法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「OPPO A5 2020」は5000mAhバッテリー&トリプルスロットで欲張りなニーズに応える

 昨年、タレントの指原莉乃をイメージキャラクターに起用し、日本市場への攻勢を強めているOPPO。徐々にラインアップを拡大してきたが、昨年11月から手頃な価格帯でハードウェアを充実させた「OPPO A5 2020」の販売をスタートさせている。筆者も実機を購入したので、レポートをお届けしよう。

欲しいスペック、買える価格

 昨年10月にスタートした改正電気通信事業法の施行により、各携帯電話会社が販売する端末は、端末購入補助の適用が2万円以内に制限されたことで、国内のモバイル市場には変化が起きている。各携帯電話会社のラインアップではハイエンドモデルの売れ行きが鈍る一方、3~5万円台のミッドレンジのモデルが注目され、同じ価格帯のSIMフリースマートフォンにもユーザーの目が向き始めている。

 いつも本誌を愛読してくれているようなユーザーなら、各機種のスペックや価格の違いを見分け、適切な機種を選ぶことができるだろうが、何となく『売れ筋』や『おすすめ』を選んでいたユーザーにとっては、ちょっと選びにくい状況になってきたとも言われる。

 では、具体的にどんなスペックを求めるか。ここ数年、スマートフォンは成熟期に入り、主要メーカーの端末であれば、ごく普通に使うことができる。十数万円もの金額を払わなくてもブラウザやメール、SNSなど、現在のスマートフォンで広く使われている用途には十分に対応できるはずだ。多くの判断を悩むのは「パフォーマンス」や「カメラ性能」などで、上位の価格帯になれば、高いスペックのチップセットが搭載され、カメラも上位モデルになれば、いくつものカメラが搭載され、広角や望遠など、さまざまな焦点距離のカメラで構成される。この他にも「バッテリー」「ディスプレイ」なども価格を大きく左右する要素になるだろう。

 今回、オッポジャパンから発売された「OPPO A5 2020」は、ユーザーがスマートフォンに求める要素の内、期待値が高い仕様についてはかなり充実させたモデルとしてまとめられている。たとえば、バッテリーは一般的なスマートフォンで最大クラスの5000mAhの大容量バッテリーを搭載し、カメラも超広角と標準などの4眼カメラを搭載する。これに加え、国内で販売されるスマートフォンでは採用例が少ないトリプルスロットを搭載するなど、SIMフリースマートフォンの勘どころをうまく押さえたモデルとなっている。

 OPPOと言えば、2018年1月に国内市場に参入して以来、次々と新製品を投入してきたが、スライド式ステルスカメラ搭載の「OPPO Find X」のようなエポックメイクな端末だけでなく、おサイフケータイに対応した「OPPO R15 Pro」」のように、日本市場に合わせたモデルもラインアップに加え、積極的に国内市場への浸透を図ろうとしている。

 なかでも昨年10月には本誌でもお伝えしたように、タレントの指原莉乃をイメージキャラクターに起用し、さまざまなメディアでの広告やテレビCMなどで積極的にブランドネームを浸透させつつ、同時発表の「OPPO Reno A」は日本向けのオリジナルモデルとして開発し、おサイフケータイや防水防塵対応など、しっかりと日本仕様を満たしながら、4万円前後という価格を実現することで、日本市場を戦うライバルメーカーを驚かせた。

 今回の「OPPO A5 2020」は「OPPO Reno A」のような日本仕様をサポートしていないものの、価格はもうワンランクお手頃な3万円を切る価格を実現しており、端末購入補助がない現在のモバイル市場においてもかなり買いやすい存在となっている。販売についてはUQモバイルやIIJmio、楽天モバイル(MVNO)、BIGLOBE、LINEモバイルなど、主要MVNO各社、ヨドバシカメラやビックカメラ、ヤマダ電機などの家電量販店、AmazonやひかりTVショッピング、OPPO公式楽天市場店などのECサイトで購入することができる。

6.5インチHD+対応液晶ディスプレイを搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。ボディは前述のように、OPPO A5 2020は5000mAhという大容量バッテリーを搭載していることもあり、幅75.6mm、重量約195gと、ややワイドで重めだが、同サイズのディスプレイを搭載したiPhone 11 Pro Maxなどに比べれば、それほど重くもなく、十分に持ちやすい仕上がりとなっている。

OPPO「OPPO A5 2020」、約163.6mm(高さ)×75.6mm(幅)×9.1mm(厚さ)、約195g(重量)、グリーン(写真)、ブルーをラインアップ
左側面は分割式音量キーとSIMカードトレイを備える
右側面は電源キーのみを備える

