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細かなリファインで完成度を高めた「SO503iS」
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セカンドモデルの最後を飾るSO503iS
今夏から続いたNTTドコモの503iシリーズのセカンドモデルラッシュ。先日、レビューで紹介したD503iSと同時に発表されたソニー製端末「SO503iS」によって、いよいよ完結することになった。実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。
トラブルにめげなかったSO503iの後継モデル
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NTTドコモ/ソニー『デジタル・ムーバSO503iS HYPER』。サイズ:49(W)×98(H)×27(D)mm、115g。トラディショナルグリーン(写真)、シャンパンブルー、ミスティパープルをラインアップ。
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Javaを搭載することで、携帯電話の可能性を大きく飛躍させたNTTドコモの503iシリーズ。今年1月から順次、製品が発売され、一部のモデルを除いて、今夏からはセカンドモデルという新しいラインアップも登場した。開発するメーカーによって、セカンドモデルの位置付けに違いを見せたが、気が付いてみれば、503i世代の端末だけで10種類ものラインアップを取り揃えたことになる。これだけ充実したラインアップを取り揃えたのは見事としかいいようがない。
今回紹介するソニー製端末「SO503iS」は、今年3月に出荷されたSO503iのセカンドモデルだ。SO503iは過去にソニーがNTTドコモ向けに供給してきた端末と違い、非常に魅力的な製品として注目を集めた半面、「ディスプレイに傷が付く」「着信音量が小さ過ぎる」「iアプリのセキュリティホール発見」など、一連の不具合騒動で最も騒がれた端末でもある。不具合というマイナス面はあったものの、大画面液晶ディスプレイやおなじみのセンタージョグ、POBoxによる日本語入力など、他の製品にはない特長を備えており、503iシリーズの中でもひときわ目立つ存在だったことは確かだ。販売再開後の好調な売れ行きからもその人気ぶりがうかがえる。
そんな状況を受けて登場したSO503iSは、従来のSO503iをベースにしながら、細かい改良を施すことにより、商品力を高めている。503iシリーズのセカンドモデルは、デザインやコンセプトをまったく異にした「別バージョン」と従来モデルをリファインした「後継バージョン」の2種類に大別できるが、SO503iSはN503iSなどと同じように、「後継バージョン」として位置付けられているようだ。
液晶面との干渉に配慮
製品の細かいスペックなどについては、NTTドコモやソニーの製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただくとして、ここでは試用した端末から得られた印象を中心に紹介しよう。
まず、ボディは従来同様、折りたたみデザインを採用している。外見は非常に似通っているが、液晶ディスプレイ背面側の処理が変更されたことにより、わずかにスマートになった印象だ。細かい部分でも違いを見せている。たとえば、液晶ディスプレイの背面側が従来モデルよりもフラットな成形になり、アンテナ格納部の出っ張った部分が長くなっている。従来モデルではアンテナが少し曲がりながら格納されていたようだが、SO503iSではほぼストレートに格納されているようだ。また、折りたたみ時に液晶面とボタン面の干渉を避けるために、従来モデルではボタン部分の最下部にゴム足を付けていたが、SO503iSではこれをボディと一体成形にして、液晶パネル側にゴムの緩衝剤を埋め込んでいる。この他にも液晶面最下部にゴム足を付けるなど、液晶面とボタン面の干渉にはかなりの配慮が見られる。
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液晶画面の上部に備えられたゴム。ボタン下の突起部と当たる構造になっている。
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ボタン下に備えられた突起部はボディと一体成形に変更されている。埋め込まれたゴム部は不要のような気もするが……。
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液晶画面下にも小さなゴムが備えられる。これも液晶面とボタン面の干渉を防ぐための配慮。
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液晶ディスプレイは従来モデルとまったく同じで、最大6万5536色表示が可能なTFTカラー液晶を採用しており、表示エリアも同サイズとなっている。ただし、液晶ディスプレイ周りの処理が干渉対策のために変更されたため、市販の液晶保護シートを流用するときは注意が必要だろう。発色そのものはあまり変わりなく、室内での視認性はバツグンだが、太陽光の下ではかなり見づらい。
ボタン類も従来同様のレイアウトを採用しているが、従来モデルが透明なキートップを採用していたのに対し、SO503iSではキートップに文字が印刷された一般的なものが採用されている。キーそのものの形状も液晶面との干渉を考慮してか、表面がフラットになり、キー周りのゴムもボディ色と統一されたものに変更されている。中央上部にはソニー端末でおなじみのセンタージョグが装備され、左にメールボタン、右にiモードボタンが配されている。センタージョグの動作は従来モデルと変わりない。
その他、細かいところではロゴの印刷位置が移動したり、センタージョグと重なる部分の成形が変更されている。また、SO210iからソニーがムーバメーカーになったため、従来モデルの液晶面右上にあった「by Sony」のロゴも消えている。
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液晶ディスプレイは従来モデル同様の明るさ。太陽光の下での視認性は決して良くないが、室内での見やすさはトップクラス。
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ボタンのレイアウトは同じだが、キートップに文字が印刷され、キートップもフラットな形状に変更されている。
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ソフトウェアは従来モデルとほぼ同じ
