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iモード初のPDCデュアルバンド対応端末「F211i」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


211iシリーズ第1弾の登場

 11月にNTTドコモから販売が開始された211iシリーズ。高機能モデルの50xシリーズに対し、普及モデルと位置付けられてきた2xxシリーズだが、今回のモデルはハードウェア的にも大きな変更が加えられている。211iシリーズの先陣を切る形で登場した「F211i」を試用することができたので、早速、レポートをお送りしよう。


800MHz/1.5GHzで利用できるデュアルバンド対応iモード端末

F211i

 NTTドコモ/富士通『ムーバF211i』。サイズ:45(W)×128(H)×15(D)mm、73g。メタルブラック(写真)、フレグラントパープル、アイスシルバーをラインアップ。
 国内の携帯電話市場において、60%に迫るシェアを獲得しているNTTドコモ。iモードをはじめとするサービスは常に高い人気を得ているが、その一方で迷惑メールや次世代携帯電話サービス「FOMA」で思わぬつまずきなども見せている。しかし、こうしたつまずき以上に深刻なのは、数年前から指摘されている通話品質の低下だろう。ハイパートークなどの新しい技術の導入より、若干の改善が見られるケースもあるが、根本的な部分は改善されておらず、特に人が密集する地域や時間帯では他事業者の携帯電話に比べ、著しく通話品質が低下する。

 今回発売された211iシリーズの第1弾となる富士通製端末「F211i」は、この通話品質の問題を大きく改善することが期待されている。NTTドコモからは積極的にアナウンスされていないが、211iシリーズは800MHz帯と1.5GHz帯の両方で利用できるデュアルバンド対応のiモード端末として設計されている。詳しくは後述するが、1.5GHz帯を利用したサービスが提供されている関東、東海、関西地区では、従来の端末よりも良好な通話品質が確保できる可能性があるのだ。

 また、今年は昨年以上に折りたたみデザインの端末が増えたが、FシリーズはF503iやF210iに続き、ストレートデザインを採用している。折りたたみデザインに人気があるのはもちろんだが、ストレートデザインを欲しているユーザーがいることは確かであり、今となっては貴重とも言えるストレートデザインのiモード端末となっている。

 209iシリーズから210iシリーズへ移行したときと違い、随所に新しい取り組みが見られる211iシリーズ。そのトップバッターであるF211iの実力を見てみよう。


ストレートタイプでは最大級の大画面

スライドロック

 本体側面に備えられたスライドロック機構。誤動作を防止できるほか、作業を一時的に中断して、同じ画面から再開させることもできる。
 製品の細かいスペックなどについては、NTTドコモや富士通の製品情報ページを参考にしていただきたい。ここでは筆者が実機を触って得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディはF210iなどと同じストレートデザインを採用している。液晶ディスプレイが大画面化したことで、全体的に大きく見えるが、手に取ってみると、非常にスマートで持ちやすい。胸ポケットなどに入れておいても違和感のないサイズだ。ボディ右側面にはF211iの特長のひとつでもあるスライドロック機構が備えられている。ストレートデザインの端末は折りたたみデザインのものと違い、カバンやポケットに入れておくと、勝手にボタンを押して発信してしまうことがある。そこで、多くの端末では[F]キーの長押しなどで、簡易ロックを掛けるようにしている。しかし、それでは手間が掛かるため、F211iではスライドロック機構が取り入れられたわけだ。スライドロック機構は単純にボタン操作をできなくするだけでなく、メール作成中やコンテンツ閲覧中にロックしてもそのままの状態を保持しておき、ロックを解除することで作業を継続できるようにしている。同様のロック機構をauのC413Sが採用しているが、あちらはロックを掛けると、待受状態に戻ってしまう仕様になっている。


TFTカラー液晶

 ストレートタイプのiモード端末としては初のTFTカラー液晶を搭載。視認性は屋内外ともに良好。
 液晶ディスプレイは、最大4096色表示が可能な1.8インチTFTカラー液晶を採用している。1.8インチというサイズはストレートデザインの端末としてトップクラスのサイズだ。折りたたみデザインを採用した端末の標準的な液晶ディスプレイのサイズが2インチクラスであることからもF211iが大画面であることがわかるだろう。発色はややギラついた印象も残るが、表示は非常にハッキリしており、室内外のどちらでも良好な視認性を確保している。画面に表示される文字のサイズも2段階に変更できるようになっており、シニア層にも受け入れやすくしている。

