法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「OPPO Reno A」は日本仕様と1クラス上のスペックで『いろいろと余裕』を実現する

 2018年から日本市場に参入したOPPOは、Rシリーズを主力として展開してきたが、その一方でスライド式カメラ搭載の「OPPO Find X」や10倍ズームを搭載した「OPPO 10x Zoom」など、ユニークなモデルも投入し、注目を集めてきた。そんな同社が10月に発売した「OPPO Reno A」は、日本のユーザーに求められるおサイフケータイなどの機能を搭載するだけでなく、CMキャラクターに指原莉乃を起用するなど、本格的に日本市場へ攻勢をかけてきた戦略モデルだ。実機を試すことができたので、レビューをお送りしよう。

OPPO「Reno A」、約158.4mm(高さ)×75.4mm(幅)×7.8mm(厚さ)、約169.5g(重量)、ブルー(写真)、ブラックをラインアップ

変化する国内市場

 これまでも何度も触れてきたように、2019年は日本のモバイル業界にとって、大きな転換期を迎えることになった。今年10月に施行された改正電気通信事業法をはじめ、各社の5Gプレサービスのスタート、楽天モバイル(MNO)の新規参入などがある一方、スマートフォンとの関わりが深いネット企業においてもYahoo!とLINEが2020年の経営統合を発表するなど、周辺業界も含めた大きな動きが見られるようになってきた。

 そんな国内のモバイル市場において、昨年1月に参入して以来、次々と新モデルを投入し、積極的にアピールを続けてきたのがOPPOだ。OPPOは2004年に中国で設立されたメーカーで、2011年からスマートフォンに参入し、カメラ機能などに注力することで、中国やアジア市場で着実に知名度を高めてきた。日本市場向けでは2018年1月の「R11s」を皮切りに、2018年8月には普及価格帯の「R15 Neo」、同年9月には初のおサイフケータイ搭載の「R15 Pro」、同年11月にスライド式ステルス3Dカメラ搭載「Find X」、UQモバイル向けでディスプレイ内指紋認証搭載の「R17 Neo」、同年12月にフラッグシップモデルの「R17 Pro」、普及価格帯の「AX7」を投入してきた。今年に入ってからは7月に10倍ズームを搭載した「OPPO 10x Zoom」を日本市場向けの発売を発表する一方、新規参入の楽天モバイルと5G通信のデモを披露するなど、日本市場に積極的な姿勢を見せている。

 そして、今回発表された「OPPO Reno A」は、おサイフケータイや防水といった日本のユーザーに求められる機能を搭載しながら、実売で4万円前後というリーズナブルな価格を実現したモデルとなっている。OPPOによれば、これまでのモデルのように、グローバル向けモデルをローカライズするのではなく、実質的に日本市場向けのオリジナルモデルとして開発されているという。新機種のイメージキャラクターとして起用したタレントの指原莉乃を記者発表会に招き、テレビCMも制作するなど、これまでにない気合いの入り方がヒシヒシと伝わってくる印象だ。

 OPPOが日本市場向けのオリジナルモデルを開発し、イメージキャラクターを起用するなど、これまで以上に力を入れてきた背景には、やはり、国内市場が今年、大きく動くと予想されていたことが関係している。改正電気通信事業法により、端末購入補助が制限され、多くの消費者が求める端末の価格帯がハイエンドモデルの10万円前後から、ミッドレンジモデルの3~5万円に移行することが予想されていたため、その価格帯に対し、日本のユーザーが求める日本仕様をしっかりとサポートしたモデルを投入してきたわけだ。

 もうひとつは少しアテが外れてしまったのかもしれないが、「OPPO Reno A」はオープン市場向けのSIMフリー端末としてだけでなく、今年10月に新規参入をする予定だった楽天モバイル(MNO)の対応モデルとしても販売されている。ストレージ(ROM)の容量が128GB(オープン市場向けは64GB)であることなどの違いがあり、さらにコストパフォーマンスが高くなるが、本来であれば、今年10月の楽天モバイル(MNO)の正式サービス開始に合わせる形で投入し、同社の主力モデルのポジションを狙おうとしていたことをうかがわせる。だからこそ、国内でもトップクラスのタレントである指原莉乃を起用し、テレビCMを制作するまでの取り組みを準備していたのかもしれない。残念ながら、楽天モバイル(MNO)は無料サポータープログラムという形でのスタートになったが、それでも無料サポータープログラムの当選者が購入する端末としては、シャープのAQUOS sense3などに続く人気モデルとなっており、発売当初はカラーによって、入手できない状況などが続いていた。

