26日、総務省で「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」の第5回会合が開催された。
国内の電波の使い道は、2011年に地上アナログテレビ放送が終了し、デジタルテレビ放送へ移行することにあわせて、携帯電話への再割当や新たな使い方などが検討されている。今回の懇談会は、地上アナログテレビ放送が使っていた帯域の用途の1つとして、携帯機器向けのマルチメディア放送がどうあるべきか、その制度・環境の整備に向けて今年8月から開催されている。
今回の会合では、自動車メーカーやラジオ局、などが参画するマルチメディア放送フォーラム、横須賀リサーチパークに拠点を置く企業などから構成されたYRP研究開発推進協会などからプレゼンテーションが行なわれた。
■ 3セグメント放送を主張するマルチメディア放送フォーラム
まず、マルチメディア放送フォーラムでは、これまで手掛けてきた実験などから、「デジタルラジオ放送で用いられているISDB-Tsb方式を用いて、3セグメント分の帯域を1事業者に割り当てる」「データ放送は県域単位で提供しつつ、サービスそのものは全国で提供する」「新規事業者の参入を促し、適正な競争で活力ある発展を目指す」と3点を提言した。
具体的な内容として、放送を視聴しながら楽曲などのコンテンツをあわせてダウンロードし、いつでも購入できるようにするサービス、災害発生時にデータ放送で支援情報などをエリアごとに配信する番組が紹介された。コスト回収の手段としては、民放と同じ広告モデルや、端末出荷時に課金するタイプ、CS放送のような有料放送が紹介された。
質疑応答の際、同フォーラムに参加する自動車メーカー出身のスタッフは「3セグメント放送では渋滞・観光・防災の一斉同報配信が魅力。カーナビでは通信経由で同等の機能は実現しているが、料金がネックになって利用頻度には限界がある。たとえば観光情報は現地に行けば多くの情報を得られるが、写真などのリッチコンテンツはダウンロードしにくい。情報配信に通信料がかからない放送であれば、たまたま通りがかった人にもアピールでき、潜在ニーズを刺激できるのではないか」などと説明していた。
■ YRP、エリア限定のワンセグ放送
YRP研究開発推進協会からは、既に実用化されているワンセグ放送をベースにしたビジョンが示された。
同協会では、9月に開催された富士スピードウェイのF1レースや、広島で5月に開催されたフラワーフェスティバルなど、狭い場所に多くの人が訪れるイベントにおいて、その場限りのワンセグ放送実験を行なった。こういった放送であれば、地元企業や店舗の広告によってビジネスが成り立つと見られており、地域限定のコミュニティ放送もイメージされている。普段は、店舗のクーポン情報などが提供され、災害発生時には地下街の避難ルートを示すなど、かなり限定された放送エリアでのサービス提供が想定されている。
ワンセグ高度化版では、フレームレートが30fpsとワンセグの倍となるなどの差違はあるが、技術的な課題はほとんどないとのこと。その一方で、都市部以外の地方、郊外でのサービス提供については、現在地域ごとのソリューション提供が今後の課題とされた。また、サービスエリアが小型化することによって干渉の問題が発生しやすくなることについては、将来的なガイドライン策定の必要性に言及する程度に留まった。
このほか懇談会後半には、消費者団体を代表し、主婦連合会と東京都地域婦人団体連盟が「放送である以上、中立性や青少年への影響など一定のルールが必要」「通販番組、CMは自粛して欲しい」などの意見が述べられた。
■ URL
携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会 開催概要
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile_media/
(関口 聖)
2007/11/26 17:40
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