 ボディはOPPO Reno Aなどと同じように、背面側が湾曲した形状を採用しており、背面にはカメラや指紋センサーなどが備えられている。ちなみに、防水防塵対応については、IP5Xの防塵のみの対応となるため、水廻りや結露などには十分、注意して利用したい。パッケージにはクリアタイプのカバーが同梱されている。グローバル向けモデルがベースということもあり、市販品のケースもAmazonなどで数多く販売されている。

背面は両側面へ向けて湾曲させた形状。カメラ部の真下に指紋センサーを備える

 ディスプレイは6.5インチのHD+対応IPS液晶ディスプレイを搭載する。ディスプレイは本体前面の89.3%を占めており、上部の水滴型ノッチ(切り欠き)にインカメラを内蔵する。ディスプレイの解像度がHD+(1600×720ドット)対応のため、OPPO Reno AなどのフルHD+(2340×1080ドット)対応に比べると、スペック的に見劣りするが、YouTubeなどの動画を視聴している範囲ではアラが目立つこともなく、実用上は問題ない。端末としてはコストを抑えるため、HD+対応の液晶パネルを採用したのだろうが、裏を返せば、フルHD+対応液晶ディスプレイを搭載した端末に比べ、バックライトを少なくしても明るく表示でき、結果的にバッテリーのロングライフに貢献できるというメリットもある。もちろん、スペック的にはフルHD+以上が望ましいが、考えようによってはOPPO A5 2020の特長である大容量バッテリーを活かすための『HD+対応』という解釈もできるわけだ。

下部はUSB Type-C外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える

 また、ディスプレイには出荷時に市販品と同等の保護フィルムが貼付されている。国内メーカーではあまり例がないが、OPPOやファーウェイなど、中国のメーカーはこうした取り組みをすることが多い。ユーザーとしては購入して、しばらくは出荷時の保護フィルムのまま、利用しておき、保護フィルムにキズなどが目立ってきたら、フィルムを剥がしたり、市販の保護ガラスなどに貼り替えるといった使い方ができる。

背面の指紋センサーによる指紋認証の他に、顔認証にも対応
顔認証の設定画面で「薄暗い場所での画面の輝度を補正」をオンにしておくと、真っ暗な部屋でもこの画面が表示され、瞬時に顔認証ができる

 生体認証は背面のカメラの真下にある指紋センサーによる指紋認証が利用できる。端末を手に持ったとき、ちょうど人さし指や中指が当たる位置に指紋センサーが備えられているが、昨年12月の道路交通法改正の影響で、車載ホルダーなどに端末を固定するユーザーが増えてきている中、背面の指紋センサーはやや操作しにくい点が気になる。

「スマートドライビング」をオンにすると、通知やリマインダーの表示がブロックされるほか、「運転を妨げない」では着信を受ける人を設定したり、スピーカーホンに切り替える設定などができる

 この場合、ややセキュリティ面で劣るが、顔認証にも対応しているため、そちらを利用するのが便利だろう。ただし、OPPO A5 2020の顔認証はよく似た顔などでも解除できる仕様であることを理解したうえで使うようにしたい。

パッケージにはクリアタイプ(やや白っぽい)のカバー、イヤホンマイク、USBケーブル、ACアダプタが同梱される

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 665を採用し、4GB RAMと64GB ROMを搭載。最大256GBのmicroSDメモリーカードも装着できる。Snapdragon 665は2019年4月に発表された比較的新しいチップセットで、11nmのプロセスルールで製造されている。他機種での採用例は少なく、海外ではシャオミが一部の機種で採用している程度で、今後、他メーカーのミッドレンジのモデルなどに搭載されることが期待されている。

5000mAh大容量バッテリーとリバース充電

 そして、OPPO A5 2020を選ぶ最大のポイントとも言えるのが5000mAhの大容量バッテリーだ。現在、一般的なサイズのスマートフォンには3000mAh程度のバッテリーが搭載されており、大容量バッテリーを搭載するスマートフォンはロングライフを求めるユーザー向けのモデルで、ボディサイズが大きく、重いという印象が強かった。

 ところが、昨年あたりから5000mAhの大容量バッテリーを搭載する機種が少しずつ増えてきており、最近ではシャオミの「Mi Note10」「Mi Note10 Pro」、ASUSの「ZenFone Max Pro(M2)」「ZenFone 6」、モトローラの「moto g7 power」などが国内向けに販売されている。

