリョミン(後述)の奏者である佐藤沙恵さんの演奏なんざぁ神業ですな。

 すげぇこのヒト!! デキる人が演奏すればテルミンminiでもこんなに!! とか思ってほかの動画を見たのが、テルミンに挫折した拙者が再度テルミンを熟考し始めたきっかけとなった。

マトリョミン!! コレだっ!! これしかない!!

 以前、NHKかなんかでマトリョミンの演奏を見たことがあった。確かテルミン奏者の竹内正実氏がマトリョミン軍団(!?)を率いて演奏していたと思う。

 そのとき、初めてマトリョミンというモノを知った。マトリョミンという見たことないテルミン(もどき)を紹介していて不意に吹いた拙者っていうか、テルミンをマトリョーシカにかよ!! 的に想像を絶する情報を受けた脳が誤動作して笑っちゃったわけだが、その後の演奏は見事だったことを覚えている。

一見マトリョーシカ。でもテルミン的に演奏できる電子楽器なのだ楽器ではあるが、なんつーか一種非常に民族的なデザインが施されている内部には電子回路が。マトリョミンに手を近づけたり離したりすることで音程をコントロールし、演奏する

 さて、前述の“テルミン再熟考のきっかけ”となった映像はコレなんだが、ええっマジで!! と。すニャらしくステキな音色!! と思った瞬間、上記のNHKマトリョミン映像も蘇り、これはもうマトリョミン買うしか!! てなわけでマトリョミンのME03 QTというのを購入した。

 注文直後は、ちょっと、なんか、ミュージシャンに憧れて燃え上がってエレキギター買っちゃう中高生を第三者から見る気分であった──イイねぇやる気満々だねぇ頑張れよ、的な気分ではなく、あの演奏のカッコ良さと音色の美しさは“熟達のプロだから”なんだけどナ~とかいう、物事の容易でなさを少々気にする立場の気分だ。でも、一応、やる気は大いにあるんですよ。でも、やる気だけで終わっちゃうかもねぇ、てな危惧も。

 しかし、マトリョミンに触れてみた途端、俺ってまさか天才なんじゃないの!! といった誤解真に受けモードに。率直なところ、前述のテルミンminiと比べたら、まぁなんとマトリョミンのチューニングのしやすさ&演奏しやすさ&音の良さよ。すニャらしい!! すニャらし過ぎるニャ、マトミョミン!! とか思って猫に向かって演奏したら瞳孔真っ黒に開かれて逃げられたほどである。

マトリョミンの背面。丸いのは電源スイッチ付きのボリューム。これで音量調節を行う。ので、一般のテルミンのように演奏中の音量調整はほぼ不能(だがソコが初心者には便利)。スピーカーやヘッドホンで音を聴くこともできる底面にはスピーカーどチューニング用のダイヤルがある。マトリョーシカ部は木製なので、柔らかく耳あたりの良い音。チューニング用ダイヤルが底面なので、本体を持った手を離さず、演奏姿勢のままチューニングできる。これにより、恐らくテルミン類のなかでは最も容易かつスピーディーにチューニングを済ませられると思われる写真では机上にマトリョミンを置いているが、実際は片手でマトリョミンを持ち、もう一方の手(指先など)で音階をコントロールしつつ演奏する。物凄く手軽に演奏できるのがマトリョミンの大きな魅力だと感じる

 マトリョミンを演奏してみた感触だが、想像よりずっと簡単だと感じた。もちろん、竹内正実氏や佐藤沙恵さんのようなエレガントな演奏など全然まるでできないが、購入当日に我流でやってみて「コレならかなりイケるかも」というポジティブな姿勢になれた。

 テルミンってモノに関して“絶対音感が要る”とか“熟練しないと演奏できない”といった耳年増情報を得ていた俺なんですけど、マトリョミンなら、たぶん、きっと、誰でも楽しめると思える。拙者にとっては、弦楽器や鍵盤楽器より身近かも。

 あとですね、マトリョミン、ハマります。音を出していると、なんかこー、心穏やかに集中してしまう。やや瞑想しつつの熱中状態、みたいな。ともあれ、非常に楽しい電子楽器である。

本格っぽいテルミンの購入

 実は、マトリョミンを注文した直後、仕事で学研に行ったんですよ。そしたら入り口付近にテルミンらしきモノが。テルミンPremiumという学研版テルミンがあった。

 仕事で伺ったので、一瞬だけ音を出して仕事モードに入ったが、むむむ、アレちょっと気になるなぁ、マトモ感が高いなぁ、と。でも、前述のテルミンminiのイマイチ印象もあったし、マトリョミン注文したばっかりだから、というコトでテルミンPremiumについてはしばらく忘れていた。

