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スマートフォンの新しい市場を狙う「WILLCOM 03」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


WILLCOM 03
 5月26日、ウィルコムは従来から販売してきたシャープ製端末「W-ZERO3シリーズ」の後継モデルに位置付けられる「WILLCOM 03(ウィルコム・ゼロスリー)」を発表した。W-ZERO3シリーズの集大成として、ゼロから設計を見直し、基本性能を強化したというWILLCOM 03だが、発表会で実機を試用してきた印象なども踏まえ、その方向性を考えてみよう。


3つのW-ZERO3シリーズで切り開いたスマートフォン市場

ウィルコムがラインナップするスマートフォン
 2005年に発表された初代モデルで日本のスマートフォン市場を切り開いたW-ZERO3シリーズ。その後、2006年7月のW-ZERO3[es]、2007年のAdvanced/W-ZERO3[es]と進化を遂げてきたが、今回、ゼロから設計を見直したという「WILLCOM 03」が発表された。

 W-ZERO3シリーズによって、切り開かれた日本のスマートフォン市場は、NTTドコモやソフトバンク、イー・モバイルなども参入し、ようやく約100万台規模の市場へと成長しつつある。ウィルコムはスマートフォンの市場において、約70%に相当するシェアを獲得し、端末を開発するシャープとともに、市場全体をリードしている。しかし、その一方で各携帯電話事業者が販売する通常デザインの端末は、多いモデルなら1機種で100万台以上、少ないモデルでも1機種で数十万台が売れていることを考慮すると、スマートフォンの市場はまだまだ小さく、未開拓という見方もできる。

 今回発表されたWILLCOM 03は、従来のW-ZERO3シリーズの後継に位置付けられる端末だが、昨年発表されたAdvanced/W-ZERO3[es]を進化させたような形でまとめられている。特に、ボディサイズやデザインがそう感じさせるのだが、関係者によれば、Advanced/W-ZERO3[es]の売れ行きや反響を見ている中で、端末をビジネスに利用するユーザーだけでなく、若年層を中心に、モバイルパソコンの代わりのように利用するカジュアルなユーザーが増えてきたこともあり、その方向性をもう少し追求することで、新しいモバイルユーザーが開拓できるのではないかと考えたことが今回の商品化に結びついているという。つまり、WILLCOM 03は既存のスマートフォンを積極的に活用してきたユーザー向けだけでなく、もっと幅広いユーザーを狙った端末ということになる。

 この狙いはもうひとつのウィルコムの取り組みである「WILLCOM D4」の位置付けとも関係してくる。つまり、既存のW-ZERO3シリーズを利用してきたモバイルユーザーの内、もっとモバイル環境を積極的に活用したいというアクティブなユーザーにはWILLCOM D4、スマートフォンには興味があるけど、なかなか手を出せずにいるユーザーにはWILLCOM 03という展開を考えているようだ。もちろん、当面は既存のW-ZERO3[es]とAdvanced/W-ZERO3[es]も併売されるため、2つのモデルにユーザーを振り分けてしまうわけではないが、ウィルコムとしては2つの方向性を示すことで、ユーザーの幅広いニーズに応えようとしているわけだ。


普通のケータイのように使えるWILLCOM 03

コンパクトなボディと鮮やかなボディカラーを採用
 WILLCOM 03は従来のW-ZERO3シリーズの後継に位置付けられながら、少し違った方向性を意識して開発された端末だ。端末の詳しい内容については、すでに発表会のレポートが掲載されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは筆者が会場で試用した印象などを紹介しよう。

 まず、端末を手に取って、すぐにわかるのがそのコンパクトなサイズ感だ。W-ZERO3シリーズも代を追うごとに、少しずつコンパクトになってきたが、今回のWILLCOM 03は最近の通常デザインの端末と印象が変わらないレベルにまとめられている。特に、高さ(長さ)についてはAdvanced/W-ZERO3[es]でも不満が多かっただけに、かなり持ち歩きやすくなったという印象だ。