 チップセットやディスプレイなどの仕様によって、機種ごとに消費電力に差はあるが、3000mAh前後のバッテリーを搭載した機種に比べ、単純計算で1.6倍程度の容量を搭載しているため、同程度の機種であれば、1.5倍程度の長さは使えることが期待できそうだ。ちなみに、満充電の状態では使用可能時間が「1日xx時間」と表示されたので、これを目安に判断してもいいだろう。

設定画面の[バッテリー]を表示すると、おおよその使用可能な時間が表示される。満充電(100%)の状態で、「1日23時間25分」と表示された

 また、この大容量バッテリーを活かし、ほかの端末へのリバース充電機能も備える。この機能を利用するにはOTGケーブル(USB On-The-Goケーブル)が必要だが、パッケージには同梱されていないため、別途、購入する必要がある。接続したい機器にもよるが、最近ではいわゆる100均でもOTG変換アダプタが販売されていることもあるので、安価に済ませたいのであれば、そういったものを利用するのも手だ。

出荷時のホーム画面はスタンダードな「標準モード」。Androidプラットフォーム標準のように、上にスワイプして、アプリ一覧を表示する「ドロワーモード」も設定可能。アイコンの配列は「4×6」が標準だが、「5×6」に設定可能。
Androidプラットフォームのナビゲーションボタンは表示/非表示、ジェスチャー操作などに切り替えることが可能
ジェスチャー操作は「スワイプアップジェスチャ」と「2ボタンナビゲーション」を選べる。実際の操作も視覚的に表示され、わかりやすい
通知パネルでは各機能のON/OFFだけでなく、上段に今日と今月のデータ使用量も表示される
通知パネルの表示も設定画面でカスタマイズが可能
ホーム画面を右にスワイプすると表示されるスマートアシスタントの画面

 プラットフォームはAndroid 9ベースのColor OS 6.0.1が搭載される。今回試用した段階では2020年1月のAndroidセキュリティパッチが適用されていた。Color OSはAndroidプラットフォームにOPPO独自のユーザーインターフェイスを組み込んだもので、設定画面の項目をはじめ、独自のカスタマイズが施されているが、Google PlayなどのGoogleモバイルサービスはほかのAndroidスマートフォンと同じように利用できる。

日本語入力は「Simeji for OPPO」が標準。Androidプラットフォーム標準の「Gboard」に切り替えることも可能
ディスプレイがオフの状態からのジェスチャ操作が可能。カメラ起動やLEDフラッシュ起動は便利だ
「アプリ画面分割モード」を設定すれば、2つのアプリを同時に画面分割で利用できる
ブラウザを起動した状態で、三本指を上方向にスワイプすると、アプリ分割画面モードが起動し、分割画面で表示するアプリが一覧で表示される
画面の端から内側にスワイプすると、よく使うアプリが登録されたサイドバーを表示させることが可能
ブラウザを起動中にスワイプして、サイドバーを表示した状態

 OPPO以外にもファーウェイやシャオミの端末も独自のユーザーインターフェイスが組み込まれているが、Color OSはバージョンが進むにつれ、徐々に独特のクセが抜けてきた印象で、Android標準とiOSの中間的な使い勝手に落ち着いてきたように見える。

SIMカードトレイはピンで取出すタイプ。国内ではあまり採用例が多くないnanoSIMカード×2、microSDメモリーカードのトリプルスロット搭載
出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN。NTTドコモのspモード、主要MVNOのAPNが並ぶ。チェックを付けている「OCNモバイルONE(LTE)」は出荷時に登録されているAPN(lte-d.ocn.ne.jp)を新コース対応APN(lte.ocn.ne.jp)に修正した状態
出荷時に設定されてるau網のAPN
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN
楽天モバイル(MNO/無料サポータープログラム)のSIMカードも認識され、APNは自動的に設定された

 SIMカードは2枚のnanoSIMカードを装着できるデュアルSIM、両方でVoLTEが利用可能なデュアルVoLTEに対応する。2枚のSIMカードと1枚のmicroSDメモリーカードは同時に装着できるトリプルスロットとなっており、2枚のSIMカードを利用しつつ、microSDメモリーカードに音楽や映像データを保存したいユーザーのニーズに応える。トリプルスロットが利用可能な機種は少なく、大容量バッテリーと並び、OPPO A5 2020を選ぶポイントのひとつと言えそうだ。

