DATAで見るケータイ業界
オンライン専用プランも後押しに一役買う「通信と端末の分離」、仕上げに向けた課題とは
2021年4月29日 06:00
今春、通信キャリア各社が投入したオンライン専用プラン。NTTドコモの「ahamo」は一部端末について契約時に同時購入可能となっているが、KDDI「povo」とソフトバンク「LINEMO」は回線契約単体での申込が基本だ。そのため、現在利用中の端末を持ち込むか、別途新規に購入する必要がある。
このように、新プランの投入は「通信と端末の分離」の普及にも一役買いそうだ。
総務省が一貫して旗振りし続けた端末分離施策
総務省はこれまで一貫して、モバイル市場の公正競争を促進すべく、通信と端末の分離実現に旗を振り続けてきた。通信料金と端末代金の一体化は、高額な解約違約金ともあいまって実質的な囲い込み状態となり、他社への乗り換えが進まなかったとの分析がベースにある。これまでに様々な施策が実施されている。
いわゆる値引き規制が代表例で、端末購入の見返りに通信料金を値引くことは全面禁止され、また端末購入と通信契約をセットで行う場合の端末値引は上限2万円に規制されたことはご存じの通りだ。
なお余談として、この上限2万円という線引きが喧伝されたため誤解を招いている側面もあるが、実は今でも2万円超の値引きを行うことは可能だ。
規制はあくまで通信契約とのセット時に適用されるもので、端末の単体販売時も同条件であれば、2万円超の値引きを行っても規制は適用されない。各社が端末購入サポートプログラムを提供できるのはこのためだ。
端末分離の徹底に向けて求められる「顧客本位の販売」
この「単体販売時も同条件」というのがくせものだ。総務省による覆面調査で、非回線契約者に対して端末販売が拒否された事例があったことが判明している。いくらルールを設けても、顧客と向き合う販売店舗において適切な案内がなされなければ実効性は担保されないのだ。
販売店舗においては、古くはレ点コンテンツにはじまり、頭金という名の販売額上乗せ横行、店頭における料金相談を契機とした高額プランへの誘引など、さまざまな問題点が指摘されている。対策として販売代理店登録制度の導入も行われたが、対症療法に過ぎないだろう。
販売代理店は、通信キャリアの施策や意向に従って事業展開せざるを得ない立場に置かれている。誤解を恐れずに言えば、通信キャリアの販売手数料(インセンティブ)体系に振り回されてしまう存在だ。仮にハイスペック端末や大容量プランに高額インセが設定されれば、顧客にとって不要であってもそれを売らざるを得ないのが実情だ。
同様の問題を抱えていたのが金融業界で、銀行窓口において顧客ニーズを無視し、インセの高い保険商品や投資信託が推奨されてきた。これに対して金融庁は「顧客本位の業務運営原則」を打ち出したが、国民の財産である周波数を用いて事業展開している通信業界ならば同様の取り組みが必要ではないだろうか。もちろん、販売代理店だけに押しつけるのではなく、販売代理店が顧客本位の対応を行えるようなインセ体系や販売施策を通信キャリアに遵守させる必要があろう。
端末の他社周波数帯への対応義務化も一手か
また今後、乗り換え障壁として争点化しそうなのが、端末の機能制限禁止だ。SIMロック解除によって端末が持ち運びやすくなったとはいえ、たとえば乗り換え先で音声通話やデータ通信ができなければ、乗り換えが抑止されてしまう。
とりわけ周波数帯の対応は重要な問題で、同一メーカー製の同等モデルでありながら、SIMフリー端末とキャリア端末で対応バンドをあえて変えているケースも見受けられる。通信キャリアが自発的に他社の周波数帯にも対応させた端末を作ることは考えにくく、この部分を義務化させることも一手だろう。
現在も総務省や公正取引委員会でワーキンググループや検討会が行われているが、利用者にとって実質的なメリットのある、効果的な施策が導入されることを期待したい。