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電子コンパスを内蔵したGPSケータイ「C3003P」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。(impress TV)も配信中。


発売が待たれていたGPSケータイの本命

 昨年末から「次世代サービス」を開始したau。なかでもGPSケータイは非常に注目度が高く、読者の関心も高いようだ。そんなGPSケータイの本命とも言える松下通信工業製「C3003P」がついに発売された。筆者も機種変更で端末を購入できたので、早速レポートをお送りしよう。


電子コンパスで『人間ナビ』を実現

C3003P

 au/松下通信工業『C3003P』。サイズ:47×95×25(幅×高×厚)mm(折りたたみ時)、102g。オレンジ(写真)、シルバー、ホワイトをラインアップ。
 携帯電話の多機能化はとどまるところを知らないが、これからの携帯電話で最も注目されている分野のひとつとして、「位置情報の活用」が挙げられる。すでに、J-フォンの「ステーション」、NTTドコモの「iエリア」、DDIポケットの「位置情報コンテンツ」などが提供されているが、auは次世代サービスとして「eznavigation」の提供を昨年末から開始している。

 位置情報を利用したコンテンツとしてはいろいろなものが考えられるが、すでに現在地や登録地に合わせたグルメやショッピング、天気予報、交通情報などのエリア情報が各社のサービスで提供されている。しかし、これらのコンテンツの多くは特定のエリアのみに配信される情報という意味合いが強く、いわば「新聞のチラシ」的な存在のものだ。

 これに対し、リアルに現在の位置情報を活かしていたのが、DDIポケットがH"LINKで比較的早い時期から提供している乗り換え案内「駅すぱあと」だろう。このサービスが提供され始めた当時、パソコンでも同様のコンテンツやアプリケーションソフトは存在したが、DDIポケットの「駅すぱあと」では現在位置から最も近い駅を割り出し、ひとつしかないときはその駅を出発点として自動的に割り当ててくれるというものだ。つまり、この「駅すぱあと」は位置情報を案内のための情報として、活用したコンテンツというわけだ。実は、次世代携帯電話で利用したいサービスとして最も期待されているのがこの「案内」、つまり「ナビゲーション」なのだ。

 今回、auが発売した松下通信工業製「C3003P」は、この「ナビゲーション」の可能性を大きく拡げられる端末として期待されている。その仕掛けは端末に搭載された「電子コンパス」にある。GPSによって位置を測定するだけでなく、端末にコンパスを搭載することにより、端末上での道案内ができるカーナビならぬ『人間ナビ』を実現している。C3003Pは当初、もう少し早いタイミングで発売される予定だったが、発売が若干遅れてしまい、3月末から出荷が開始されている。製品の発表以降、C3003Pに対する期待の声は大きく、筆者の周りでも「cdmaOneはC3003P待ち」というコメントがいくつか聞かれた。

 また、C3003Pは技術的に見ても興味深い点がある。それは「BREW」の搭載だ。BREWはcdmaOneのチップを開発する米Qualcommが提供するアプリケーションプラットホームで、パソコンで言うところの「OS(Operating System)」のようなものだ。BREWはJavaに比べ、機能の制限が少なく、高速な処理が可能とされており、今後のcdmaOne端末の標準のひとつになることが期待されている。残念ながらダウンロード機能の搭載は見送られたが、C3003Pでは一部のアプリケーションがBREWで記述されており、その実力を垣間見ることができる。


2インチTFTカラー液晶を搭載

背面

 背面にはサブディスプレイを装備。デザイン的にはオレンジがインパクトがあり、オススメ。
 製品の細かい仕様などについては、auや松下通信工業の製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただきたい。ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心にお伝えしよう。

 ボディは折りたたみデザインを採用しているが、液晶ディスプレイ背面側にサブディスプレイやメモボタンなどを装備しながら、全体的にスッキリとしたデザインにまとめられている。しかし、ボディカラーによってもかなり印象が異なり、なかでもオレンジがインパクトがあり、個人的にも気に入っている。ちなみに、ストラップ用の穴は蝶つがい側の背面中央に用意されている。

 液晶ディスプレイは6万5536色表示が可能な2インチTFTカラー液晶を採用しており、バックライトは3段階で設定することが可能だ。ここ半年ほどの端末で見ると、標準レベルの液晶パネルだが、解像度が132×176ドットと高く、画像などを表示しても非常に精細だ。表示フォントは標準サイズで12ドットフォントが採用されているが、かんたんモードに設定すれば、20ドットフォントで大きく見やすい環境も提供している。これくらいの視認性を確保してあれば、年齢がやや高めのユーザー層にも受け入れられるだろう。また、エイチアイが開発した3Dポリゴンエンジンを搭載しており、メニュー画面(ランチャー)のアイコンが3D表示になっているのも目を引く。ちなみに、メニュー画面のアイコンはメーカーサイト「Pの缶詰」からダウンロードして、追加することも可能だ。

