スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

ヘンテコ形状マウス「MX Vertical」の使用感

初見「使いにくそう!」……でも実際は?

 2018年9月20日に発売されたロジクールの新型マウス「ロジクール MX Vertical アドバンスエルゴノミックマウス」(公式ページ)。初見で「えっ? 何ソレ使いにくそう!」と思ってしまった突飛な形状のマウスです。

ロジクールの「MX Vertical」。従来のマウスを57°立てた形状の無線・有線両対応マウスです。ロジクールオンラインストア税別価格1万2880円。
こんなふうに持ちます。ぐぬぬぬ~あんまり使いやすそうには見えませんが……。

 初めて見て数分考えましたが、考えるほどに実用的でなさそ~に思えてしまう。でもポインティングデバイスのトップブランドことロジクールから「マウス」として発売されるわけだし、クセはあっても使い物にならないほどではないのでは? 的な好奇心から、ポチッと購入して使ってみました。

 で、使った結論から申しますと、意外なほどイイですコレ。手首~腕がラク。マウスとしても快適に使える機能性があります。普通のマウスからすぐ乗り換えられる程度、普通に使えました。まあ最初にちょっと慣れが必要な要素もありましたけど。ともあれ以降、ロジクール「MX Vertical」の機能や使用感について書いてみたいと思います。

使った感じはどう?

 まずMX Verticalの概要から。無線・有線両対応で、無線はロジクール独自のUnifyingレシーバー(レシーバーはUSB接続)およびBluetoothに対応し、USB有線接続も可能です。解像度は400~4000dpi(50dpi刻みで設定可能)で、2つの解像度を設定しておいてマウス上のボタンで切り替え可能。電源は内蔵の充電式Li-Po(リチウムポリマー)電池(240mAh)で、フル充電で最長4カ月使用可能。また、1分間のクイック充電で3時間使えます。

PCとの接続は無線・有線両対応で、同梱のUnifyingレシーバー、PCのBluetooth、同梱のUSB-C充電ケーブルを使って接続できます。左右クリックボタンとスクロールホイルに加え、カスタマイズ可能な4個のボタンを搭載。マウス手前上部にあるボタンを押すと解像度の切り換え(ポインタ速度の切り替え)ができます。ボタン機能はLOGICOOL OPTIONSソフトウェアでカスタマイズ可能。

 形状は異端ですが、スペック的には解像度も高いですし、接続性も良好。ちょっと高級なエルゴノミクスマウスといった感じでしょうか。

 で、肝心の使用感ですが、予想に反していきなりスッと違和感僅少にて使えてしまいました。「物凄く違和感がありそう」「慣れるまで時間がかかりそう」といった予想は肩すかし。セットアップ直後からマウスとして問題なく使えました。その形状からくる少々の違和感はありますが、それもすぐ慣れてしまう程度。カタチはヘンだけど至って常識的で普通で違和感のない使用感だなぁ~、と。

 しばらく使い続けての印象ですが、明らかに手首から腕のあたりがラクです。普通のマウスを握ったときと比べると、手首から腕のあたりがリラックスしている感じ。MX Verticalを持つと「あ~いつもは腕が緊張しつつマウスを動かしていたんだな」と感じられます。筆者はマウスが原因での腱鞘炎や肩こりはないんですが、マウスが原因でそれら症状がある方は、も~しかしたら手首や腕がリラックスすることで症状が和らぐかも?

 それとこのマウス、使っていると心なしか少し姿勢がよくなるような? 筆者の場合、マウスを使い続けつつウェブページをだらだら見続けているとき、ついつい体を左に傾けちゃうんです。椅子の左側の肘掛けに体重を預けてしまうような姿勢。でもMX Verticalを使っていると、体をまっすぐにしていることが多いような気がします。

 といった感じで、初見の「えっ? 何ソレ使いにくそう!」という印象は完全に覆されました。ラクだし使いやすいマウスです。

 また、カーソル操作を緻密に行うこともできました。解像度切り換え機能を使えばより緻密なカーソル操作が行えるので、普通の形状のマウスより高精度の操作を行えるマウスになるかもしれません。

 ちなみに、筆者のマウスの持ち方は「つまみ持ち」。MX Verticalの場合も、親指と薬指・小指でマウスを挟んで持つ感じですが、「つまみ持ち」スタイルだとかなり精密なカーソル操作を行えると感じられます。

【かぶせ持ち】 手のひらでマウスを覆うようにする持ち方。手のひらはマウスの背中(パーム/バックアーチ)に触れるケースが多いと思います。主に手首~肘を使ってポインタを操作することになります。
【つまみ持ち】 マウスの左右サイドを指(親指と薬指/小指あたり)でつまむようにする持ち方。マウスに触れるのは5本の指のみ。手首と5本の指でマウスを操作しますので、より繊細なカーソル操作が可能だと思います。筆者の場合はコレです。
【かぶせ持ち/MX Vertical】 MX Verticalを「かぶせ持ち」で使っている様子。机上に手のひらの右下が軽く触れる程度なので、この持ち方でも普通のマウスより繊細なカーソル操作ができるような気がします。
【つまみ持ち/MX Vertical】 MX Verticalを「つまみ持ち」で使っている様子。指を置く角度が自然だからか、ラクに持つことができます。また、より繊細なカーソル操作ができるようにも感じます。

