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NTTドコモの210iシリーズは何を目指すのか
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210iシリーズが次々と登場
NTTドコモが主力シリーズとして展開してきた「2xxシリーズ」は、一昨年末にはDoPa対応、昨年6月に発売された「209iシリーズ」からはiモードが搭載されている。そして、この春には新たに「210iシリーズ」の発売が開始された。すでに販売が開始されているF210i、N210i、D210iの3モデルを試用することができたので、早速レポートをお送りしよう。
210iシリーズの位置付け
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相次いで発売された210iシリーズ。左から「デジタル・ムーバN210i HYPER」、「デジタル・ムーバD210i HYPER」、「デジタル・ムーバF210i HYPER」
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現在、NTTドコモが販売する携帯電話のラインナップは、iアプリが利用できるiモード端末の503iシリーズ、従来のiモード端末である502iシリーズ、DoPa/iモードが利用できる主力の209iシリーズとなっている。その他に、個性派及びプリペイド端末などの6xxシリーズ、「シティフォン」「シティオ」と呼ばれる1.5GHz帯の15xシリーズなどもラインアップされている。
昨年発売された209iシリーズは、NTTドコモの主力モデルである20xシリーズにもiモードが搭載されたことで話題になったが、その半面、502iシリーズとの差がDoPaなどに限られてしまったため、今ひとつわかりにくいラインアップになってしまった。また、モノクロ液晶からカラー液晶への切り替え時期であったため、モノクロ液晶を搭載した209iシリーズは販売で奮わず、年末商戦ではかなり安価に販売されていた。この点は502iシリーズのP502iやN502iなども同様だ。
今回発売された210iシリーズは原稿執筆時点で、富士通製「F210i」、NEC製「N210i」、三菱電機製「D210i」の3モデルだ。2月から販売が開始された503iシリーズでiアプリが対応しているのに対し、210iシリーズはiアプリに対応しておらず、従来の209iシリーズと同様の「iモード対応」「DoPa対応」というスペックになっている。502iシリーズと209iシリーズはともにiモードが搭載されたため、差別化が難しかったが、503iシリーズと210iシリーズではiアプリという明確な違いができたことになる。iモードの登場以降、iモードの機能をフルに搭載した50xシリーズに対し、20xシリーズは「ビジネス向け」「法人向け」「普及モデル」という位置付けになっていたが、今回の210iシリーズも同様の位置付けながら、よりハッキリとした形で差別化ができたことになる。
各モデルとも基本的には209iシリーズの熟成版
各製品の詳しいスペックについては、NTTドコモや開発各社のホームページ、すでに掲載されている「ケータイ新製品SHOW CASE」などを参考にしていただきたい。今回はすでに販売が開始されている3モデルを試用し、それぞれの機種の特長や使い勝手、改良点などに加え、503iシリーズとの比較を中心に紹介したい。3機種まとめての紹介になるため、通常のレビューとは違った内容になる点はご了承いただきたい。
◇F210i◇
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NTTドコモ『デジタル・ムーバF210i HYPER』。サイズ:40(W)×125(H)×15(D)mm、65g。ハッピーオレンジ(写真)、サイバーグレー、クールシルバーの3色をラインナップ。
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基本的なデザインのコンセプトは従来のF209iを踏襲しているが、中央のマルチカーソルキーの形状が変更されている。F209iでもエアリーブルーのモデルのみが透けたデザインになっていたが、F210iでは3つのカラーバリエーションのいずれもが透けたデザインのマルチカーソルキーを採用している。マルチカーソルキーは着信時などに点滅させることができるが、F210iでは内部の反射がF209iと異なるためか、かなりハッキリと光る。また、カラーモデルごとにボタンに書かれた文字やデザインが異なり、全体的な雰囲気がかなり異なるのも面白い。なかでもサイバーグレーのモデルはボタンの内部に文字が書かれるなど、非常に演出が細かい。
カラー液晶ディスプレイは従来の1.4インチから1.6インチに大型化され、表示エリアの実測値は25×33.5mmとなっている。発色もかなり改良され、視認性もSTNカラー液晶の端末としては良好だ。液晶ディスプレイの大型化とフォントサイズの変更により、表示も最大8行まで拡大されている。
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F210iは中央のマルチカーソルキーをさらにバージョンアップ。光り具合いはF209iとかなり異なる。[1]ボタンの長押しで電卓が呼び出せるなど、細かい機能も豊富。
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F210iは1.6インチSTNカラー液晶を採用。画面はF209iからおなじみの「きゃらいふ」のもの。
