みんなのケータイ
スマホ上で完結する中国の次世代スーパーマーケットを体験してきた
2019年6月6日 06:00
例によって、中国の深センに行って来ました。というのも、最近、中国ではアリババ(阿里巴巴)やテンセント(腾讯)が「ニューリテール」(新零售)なる概念を体現した「次世代スーパーマーケット」を本格的に中国全土に展開し始めているという話に、興味を持ったからなのです。
そもそも「ニューリテール」ってどんな概念なのか? 簡単に言うと「ITと物流と小売を融合した概念」だそうです。たとえば、ニューリテールを体現した次世代スーパーでは、お客は、スマートフォンのアプリを使って「小売とアミューズメントと物流」をまとめて享受できるということみたいです。
言葉ではなんとなくわかるものの、実際その次世代スーパーってどんなものなのか、体感したくなって、現地に飛んでしまいました。
アリババが経営するのは「フー馬鮮生(盒马鲜生)」というスーパー。北京、上海といった主要大都市を中心に展開し、深センにもすでに13店舗がオープンしています。
対してテンセントは、中国スーパーマーケットチェーン大手の「永輝超市」に出資し、「超級物種(超级物种) Super Species」という店舗を大都市中心に展開、深センにも7店舗出店しています。
今回はこの「フー馬鮮生」と「超級物種」の店舗、一店舗ずつに行ってみたわけですが……
まず、地下鉄水貝駅近くのショッピングモールにある「フー馬鮮生」水貝店へ。
このスーパーで売っている物は、米、野菜、果物、魚、肉、乳製品、パンにドリンク、お酒……。うん、普通にスーパーマーケットですね。
違うのは、ここから。
陳列されている商品をアプリでスキャンすると、品物を手に取らずとも、その物を自分の住所まで時間指定で配送させる、ということができるのです。指定エリア内なら最短30分で届き、しかも配送料は無料です。
自分で持って帰りたい場合は、それもOK。品物を持っていて「収銀区」にあるセルフレジに品物とスマートフォンをかざせば支払い完了です(アリババですので支払いはアリペイで行います)。
さらには「就餐区」という場所もあります。要はフードコートなのですが、この店で買った物を食べることができるのです。例えば、精肉売り場でステーキ肉を買って焼いてもらうとかもできます。ミディアムレアとかウェルダンとか焼き加減も頼めます。
ちょっと入ってみたところ……すごいすごい。「就餐区」も「収銀区」も人で大賑わいです。特に「就餐区」。ちょうどお昼時に行ったせいもあるのでしょうが、料理を食べる人、できるのを待つ人でいっぱいです。
本来であれば、スマートフォンから商品を指定して、注文すれば指定の時間に届く、いわば生鮮食品のアマゾン的なお店ですからリアル店舗がそんなに賑わう必要はないような気もするのですが、一種、家族のお出かけスポットとか観光名所になっているのか、人で一杯になっていました。
次! もう一軒行きます。「超級物種」華強北店。そう、深センの、家電とスマホショップの街として有名な「華強北」にあるんですね。華強北、割と良く来ているのに、なんでこんな楽しげなスーパーがあるのに気付かなかったんだ……と自分の不覚を呪いたくなるお店です。
こちらもコンセプト、お店の作りとも「フー馬鮮生」によく似たお店です(少し売り場が狭いかなと感じる程度で)。
生鮮食品が、豊富に綺麗に陳列されていて綺麗です。時間指定で、買った物を配達してもらえるのも同じ。
そして、こちらも「就餐区」があり、買った肉を焼いてもらって食べたり、呑んだりできます。ライチの場合は自分の手で剝けばオッケーですが、例えばステーキの肉などの場合は焼いてもらって食べたり、ビールを買って呑んだり、ということもできるようになっています。生ビールの蛇口もありました(笑)。
面白いことにお店の中にはUFOキャッチャーならぬ「ロブスターキャッチャー」があり、ゲームマシンでロブスターを捕まえ、それを料理してもらってその場で食べることなどもできるようです。
また、こちらのお店は、品物を自分で持ち帰る場合でも、レジに並ばずにスマホだけで商品の会計を済ませることができるようになっています。棚には、商品の名前とバーコードの書かれた棚札が置いてあり、商品も置いてあります。
このバーコードをスマホでスキャンし、「微信支付」の「YH永輝生活」ミニプログラムから「去支付」で支払いをするを選ぶと、支払い完了。レジに行かずに支払いが完了してしまうんです。支払いは当然We Chat Payに登録した口座から引かれます。
いやぁ、これは面白いです。スーパーの買い物がアミューズメントになってしまう。さすがに毎日ここで呑んで喰ってという訳にはいかないでしょうが、ちょっと遊びに行く感覚で家族で買い物に来たら楽しいでしょう。
もし、現代中国のスマホ事情視察などで、華強北に来ることがあるならぜひ立ち寄りコースに加えてほしい場所ですね(本来は地元の人が買い物に寄るための場所ですので、邪魔にならないように、ですが)。
米国でもレジなしコンビニ「Amazon Go」や、日本でも駅に無人コンビニができたりなど、小売り業界では、似たような試みがされ始めていますが、中国のこのニューリテールスーパーたちはこれらと比べても、ユニークで、しかも(まだ大都市限定とはいえ)大々的に展開し始めてきたことは、注目に値するんじゃないかと思います。
ただ、中国と米国の関係が悪くなるとこういう分野も「中国スゲーーー」だけでは済まされない気もします。どうなるんでしょうか、両国関係……無関心ではいられない今日この頃です。