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アルミパネルの質感でハイスペックを包み込む「SH902iS」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


SH902iS

 NTTドコモ/シャープ『SH902iS』。サイズ:49×106×23mm、135g。プロミネンスレッド(写真)、アストロブラック、シャインシルバー、コーラルピンクをラインナップ
 5月半ばに発表され、順次、販売が開始されたNTTドコモの「new9シリーズ」。902iSシリーズとそのバリエーションモデルから構成されるnew9シリーズだが、その第1弾として、シャープ製端末「SH902iS」が発売された。筆者も実機を購入したので、注目される機能を中心にレポートをお送りしよう。

【この端末のチェックポイント】

  1. アルミパネルを採用した折りたたみボディ
  2. 最大22時間連続音楽再生
  3. 基本機能をチェック
  4. こんなユーザーにおすすめ


アルミパネルを採用した折りたたみボディ

ボタンレイアウト

 基本的なボタンレイアウトはSH902iを継承。方向キーのデザインなどが少し異なる
 iモードの登場以降、折りたたみデザインのケータイが一気に普及したが、カメラ付きケータイが普及し始めてからはカメラ機能を活かすために、いくつかの新しいデザインが登場している。たとえば、折りたたみデザインをベースにしながら、液晶ディスプレイを反転して、カメラ撮影時に大きなファインダーとして利用できる二軸回転式ボディもそのひとつだ。

 今回紹介するSH902iSは、スタンダードな折りたたみデザインを採用している。FOMA 90Xiシリーズにおいて、SHシリーズはSH901iC以降、3機種続けて、二軸回転式ボディを採用してきたが、ここに来て、元のボディデザインに戻った格好となっている。開発者インタビューでも触れられて通り、シャープの担当者によれば、二軸回転式ボディをやめたのではなく、後述する音楽再生にフォーカスしたため、SH902iSでは折りたたみデザインを採用したという。

 二軸回転式ボディはカメラ付きケータイのカメラ機能を活かすデザインとして、SHシリーズをはじめ、パナソニック、三洋電機、カシオ計算機、東芝、日立製作所など、いくつかのメーカーが採用してきた。ただ、二軸回転式ボディはヒンジ部分の構造が複雑になるなどの理由もあり、サブディスプレイを搭載しにくい傾向にある。最近の端末ではボーダフォンの905SHやV604SHがモノクロ液晶のサブディスプレイを背面に搭載したが、二軸回転式ボディでサブディスプレイを搭載した例は非常に少ない。実は、二軸回転式ボディを採用した端末への不満点として、このサブディスプレイがないことがよく指摘されている。

 折りたたみデザインの端末では、サブディスプレイがないと、端末を開かない限り、時刻や着信の有無といった端末に表示される情報を見ることができない。「ケータイがあるから、腕時計はいらない」というユーザーが居るように、ケータイに表示される情報へのアクセスのしやすさは、ケータイの使いやすさのひとつと捉えられる傾向がある。今回のSH902iSは音楽再生時のディスプレイの必要性を考慮した面もあるが、こうしたユーザーの声に応えるため、敢えて通常の折りたたみデザインを復活させたという一面もあるようだ。


トップパネル サブディスプレイ
 ボディカラーによって、2つのライン加工を施したモノを用意。プロミネンスレッドは従来同様のヘアライン加工  有機を採用したサブディスプレイはハーフミラー処理が施されている。時刻や電波状態、音楽再生時の表示などが確認できる

 さて、実際の端末だが、二軸回転式から折りたたみデザインに変更されたものの、基本的なサイズは従来のSH902iとほとんど変わらない。持った感覚は少しボディ幅がスリムになった印象で、一段と持ちやすくなっている。デザインで特徴的なのは、トップパネル側にSH901iSでも採用されていたアルミパネルが採用され、中央に有機ELによるサブディスプレイが搭載されたことだ。アルミパネル部分はボディカラーによって処理が異なり、プロミネンスオレンジとアストロブラックはヘアライン加工、シャインシルバーとコーラルピンクはラインが交差したクロスライン加工が施されている。ライン加工されたアルミパネルはひんやりとした独特の質感もさることながら、指紋のあとなどが目立ちにくいという特徴がある。ただ、SH902iSは中央の有機ELディスプレイがハーフミラー処理が施されているため、この部分だけは手で触ると、指紋が少し目立つ。


最大22時間の連続再生が可能

音楽プレーヤー

 SD-Audio対応の音楽再生は最大22時間の連続再生が可能。リピートやランダム、頭出し、スキップなどの再生機能も搭載されている
 昨年来、少しずつ普及し始めたケータイを利用した音楽再生。SHシリーズはPシリーズとともに、いち早くSD-Audio対応の音楽再生機能を搭載してきた。ケータイでの音楽再生については、音楽再生中にメールや音声通話の着信がわかる、持ち歩く荷物が減らせるといったメリットがある半面、音楽再生でバッテリーを消費してしまい、いざというときにメールや通話ができないかもしれないというリスクがある。