 ボタンは中央に従来モデルから継承したマルチカーソルキーを備え、左右に[メニュー]ボタンや[電話帳]ボタンを配している。ちなみに、マルチカーソルキーの中央は[メール]ボタンに割り当てられており、音声着信やメール着信などに合わせ、7色に光らせることができる。マルチカーソルキーはややコンパクトだが、クリック感がそれなりあるため、なかなか使いやすい。ただ、筆者のような大きな手にはギリギリのサイズという印象も残る。ちなみに、本体上部の着信LEDには光センサーが内蔵されており、周囲の明るさによって、キーの照明がON/OFFになるなどの工夫も施されている。ボディカラーごとにボタンデザインやボタントップの表示が異なる点は、従来モデルから継承されている。


ボタン マルチカーソルキー
 ボタンはいずれもやや小さめ。従来機種から受け継いだマルチカーソルキーは上方向がやや押しにくい。  マルチカーソルキー中央の[メール]ボタンは、7色に光らせることができる。

デュアルバンド対応の効力や如何に?

メールセキュリティ

 メールセキュリティを設定すると、メールボックスを開くときに暗証番号の入力を求められる。
 一方、機能面もさまざまな改善が施されている。まず、メールやBookmarkについては、フォルダ単位での管理を可能にしている。メールフォルダは30個、Bookmarkフォルダも5個まで設定ができる。ちなみに、メールフォルダは既読メールを一定条件(発信元と題名)によって、一括してフォルダに振り分けることも可能だ。メール機能の中では、メールを他人に見られないようにするためのセキュリティ機能が注目だろう。暗証番号を設定することによって、メール機能そのものを利用できなくしたり、特定のフォルダを他人に見られないようにすることが可能だ。

 各機能を呼び出すためのメニューは、F503iSなどで採用されていたラウンドメニューと異なる構成になっている。[メニュー]ボタンを押して表示されるメニューには、4方向と中央ボタンに機能が割り当てられている。左方向のセレクトメニューは日頃、よく使う機能を登録しておくことが可能だ。


メニュー

 [メニュー]ボタンを押したときに表示されるメニュー画面。セレクトメニューにはよく使う機能を登録しておくことができる。
 着信メロディは従来同様、FM16和音対応で、いわゆる「着声」も設定することが可能だ。Fシリーズに収録される着信メロディと言えば、刑事ドラマ系がおなじみだが、今回は時代をさかのぼり、「必殺仕事人」のテーマソングが収録されている。聞くところによれば、この必殺仕事人のテーマソングはファーストシーズンのもの(はじめてテレビ放映されたときのもの)が再現されているそうで、毎度のことながら、開発者の遊び心とこだわりが感じられる(笑)。

 さて、冒頭でも紹介した「800MHz/1.5GHzデュアルバンド対応」について、少し説明しておこう。現在、NTTドコモでは800MHz帯を利用してPDCデジタル携帯電話のサービスを提供しているが、中央(関東)、東海、関西のエリアではこれに加え、1.5GHz帯でも「シティフォン」(一部地域では「シティオ」)という名称でPDCデジタル携帯電話のサービスを提供している。ところが、この1.5GHz帯のサービスはiモードサービスの開始以降、あまり活用されておらず、利用者が減少している。これに対し、800MHz帯はiモードの普及により、常に混雑状態が続き、通話品質が著しく低下している。

 そこで、211iシリーズでは800MHz帯の混雑を回避するために、800MHz帯と1.5GHz帯の両方を利用できるようにしている。両方の周波数帯域を利用できると言っても2つの契約が必要になるわけではなく、211iシリーズに限り、通常の800MHz帯の契約のまま、両方の周波数帯域を利用できるようにしている。料金プランなども800MHz帯のものがそのまま適用されている。厳密に言えば、1.5GHz帯は800MHz帯よりも通話料などが安いのだが、NTTドコモとしては無用な混乱を避けるために、特別な料金プランを設けなかったのだろう。