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機能面ではメール機能の充実が目を引く。受信メールのフォルダ管理、よく使う内容を登録しておくことができるメールテンプレート、メール専用のコンパクトサイズの着信メロディ、最大5人までの同報メールなどだ。また、iモードサイトからダウンロードした画像を壁紙として設定するとき、30分、または60分間隔でランダムに表示させる「壁紙自動チェンジャー」、登録画像をクリアキーによるワンタッチで見られる「登録画像ビューア」などの機能も備える。
F209iで好評を博した「きゃらいふ」は、さらにバージョンアップしている。今回は各キャラクターがしゃべるようになり、さらに楽しみが増えている。待ち受け画面で終話ボタンを押すと、選択したキャラクターをしゃべらせることができる。ただ、しゃべるポイントをある程度、把握しておかないと、周りに人がたくさん居る場所でいきなりしゃべられて、ちょっと恥ずかしい思いをする可能性もある(笑)。また、F209iでもメールのやり取りなどでキャラクターが成長するようになっていたが、今回はそれがポイントという形で見えるようになっている。
◇N210i◇
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NTTドコモ『デジタル・ムーバN210i HYPER』。サイズ:46(W)×90(H)×23(D)mm(折りたたみ時)、92g。アクアティックブルー(写真)、シフォンパープル、グラマラスシルバーの3色をラインナップ。
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「折りたたみのN」として、すっかり定着した感のあるNシリーズだが、従来のN209iはモノクロ液晶を搭載していたため、その後、発売されたN502itに人気を奪われていた。今回のN210iはカラー液晶を採用し、N502itの事実上の後継モデル的な位置付けとなっている。
ボディサイズは20xシリーズ系が女性に人気が高いことを考慮し、コンパクトなN209iを継承しているが、特徴的なのは液晶ディスプレイの背面側に「イルミネーション・ウィンドウ」と呼ばれるサブディスプレイを装備したことだ。同様のサブディスプレイはP209iSやC401SAなどでも採用されているが、N210iはサブディスプレイで液晶部分が12色に光るようになっており、より華やかな印象を受ける。ちなみに、12色の他に、ユーザーが調整をすることにより、オリジナルカラーを作り出すことができる。イルミネーション・ウィンドウは不在着信やメールの着信、アラーム、アナログ時計などを表示することができる。
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N210iの背面にはイルミネーション・ウィンドウを装備。写真ではややわかりにくいが、着信時などに光る。
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本体側の液晶ディスプレイは最大256色表示が可能な1.8インチSTNカラー液晶を採用する。表示エリアの実測値は29×34mmとなっており、N502itの31×41mmよりもわずかに狭い程度だ。コンテンツ閲覧時の最大表示文字数は10文字×8行だが、メール画面は縮小表示に切り替えることにより、通常の10文字×8行から15文字×11行にまで拡大することができる。ただし、縮小表示はフォントもやや荒くなるため、あまり読みやすくはない。
ボタン類のデザインも従来モデルを踏襲しており、決定キーと一体化された方向キーも使いやすい。ただ、筆者が非常に戸惑ったのが方向キーの周りに配されたメールボタン、[Menu]ボタン、[クリア]ボタン、電話帳ボタンの配置だ。一見、何の問題もないように見えるが、実はN502itと比べると、メールボタンと電話帳ボタンの上下が逆になっている。そのため、メール作成画面でサブメニューを呼び出そうとしたのに、全角スペースを入力してしまうといったことが起きる。N502iやN502itから買い換えを検討しているユーザーは要注意だ。
機能面では待受画面上に貼っておくことができる「貼付メモ」、5種類のキャラクター機能、サイドキーを押したときにメールや着信の有無を音声で案内するおしゃべり機能などが目新しいところだ。Post-It(付箋)感覚で使える貼付メモは非常に便利なツールだが、欲を言えば、フォントサイズをもう少し小さくできたり、新規作成をもう少し簡単に呼び出せるようにして欲しい。キャラクター機能はF209iのきゃらいふに一歩譲るものの、発着信やメール送受信など、いろいろなシーンでキャラクターが活躍するのは楽しい。できることなら、待ち受け画面でたまにキャラクターに動きを見せて欲しいのだが……。
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N210iはN502itなどとメールキーの位置が異なる。3色のカラーバリエーションでキーのデザインを変更している。
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N210iは1.8インチSTNカラー液晶を採用。210iシリーズでは最大サイズで、N502itよりもひと回り小さい程度。
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◇D210i◇