 んだが、たまたまAmazonが“これにも注目”とか言ってオススメしやがったのが運の尽きっていうかなんか。テルミンPremiumって意外と安いのネ、と。そして思わずポチッと。

学研のテルミンPremium。単3アルカリ電池×4本で使えて、サイズは220×36×120mm。机上で手軽に遊べるけれど、左右の手でそれぞれ音量や音程をコントロールできる本格派テルミンだ垂直に伸びたアンテナと手(指)との距離で音程を変える。脱着式ボリュームアンテナに手を近づけると音が小さくなり、手を離すと音が大きくなる。脱着式
操作パネル部。スピーカーも内蔵しているチューニングはマトリョミンほど容易ではないものの、一度合わせれば再調整は容易。本体右側にはアンプなどへの音声出力端子もあるこのバンドを手首に付ける。本体と人体を電気的に接続し、安定しつつ広い音階を出せるようにしているものと思われる

 テルミンPremiumを使ってみた印象だが、かなり演奏しやすいという印象。テルミンPremiumの音程コントロール感は良好である。

 マトリョミンの場合は、マトリョミン本体を手に持って演奏するため、体調や気分によっては音がかなりブレやすい。たとえばマトリョミンを持つ手が揺れたりして、音が狂ったりして、ソレに心を乱されてさらに音程が狂ったりすることがある。が、据え置き型のテルミンPremiumだと、そのあたりは少し安定感アリ。

 あと、音質だが、マトリョミンはそのままで柔らかな電子音が出てイイ感じなんですけど、テルミンPremiumは少々荒いというか尖った音って印象が。マトリョミンもテルミンPremiumも、外部スピーカーやギターアンプにつなげば、どちらも素朴な正弦波って感じでそれほど大きな差はない。が、内部スピーカーからの音質は、テルミンPremiumのほーがチープかナ!? みたいな。

 テルミンPremiumとマトリョミンを比べると、演奏感は全然違いますな。拙者はまだボリュームコントロールがヘタ過ぎなので、テルミンPremiumを主に垂直の棒(音程コントロール)だけで演奏している。その観点で言えば、手に持つか机上に置いたままかという違いもあるが、さらに、テルミンPremiumとマトリョミンでは、指先を動かす距離感がけっこー違うように感じる。

 ともあれ、テルミンPremium、価格的にも機能的にも、もしかしたらテルミン入門には最も適した1台かもと思ったりする。コストパフォーマンス的にはサイコーなんじゃなかろうか?

どーせならアレも!!

 テルミンおもしろくってタイヘンっす。テルミンしてるとハマるじゃないスか。仕事が滞るじゃないスか。仕事モードに入って疲弊するじゃないスか。ストレスたまるじゃないスか。そのストレスにより、ホレ、このようにmoog MusicのEtherwave Thereminを購入せざるを得ず、これにより金銭的に逼迫して弱まった心を癒すためにテルミンしてたら仕事滞って……というわけである。

くぅ~カッコイイぜEtherwave Theremin !! 現在においてテルミンと言えばコレ、てな定番である。サイズは約45.5×140×70mm音程をコントロールするための垂直アンテナ。約43センチもある。ネジによる脱着式こちらはボリュームコントロール用のアンテナ。本体横から約23cmほど突き出ている。これもネジによる脱着式
ガワは木製。これはチェリーカラー仕上げだmoogっぽい古風さがイイ味出してるツマミ類。音量、音程(チューニング)、倍音成分調整、倍音総量調整を行える底面には、机上に置くための脚と、マイクスタンドに取り付けるための穴(5/8インチ:SHURE規格)がある

 マトリョミンした後にテルミンPremiumしてさらにEtherwave Thereminを演奏したりすると、仕事をする時間が完璧になくなってしまってマジ大変なコトになるので、Etherwave Thereminはまだ少ししかイジっていない。

 でもEtherwave Thereminについて雑感を述べると、これまた演奏感が全然違うかもしんない。マトリョミンと比べるとかなりハデに腕を動かして演奏するモノらしい(と感じるが、実際、外見的にはそこまで大差がないように思える)。体との距離感は明らかに違いますな。マトリョミンやテルミンPremiunと比べると、ずいぶん遠くに音程コントロール用のアンテナがある、というイメージだ。

 あと、音ですけど、十分使っていない時点での独断と偏見で言えば、Etherwave Thereminがいちばんアナログシンセらしい音を出すような気がする。低音は静かに太いがまろやかで、高音は滑らかだが鋭い芯がある、とか思うのはモーグのシンセの音が好きゆえの思い込みか!?

 てなわけで、理想的な姿勢でEtherwave Thereminの練習を開始すべく、マイクスタンドを注文した拙者であった。って、Etherwave Thereminでもテルミンする気だな、仕事をしない気だな、おまえはおまえは>俺。みたいな。

2009/10/5 11:00