 価格については楽天モバイル(MNO)向けとオープン市場向けでストレージ容量に違いがあるが、いずれも4万円を切り、3万8800円(税込)で販売されている。後述するスペックなどを考えると、かなりのコストパフォーマンスの高さであり、OPPOの日本市場向けのラインアップとしてもかなり戦略的なモデルであることをうかがわせる。

ミッドレンジクラスを上回るハイスペック

 まず、外観からチェックしてみよう。OPPOは従来モデルからデザインや仕上げの良さでも評価を得てきたが、今回のOPPO Reno Aも全体的に美しいデザインに仕上げられている。

背面は左右両端がラウンドした形状に仕上げられている。背面中央にはおサイフケータイのマークがプリントされている
左側面には分割式の音量キー、その隣(写真では右側)にSIMカードトレイが備わる
右側面には電源キーのみを備える。カメラ部の突起は大きくないが、カバーを装着することをおすすめしたい
下部にはUSB Type-C外部接続端子に加え、最近では装着例が減ってきた3.5mmステレオイヤホン端子を備える
SIMカードトレイは左側面の上側に備える。ピンで取り出すタイプで、2枚目のnanoSIMカードはmicroSDメモリーカードとの排他利用になる

 本体は背面の両端が湾曲したスリムなデザインで、手にフィットする形状となっている。後述するディスプレイサイズが大きいこともあり、ボディ幅は75.4mmとワイドな印象で、女性など、手の大きくないユーザーにはちょっと気になるサイズ感と言えそうだ。IPX7/IP6X準拠の防水防塵にも対応する。パッケージにはクリアケースが同梱されるが、市販のケースは日本向けオリジナルモデルとして発売されたこともあり、バリエーションが限られている。

パッケージに付属のクリアカバーを装着

 ディスプレイはフルHD+対応の6.4インチ有機ELを採用しており、前面にはCorning Gorilla Glass 5が採用される。ディスプレイ上部の水滴型ノッチは上辺との曲線をなめらかにデザインすることで、美しく仕上げられており、画面占有率は約91%を実現する。この約91%という画面占有率は国内外で販売されるスマートフォンの中でもトップクラスに位置付けられるが、これを実現できた理由としては水滴型ノッチに加え、ディスプレイ内指紋センサーを採用したことが挙げられる。OPPOは従来モデルからディスプレイ内指紋センサーを採用してきた実績があり、今回もディスプレイの内側に指紋センサーを配置し、光を当てて、指紋を読み取る光学式を採用している。OPPOによれば、従来モデルに比べ、指紋認証時のロック解除速度が28.5%高速化しているとのことだが、実際に使った印象としては確かにロック解除が速くなった印象で、ストレスなく使うことができた。ちなみに、ディスプレイ内指紋認証については、市販の保護ガラスや保護フィルムを貼付した際、認証しにくいケースがあるが、保護ガラスや保護フィルムを貼った状態で指紋を再登録すれば、問題なく利用できる。

 また、画面ロック解除のセキュリティについては、指紋認証に加え、顔認証にも対応する。顔認証についてはよく似た人でもロックが解除できるため、指紋認証に比べ、セキュリティが落ちることになるが、一般的な利用であれば、十分という見方もできる。顔認証のユーザビリティも考慮されており、薄暗い場所での輝度補正や目を閉じたときに顔認証を失敗する設定がサポートされており、顔認証後にすぐに画面をオンにするか、スワイプが必要とする設定を選べる。顔認証の用途も画面ロックの解除だけでなく、アプリの起動をコントロールする「アプリロック」、プライバシー情報へのアクセスを制御する「プライベートコントロール」などの機能にも利用されている。

指紋認証は画面オフ時に指紋アイコンを表示するかどうかを設定可能
顔認証では薄暗い場所での輝度補正をはじめ、ロック解除時の動作や目を閉じたときの対応なども設定できる

