第528回:ノイズキャンセリングとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「ノイズキャンセリング」とは、その名の通り、ノイズ(雑音)をキャンセル、つまり消してしまう技術のことです。

 一部のヘッドフォンなどで用いられていることで知られていますが、携帯電話でもこの技術が採用されていることがあります。たとえば、NTTドコモのらくらくホンシリーズや「Xperia acro SO-02C」、auの簡単ケータイ K003~K010、ソフトバンクモバイルの「AQUA STYLE 001SC」などで採用されています。

 携帯電話では、通話時の音声以外の雑音を取り除いてクリアな音声を再現する技術として、いわゆるノイズリダクションと呼ばれる、ソフトウェアで雑音を取り除く技術は使われてきました。

 一方、「ノイズキャンセリング」は、通話相手の環境音や、無線状況などの雑音を取り除くのではなく、ユーザーが手にしている携帯電話周辺にある環境音を打ち消す技術です。ノイズリダクションによってクリアにされた通話相手の音声をさらに、はっきり聞きやすくできます。

逆位相の音を発生し打ち消す

 音というのは、小学校の理科などでも教わるように、空気の振動が波のように押し寄せることで伝わります。ノイズキャンセリングの原理は、簡単にいうと、使っている携帯電話の周囲の雑音をマイクを使って取り込んで、逆位相の音波をスピーカーから発生することで、本来利用者に聞かせたい音だけを聞かせるというものです。

 それでは、ある音がどこかで発生し、さらに他の音(ここでは雑音とします)が他のどこかで発生した場合、耳にはどのように伝わるでしょうか。正解は、波と波が足された状態で押し寄せてくるのです。

 これを時間ごとに見ていくと、

という風になっています。つまり耳に届く音の高さは、


耳に届く音の高さ = ある音の高さ + 雑音の高さ

になっているということです。ちなみに、この場合、耳に届く音の高さは3秒間ずっと同じ、波になっていません。つまり「音として聞こえない」ということですね。

 それでは、ある音の高さを耳にそのまま届けたいとしたらどんな音をさらに足せばいいでしょうか。

 正解は、雑音の逆の高さの音を足してやればいいのです。

 この雑音の高さを逆にした高さの“波”のことを「(雑音の)逆位相の音波」と言います。この仕組みは、音楽用ヘッドフォンなどで用いられています。

携帯電話にもノイズキャンセリング

 携帯電話にもノイズキャンセリングの技術が用いられています。

 富士通製「らくらくホン7」などの機種では、通話に使うマイクのほかに、ノイズキャンセルに使うマイクをもう1つ用意します。複数のマイクを使って、周囲の音との差違を比較して、雑音を抑えるといった仕組みで、メーカーごとに独自の仕組みも組み合わせて、通話品質の向上が図られています。

【お詫びと訂正 2011/8/26】
 記事初出時、携帯電話のノイズキャンセリングに、逆位相の音を使う方式が用いられていると表記しておりましたが、本稿で取り上げた機種では、他の手法が採用されていることが確認されました。お詫びして訂正いたします。

 

(大和 哲)

2011/8/23 06:00