 そこで、SH902iSではユーザーが安心して、ケータイも音楽も楽しめるように、最大22時間の連続音楽再生を実現している(端末を閉じた状態でヘッドホンを利用したとき)。ケータイに限らず、デジタルオーディオプレーヤーでは音楽CDなどから圧縮(エンコード)した音楽データを利用している。再生時にはこの圧縮したデータを伸張(デコード)することで、音楽が聴けるようになるわけだが、従来の環境ではケータイのCPUに相当するベースバンドチップがデコードの処理をしていた。これに対し、SH902iSではデジタルオーディオデータのデコードに対応した音源チップ(おそらくヤマハ製)を搭載することで、ベースバンドチップの負担が減らすことができ、最大22時間という連続再生時間を達成している。ちなみに、従来のSH902iの連続再生が約4時間とされているため、約5倍もの時間、連続再生ができるわけだ。また、同様の音源チップはauの2006年夏モデルの一部にも搭載されており、約10時間以上の連続再生を可能にしているが、メモリカードに保存された音楽データの再生ではSH902iSが最長となっている。


サイドキー

 音楽プレーヤーの基本的な機能は端末を閉じた状態でもサイドキーで操作可能
 SD-Audioについては、パッケージに「SD-Jukebox Ver.5.0 LE」が同梱されており、パソコンで音楽CDから取り込んだ楽曲の再生ができる。音楽データはminiSDカードに保存し、書き込み時には著作権保護機能付きカードリーダーが必要になるが、別売のFOMA USB接続ケーブル(1470円)でパソコンと接続することにより、SH902iSを著作権保護機能付きカードリーダーとして利用できる。扱える音楽データなどの仕様は基本的に変わらないが、新たにSD-Jukebox Ver.5.0 LEでユーザーが作成したプレイリストによる再生にも対応している。音楽再生中の曲名やアーティスト名などの情報は、端末を閉じた状態でも有機ELサブディスプレイに表示することができ、サイドボタンを操作することにより、曲の頭出しやスキップ、音量調節などをすることもできる。

 ステレオイヤホン(ヘッドホン)とminiSDカードは付属していないため、別途、購入する必要がある。リモコンなどもないが、miniSDカードは最大2GBまで対応しており、連続再生時間とも相まって、たっぷりと音楽再生を楽しむことができる。


基本機能もチェック

 SH902iからOSをSymbianに変更し、若干、使い勝手の変わったSHシリーズだが、SH902iSは基本的にSH902iのユーザーインターフェイスを継承している。


メニュー ズームメニュー
 メニュー画面は9分割アイコン表示が標準  文字を大きく表示できるズームメニュー

ショートカットメニュー アクティブマーカー
 よく使う機能を登録しておくことができるショートカットメニュー  利用した機能の履歴を呼び出せるアクティブマーカー

 メニュー画面は9分割のアイコン表示を採用し、個々のアイコンや配置、背景などのカスタマイズにも対応する。メニューや表示カラーなどを統一したデザインでカスタマイズできる「テーマ設定」も用意されているが、シャープの公式サイト「SH-MODE」で配布されているiアプリ「KEITAI Arranger」を利用すれば、テーマ用データのダウンロードと設定を一括して行なうことが可能だ。よく使う機能などを登録できる「ショートカットメニュー」、文字を大きく表示する「ズームメニュー」、使った機能の履歴が使える「アクティブマーカー」などもSH902iから受け継がれているが、ズームメニューについては表示項目が追加されている。

 メールはフォルダによる管理、メールアドレスや題名、電話帳グループ、電話帳への登録の有無などによる自動振り分けにも対応する。条件入力時はメールアドレスの送受信履歴なども利用可能だが、条件設定後の再振り分けはできない。


カメラ カメラ設定
 カメラはオートフォーカス対応3.2メガピクセルCCDを採用。搭載場所はSH902iと同じ  カメラの設定画面はほぼ全画面で表示するスタイルを継承

