DATAで見るケータイ業界

NTTドコモの“真水”の回線数は約2年ぶりに純減、MVNOへの回線提供にもブレーキ

 2023年はNTTドコモの回線品質低下が大きくクローズアップされた年だった。この状況は、回線契約の動向にも少なからず影響を及ぼしたようだ。

“真水”の契約数は約2年ぶりの純減に

 NTTドコモの回線契約数は、全体でみると安定的に増え続けている。しかし、機器などに搭載される「モジュール契約」の動向を除外すると、23年7~9月期は前期比で4.5万の減少に見舞われた。モジュールを除く回線数が純減に陥ったのは、2021年10~12月期以来で約2年ぶりとなる。

 モジュール契約を除外した数字は、一般の消費者が手にするスマートフォンなど“真水”の動向に近いものといえる。21年度下期あたりから増加に転じて持ち直していたが、ここにきてその勢いに陰りが出始めた。

今年度に入り、MVNOへの回線提供にもブレーキ

 同様に気がかりなのが、MVNO市場におけるドコモ回線の動向だ。

 総務省が四半期ごとに取りまとめる契約数に関するデータでは、市場全体に占めるMVNO契約数比率が回線提供元キャリアごとに開示されている。その数字をもとに推計したところ、今年度に入りソフトバンクやKDDIの回線を借りるMVNOに比べて、ドコモ回線の純増数が見劣りする結果となっている。

 直近では、MVNO純増数の半分以上を通信モジュールが占めているため、その動向に左右された面も大きいが、回線の提供元として競り負けはじめた状況が一過性のものか、注視が必要だろう。

 もちろん、MVNO契約数が減った分、NTTドコモのキャリア回線(eximo、irumo、ahamo)に乗り換えが起きているなら同社にとってはむしろウェルカムだろうが、前述の“真水”の契約数動向も踏まえると、厳しい状況と推察される。

 QRコード決済や証券会社に代表される金融系サービスや、ポイントプログラムの強化など、通信キャリア各社は経済圏拡充競争が主戦場の様相となっている。

 経済圏争いでは、他キャリアの利用者にも広く使ってもらうことが必要だが、その前提として自社が抱える顧客基盤の安定は欠かせない。一連の対策を通じて品質を安定させ、「つながらない」というネガティブなブランドイメージを払拭することで、顧客基盤の早急なつなぎ止めが求められている。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/