山根康宏の「言っチャイナよ」

ハイエンドからミドルレンジまで、今春発表された中国メーカーの5G対応スマートフォン

 スマートフォン市場で勢いを増す中国メーカーの新製品の動きを香港在住の携帯電話研究家、山根康宏がまとめる「言っチャイナよ」。今回は2020年3月に中国メーカーが発表したスマートフォン新製品のうち、中国市場向けに発表されたものの中で5G対応製品を紹介する。なお新型コロナウィルス(COVID-19)により多くの新製品発表会のスケジュールが延期などされた。

新型コロナウィルスの影響で新製品発表会の延期が相次ぐ

 世界最大の通信関連イベント「MWC20 Barcelona」がキャンセルされるなど、2020年第1四半期はCOVID-19の影響が全世界に影響を及ぼした。スマートフォンの新製品発表会も2月中旬以降はキャンセルや延期となり、オンライン発表会に切り替えるケースが相次いだ。TCLはCES 2020で「TCL10」シリーズ3機種を発表し、MWCで詳細スペックを公開する予定としていたが中止となったまま。2月に発表会を行ったのはサムスンとファーウェイくらいだった。なお主なメーカーの発表会の日程変更は以下の通り。

日程が変更された発表会
OPPO2月22日 → 3月6日
Vivo2月23日→ 2月28日
シャオミ2月23日 → 3月27日
ファーウェイ2月23日 → 2月24日
Honor2月24日 → 2月25日

ファーウェイのミドルレンジ5G SoC「Kirin 820」搭載、Honor 30S

 「Honor 30S」は、ファーウェイ初となる「Kirin 820」を採用した製品。Kirin 820は5Gモデムを統合したミドルレンジ向けのチップセット。クアルコムの「Snapdragon 765」の対抗に位置する製品と言え、ファーウェイはこのチップを使い自社の低価格スマートフォンの5Gシフトを一気に進めようとしている。5G NRの対応バンドはn1 / n3 / n41 / n78 / n79。本体背面は光を当てると蝶の羽のように広がりを持つ美しい仕上げだ。

Honor 30S
【価格】2399元(約3万4000円)
【チップセット】Kirin 820
【ディスプレイ】6.5インチ2400x1080ピクセル
【リアカメラ画素数】6400万広角+800万超広角+800万望遠+200万マクロ
【インカメラ画素数】1600万(パンチホール型ノッチ)
【メモリ構成】RAM8GB+ROM128GB
【バッテリー】4000mAh(40W急速充電対応)

クワッドカメラにサムスン製SoC搭載の5Gモデル、Vivo「S6」

 チップセットにサムスン製のExynos 980を採用、前述の「Honor 3S」同様、クアルコム以外のミドルレンジ向け5G SoCを採用する製品が中国では増えている。背面のカメラは円形の台座に3つを縦に並べ、一つを横に置く独特のデザイン。本体カラーはユニークな名前で「ドナウ川」(ブルー)、「白鳥の湖」(ホワイト)、「ジャズブラック」(ブラック)の3色。5G NRの対応バンドはn1 / n3 / n41 / n78 / n79。

S6
【価格128GB:2698元(約4万1000円)。256GB:2998元(約4万6000円)
【チップセットExynos 980
【ディスプレイ6.44インチ2400x1080ピクセル
【リアカメラ画素数4800万広角+800万超広角+200万マクロ+200万深度測定
【インカメラ画素数3200万(水滴型ノッチ)
【メモリ構成RAM8GB+ROM128GB、RAM8GB+ROM256GB
【バッテリー】4500mAh

本革の高級5Gスマートフォン、8848「M6」は11モデルが登場

 北京珠穆朗瑪移動通信が手掛ける超高級スマートフォン「8848」から初の5Gモデル「M6」が正式に登場。チタンメッキボディーに合成ルビーのボタン装飾、背面には時計表示もできるセカンドディスプレイを搭載。そして本革を使った仕上げとなっている。革の種類により11モデルを展開。最低モデルでも約20万円、最上位モデルは約45万円となる。この最上位モデルのストレージは1TBだ。

M6
【価格】8GB+256GB:12999元(約19万8000円)、12GB+1TB:29999元(約45万7000円)
【チップセット】Snapdragon 865
【ディスプレイ】6.01インチ + 背面1.19インチ
【リアカメラ画素数】6400万メイン+サブ2個(画素数不明)
【インカメラ画素数】画素数不明
【メモリ構成】RAM8GB+ROM256GBからRAM12GB+ROM1TBまで複数
【バッテリー】4380mAh

世界初の折りたたみスマホの後継機「FlexPai 2」が発表

 フレキシブルディスプレイを開発するロヨル(Royole)の「FlexPai 2」は第二世代となる折りたたみスマートフォン。同社は2019年にサムスンやファーウェイよりも先に折りたたみスマートフォン「FlexPai」を発表したが、ヒンジ半径が数ミリ弱あり完全に折りたためる形状ではなかった。「FlexPai 2」は第三世代となる「Cicada Wing FFD」フレキシブルディスプレイを採用し、ヒンジ半径を1ミリに抑えほぼ完全に閉じることが可能になった。また5Gに対応している。