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N210iの背面にはイルミネーション・ウィンドウを装備。写真ではややわかりにくいが、着信時などに光る。
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フリップ式を採用し、カラーバリエーションでボタンデザインを変更するなどのトレンドを生み出してきたのがDシリーズだ。D209iはカラー液晶を搭載していたが、フリップ式以外に個性に欠けていたためか、今ひとつ人気がなかったように感じられる。
今回発売されたD210iもD209iのデザインテイストを受け継ぎながら、3色カラーバリエーションの内、きらきらピンクのモデルのみで、独自のボディデザインを実現している。標準モデルは全体的にスクエアなデザインを採用しているのに対し、きらきらピンクのモデルはボディに丸みをつけ、液晶ディスプレイの枠も丸く処理しているのが特長だ。また、フリップに隠れているボタン部分が点灯するのだが、フリップそのものがわずかに透けているため、透けたフリップを通して光るボタンが見えるという演出もなされている。
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D210iのきらきらピンクは、フリップが透けている。テンキーの照明が光ると、写真のようになる。実際にはもっとテンキーの形状が際立つ感じだ。
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また、背面には7色+グラデーションで光るイルミネーションランプが備えられており、着信やメール受信を確認しやすくしている。ちなみに、イルミネーションランプの下には内蔵スピーカーが備えられているが、きらきらピンクのモデルのみ、スリットが花の模様になっている。
液晶ディスプレイは最大256色表示が可能なカラー液晶を採用し、表示エリアのサイズは実測値で23.5×30mmとなっている。210iシリーズでは最も小さい液晶ディスプレイと言うことになるが、表示は明るく、視認性も良好だ。ただ、最近の携帯電話では枠内いっぱいに液晶の表示エリアが割り当てられているのに対し、D210iは表示エリアの周りに黒い枠(非表示エリア)が残っている。
機能面ではD503iでも採用されている日本語入力システム「ATOK Pocket」が注目だろう。入力に必要なボタンの押す回数が減るわけではないが、変換効率がいいため、結果的に入力する時間は短くなる。ただ、インターネット接続やメールアドレス入力時に頻繁に利用する「http://」「www.」「.co.jp」「.or.jp」などの入力補助機能は、相変わらずサポートされていない。それが三菱電機としての方針なら仕方ないが、もうそろそろ観念した方がいいのではないだろうか。
基本的な操作体系は従来のD209i同様なのだが、D209iのときにも指摘していたボタン周りの不可解な割り当てが今回も引き継がれている。最近のDシリーズでは待受時に[メニュー]ボタン(イージーセレクター左)を押すと、機能設定のメニュー画面が表示されるが、[戻る]の機能がD503iではイージーセレクターの左ボタン、D210iではイージーセレクターの右ボタンに割り当てられている。この他にも随所にD503iと逆に割り当てられているケースがある。D503iからの買い換えユーザーはほぼ皆無だろうが、D502iからの買い換えユーザーは戸惑うに違いない。
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D210iのキーはD503iやD209iなどと同じデザインを踏襲。きらきらピンク以外のイージーセレクターはD503iに近いデザインを採用している。
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D210iの液晶ディスプレイは、今回紹介した3機種の中で最も小さい。表示エリアの回りに黒い非表示エリアが残るため、スペック以上に狭く感じる。
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iアプリがいらなければ「買い」だが……
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N503i(左)とN210iは見た目の大きさこそ変わらないが、幅が少ない分、N210iの方が手に持ったときはスリムに感じられる。
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フルスペックの503iシリーズに対し、iモード端末の普及モデルという位置付けになってきた210iシリーズ。最初に登場した3台を集中的に触ってみた感想としては、503iシリーズとの対比が不十分という印象を受けた。iアプリがない分、メール機能などに注力したことはわかるのだが、正直に言ってしまえば、いずれも209iシリーズのリファインモデルという印象が強い。もう少し、210iシリーズならではの特長をハッキリと打ち出した方がユーザーとしてもわかりやすいはずだ。
また、N210iとD210iについては本文中でも触れたように、50xシリーズとの操作体系の差が気になるところだ。iアプリを必要としないユーザーから見れば、N210iはN502iやN502itからの買い換えに適した端末だが、頻繁に利用することが予想されるボタンの配置が入れ替わっているのはうれしくない。D210iに見られる「配置が逆」というのも同様だ。