 MX Verticalの場合、手のひらの右下(右手小指側の手のひらと手首の接続部あたり)しか机面に接触しないことが多いと思います。普通のマウスだと手首周辺全体が接しがち。この違いから、MX Verticalだとより手首周辺を動かしやすいのだと思われます。ただ、残念ながら、MX Verticalはその形状から右手使用専用になっちゃいますネ。

 ともあれ、意外に良好な使用感があるMX Vertical。ぜひ実機に触れてみることをオススメします。

MX Vertical雑感いろいろ

 操作感以外については、ちょっと前述しましたが、マウス上部手前のボタンでカーソル移動速度を2段回に変えられるのが便利です。たとえば、通常作業時はポインタ速度速めで、細かな作業のときは遅めにすると快適ですが、これがワンボタンで切り替えられて実用的。

 それと、無線・有線両対応である点。付属のUSB Type-C充電ケーブル(USB-A - USB-C)でPCとUSB接続すると自動的に有線モードになりますが、このとき充電も行われます。マウスの動作は無線・有線時も同じですので、電池切れや電波状況によりマウスが一時的に使えないということが実質ありません。まあそういう製品はほかにもあり珍しい機能性ではありませんが、細かなところも抜け目がなくてイイ感じです。

 それから「Logicool Flow」(公式ページ)にも対応しています。これは、「1つのマウスやキーボードで3台までのパソコンをシームレスに扱える」「3台までのパソコン間でテキストやファイルをシームレスにコピペできる」といった機能。1台のマウスやキーボードで複数のPCを切り替えなどなく使えるというわけです。

Logicool Flow機能は、Logicool Flow対応マウス・キーボードとLOGICOOL OPTIONSソフトウェア(無償)により提供されます。マウスやキーボードを共有するPC(Mac/Win)にはこのソフトをインストールしている必要があります。ひとつのLogicool Flow対応マウス・キーボードで操作できるPCは合計3台まで。

 Logicool Flow、画面から画面へ切れ目なくカーソルが移動したり、画面から画面へファイルをドラッグする程度で「別のPC間でのファイルコピー」などが可能。別PC間でのテキストなどのコピー&ペーストもサクッとデキちゃいますヨ♪

 いろいろと快適さがあるMX Verticalですが、ちょっと物足りなさもあります。それはボタン数の少なさ。マウスとして使うには十分なボタン数ではありますが、上方向に大きい形状なので、ボタンを入れるスペースがけっこう余っている感じ。また、そこそこお高いマウスでもあります。なので、もうちょっとボタン数があったら嬉しかったな~、と。さらに超高速スクロール・通常速度スクロールを自動切り換えしてくれるSmartShift機構まで盛り込んでくれたらサイコーです。

マウスの左側とか、上部のフラットな部分とか、あとホイール近辺とか、もうちょっとボタンを置けるスペースがけっこうあるMX Vertical。けっこう高価格帯のマウスなので、ボタン数にもこだわってほしかったところです。

 それからこのマウス、使い始めにはちょっと慣れが必要な部分がありました。すぐ慣れますけど、その形状からくる独特の使い勝手です。

 まず、MX Verticalはほかのマウスよりずっと「背が高いマウス」なので、マウス・キーボード間を右手が行き来するとき、不意に「MX Verticalの上端に手が引っ掛かってマウスを倒してしまう」ということがありました。右手ってけっこうマウス・キーボード間を行き来するので、MX Verticalを使い始めた日には数度MX Verticalを倒してしまいました。

 もうひとつ、MX Verticalを左右に動かす時、不意にボタンをクリックしてしまうことがありました。とくに左に動かすとき。手首を動かすのと同時に、無意識に人差し指あたりも左に動いてクリックしちゃってたんでしょうね。

 でもまあ、これらは半日くらいで慣れられると思います。また、筆者の場合、MX Verticalに慣れると、ほかの普通形状のマウスと併用しても大丈夫な感じに。形状が違う2つのマウスを併用しても、不意にクリックしちゃったりMX Verticalを倒したりするようなこともありません。MX Verticalって、手がその使い方をすぐ覚えてくれるマウスなのかもしれません。

 てな感じのMX Vertical。非常に斬新な形状のマウスですが、良い意味で予想外の使い勝手がありました。とくに手首から腕がラクになりがちなマウスだとも感じられましたので、気になる方はぜひ実機に触れてカーソル操作してみてください♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。