 ボディカラーは前述の通り、パーソナルなユーザー層を狙うということもあり、やや派手なピンク、ゴールド、ライムの3色がラインアップされており、ウィルコムとしてはピンクをメインのイメージカラーとして展開していくという。このあたりも従来のW-ZERO3シリーズとは異なる方向性と言えそうだが、スライド式キーボードを格納した状態では、側面しかボディカラーが目立たないため、それほど派手さは気にならないかもしれない。もっとも通常デザインのケータイの多くは、もっと派手でインパクトのあるボディカラーを採用されているので、WILLCOM 03くらいの派手さはまったく気にならないという見方もできるだろう。

 本体底面から引き出す形で使うことができるQWERTY配列のフルキーボードは、基本的にAdvanced/W-ZERO3[es]と同じ構造を採用する。ただ、キーボードのレイアウトは左側に[Fn]キーや[半角/全角]キー、[Tab]キーを独立させるなど、細かい部分で変更が加えられている。キーのクリック感などはあまり変わらない。

 操作系ではWILLCOM 03の最大の特徴のひとつである「2モードイルミネーションキー」が注目される。2モードイルミネーションキーはディスプレイの下側にレイアウトされているエリアに、イルミネーションでダイヤルキーと方向キーなどの2つのパターンを表示するというもので、操作する機能や場面によって、表示する内容が切り替わる(切り替える)しくみだ。イルミネーションの領域にダイヤルキーが表示されているときは、液晶ディスプレイ側に方向キーのイルミネーションと同じデザインのグラフィックが表示され、そこをタッチして操作することもできる。2モードイルミネーションキーの内部的な構造は明らかにされていないが、おそらくタッチ操作をする領域の内側(内部)に2枚のシート上のイルミネーションが埋められていて、それぞれを切り替えながら、表示しているようだ。最初は操作に戸惑うが、サイドキーで切り替えられることなどを覚えると、なかなか快適に操作することができる。昨年のiPhoneの登場以降、各社からいろいろな形で新しいタッチ操作によるユーザーインターフェイスが提案されているが、最近、筆者が試用した中ではNTTドコモの「PRADA Phone by LG(L852i)」のフルタッチスクリーンなどと並び、快適に利用できると環境のひとつと言えそうだ。


独自のメニュー画面を搭載
メニュー画面とユーザーインターフェイスが採用されている。トップ画面に「メール」「インターネット」「ライフツール」「データBOX」という大きなパネルが並び、それぞれの項目を選ぶと、右側に第二階層の選択項目が表示されるというものだが、動きもなめらかで、視覚的にもわかりやすいため、従来のWindows Mobile搭載端末とは違った楽しい操作感が演出されている。

 ハードウェア面では新たにワンセグやBluetoothが搭載された。 ワンセグについては基本的に視聴のみをサポートしており、データ放送の閲覧や録画などの機能は搭載されていない。技術的には難しいのかもしれないが、タイムシフトなどの機能も含め、もう少し機能向上を期待したいところだ。Bluetoothについては、音楽再生のためのA2DPやヘッドセットを利用するためのHSPなど、ひと通りのプロファイルをサポートする。ただ、ワンセグの音声をワイヤレスで楽しむための著作権保護技術のSCMS-Tはサポートしていないため、ワンセグ視聴時の音声は有線のステレオイヤホンや内蔵スピーカーで楽しむことになる。このあたりのサポートについてはWindows Mobileという汎用的なOSを採用しているため、開発のハードルがやや高いようだ。

 ソフトウェアも改良が加えられているが、日本語入力が各携帯電話事業者のSHシリーズでおなじみの「ケータイShoin6」に変更され、使いやすさを考慮した電話帳ソフトも搭載されている。従来のW-ZERO3シリーズで採用されていたATOKも使いやすかったが、ダイヤルキーでの入力など、通常デザインのケータイとしての使い勝手を考慮し、ケータイShoin6への変更を決めたという。WILLCOM 03の場合、QWERTY配列のフルキーでも入力することになるが、その点についての個別のチューニングはしていないそうだ。電話帳ソフトについては、Windows Mobileに標準で搭載されている「連絡先」は電話を掛けるときなどの使い勝手が良くないため、別のアプリケーションとして、「電話帳」を開発し、搭載している。この電話帳はあくまでもフロントエンドで、パソコンのOutlookとシンクロ(同期)したデータを元に、見やすい形式で表示をしているという形になる。個別の電話帳ソフトとそれに関連付けられたデータがパソコン側に必要になるわけではない。ただ、ケータイの電話帳では「○○さん」「□□ちゃん」といった表記を使うことも多いため、普通のケータイ的な使い方を重視するのなら、敢えて、Outlookとのシンクロから切り離した電話帳ソフトを検討しても良かったのではないだろうか。