 ボタンは中央に丸いナビゲーションキーを配し、周囲にメールキーやEZキー、ソフトキーなどを配した標準的なレイアウトだ。最近の端末では直前のメニューに戻る操作をクリアキーに割り当てていることが多く、中央の方向キーの真下にクリアキーがレイアウトされていることが一般的だが、C3003Pではメールキーとの兼用になっている。また、戻る操作もソフトキーに割り当てられていることが多い。このあたりは慣れてしまえば気にならないが、最初は戸惑う点かもしれない。

 テンキー部の右下には、C3003P最大の特徴とも言える電子コンパス機能を使うためのコンパスキーがある。このキーを押すことで、コンパスメニューを呼び出すことができ、電子コンパスによる計測やアプリケーションを呼び出すことができる。ちなみに、電子コンパスモジュールそのものは終了キーのすぐ近くに配置されているそうだ。


ディスプレイ ボタン
 液晶ディスプレイは132×176ドット表示が可能な高精細なものを採用。  ボタン類はテンキー以外があまり多くない。右下にあるのがコンパスキー。

ヘディングアップでナビゲーション

メニュー

 メニューは3Dアイコンを採用。Pシリーズではおなじみのレイアウト。
 機能面について見てみよう。C3003Pは次世代サービスの「eznavigation」に対応したcdmaOne端末だが、auが今年4月1日から開始した次世代携帯電話「CDMA2000 1x」には対応していない。しかし、cdmaOneとCDMA2000 1xで大きく異なるのはデータ通信速度が最大64kbpsか、最大144kbpsかなどであり、利用できるサービスそのものにはあまり大きな違いがない。

 まず、メールについては日本語入力に「モバイルWnn(うんぬ)V2」を採用する。モバイルWnn V2は一度、入力した単語を学習し、2回目からは一文字目を入力して、候補キー(左上ソフトキー)を押すだけで、候補を表示できるようにしている。文字サイズも10/12/20ドットフォントが用意されており、ひと通りの機能は揃っているのだが、フォルダ管理や振り分け機能がないため、その点だけは他機種に見劣りがする。

 各機能は前述の3Dアイコンによるメニューから操作できるようになっているが、注目できるのは「かんたんモード」だろう。かんたんモードは文字フォントを20ドットにするだけでなく、メニューから操作できる機能を通話関係のみに限定しており、通話機能を重視するアクティブシニア層のニーズにも応えようとしている。ただ、欲を言えば、通話機能だけでなく、シンプルなメール機能もかんたんモードに盛り込んで欲しかったところだ。アクティブシニアとは言え、メールに対する関心は高いはずで、そこまで隠してしまうのはちょっとやりすぎの感も残る。

 さて、注目の電子コンパスだが、電子コンパスについて少し補足しておこう。小学校の頃、おそらく誰もが磁石を使い、方位の測定を体験したことがあるはずだ。電子コンパスコイルやコア材、センサーを組み合わせることにより、同様の機能を実現している。小学校の磁石は針でしか方位を知ることができないが、電子コンパスではデータとして方向が割り出されるため、画面上に方位が表示されるわけだ。

 ちなみに、電子コンパスの応用範囲は非常に広く、変わったところでは双眼鏡などにも搭載されている例がある。以前、このコラムで紹介したハンディGPSにも電子コンパスを搭載したモデルがラインアップされている。

 では、携帯電話に電子コンパスがどんなメリットがあるのだろうか。auのeznavigationではGPSで現在地を測定し、地図上のどこに居るのかを表示できる。しかし、画面の地図上に現在地が表示されても自分がどの方向に向いているのかがわからないこともある。そこで、電子コンパスで方位を測定し、地図の上側が常に進行方向になるように表示するわけだ。この表示方法は「ヘディングアップ」と呼ばれ、カーナビなどでは標準的な機能になっている。


 C3003Pではヘディングアップを実現することにより、「地図の表示」~「GPSによる位置の測定」~「方位による地図表示の修正」ができるようになり、まさに『人間ナビ』的な使い方を可能にしている。たとえば、地下鉄の駅などから地上に出たとき、どっちの方向に進めばいいのかがわからなくなることは誰にでも経験があるだろうが、C3003Pを利用すれば、地図がヘディングアップで表示されるため、どちらに進めばいいのかがわかるというわけだ。

