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第4回 MVNOフォーラム開催、今後のMVNOの課題を議論

 テレコムサービス協会とMVNO協議会は21日、都内で「第4回 MVNOフォーラム」を開催した。MVNOに関連した情報交換や議論を行なうもので、現状の課題や今後への期待などが、出席した各社から語られた。

 MVNOとは仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator)のことで、通信インフラを持たず、既存通信事業者からインフラなどの提供を受けて独自のサービス提供を行なう通信事業者を指す。現在の日本では、データ通信サービス「bモバイル」を提供する日本通信や、主に企業向けデータ通信サービスを提供している京セラコミュニケーションシステムなどがMVNOに該当する。両社ともウィルコムからPHSネットワークを借りてサービスを提供している。

 MVNOに対し、実際にインフラを持つ移動体通信事業者をMNO(Mobile Network Operator)と呼ぶ。これにはNTTドコモ、KDDI、ボーダフォンなどが該当する。また、MNOとMVNOの間に位置し、MNOとの交渉や実証実験などMVNO事業の各種支援を行なうMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)という事業形態も登場している。

 現在、日本でMVNOで事業を行なっている企業は数社で、法的な枠組みも現在総務省を中心に議論が行なわれている段階。また、海外のMVNOは音声通話が主体であるのに対し、日本のMVNOはデータ通信を中心に展開されているのが特徴となっている。

 携帯電話事業への新規参入が認められたことで、新規参入各社は自社インフラをMVNOで提供することに言及しており、それを利用する形でISPなどがMVNOによるサービス提供を表明している。MNP(番号ポータビリティ制度)、FMC(固定電話と携帯電話の融合)などと並んで、MVNOは今後の通信事業の重要な要素の1つと言えるだろう。


総務省の大橋 秀行氏。「行政の干渉が必要かどうかも含めて問いかけを行なっていきたい」とした
 今回行なわれた第4回目のフォーラムでは、第3回までの議論を踏まえ、MVNO協議会の1回目の活動を締めくくる内容としてパネルディスカッションが開催された。モデレータは甲南大学経済学部教授の佐藤 治正氏で、パネリストにはアイピーモバイル 取締役の竹内 一斉氏、イー・モバイル 執行役員事業開発担当の諸橋 和雄氏、インデックス 執行役員経営戦略局長の寺田 眞治氏、インフォシティ 代表取締役の岩浪 鋼太氏、日本通信 取締役CFOの福田 尚久氏、ボーダフォン 法務渉外統括部 渉外部 課長の西野 茂生氏、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF) 参与の木村 潤氏、総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課長の大橋 秀行氏が招かれた。

 冒頭には、総務省の大橋氏からこれまでのフォーラムをまとめた内容が説明された。同氏はMVNOへの評価は高くもあり、未知数な部分もあるとし、さらに明確な定義が必要である旨を述べたほか、20日より意見募集を行なっていることを紹介し、「何度かに分けて意見公募を行ないたい。関心がある方はご覧になって、意見を下されば」と述べて意見募集を呼びかけた。

 フォーラムでは「MVNOは、誰にとってビジネスチャンスなのか」「MVNO/MNO互いに両者に望むこと」の大きく2つのテーマが用意され、各テーマにつき短いプレゼンテーションが行なわれた後に議論に移る、という流れで進められた。


MVNOは誰にとってビジネスチャンスなのか

 1つ目のテーマである「MVNOは、誰にとってビジネスチャンスなのか」では、ボーダフォン、インフォシティ、MCFからまずプレゼンテーションが行なわれた。ボーダフォンの西野氏は、同社が考える両者の役割分担などを説明し、「MVNO側には、コスト、時間を抑えて参入できるメリットがあり、他の事業との相乗効果なども見込める。MNO側は、MVNOとの共同開発による新サービスの提供や、未開拓なマーケットの開拓が可能になる。MVNO、MNO双方にチャンスがあるのが重要で、エンドユーザーにとっても大きな利益があることが重要」と述べた。

