ケータイ用語の基礎知識

第1002回:酷暑に知りたい、熱くなったスマホを冷やす安心安全な方法

 酷暑が続く昨今。暑いのは人間だけじゃなくスマートフォンも一緒。炎天下の屋外や自動車の中で使用していると本体が熱を帯びがち。機種によっては、異常に感じられるくらい過熱する場合も……。そんなときは一体どうしたら良いのでしょうか? スマートフォンが熱くなったときにやっていいいこと・悪いことを解説していきます。

人も暑いけどスマホも“熱く”なる。効果的に冷やすにはどうしたらいいのか?

夏はすぐにスマホが熱くなる

 スマートフォンが過熱すると、カメラ機能が停止したり、動作が急激に重くなってしままったり、あるいは動作が止まる、ひどい場合は再起動を繰り返す、というようなことになることもあります。また、極端に高温下の環境はスマートフォンのバッテリー寿命を削る原因にもなります。

炎天下で数分使用しただけだが、20度台から一瞬で40度超になった

 スマートフォンが過熱するとカメラ機能が使えなくなるのは、端末内部のセーフティ機能が作動するためです。セーフティ機能は、スマートフォン内部の温度が回路にとって致命的な温度まで上がらないよう、カメラや充電などの機能を制限したり、画面の輝度やCPUの処理速度を下げたりします。

 スマホのカメラユニットは、高品質のビデオや高解像度の写真を撮影するときに、スマホに大きな負荷をかけるため発熱させやすいという性質を持っています。4K動画などを撮影するときには、特にその傾向が顕著です。また、夏場の屋外で直射日光が当たる場所などで撮影する場合も、当然スマホ全体が熱を帯びやすくなるでしょう。

 このような状況で、温度上昇を検知するとスマートフォンは、カメラ機能を制限させるわけです。

 また、スマートフォンの一時的な性能劣化は、内部にある チップセットやバッテリーなどの電子部品が発熱し、温度が上昇することで起こります。これらの部品は、温度が上がると、部品の劣化や故障のリスクが高まりますし、パフォーマンスも低下します。そのため、スマートフォンは温度を下げようとして、アプリの処理速度を落としたり、充電を停止したりすることがあります。結果的に動作が重くなり、いつものアプリがカクカクするということになります。

 ちなみにiPhoneの場合は、極端に端末内部温度が上がると、緊急通報以外の全機能が利用できなくなる場合もあります。

 これらの機能制限や性能劣化は恒久的なものではなく、スマートフォンが故障したわけでもありません。スマートフォンを冷やして、休ませてあげることで復活します。ただし、その冷やし方もやってよいやり方と、やってはいけないやり方があります。

 スマートフォンはどのように冷やせばよいのでしょうか?

スマートフォン、やってはいけない冷却方法

 まず、やってはいけないスマートフォンの冷却方法を見ていきましょう。これをやると、最悪の場合、端末内部がカビたりサビついたりします。修理不可の故障の原因になることもあります。

AQUOS R8とAQUOS R8 pro。カメラ周辺のリングから放熱するユニークなしくみを持つ

 ひとつは、冷凍庫で凍らせた保冷剤や氷を当てることです。急激に端末を冷やすことで、内部に結露が発生しやすくなります。結露の水が、バッテリーや内部回路を電気的にショートさせ、故障の原因になります。

 また、冷蔵庫や冷凍庫に入れるのもNGです。保冷剤や氷同様、結露の心配があるうえ、冷却効果はさらに強力なため、内部で凍結する恐れまででてきます。また、この後暑い環境に出てまた冷却を繰り返すとカビが出てくるかもしれません。。

 水につけるのも厳禁です。防水機能を持つ端末は、外部からの水を内部に浸透するのを防ぐ構造になっていますが、急激に冷やした場合、内部に結露が発生する可能性は、防水のないスマートフォンと変わりありません。

 いずれにしても、「急激」に冷やすと「結露」が発生し、端末内部の回路などをダメにしてしまう……のが問題になるわけです。つまり、スマートフォンの冷やし方としては、露しない程度に徐々に冷やしていくのが、よいということになります。

急激に冷やすのはスマホにとってNG
・急激に冷やすと内部に結露が発生する
・水分でショートしたりサビが発生したりすることも
・冷凍庫などに入れる、水につけるなどはしないようにしよう

では、やっていい冷やし方とは?

 まず、充電を止める、電源をオフにするのは効果的です。充電中はバッテリーが、スマートフォンの動作中は内部回路がそれぞれ熱を発生させます。これらを止めることで、スマートフォン内部の熱の発生を抑えることができます。とはいえ、電源をオフにしてしまうと、スマートフォンが使えなくなってしまう。それでは本末転倒、と思われるかもしれませんね。

 現実的な方法のひとつとしては、ケース、カバーを外すことがあります。これらのアイテムは構造上、熱をこもらせ逃がしにくくします。ケースを外しておいたほうが、本体に風が当たることもあり、放熱効果を上げられるでしょう。

ケースは傷や衝撃から守ってくれるが、熱をこもらせてしまう。真夏には外して使うことを考えても良いだろう

 このほか、ミニ扇風機、ファンクーラーなどで風を当てるなど基本的には、このように風に晒す「空冷」するのがオススメです。急激冷やすのではなく、結露が起きない程度に冷やすのが正しい、と言えます。

 冷却グッズで冷やすという手もあります。放熱プレート・冷却シートなどがそれです。放熱効果をさらに上げるために、放熱・冷却シートなどを使うのも効果的です。高価なものでは「ペルチェ素子」を使った冷却プレートファンなども市販されていますので、このようなものを使うとさらに効果的でしょう。

 最後に挙げたスマートフォン用の冷却プレート・シート・ファンなどは、アマゾンなどの通販を見ると各種販売されています。夏のお出かけ中にカメラが止まってしまった……オンラインゲームで対戦中なのに動作がカクカクする……なんていう場合は、こうした冷却グッズを使ってみるといいかもしれません。

風を当てるなど優しくゆっくり冷やそう
・電源や充電を止めるのは効果的
・ファンやミニ扇風機を当てるのが安全
・ケースを外すのもアリ
大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)