これらの点を考慮して、最後に「買い」の診断をしてみよう。まず、3機種に共通して言えることは、210iシリーズが「iアプリは不要」と考えるユーザーを対象としている点だ。もし、iアプリに少しでも興味があるのなら、503iシリーズを検討することをおすすめしたい。ちなみに、筆者はテストのために、NTTドコモの端末を複数契約し、新機種が発表される度に機種変更をしているが、今回の210iシリーズは見送った。理由はやはり、今後も「iアプリ」をいろいろと試してみたいからだ。
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F503i(左)とF210iを比べると、親子ほどの差がある。しかし、ともにスリムで胸ポケットなどに入れても違和感はない。
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iアプリを必要としないユーザーの内、iモード非対応の端末やモノクロ液晶を搭載したiモード端末を所有するユーザーだが、これは「買い」の検討対象に加えることを強くおすすめしたい。今や、携帯電話やPHSはカラー液晶が当たり前であり、携帯電話やPHSを所有する上で、iモードをはじめとするメール及びコンテンツ閲覧のサービスを利用しないのは損だからだ。地域によって差はあるが、実売価格は2万円前後と、503iシリーズよりも買いやすくなっている。ただし、210iシリーズは今後も数機種、登場することが予想されているので、それらを見極めてからでも遅くはない。
最後に、機種個別の評価を書き加えておこう。
まず、最も判断が難しいのがN210iだ。液晶ディスプレイはN502itよりも狭いが、機能はN502itと同等以上であり、実売価格はほぼ同じ。N502itの販売がどの程度、継続するのかにもよるが、現時点ではどちらも甲乙付けがたく、どちらを選ぶのかを迷ってしまいそうだ。ボディのコンパクトさはもちろんだが、イルミネーション・ウィンドウの好き嫌い、貼付メモの実用性などが判断のポイントになりそうだ。
F210iはF209iからの方向性をうまく進化させており、楽しむための機能も充実している。カラーバリエーションによってユーザー層を上手に分けているのも特徴的だ。ボディデザインときゃらいふのおしゃべりに好き嫌いが出そうだが、サイバーグレーのモデルなどはデザインもスマートで、ビジネスマンにもおすすめできる。
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D503i(左)とD210iはともにフリップ式のデザインだが、見た目の印象はかなり異なる。きらきらピンク以外の2モデルはもっとスクエアなデザインだ。
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D210iについては厳しいようだが、3機種中、最も「買い」の指数は低い。かなり個性的な「きらきらピンク」は10キー照明の光の色が1色しかなく、正直なところ、光っている状態の見た目もキツい。筆者は派手なケータイも好きな方だが、D210iのきらきらピンクはちょっと引いてしまった(笑)。その他のカラーについては「可もなく不可もなく」といった印象で、あまりインパクトがない。
210iシリーズの販売は始まったばかりだが、もし、503iシリーズに対してのアドバンテージが「実売価格」と「DoPa」、「コンパクトさ」しかないようであれば、2xxシリーズの存在意義もかなり危うい。各メーカーが開発に努力した点は評価できるが、サービスを提供するNTTドコモ自身が2xxシリーズに対して、もっと明確な方向性を打ち出すことを期待したい。
・ F210i/N210iニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0409.html
・ D210iニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0416.html
・ N210iニュースリリース(NEC)
http://www.nec.co.jp/japanese/today/newsrel/0104/0901.html
・ F210i商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/i/lineup/f210i/f210i.html
・ F210i商品情報(富士通)
http://www.fmworld.net/mobileworld/product/phon/f210i.html
・ N210i商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/i/lineup/n210i/n210i.html
・ N210i商品情報(NEC)
http://www.nec.co.jp/japanese/product/mobile/lineup/n210/
・ D210i商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/i/lineup/d210i/d210i.html
・ NTTドコモ D210i(きらきらピンク)
・ ドコモ、ストレート型の「F210i」と折りたたみ型の「N210i」
・ 富士通製iモード端末「F210i」、恒例の裏技発見
(法林岳之)
2001/05/01 00:00
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