4眼カメラ搭載

 2018年に国内市場に参入したOPPOだが、元々、カメラ機能に注力してきたメーカーとして知られ、今や多くのメーカーの標準機能となりつつあるビューティーモードなどの補正機能もいち早く搭載してきた。

背面に4つのカメラを搭載。カメラの右側にあるのがLEDフラッシュとポートレートレンズ。カメラ部の下にあるのが指紋センサー

 今回のOPPO A5 2020は、背面に4つのイメージセンサーを備えた4眼カメラとなっている。まず、背面のもっとも上部あるのが800万画素のイメージセンサーにF2.25のレンズを組み合わせた超広角カメラで、119度という広い視野角で、広い風景を撮影するときに役立つ。

 上部から2つ目に搭載されているのが1200万画素のイメージセンサーにF1.8のレンズを組み合わせた標準カメラで、もっとも多くのシーンで利用する。これらに加え、標準カメラの下側に200万画素のモノクロセンサー、カメラ部右側のLEDフラッシュの下に200万画素のポートレート用センサー(ToFカメラ)を搭載する。つまり、カタログなどでは「4眼カメラ」と表記されているものの、実質的には広角カメラと標準カメラの2つで構成され、これをサポートするものとして、モノクロセンサーとポートレート用センサーが搭載されていることになる。

カメラを起動し、左側のメニューから「夜」「パノラマ」などの撮影機能を起動できる

 カメラを起動すると、ビデオ、写真、ポートレートの3つの撮影モードが表示され、左側のメニューをタップすると、「夜」「パノラマ」「タイムラプス」「スローモーション」などの撮影機能を選ぶこともできる。これまでのOPPOの端末と同じように、AIによるサポートも搭載されており、ポートレートでは人物と背景をそれぞれ認識し、適切な色合いで写真を撮ることができる。動画撮影については最大4K/30fpsでの撮影が可能で、電子式手ぶれ補正を搭載することで、手ぶれを抑えた撮影を可能にしている。

メインカメラで撮影。歪みもなく、バランス良く撮れている
広角カメラで撮影。ワイドに撮影したいときに便利

 水滴型ノッチに内蔵されたインカメラについては、1600万画素のイメージセンサーに、F2.0のレンズを組み合わせたものを搭載する。上位モデルなどでも高い評価を得ている800万通りの美顔データから最適な補正を加えるAIビューティー機能もサポートしており、自分好みのセルフィーを簡単に撮影することができる。

ガラス越しに夜景を撮影。このクラスの端末としては十分に美しく撮影できている

 実際の撮影については、サンプルをご覧いただいてもわかるように、夜景も含め、概ね明るく撮影できており、この価格帯のスマートフォンのカメラとしては十分な性能を持っていると言えそうだ。

いつもの薄暗いバーでの撮影。シーンによって、やや暗い場所での撮影に弱いこともあるが、これだけ撮れれば、十分だろう

トリプルスロットでロングライフで使いたい一台

 昨年10月の電気通信事業法改正により、ミッドレンジやミッドハイと呼ばれるクラスの端末が注目を集める中、各社ともさまざまなバランスを考えたモデルを展開し始めている。

 そんな中、OPPOは4万円を切る価格帯に、日本向けオリジナルモデルの「OPPO Reno A」を投入し、日本市場への攻勢を強めているが、今回の「OPPO A5 2020」は防水やおサイフケータイなどの機能を省いたものの、さらにリーズナブルな3万円を切る価格設定で挑んできたモデルだ。5000mAhの大容量バッテリーにより、約2日間のロングライフを可能にしながら、2枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを同時利用できるトリプルスロットも搭載することで、欲張りなユーザーのニーズに応えようとしている。上位モデルで定評のあるカメラも十分な性能を確保しており、この価格帯のモデルとしては、コストパフォーマンスの高い一台に仕上がっている。

 ただ、非常に悩ましいのは、やはり、もう一万円をプラスすれば、防水やおサイフケータイを対応し、チップセットやメモリーなどもワンランク上の「OPPO Reno A」を購入できることだ。OPPO Reno Aはバッテリー容量が3600mAhで、カメラも広角がないことなど、上位モデルながら、OPPO A5 2020にスペックで譲る項目もあるが、やはり、防水とおサイフケータイのアドバンテージを求めるユーザーも少なくないだろう。この一万円の価格差で、どちらの機能を優先するのかが最終的な判断のポイントと言えそうだ。OPPO A5 2020はバッテリーライフを求めるユーザー、トリプルスロットで利用したいユーザーに、ぜひチェックして欲しい一台と言えるだろう。