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CEATEC JAPAN 2007で見える「ケータイが模索する新機軸」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 10月2日~6日にかけて、千葉県・幕張メッセで開催されている最先端IT・エレクトロニクス総合展の「CEATEC JAPAN 2007」。例年、ケータイ業界にとって、もっとも重要な展示会のひとつだ。昨年はMNPを控えた各社の動きが注目されたが、今年はどうだろうか。ここでは筆者が初日に会場で見かけた動向などをレポートしよう。


秋冬モデルの前の静けさ

携帯電話事業者では今回も(?)NTTドコモとKDDIのみが出展
 「最先端IT・エレクトロニクス総合展」と銘打たれたCEATEC JAPAN 2007。ケータイ業界にとっては、WIRELESS JAPANと並ぶ注目イベントのひとつだが、WIRELESS JAPANが通信関連を中心としたイベントであるのに対し、CEATEC JAPANはケータイだけでなく、コンシューマ向けのAudio&Visual製品、PC関連製品、法人向けソリューションなども出品される総合的なイベントとなっている。これに加え、メーカー向けに供給されるディスプレイパネルやイメージセンサといったデバイス関連も出品されるため、今後のケータイの進化を占ううえでも重要なイベントに位置付けられている。

 今年のCEATEC JAPAN 2007は、昨年のMNPのようなイベントがなく、夏モデルと秋冬モデルの端境期に当たるため、実質的な新機種はauの「INFOBAR 2」のみとなってしまった。過去の経緯から考えて、おそらく各社から2007年秋冬商戦向けモデルが間もなく発表されると予想されるが、ケータイに限って言えば、CEATEC JAPAN 2007はその直前の静けさを感じさせる展示会となっている。

 事業者としてはKDDI(au)とNTTドコモが出展するほか、各端末メーカーも最新モデルを出品しており、一部のモデルを除き、来場者は自由に端末やサービスを試すことができる。各社ブースの展示内容などについては、本紙記者の記事を参照していただきたいが、ここでは筆者が各社の展示で気になったものをいくつかピックアップして紹介しよう。


新しい活用を提案するNTTドコモ

三菱電機と開発したウェルネスケータイは、体脂肪計や高機能歩数計、ブレス測定機などのセンサーを内蔵する 高機能歩数計は通常の歩行や早歩きなども検出できる。ディスプレイ上下に金属部分を左右の手で持つと、体脂肪を測定できる

 NTTドコモは今年4月に904iシリーズ、7月に704iシリーズを発表し、そのほとんどの端末が発売されたため、今回のCEATEC JAPAN 2007ではそれらが出品されているのみで、まったく新しい製品は特に出品されていない。しかし、今までのケータイとは少し違った方向性の新端末を参考出品したり、新しい活用スタイルを提案している。

 まず、端末としては、三菱電機製の「ウェルネスケータイ」がなかなか興味深い。高機能歩数計や体脂肪計、ブレス測定機などを搭載し、アプリ機能を使うことで、ケータイで健康管理をしようという端末だ。こうした健康指向の端末は海外でも登場しているが、健康指向の製品は他ジャンルでも数多くヒットが生まれており、実際に製品化されれば、国内のケータイでも注目を集めそうだ。継続的に利用するための工夫も考えられており、サーバー上に家族内SNSのようなものを用意し、そこで家族間で情報を共有する方法などが考えられているという。家族以外でもスポーツクラブなどで会員向けサービスといっしょに供給するなど、いくつかのバリエーションが考えられそうだ。


ボタン表示を場面ごとに変更できるキーパッドディスプレイ(左)。右はD800iDSをベースに試作したものだが、クリアパーツが装着されていないもの
 端末に関係するものとしては、電子ペーパーを応用したキーパッドディスプレイケータイも出品されている。現在販売されている二画面ケータイのD800iDSでは、ボタンを表示するディスプレイ部が選択したモードによって、表示内容が変わってくるが、この考え方を発展させ、通常のボタンレイアウトながら、ボタン部トップの表示を含めたユーザーインターフェイスを自由に変更できるようにしている。D800iDSのタッチパネルと違い、電子ペーパーの上にクリアパーツのボタンが装備されているため、いわゆる通常のケータイのボタンを操作しているときと同じ感覚で利用できるのが特徴だ。他事業者になるが、ソフトバンクの812SHとGENT 812SH sのように、同じ形状のボタンを採用しながら、キートップの表記をわかりやすくすることで、幅広いユーザー層に受け入れられる端末が登場しているが、このキーパッドディスプレイを上手に活用すれば、初心者にも使いやすい高機能端末を開発することも十分、可能になりそうだ。

