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携帯向け次世代放送の報告書案、大枠固まるも技術方式は先送りに

 20日、総務省で「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」の第13回会合が開催された。前回までに論点が整理されていたが、今回は、報告書案が公開された。会合の結果、報告書案は正式に公開されることになり、パブリックコメントの募集が今週末を目処に開始される見込み。

 報告書の内容は、第1章~第6章で構成されており、携帯向けのマルチメディア放送のあるべき姿や、今後のスケジュールなどについて一定の方針が示されている。


携帯向けの次世代放送

 「携帯端末向けマルチメディア放送」とは、既に実用化されているワンセグのような放送サービスに加えて、いつでも好みの番組をダウンロードしたり、ゲームなどのコンテンツ配信などができるサービス形態を意味する。地上アナログテレビ放送がデジタルテレビ放送に完全移行した後の2011年7月以降に商用化される見込みだ。

 主な対応機器が携帯電話になると見られていることなどから、大手携帯キャリア各社は携帯向けの次世代放送と言える本サービスに向けて、子会社を設立するなど、既に動き出している。

 これまでの会合では、全国あるいは地方ごとに分けるなど放送範囲の決め方や、周波数の割当方針、参入事業者数の数、そして採用すべき技術方式について議論が進められたが、中でも技術方式については、候補となりえる規格が複数あることなどから「1方式にすべき」「企業側に任せて方式数を定めない」といった意見が出ている。


全国向けと地方ブロック向けに

 今回の報告書では、多くの点で一定の方針が定められている。たとえば放送形態については、全国で同じサービス内容となる「全国向けマルチメディア放送」、複数の県を1つのブロックとして全国を分けてサービスする「地方ブロック向けデジタルラジオ放送」、地方ブロック向け放送が整備された後に展開する「デジタル新型コミュニティ放送」の3種類となった。

 ただし、全国向け放送でも特定の地域向け番組を放送することや、複数の地方ブロックが同じ番組を放送することが可能になるよう、制度整備が必要と指摘されている。

 また割当周波数は、携帯電話に内蔵しやすいVHF帯ハイバンド(V-HIGH)を全国向け放送とし、参入事業者の希望を踏まえて地方ブロック向け放送にはVHF帯ローバンド(V-LOW)を割り当てる。コミュニティ放送は地方ブロックの空き周波数を使う。報告書では、免許割当後の世帯カバー率を「5年後に9割」とすることを参入時の条件にすることも考えられるとしており、エリア拡大に対して事業者が努力することを制度的に担保するやり方を提案している。

 全国向け放送は、参入希望者の意見を取り入れた結果、1チャンネル(単一周波数、SFN)での割当で、地方ブロック向け放送は隣接するエリアでの干渉を避ける点などから複数のチャンネルを割り当てることが適当とされた。


放送インフラのハード事業者、番組を作るソフト事業者

 日本では、地上波のテレビ放送は放送設備を所有することに加えて、番組そのものを手掛けている。一方、CS放送やケーブルテレビは、放送設備を提供する事業者と番組を提供する事業者が異なる。免許をハード、番組をソフトとした場合、携帯向けマルチメディア放送では、ハード・ソフトを分離させるかどうかも議論の1つになっていた。

 報告書では、全国と地方ブロックで異なる考え方が採用されている。たとえば全国向け放送では、14.5MHz幅という周波数の使い方を想定した場合、設備投資額や周波数の有効利用、競争促進という観点から、ハード事業者が1つの場合は設備投資が効率的になるため1事業者が適当という考え方と、競争効果などから2事業者が適当という両論が併記された。また、ソフト事業者については複数の参入が望ましいと指摘されている。一方、地方ブロック向け放送でも、各地ごとにハード1事業者、あるいは全国で1事業者という2つの考え方が記されている。

 ハード・ソフトの分離について、報告書では、地方ブロック向け放送ではハード事業者は1、ソフト事業者は地域ごとに異なるというイメージが示されている。また、事業立ち上げに多額の資金が必要と見られることから、一定条件を設けて、ハード事業者がソフトも手掛けられるような措置も考えられるとした。ハード・ソフトの分離制度を取り入れつつも、一部ではハード・ソフト一致も可能とする案と言える。この内容がそのまま将来的に推進されれば、携帯向けの全国放送は、1~2事業者が免許を取得し、そのインフラを通じて複数のチャンネル(番組)が提供されることになる。

 番組内容については、特に制約は設ける必要なしとしながらも、「事業者の比較審査時に新規コンテンツを多く盛り込んだほうを優遇することなども考えられる」とされた。また、普及発展のためには「NHKなどのノウハウの活用も考えられる」とされている。出資規制については、マスメディア集中排除原則が適用されることが示されたほか、通信事業者からの出資については、特に規制しない方針となった。


技術方式の結論は出ず

 これまで構成員が長く議論してきた点の1つが、技術方式統一の是非だ。この点について、報告書では、「1つの端末で全ての放送を受信できるようにする。これにより端末の低廉化、普及などでユーザー利益の確保に役立つ」「複数の国内規格を決定して、事業者が最適と考えるものを選べるようにする。これは競争確保に繋がる」という内容が記述されたほか、「情報通信審議会に検討を委ねることが適当」とされ、本会合で最終的な結論は出されていない。

 国内規格はこれから検討されることになるが、必要条件として「マルチメディア放送が実現できること」「国際標準であること」「周波数利用効率がよく、高品質放送が可能など優れていること」「ネットワーク費用やロイヤリティなどが低廉であること」「その他、ユーザーの利益に役立つこと」という点が挙げられた。


今後の展開

 報告書案がパブリックコメントや今後の会合を経て、正式なものとなれば、その後は制度面の条件を詰めて、省令などの整備に着手する。サービス実現に向けて制度面の整備が進められる一方、技術については公募することになるという。公募によって集まった技術の技術的検討が行なわれた後、電波監理審議会で省令化する。

 これらの動きは2008年後半~2009年一杯まで行なわれ、2010年を目処に告示法令が定められ、2010年半ばにも参入事業者を決定する。つまり2年後に、携帯向けマルチメディア放送の免許割当が行なわれる。そこから1年間かけて放送局などインフラの整備が行なわれ、2011年後半に本格的サービスが開始されると想定されている。

 報告書案に対しては、出席した構成員が軒並み「これまでの議論ではどうまとまるか不明だったが、きちんと形になった」「柔軟で弾力的」と高く評価した。ただし、座長の根岸 哲氏(甲南大学法科大学院教授)は「確かに柔軟だが、技術方式統一の是非など、いつか決めなければいけない一部の課題を先送りにしたところもある。未来を議論するのだから、やむを得ないが、今後と言ってもさほど時間はない」と述べていた。

 次回の会合は、パブリックコメントの集約が終わった後、7月20日に行なわれる予定となっている。



URL
  携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile_media/

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(関口 聖)
2008/05/20 20:19


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