 C3003Pで電子コンパスを利用する場合、まず最初に調整を行なう。手のひらにC3003Pを開いた状態で置き、画面に指示が出た段階で、本体を時計回りに2回転させると、調整が完了する。これは電子コンパスが組み込まれたC3003Pをユーザーが手にするまでの間に、電子コンパスの方位にバラツキが出る可能性があり、それを修正するために行なう作業だ。測定精度を維持するために、ある程度、定期的に調整した方がいいようだ。ちなみに、マニュアルでは方位修正を行なうとき、手のひらに端末を載せて、端末を回すとされているが、この方法ではスムーズに回すことができない。このようなときは端末を持って立ち、自分自身が回る(オフィスならイスに座って)ことでも修正ができる。


電子コンパス 電子コンパス
 電子コンパスは最初に調整が必要。  木の机の上で回す方法が簡単。

 C3003Pでは電子コンパスを活用することにより、eznavigationを使いやすくするだけでなく、位置や方位情報を活かしたアプリケーションも搭載している。たとえば、「ペアモニター」では彼氏や彼女との距離や位置関係を知らせてくれる。メーカーサイト「Pの缶詰」でも「どこでもフィッシング」や「ハッピー風水」も提供されているので、購入したユーザーはダウンロードしてみるといいだろう。

 ところで、eznavigationをはじめ、端末上に地図を表示したことがある人なら、「方位が測れるのはいいけど、地図はスムーズに回るの?」という心配をするはずだ。C3003Pではナビタイムジャパンが提供するEZwebコンテンツ「NAVITIME」に対応しており、一部のサービスを無料で利用できるようにしている。NAVITIMEは地図データを「ベクトル地図」という形式で配信する方式を採用している。ベクトル地図は従来のラスター地図に比べ、サイズが小さく、デジタルデータとして扱いやすいという特長を持っている。

 ラスター地図は紙の地図をまるごとスキャンした画像データのようなものであるのに対し、ベクトル地図は道路や建物などをすべてデジタルデータとして記録している。たとえば、ラスター地図では建物に「インプレスビル」などと情報を書いておくと、地図の回転に合わせ、文字も回転してしまい、読みにくくなってしまう。これに対し、ベクトル地図は「インプレスビル」という建物の情報をデータとして保存しているため、地図が回転しても正しい向きに文字を表示させることができる。

 こうした特長を持つNAVITIMEの地図が利用できるため、実際にC3003Pでナビゲーションしてみると、進行方向に合わせ、面白いように地図がグリグリ回ってくれる。カーナビのように、ジャイロを搭載しているわけではないので、若干の調整は必要になるが、十分に人間ナビ的な活用ができる。auと松下通信工業には、ぜひこの機能を実体験できる環境やイベントを企画していただきたい。


道に迷ったら「買い」!?

 最後に、いつものように、C3003Pの「買い」を診断してみよう。C3003Pは携帯電話としてはじめて電子コンパスを搭載し、位置情報に方位情報を加えることで、人間ナビ的な活用を可能にした端末だ。技術的にもBREWをはじめて採用するなど、auの次世代サービス対応端末の中でも非常に際立つ存在だと言える。しかし、その一方で今や標準的とも言えるメールのフォルダ管理ができないなど、もうひとつ詰めの甘いところを残している。

 まず、C3003Pをおすすめしたいのは、人間ナビを体験してみたいという自称方向オンチの人だろう(笑)。カーナビのレベルにはまだ到達していないが、携帯電話で利用するレベルでは十分、実用になるレベルであり、他のeznavigation対応端末よりも確実に利用価値がある。特に、電車や徒歩での外出が多い人なら、楽しむシーンも増えるはずだ。

 一方、BREWに注目していたユーザーは判断が難しい。確かに、随所にBREWを活かしたアプリケーションが用意されており、快適に使うことができるのだが、C3003Pに搭載されたBREWはオンラインでのバージョンアップなどの機能が搭載されておらず、まだBREWの可能性をフルに活用できていない。筆者の個人的な予測だが、おそらく1年以内にはさらにBREWの環境を駆使した本格派端末が登場する可能性が高い。C3003Pではその端末が登場するまで、いち早くBREWを体験できるというのがメリットだ。これをどう見るかで判断するしかないだろう。

 細かい部分に不満は残るが、全体的に見て、eznavigationを本格的に楽しめるようになっており、かなり「買い」の指数は高い。CDMA2000 1xとの兼ね合いもあるが、現時点で販売されているC3000シリーズでは最も面白い端末であることは間違いない。この楽しさを活かすためのコンテンツやイベントなど、新しい企画にも期待したい。


・ ニュースリリース(KDDI/au)
  http://www.kddi.com/release/2002/0225-1/index.html
・ 製品情報(KDDI/au)
  http://www.au.kddi.com/phone/cdmaone/c3003/c3003.html
・ 製品情報(松下通信工業)
  http://www.mci.panasonic.co.jp/pcd/c3003p/
・ ナビタイムジャパン
  http://www.navitime.co.jp/

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(法林岳之)
2002/04/10 17:11

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