 また、ケータイそのものではないが、技術的に注目されるのは「人体通信」だ。人体通信はその名の通り、人間の体を通信媒体として利用し、ごく微弱な電気信号を使うことにより、データのやり取りを可能にする技術だ。株式会社カイザーテクノロジーという企業が開発したチップをケータイに搭載することで実現している。具体的な利用シーンとしては、ケータイを持ったままでは何も動きがないが、素子が埋め込まれた特定の場所に移動すると、手に持つケータイに情報が配信されたり、ケータイを鍵として身に付けておき、ドアノブに触るとロックが解除されるといった活用が考えられている。通信速度は今のところ、約40kbps程度だが、すでに実験レベルでは1Mbpsを達成しており、将来的にはさらなる高速化も考えているという。実用化には端末への実装やサービスの構築など、いくつも壁がありそうだが、もっとも身近なデジタルツールであるケータイを活かすものとして、今後の展開が期待される技術と言えそうだ。


微弱な電気信号を使い、人体を通して、通信を行なう技術をデモンストレーション。実際に試してみると、その手軽さに驚かされる 10月1日から緊急地震速報が開始されたが、ケータイでも間もなく、搭載される見込み。905iシリーズからサポートされるのかもしれない

INFOBAR 2への注目が集まるKDDIブース

先月26日に発表した「INFOBAR 2」が出品されている。来場者の関心も高く、展示コーナーには常に人が集まっている
 5月に発表された夏モデルがすべて発売され、好調な売れ行きを記録しているauだが、今回のCEATEC JAPAN 2007では先月26日に発表されたばかりのau design project第7弾「INFOBAR 2」を出品している。

 INFOBAR 2については既報の通りだが、やはり、デザイン端末の先駆けとなったINFOBARの進化形ということもあり、来場者の関心は非常に高く、何度となく、通りがかったKDDIブースでは、常にINFOBAR 2のコーナーに人が集まっていた。実際の端末については、丸みを帯びたボディは手になじむ持ちやすさを演出しており、ワイドQVGAサイズの有機ELディスプレイの視認性も非常に良好だ。ボタンはサイズが大きく、押しやすそうだが、デザインを重視し、ボディラインに合わせた曲線ですき間なく構成されているため、位置関係を覚えるまでは少し戸惑いそうな印象だ。ちなみに、INFOBAR 2の展示スペースの周囲には歴代のau design projectの端末がいっしょに展示されている。


KDDI研究所によるデジタル家電へのリモートアクセス技術の展示。DLNAのしくみを領することで、外出先から家庭内のサーバーにケータイでアクセスが可能 W45T上ではBREWアプリのDLNAクライアントが動作する。DLNAクライアントとして知られるデジオンの「DiXiM」の文字が見える

 KDDIのブースで筆者がもっとも注目したのは、「デジタル家電リモートアクセス技術の開発」という展示だ。名称は長いが、簡単に言ってしまえば、DLNAのしくみを利用し、自宅のHDD/DVDレコーダーや録画した番組をインターネットを経由して、ケータイや外出時のモバイルPCから閲覧しようというものだ。DLNAは「Digital Living Network Alliance」の略で、パソコンやデジタル家電などをネットワークで接続するための規格だ。今回はW45TにDLNA準拠の機器にアクセスできるクライアントをBREWアプリで搭載し、家庭内のパソコンに保存されているムービーを閲覧するというデモを公開していた。

 DLNAについては、ケータイ業界的にはまだなじみが薄いが、家庭内のネットワークで映像や写真、音楽といったリソースを共有できる(ほかの部屋でも見られるようにする)ものとして、少しずつ対応製品が増えている。外出時にも持ち歩くケータイがこれに加わることにより、これらのリソースをさらに有効に活用できるわけだ。HDD/DVDレコーダーなど録画されるムービー形式は、MPEG-2形式が一般的だが、これをDLNA対応機器内でケータイで閲覧できる3GPP2形式などに変換したり、ホームゲートウェイで変換するといった方法で対応することを考えているという。ムービー形式などの課題は残されているが、リモートアクセスに関連する技術は現状のひかりone用のホームゲートウェイでも十分対応できるとしており、今後、ケータイにとっても「DLNA」や「ホームネットワーク」が重要なキーワードになってくる可能性は高い。

 また、これもユーザーにとっては可能性の段階でしかないが、デジタルラジオのしくみを利用したデータ配信のデモも公開されていた。これはデジタルラジオと同じように、会場内で微弱なFM波を利用した放送を流し、そこで着うたなどのコンテンツを配信するというものだ。今回は現在、LISMOのキャンペーンでも配信されている「いきものがかり」の会場限定バージョンが配信されており、KDDIブース内の対応端末ではデジタルラジオと同じしくみを利用した楽曲のダウンロードを体験することができる。実際の利用シーンとしては、ショッピングモールやイベント会場などの限られた場所で、デジタルラジオのミニ放送局(ミニFM局のイメージ)で番組を流し、そこでしか入手できない楽曲を配信することが想定されている。デジタルラジオそのものについてはまだそれほど普及していないが、ミニFM局などでコンテンツが配信できるとなれば、コンサート会場に来た人だけが限定版の着うたをダウンロードできるなどの面白い展開が期待できそうだ。