 インフォシティの岩浪氏は、「どのプレイヤーにもチャンスはある」とした上で、モバイルインターネットや固定のインターネット環境が、定額制やブロードバンドに移行したことで「ユーザーはインターネットを使い倒すようになった。使い方が全く変わった」と指摘。MVNOにおいても「これらのリテラシーの高いユーザーが待機している状態」と述べて、さまざまなサービスが受け入れられる下地がすでにできつつあるとの見方を示した。

 MCFの木村氏は、モバイルコンテンツ市場が2004年も拡大したデータを示し、「現状のビジネスモデルの成果」と評価した。しかし同氏は、コンテンツプロバイダー(CP)の立場からの懸念点として、キャリアがすべてを提供する垂直統合型のビジネスモデルに対して問題提起を行なった。同氏は「現在のモデルでは、個別セグメントのユーザー向けブランドやサービスを提供することが困難」とし、多数のブランドが競争を行なう市場が重要とした。また「ヘビーユーザーを対象としたサービスになりがち」としたほか、「よりいっそうの販路の拡大が必要だが、現状ではリッチコンテンツなどにより利益率も悪化している。MVNOなら商品の内容、価格などで高い自由度が見込め、これまで参入できていないCPにも参入チャンスが拡大する可能性がある」などと述べて、MVNOがCPにとっても新たなビジネスチャンスになるとした。


ボーダフォンの示した役割分担例 ボーダフォンとしてもチャンスがあるとした

インフォシティの岩浪氏は、「量販店の店頭で“インターネットを買う”という未来もあり得る」とサービス例を紹介 MCFは既存キャリアのビジネスモデルに限界があると指摘

 プレゼンテーションの後には、MCFの木村氏からブランド競争の具体例が示された。同氏はオンラインゲームを例に挙げ、「数十万、100万人といった会員を抱えるオンラインゲーム事業者がMVNOを始めれば、ユーザーの何割かが端末などを購入するだろう。コアユーザーだけでMVNOを始めることになり、漫画、アニメといった関連サービスのマーケティングも容易になる」と述べ、課金や端末開発でMNOなどに協力してもらえれば、という課題はあるものの、付加価値の高いMVNOのサービス例に触れた。

 すでにサービス提供を行なっている既存CPの問題点として、木村氏は「マーケットが伸び悩んでいる。いつまでもWin-Winの関係はなく、富は偏ってきている」との見方を明らかにし、「キャリアのレギュレーションによって、クリエイティブなコンテンツの自由度が高くない。それにより参入できないままのCPもある」などとして、既存キャリアへ注文を付けるとともに、現在のキャリアによるビジネスモデルの限界を示唆した。

 ボーダフォンの西野氏は、MVNOをどう捉えているかとの問いに対し、「新たなビジネスチャンスとして捉えている。ユーザーのニーズが多様化しキャリアだけでは限界がある。他のパートナーと組むことが重要になるだろう」との見方を示した。

 日本通信の福田氏は、CPのMVNO参入以外にも2つのポイントがあるとし、「法人は自社にデータベースなどのコンテンツを抱えており、ここにもビジネスチャンスはある。ネット家電など、ネットワークを必要としている機器がユーザーの周りに多く、ここでも無線は重要になるだろう」と述べて、法人向けや業務用、家電用などでもMVNOによるサービス提供の機会があるとした。


MVNO/MNO互いに両者に望むこと

MVNOである日本通信からは、接続するレイヤー層など具体的な要望も聞かれた
 2つ目のテーマである「MVNO/MNO互いに両者に望むこと」では、日本通信、イー・モバイル、アイピーモバイル、インデックスからプレゼンテーションが行なわれた。日本通信の福田氏は、「誰がサービスを創るのか、共通の理解がないと話し合いをすることもできない」とし、回線の再販(リセラー)とMVNOの違いを定義。独自にサービスを発案、提供する点をMVNOの特徴とした上で、MNOとのMVNOとの接続形態によりサービス提供の可否が事実上決まるとし、「MNOには“サービスが創れる環境”を提供して欲しい」との意見を述べた。また、「MNOと同じサービスを提供すれば、MNOとMVNOが顧客を奪い合うカニバリゼーション(共食い)が起こるが、新たなサービスを提供できればWin-Winの関係になれる」とした。