 余談だが、従来の210iシリーズには800MHz帯のサービスであることを表わす「DIGITAL」という表記があったが、F211iにはなく、その後、発売されたD211iやN211iにも見当たらないようだ。同時に、商品名も「デジタル・ムーバ ○2xx HYPER」から「ムーバ ○2xx」という形式に変更されている。

 211iシリーズで追加対応となった1.5GHz帯は、音声通話時のみに利用する。これは1.5GHz帯にパケット通信網がないためで、iモードやDoPaを利用する際は800MHzを利用することになる。ただ、音声通話時に必ず1.5GHz帯を利用するわけではなく、回線がどれくらい混雑しているのかをネットワーク側が自動的に判別して、空いている帯域が優先的に利用される。ユーザーが発着信時に800MHz帯と1.5GHz帯のどちらを利用しているのかを判別したり、優先的にどちらかの帯域を指定して発着信することもできない。つまり、デュアルバンド対応になっているが、ユーザーはこれをまったく意識せずに使えるわけだ。では、通話中に1.5GHz帯と800MHz帯のエリアの境目に差し掛かったときはどうなるのだろうか。これは1.5GHz帯と800MHz帯の基地局間でハンドオーバーを実現しており、ユーザーが切り替え操作をしたり、通話が終了してしまうこともない。


 数日、F211iを使い、実際に通話テストをしてみたところ、音質の差はあまり聞き分けられないものの、移動中の通話では通常の800MHzを利用する端末よりも途切れにくいという印象が得られた。利用できる地域は限定されるが、通話を重視するのであれば、211iシリーズは従来の端末よりも実用性が高いと言えそうだ。

 F211iをはじめ、211iシリーズにはこうした特長があるにも関わらず、NTTドコモはカタログなどで「デュアルバンド対応」であることを積極的にアナウンスしていない。また、原稿執筆時点ではデュアルモードが利用できるのは、東京23区内に限られているという。一説に寄れば、1.5GHz帯のサービスを提供していない地域会社に配慮しているとの声も聞くが、NTTドコモの携帯電話の弱点である「通話品質」が多少なりとも改善されることを考えれば、もう少し積極的にメリットを謳い、デュアルバンドが利用できるエリアも拡げるべきだろう。


音声通話重視のビジネスマンにおすすめ

 さて、いつものように「買い」の診断をしてみよう。デュアルバンド対応になった211iシリーズの第1弾として登場したF211iは、ストレートデザインのボディに大画面液晶と搭載し、機能面でのブラッシュアップを行なうなど、かなり完成度の高い端末だ。スライドロック機構も単なる誤動作防止のためだけでなく、作業を一時的に中断するときにも役立つようにしている。注目のデュアルバンド対応は利用地域が限定されるが、50xシリーズや従来の2xxシリーズよりも通話品質が向上することは確かだ。

 これらの点を考慮すると、F211iをおすすめしたいのは、音声通話を重視するビジネスマンといったところだろうか。ストレートデザインのボディはスーツの胸ポケットに入れておいても違和感がなく、通話品質も50xシリーズや従来の2xxシリーズより安定している。デュアルバンド対応の効果を発揮できる地域が東京23区に限られているが、人口密度から考えても実質的なアドバンテージは大きそうだ。もしかすると、年末年始の人出が多いところで、

50xシリーズの人:「あれぇ? つながらないなぁ」
F211iの人:「いや、オレのは平気だよ」


なんていうシーンが見られるかもしれない(笑)。1.5GHz帯のサービスが利用できるすべての地域でこのアドバンテージが享受できるようにしてもらいたい。

 また、メール周りのセキュリティ機能や改善された日本語入力など、メールを頻繁に利用するユーザーにとっても要チェックだろう。携帯電話を選択するポイントとして、ボディデザインやカラーリングばかりが注目されているが、F211iはデザインやカラーリングだけでなく、実用性という最も重要な部分に磨きを掛けた端末であり、エントリー層のユーザーにもおすすめできる端末と言えそうだ。


・ F211iニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew1105a.html
・ F211i製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/211i/f211i/f211i.html
・ F211i製品情報(富士通)
  http://www.fmworld.net/product/phone/f211i/

ドコモ、デュアルバンドに対応したiモード新機種「F211i」
F211iの裏技発見、電池マークが「星」に


(法林岳之)
2001/12/11 11:33

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