FlexPai 2
【価格】未定
【チップセット】Snapdragon 865
【ディスプレイ】7.8インチ1920x1440ピクセル。山折り式フレキシブル
【リアカメラ画素数】2000万+1600万
【インカメラ画素数】無し
【メモリ構成】不明
【バッテリー】不明

シャオミ得意の格安5Gスマホ上位モデル「RedMi K30 Pro」シリーズ発表

 2019年12月に発表されたシャオミの5Gスマートフォン「RedMi K30 5G」は1999元という史上最低価格で登場し大きな話題となった。K30 Proシリーズはその上位モデルとなり、チップセットにSnapdragon 865を採用したハイエンドモデルとなったが、最低価格は日本円で5万円を切る。ディスプレイサイズは同じままだがカメラはポップアップ式となりディスプレイ内のインカメラを廃止。また派生モデルとして望遠カメラを強化し光学3倍レンズを搭載した「K30 Pro Zoom」も登場する。

RedMi K30 Pro
【価格】K30 Pro:2999元(約4万6000円)から。K30 Pro Zoom:3799元(約5万8000円)から
【チップセット】Snapdragon 865
【ディスプレイ】6.67インチ2400x1080ピクセル
【リアカメラ画素数】共通仕様:6400万広角+1300万超広角+200万被写界深度。K30 Pro:5000万望遠・マクロ。K30 Pro Zoom:800万望遠
【インカメラ画素数】2000万(ポップアップ式)
【メモリ構成】RAM8/12GB+ROM128/256/512GB
【バッテリー】4700mAh(33W急速充電対応)

ZTE「AXON 11」発表、AXONシリーズは普及モデルとして再出発

 ソフトバンクから発売された「AXON 10 Pro 5G」や過去にドコモから登場した「AXON M」など、ZTEのAXONシリーズは同社のフラッグシップモデルだった。しかし最新モデル「AXON 11」はミドルハイレンジ向けチップセットを採用し、カメラ機能を強化しつつも価格を大幅に抑えたモデルとして登場。カメラは6400万画素と高画質だ。なおカメラの台座デザインなどはKDDIから発売予定の「ZTE a1」も類似の形状を採用している。

AXON 11
【価格】6GB:2698元(約4万1000円)、8GB:3398元(約5万2000円)
【チップセット】Snapdragon 765G
【ディスプレイ】6.47インチ2340x1080ピクセル
【リアカメラ画素数】6400万+800万広角+200万マクロ+200万深度測定
【インカメラ画素数】2000万(水滴型ノッチ)
【メモリ構成】RAM6GB+ROM128GB、RAM8GB+ROM256GB
【バッテリー】4000mAh

ゲーミングスマートフォンの5GモデルNubia「Red Magic 5G」

 ZTE関連会社でもあるNubiaのゲーミングスマートフォン「Red Magic」シリーズの最新モデル「Red Magic 3」は5Gに対応しクラウドゲームの利用も充分実用的になった。144Hz駆動の高速表示ディスプレイ、側面ソフトゲームボタン、ファンによる強制空冷システムなど長時間ゲームにも配慮した設計。フロントカメラは極限まで小さく上方に追いやることでノッチレスディスプレイを実現している。背面ボディーを透明にし内部が見えるデザインのモデルも投入される。

Red Magic 5G
【価格】8GB+128GB:3799元(約5万8000円)から。透明版12GB+256GB:4599元(約7万円)から
【チップセット】Snapdragon 865
【ディスプレイ】6.65インチ2340x1080ピクセル
【リアカメラ画素数】6400万広角+800万超広角+200万マクロ
【インカメラ画素数】800万(ディスプレイ外)
【メモリ構成】RAM8GB/12GB/16GB、ROM128GB/256GB
【バッテリー】4500mAh(55W急速充電対応)

シャオミ系のゲーミングスマホも5G対応、「Black Shark 3」

 シャオミ関連会社のBlack Sharkからも5G対応ゲーミングスマートフォン「Black Shark 3」が発表になった。「Red Magic 5G」の好敵手でもあり、ディスプレイの外に追い出したフロントカメラ、65Wとさらに高速な充電対応、また上位モデル「Black Shark 3 Pro」は側面に物理的なボタンを配置しディスプレイサイズも7.1インチと大型化している。

Black Shark 3
【価格】8GB+128GB:3499元(約5万3000円)から。Pro版8GB+256GB:4699元(約7万2000円)から
【チップセット】Snapdragon 865
【ディスプレイ】6.67インチ2400x1080ピクセル。Pro:7.12インチ3120x1440ピクセル
【リアカメラ画素数】6400万広角+1300万超広角+500万深度測定
【インカメラ画素数】2000万(ディスプレイ外)
【メモリ構成】RAM8GB/12GB、ROM128GB/256GB/512GB
【バッテリー】4720mAh(65W急速充電対応)。Pro:5000mAh(同)

山根康宏

 香港在住。中国をはじめ世界中のモバイル関連イベントを毎月のように取材し、海外の最新情報を各メディアで発信している。渡航先で買い集めた携帯電話は1000台以上、プリペイドSIMカードは500枚以上というコレクターでもある。