 携帯電話の新規参入事業者となるイー・モバイルから出席した諸橋氏は、「イー・モバイルの設立当初からMVNOを検討してきた」と述べ、「コンテンツアプリケーションは必ずしも当社が提供しなくても良いと考えている。垂直統合型ではマスに集中しがちで、多様化するニーズに対応できない」として、従来の垂直統合型モデルとは違う「水平分離型モデル」を提案した。エンドユーザーへの展開をどこまで行なうのかをCPや端末メーカーなどのMVNO側が柔軟に組み合わせられるというもので、「ビジネススキームはまだ確立していないが、一緒に考え、MVNOが競争できるような土壌を一緒に作っていく姿勢がMNOにも必要だろう」と述べて、多様なサービスを生み出せるMVNOと連携していく姿勢を明らかにした。

 アイピーモバイルの竹内氏は、同社が予定するサービスや端末を「ソリューションとして、通信環境を整えるところまでをやる」と紹介。MVNOには多様なサービスの提供を期待するとともに、マーケティングなどの面で連携していく姿勢を明らかにした。

 インデックスの寺田氏は、同社が活発に行なっている業務提携などを挙げ、「コンテンツの出口をそろえてきたが、気付いたらMVNEに必要なものがそろっており、MVNEを志向し始めた」などとし、MVNOを支援するという形態での事業展開を検討しているとした。同氏はMVNOがニッチマーケット向けかエンタープライズ向けかなどによっても必要な環境が異なるとし、「MVNOを販促、誘引のために使いたいという声もある。責任や、参入・撤退の基準を明確にしないと、MVNOが市場を破壊することもあり得る」と述べて、MVNOを進める上での環境の整備も重要であるとした。


イー・モバイルが示した「水平分離型」のビジネスモデル MVNOと一緒に柔軟なサービスを考えていきたいとした

アイピーモバイルの提案する「パーソナル・メディア・ゲートウェイ」 インデックスはMVNEとしての事業展開を示唆した

 プレゼンテーション後のディスカッションでは、今後の課題やキーポイントなどについて議論が行なわれた。イー・モバイルの諸橋氏は「端末が最大の課題」とし、「MVNOでは、端末を真の意味で開放しなければいけない。我々はW-SIMのような通信部分のみをモジュール化した端末も検討しているが、これがひとつの解決方法になるだろう。キャリアの視点ではどうしても機能がマス寄りになり、十分ニーズに応えることはできなくなる。モジュール化すれば機能別、目的別の端末も可能で、MVNOにはこの点でも期待したい」と述べて、端末提供においてもMVNOの特徴が活かせるとした。

 一方、インデックスの寺田氏は「W-SIMの端末でも開発には18カ月はかかるだろう」と述べて、「サービスによっては、汎用の端末向けに素早く提供するものもあるだろう」とした。

 「MNOに何を望むか?」との問いに対しては、MCFの木村氏は「なるべく早期にMVNO参入の条件を出して欲しい。“個別に相談”では話し合いすらさせてもらえない場合もある。パッケージなど、いくつかのパターンを明示して欲しい」と述べたほか、MVNOへの公平な扱いを期待したいなどとした。

 「MVNOに何を望むか?」との問いには、アイピーモバイルの竹内氏が「コンテンツ、サービスをどう提供するのか、白紙から考えて欲しい。既成概念にとらわれないサービスに期待したい」と述べたほか、ボーダフォンの西野氏は「事業法の精神を大切にしてほしい。通信事業者として安定・継続を忘れずに、お互いに心掛けるのが重要」と語り、既存キャリアとして通信事業の安定・継続性の大切さを訴えた。



URL
  テレコムサービス協会
  http://www.telesa.or.jp/
  総務省 MVNOに関する意見募集
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/051220_7.html

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(太田 亮三)
2005/12/21 21:14

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