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 710を採用し、RAMは6GB、ROMはオープン市場向けが64GB、楽天モバイル向けには128GBのモデルが用意される。microSDメモリーカードにも対応する。前述のように、OPPO Reno Aの実売価格は4万円を切るが、同価格帯のライバル機種の多くはSnapdragon 6xxシリーズを採用しており、OPPO Reno Aは1クラス上のチップセットを採用していることになる。そのことがOPPO Reno Aの「いろいろと余裕のスマホ」というキャッチコピーにもつながっている。ただ、販路によって、ストレージの容量に2倍の差があるのは消費者にとってわかりにくく、楽天モバイル以外のMVNO各社や家電量販店、オンラインショップとしてもちょっと面白くないだろう。過去にも他製品で同様の差が見受けられたことはあったが、携帯電話会社とMVNOで違ったり、モデル名も異なったが、今回はモデル名も変わらないため、やや不親切な印象が残る。

 プラットフォームはAndroid 9ベースのColor OS 6を採用し、Google PlayなどのGoogleモバイルサービスもそのまま利用できる。Color OSもバージョンと共に改良が加えられ、Color OS 6では通知センターや音量設定のグラフィックが見やすくなり、ホーム画面の表示形式が選べるようになっている。OPPOが国内市場に参入したばかりの頃のColor OSは、やや独特の操作性に戸惑ったが、最新版のユーザーインターフェイスは一般的なAndroidスマートフォンに近付いており、他機種のユーザーも十分に慣れることができるレベルの仕上がりと言えそうだ。ちなみに、原稿執筆時点では2019年11月のセキュリティパッチを含むアップデートが配信されていた。

Color OS 6のホーム画面。楽天モバイル版のため、右側の中段には楽天のアプリがまとめられたフォルダが作られていた。
ホーム画面にインストールされたアプリのアイコンがすべて表示されるユーザーインターフェイス
ホーム画面のモードは「標準モード」と「ドロワーモード」から選んで設定できる
ナビゲーションキーは配列を変更したり、バーチャルキーを非表示に設定できる
iOSに似たジェスチャーを利用した操作も設定できる
「スワイプアップジェスチャー」は画面下側からのジェスチャー操作が利用できる

 SIMカードはnanoSIMを使ったデュアルSIM対応で、2枚目のSIMカードはmicroSDメモリーカードとの排他利用になる。今回試用したモデルは楽天モバイル(MNO)向けということもあり、出荷時に設定されているAPNは楽天モバイル(MVNO)が利用しているNTTドコモ網とau網向けのものがセットされていた。楽天モバイル(MNO)の無料サポータープログラムのSIMカードは特に追加の設定などをすることなく、正しく認識されている。

出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN
出荷時に設定されてるau網のAPN

 また、おサイフケータイにも対応しており、楽天edyやQUICPay、nanaco、モバイルSuicaといった主要サービスも利用することができる。キャッシュレス決済が注目される中、SIMフリー端末でありながら、QRコード/バーコード決済だけでなく、おサイフケータイによる決済が利用できるのも魅力のひとつだろう。

おサイフケータイに対応。楽天edyやモバイルSuicaなど、さまざまなサービスのアプリをインストールして利用できる

2500万画素インカメラ、1600万画素AIデュアルアウトカメラ搭載

 国内市場においては他の海外メーカーに比べ、ブランドの浸透に注力する段階にあるOPPOだが、これまで同社製品のレビューでも触れてきているように、グローバル市場ではスマートフォンのカメラに注力してきたことでも知られる。たとえば、今やスマートフォンのカメラでは標準機能となりつつある「美肌モード」や「ビューティーモード」と呼ばれる補正機能にいち早く着手したり、今年も「OPPO Reno 10x Zoom」では他製品に先駆けて、ペリスコープ構造の光学ズームを搭載するなど、ソフトウェアとハードウェアの面で市場をリードしている。

背面にはAIデュアルカメラを搭載

 今回のOPPO Reno Aでは背面側にソニー製「IMX398」を採用した1600万画素イメージセンサーとF1.7のレンズ、深度・距離計測用の200万画素イメージセンサーを組み合わせた「AIデュアルアウトカメラ」、前面の水滴型ノッチ内にソニー製「IMX576」を採用した2500万画素イメージセンサーとF2.0のレンズを組み合わせたインカメラを搭載する。