 実際の操作感については、全体的に見て、快適性が向上したと言えそうだ。CPUやメモリなどのスペックは従来のAdvanced/W-ZERO[es]と同じなのだが、Advanced/W-ZERO3[es]では画面切り替えなどがかなり重くなる場面が見受けられたが、WILLCOM 03では動きが随分とスムーズになった印象を受けた。Operaブラウザのスクロールなどでは、少し描画が追いついてない場面もあるが、それでも従来よりは一段とスムーズに使うことができる。筆者は当初、容量などのスペックは同じだが、メモリの仕様(速度や種類)が異なるのではないかと考えたが、関係者によれば、ハードウェアの基本仕様は変わっておらず、全体的なブラッシュアップとチューニングによって、パフォーマンスが少し改善されているのだという。OSがWindows Mobile 6.1になったこともパフォーマンス改善の要素のひとつなのだそうだ。

 また、今回の発表のプレゼンテーションでは、他のスマートフォンとの比較なども紹介されたが、W-ZERO3シリーズの大きなアドバンテージのひとつは、やはり、液晶ディスプレイにあるという印象だ。現在、国内で販売されている多くのスマートフォンは、QVGAサイズのディスプレイを採用しているため、フルブラウザなどを利用すると、どうしても画面が狭く感じられてしまうが、W-ZERO3シリーズは一貫して、VGAクラスの液晶ディスプレイを採用し、今回のWILLCOM 03も800×480ドットの表示が可能な3インチのワイドVGA液晶を搭載しており、Operaブラウザなども快適に利用できる。ただ、その一方で、こうした端末がもう少し上の年齢層の人たちが使うことを考慮すると、逆に文字などが小さすぎて、見えにくくなるという弊害もあるため、文字サイズを簡単に変更できるモードの搭載も検討して欲しいところだ。


「もうひとつの未来。」はパーソナルなスマートフォン

 以上が今回の発表で明らかにされたWILLCOM 03の内容と筆者の簡単なインプレッションだ。ここで紹介した内容は、あくまでも発表会の限られた時間内で得られた情報を基にしたものであり、実際に製品が販売されるときには内容が変更されている可能性があることは、ご理解いただきたい。

 W-ZERO3シリーズによって、切り開かれた日本のスマートフォン市場は、各社から後発製品が登場し、各事業者や端末メーカー、コンテンツプロバイダ、ソフトウェアベンダーなどの期待もかなり大きくなってきている。

 ただ、これまでのスマートフォンの市場は、どちらかと言えば、法人や企業内個人といったビジネスユーザーを意識したものであり、端末も「仕事の道具」っぽさが強く打ち出されていた。これに対し、今回、発表されたWILLCOM 03は、仕事の道具としての一面を抑え、個人がプライベートを楽しむための道具として、利用できるように改良を加えてきたという印象だ。スマートフォンはアクティブかつヘビーに活用しなければならないようなイメージを払拭し、気軽に楽しく使える環境を目指そうという提案とも受け取ることができそうだ。ウィルコムは次世代PHSへ向けて、新しいキャッチコピー「もうひとつの未来。」を掲げているが、スマートフォンのもうひとつの未来を描き出そうとした端末と言えるかもしれない。



URL
  ニュースリリース
  http://www.willcom-inc.com/ja/corporate/press/2008/05/26/
  製品情報(ウィルコム)
  http://www.willcom-inc.com/ja/lineup/ws/020sh/
  製品情報(シャープ)
  http://www.sharp.co.jp/ws/020sh/

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(法林岳之)
2008/05/27 11:36

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