ソフトウェアや使い勝手の面はどうだろうか。外見は従来モデルとの見分けが付くが、実はソフトウェアなどの内部的なものはほとんど変わりがない。液晶ディスプレイだけ見ていると、どちらを触っているのかがわからなくなるくらいだ。
着信音は従来通り、24和音対応となっており、ダウンロードできる着信メロディの数なども変わりない。標準で登録されている着信メロディもあまり目立ったものがない。SO503iSでは壁紙に「PostPet」のキャラクターをあしらったものが使われているが、メールの着信音などの効果音として、PostPetで使われているものを採用するなどの工夫も欲しかったところだ。
従来モデルでは高速な動作で高い評価を得たiアプリの環境は、SO503iSにもそのまま継承され、非常に快適な環境を実現している。保存件数が5~10件とあまり多くないことも同様だが、セカンドモデルということであれば、標準で何らかのiアプリを登録しても良かったのではないだろうか。
メールまわりでは従来モデルから評価の高かったフォルダによる管理、自動振り分けなどの機能が継承されており、503iシリーズの中でもかなり使いやすい部類に入る。日本語入力のPOBoxはセンタージョグとマッチングもよく、マルチタップによる日本語入力に慣れていないユーザーにもおすすめできる。欲を言えば、メールを連続的に読む手法やメール一覧画面の表示方法を変更できるようにするなどの改良も加えて欲しかった。いずれも「迷惑メール」を避ける方法として、欲しい機能のひとつだ(そもそも端末で対応しなければならないことは本末転倒だが)。
コンテンツを閲覧するためのブラウザの仕様も変わっていないようだ。従来モデルでサポートされていなかったJEPG形式への対応は、今回も見送られている。せっかく6万5536色表示が可能なのだから、JPEG形式にも対応して欲しかったところだ。
この他にも着信履歴からメールが出せる「EV-Link」やお気に入りのメニューが作成できる「マイセレクト」など、ソニー製端末でおなじみの機能も搭載されている。慣れという面もあるが、全体的に使い勝手は良く、非常に完成度の高い端末と言えるだろう。
違いは少ないが、完成度は高い
さて、いつものように「買い」の診断をしてみよう。SO503iSは従来モデルの機能を継承しながら、不具合で指摘された液晶面との干渉に配慮するなど、細かいリファインを加えたモデルだ。ソフトウェアや使い勝手の面に大きな違いが見られないのは残念なことだが、裏を返せば、従来モデルの完成度が高く、SO503iSではそれをさらに高めたという見方もできる。
そんなSO503iSをおすすめしたいのは、SO503iを狙っていたが、不具合報道などで二の足を踏んでいた人だ。「バグのないプログラムはない」という言葉があるように、絶対に不具合が起きないとは言い切れない(どんな端末でも)が、さすがにあれだけの騒ぎになっただけに、SO503iSは液晶面の干渉についてはしっかりと対策が取られている。
また、503iシリーズ全体で見た場合、POBoxの日本語入力環境や液晶ディスプレイの明るさなど、SO503iSならではのアドバンテージもあり、メールを頻繁に利用したいユーザーや室内での利用が中心のユーザーにもおすすめできる。
ただ、従来モデルとの差別化という点については、少し不満が残る。仮に、従来モデルが企画意図通りの製品だったとしてもわずか半年後に機能差の少ない製品をリリースするのであれば、もう少し付加価値を持たせても良かったのではないだろうか。PostPetのキャラクターは大きな魅力かもしれないが、壁紙だけというのはあまりにもさみしすぎる。もう一歩、踏み込んだ付加価値を考えて欲しかったところだ。
503iシリーズのセカンドモデルは完結
今回のSO503iSをもって、503iシリーズのセカンドモデルは一応、完結したと見られるが、最後に503iシリーズ全体を総括してみよう。
まず、ここまでに登場したセカンドモデルを見て気になったのは、NTTドコモとしてのセカンドモデルの位置付けがハッキリしないという点だ。F503iS、D503iS、P503iSの3台はファーストモデルと明らかにデザインが違う「別バージョン」として端末をリリースしたのに対し、N503iSと今回のSO503iSはファーストモデルをリファインした「後継バージョン」という印象が強い。別バージョンのモデルは従来モデルと併売され、バリエーションが増えるという楽しみがあるが、後継バージョンのモデルは従来モデルを選択する理由が価格とカラーリングのみに限られてしまう。なかでもSO503iSは従来モデルとの差別化がほとんどなく、「何のためのセカンドモデルなの?」と考えてしまいそうだ。
また、503iシリーズ全体ではJavaを搭載することにより、「iアプリ」という新サービスをスタートさせることができた。他社よりもオープンな環境が提供されたことは歓迎すべきだが、その半面、セキュリティへの配慮から機能的な制約が多い上、機種間で互換性がないため、予想以上にiアプリの開発に手間が掛かるという声も聞かれた。こうしたマイナス要因が影響したためか、従来のiモード関連のサービスに比べ、iアプリは今ひとつ効果が薄かったようにも見える。携帯電話に熱心なユーザーはともかく、ごく普通のユーザーが「iアプリがしたいから、503iを買う」というところまでは訴求できなかったようだ。
503iシリーズのセカンドモデルが完結したことにより、50xシリーズは来年に登場が噂されている504iシリーズへと興味が移っていくことが予想される。その一方でFOMA端末もすでに3機種がリリースされており、追加モデルが登場する噂も聞こえてきている。ユーザーとしては今後の動向に興味が尽きないところだが、503iシリーズでの一連の不具合騒動を見てもわかるように、目新しさばかりに振り回されることなく、しっかりと情報を集め、じっくりと端末を選ぶ時代に入ったと言えそうだ。
・ SO503iSニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0917.html
・ SO503iS製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/i/lineup/so503is/so503is.html
・ SO503iS製品情報(ソニー)
http://www.sony.co.jp/sd/products/Consumer/KEITAI/
・ SO503iS(トラディショナルグリーン)
・ ドコモ、折りたたみ型のiアプリ端末「D503iS」「SO503iS」
・ 折りたたみの新定番を目指す「SO503i」
(法林岳之)
2001/10/12 13:06
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