AIによるカメラのシーン認識が可能。ここでは青空を「ブルースカイ」と認識
夜モードの撮影は左側のメニューから操作して、起動できる

 アウトカメラの撮影機能としては、AIが風景や食べ物、ペットなど、22のシーンを自動的に認識し、最適な設定で撮影できるAI認識機能を搭載するほか、人物の背景を自然にぼかすA.I.ポートレートモードをサポートする。より自然な色合いでの撮影ができ、夜間の撮影にも強い「ダズルカラーモード」も用意されている。夜景についてはメニューから「夜」を選んで撮影でき、暗いところでも明るく撮影することが可能だ。

青空や緑などを含んだ風景写真。やや淡泊なイメージで撮影された
奥行きのある写真。レンズは明るく、歪みも非常に少ない
薄暗いバーで撮影。やや色味が普段と違う印象だが、暗いところでも問題なく、撮影できる
夜モードに切り替えて、夜のビルを撮影。通常モードよりも明るく撮影できる
クリスマスツリーを撮影。周囲の明るさの影響も少なく、自然に撮影できた印象

 インカメラについては従来モデルに引き続き、A.I.ビューティ機能が搭載されており、顔の296カ所のポイントを正確に捉え、800万パターンの美顔データに基づいた最適な補正を加えたセルフィーを撮影することができるほか、顔の輪郭や目の大きさなども個別に調整する機能も備える。ユーザビリティも考慮されており、セルフィー時は手のひらをカメラに見せて、自動的にタイマーで撮影する機能も搭載される。ステッカーと呼ばれるグラフィックを追加する機能も搭載されているが、追加のグラフィックはカメラを起動した画面でダウンロードする必要があり、少し手間がかかる印象だ。

「いろいろと余裕」で楽しめる一台

 冒頭でも説明したように、今年10月の改正電気通信事業法の施行により、端末の販売はひとつの転換期を迎えている。各携帯電話会社が販売するモデルについては、端末購入補助が制限されるため、実際に購入される端末のハイエンドからミッドレンジに移行し始めている。この傾向は元々、コストパフォーマンスを重視していたSIMフリースマートフォンにも影響しており、単純に価格が安いだけでなく、ユーザーが求める十分なスペックを持ち合わせているかどうかがひとつの注目点になってきている。なかでも防水防塵やおサイフケータイといった日本仕様は、SIMフリースマートフォンでも判断基準として捉えるユーザーが増えてきたことは確かな傾向としてうかがえる。同時に、パフォーマンスについてもスマートフォンでの動画視聴やゲーム利用など、負荷の高いコンテンツを利用するユーザーが増えてきたことで、1クラス上のスペックを求める声も増えつつある。

パッケージには本体(中央)のほかに、イヤホン(右下段)、ACアダプタ(右中段)、USBケーブル(右上段)、クリアカバー(左)が同梱される

 今回試用した「OPPO Reno A」は、こうしたユーザーが求める仕様やスペックに応えた端末であり、これをミッドレンジクラスの4万円を切る価格帯で実現した非常に魅力的なモデルと言えるだろう。「コストパフォーマンス」というと、どうも単純に価格面ばかりが強調されるが、OPPO Reno Aは「コストもパフォーマンスも優れたモデル」であり、キャッチコピー通り、「いろいろと余裕」で楽しめる一台に仕上がっている。Color OSの独特のユーザーインターフェイスはAndroidプラットフォームとまったく同じではないため、使いはじめは少し躊躇するかもしれないが、十分に慣れることができるもので、他機種及び他のプラットフォームからの移行ユーザーも適応可能なレベルにある。気になるポイントとしては、動作確認情報をはじめとしたサポート情報が不足していること、ストレージ容量の違うモデルが異なる販路で、ほとんど変わらない価格帯で販売されていること、日本向けオリジナルモデルであるがゆえに、アクセサリー類がまだ少ないことなどが挙げられる。特に、サポート情報については楽天モバイル(MNO)や本国との兼ね合いもあるのだろうが、もっと積極的に開示して、より多くのユーザーが安心して、「いろいろと余裕」の環境を楽しめるようにして欲しいところだ。