有機ELへの期待

マイクロソフトのブースでは各社のWindows Mobile端末が勢揃い。数年前から考えられないほど、ラインアップが充実している 東芝ブースには発売が待たれるソフトバンクの東芝製端末「X01T」が展示されている。年内には発売できるようにしたいとのことだ

 携帯電話事業者以外では、各端末メーカーも出展している。ただ、シャープやNEC、東芝などのように、実際に各事業者向けの端末を触ることができるコーナーを設けているメーカーもあれば、供給する端末の技術展示を中心にするメーカーもある。なかには端末を供給しているにも関わらず、何も展示をしていないメーカーもあったが、やはり、夏モデルと秋冬モデルの端境期ということもあり、やや新鮮さに欠ける印象があったのも事実だ。目新しいところでは、Windows Mobile搭載端末をはじめとするスマートフォンが多く出品されている。ただ、初日はまだ来場者が多くなかったうえ、展示が限られていたため、人だかりができるというほどではなかった。法人向けのソリューションもいくつか出品されているが、スマートフォンでなければならないといった印象のものはあまり目につかなかった。

 デバイスでは、今年もケータイ向けと見られる有機ELの展示が目立った。会期直前にソニーが有機ELテレビを発表したこともあり、有機ELそのものが注目されているということも関係している。ケータイにとっても有機ELは薄型化や省電力化ができるだけでなく、ワンセグのような用途にも適しており、今後、採用されるケータイが一気に増えてくることになるかもしれない。


東芝松下ディスプレイテクノロジーのワイドQVGA表示のカラー液晶。2800:1の高コントラストを実現
 ケータイ向け液晶パネルについても出品が多かったが、2.8~3インチ程度のサイズでVGA以上の解像度を実現するものとワイドQVGAサイズのものにグループ化されつつあるようだ。前者は国内をはじめとする高機能端末向け、後者は国内の普及モデル向け及び海外市場向けという位置付けだ。興味深いのは有機ELが増え、ワンセグをはじめとする動画のニーズが高まってきたこともあり、家庭用の液晶テレビと同じように、ケータイ向け液晶パネルでも高コントラストと応答速度の向上をアピールする製品が増えている。ケータイのディスプレイのスペックに、コントラスト比や応答速度が記載される時期が来るのかもしれない。


ケータイの次なる展開への模索

三菱電機のBDレコーダーは、NTTドコモが参考出品しているウェルネスケータイからのデータを受信し、家族で共有できる機能を備える。データの転送はシンプルなメールによるものだが、こういった視覚的にもわかりやすい連携は期待できる
 CEATEC JAPANというイベントそのものはIT関連とエレクトロニクス総合展という位置付けだが、やはり、今年もAudio&Visual製品がその主役を担っているという印象だ。特に、薄型テレビ、HD DVD方式やBD方式を含むHDD/DVDレコーダーは、各社の展示内容も充実しており、来場者の関心も高い。実は、シャープやソニー、東芝、Panasonicといったメーカーは出展ブースが幕張メッセのホール1~8ではなく、別の建物のホール9~11へ移り、建物の間を移動しなければならないのだが、それでも多くの来場者が移動しており、関心は高かったという印象だ。


 そんなAudio&Visual関連製品でもHDD/DVDレコーダーは、ホームサーバ的な役割を担うため、前述の三菱電機製のウェルネスケータイやKDDIのDLNAを利用したホームネットワークのように、ケータイとAudio&Visual関連製品を連携したり、活用しようという動きが少しずつ見えてきている。FMCをにらんだ今後の進化を考えれば、ケータイの次なる展開として、自然な進化と言えそうだ。

 ただ、欲を言えば、もう少し身近に役立つ部分での連動や連携も期待したいところだ。たとえば、以前、東芝のRDシリーズで実現されていた機能だが、HDD/DVDレコーダーや薄型テレビでの日本語入力をケータイのアプリから操作できるようにするなどの工夫も考えられるはずだ。iPhoneのように、ケータイと音楽プレーヤーの枠を超えてしまうような製品が登場している時期だからこそ、もっとAudio&Visual関連製品をはじめ、ネットワークや家電製品などとの連動を重視した製品やサービスが重要になってくるはずだ。そういった意味から考えれば、今回のNTTドコモのウェルネスケータイやKDDIのホームネットワークとの連携は、ケータイの次なる展開を模索するうえで意義深いものだと言えそうだ。

 以上、駆け足で紹介してきたが、CEATEC JAPANは10月6日(土)まで開催されている。もし、時間が許すのであれば、ぜひ会場へ足を運び、各社のブースで最新端末や動向をチェックしてみて欲しい。



URL
  CEATEC JAPAN
  http://www.ceatec.com/

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(法林岳之)
2007/10/03 19:18

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