調光センサー

 テレビ電話用のインカメラは受話口横に装備。反対側にある白い部分は調光センサー。周りの明るさに応じて、液晶ディスプレイの明るさが変わる
 カメラはSH902iと同じオートフォーカス対応3.2MピクセルCCDを採用しているが、オートフォーカス周りの仕様が若干、変更されている。従来のSH902iをはじめ、オートフォーカス対応カメラを搭載した多くのカメラ付きケータイでは側面にデジタルカメラのようなシャッターボタンを装備し、半押しでフォーカスロック、押し切って撮影というスタイルを提案していた。これに対し、今回のSH902iSでは被写体の動きに合わせ、常にフォーカスを調整する「コンティニュアスAF」を採用している。コンティニュアスAFではSH902iでも動画でサポートされていたが、SH902iSでは静止画撮影でも利用できるようになっている。カメラを被写体にカメラを向けていれば、その間は常にフォーカスを調整し続けているので、[決定]ボタンを押すだけで、ピントの合った写真が撮れるというしくみだ。もし、フォーカスロックをしたいときは、従来同様、[開始]キーを押し、その上で好きな構図で撮影すれば良い。あまり高速な動きには追従できないかもしれないが、常にピントが合った撮影ができる安心感は大きいだろう。もしかすると、カメラ付きケータイのオートフォーカスでは、コンティニュアスAFが標準的なものになるかもしれない。


 撮影した画像は本体メモリ、miniSDカードに保存でき、サムネイル形式で閲覧することができる。画像編集については、従来同様、画面を左右に分割して、編集前後の画像を見比べながら操作できるスピーディラボが搭載されている。切り抜きやリサイズ、回転といった基本的な機能もきちんとサポートされており、頻繁に利用するQVGAサイズについても縦横どちら向きのファイルでも生成できる。ただ、最大サイズ(1536×2048ドット)やUXGAサイズ(1200×1600ドット)などで撮影したとき、画像切り出しやサイズ変更ができるサイズがQVGA以下に限られているのは少し気になる。ケータイからブログへの投稿などの用途が増えていることを考慮すれば、もう少し大きいサイズ(VGAなど)へのリサイズもサポートして欲しいところだ。

 SH902iSで従来のSH902iと比較して、仕様的に大きく異なる点のひとつが高速赤外線通信「IrSimple」のサポートだ。IrSimpleはNTTドコモ、シャープ、ITXイー・グローバレッジ、早稲田大学が共同開発した赤外線通信の規格で、昨年8月に業界標準化団体のIrDAで国際標準規格として採用されており、従来のIrDAの約30倍以上に相当する最大4Mbpsでのデータ転送を可能にする。ケータイへの搭載はSH902iSがはじめてで、間もなく販売が開始される「DOLCE SL」にも搭載されるほか、富士フイルムからはIrSimpleに対応したケータイプリンタ「Pivi MP-300」が発売されている。今のところ、対応機種が少ないため、SH902iS同士、あるいは記者発表時の体験デモ(富士フイルムのキヨスク端末)のみで試した範囲だが、3.2メガピクセルカメラで撮影した約800KB程度の画像もほんの2~3秒で転送できてしまう。今後、ケータイだけでなく、プリンタやPC周辺機器などで対応機種が増えてくれば、ハードウェア間のより便利なデータ転送手段になりそうだ。ちなみに、従来のIrDA対応ケータイや周辺機器とのやり取りも可能で、その場合の通信速度はIrDAと同じになる。


顔認証

 ロック解除の生体認証として、顔認証を採用。登録する顔写真の枚数が多い方が確実に認識するようだ。セキュリティレベルも3段階で設定可能
 FeliCaについても従来同様、搭載されており、JR東日本からはすでにモバイルSuicaの対応機種として認定されている。今回のFOMA new9シリーズのおサイフケータイ対応機種では、ICカードロックなどのセキュリティのために、全機種で指紋認証や顔認証など、いわゆる生体認証がサポートされている。SH902iSは従来のSH902i同様、顔認証が採用された。顔認証用画像は最大7枚まで登録でき、顔認証ができないときは端末暗証番号で解除するしくみとなっている。顔認証については、認証時、あるいは認証画像撮影時の明るさや背景などの影響を受けやすいが、SH902iSでは登録枚数を増やすことで、本人認証をしやすくしている。取扱説明書でも認証精度を高めるため、3枚以上の本人画像の登録を推奨しており、筆者も5枚ほど、登録してみたところ、1枚のときよりも認証しやすくなったという印象を得た。ただ、Fシリーズで採用されている指紋センサーなどに比べると、やはり、認証に手間が掛かる印象があり、今後のさらなる進歩に期待したい。

 また、セキュリティ関連では、PIMロック、ダイヤル発信制限、ICカードロックをまとめてワンタッチで、ロックしたり、解除したりできる「まとめて簡単ロック」が新たに追加されている。まとめて簡単ロックは[決定]ボタンの長押しで切り替えることもできるが、あらかじめ設定しておいて、省電力モードでディスプレイがOFFになったときや端末を閉じたときに自動的にロック状態に移行させることも可能だ。手軽にロックできることは便利だが、必ず3つのロックがいっしょに掛かってしまうため、ユーザーによっては使い勝手が面倒に感じられるかもしれない。


まとめて簡単ロック iチャネル
 ロック設定では新たに「まとめて簡単ロック」が搭載された。解除の手間は掛かるが、より安全に使いたいときには安心だ  SH902i同様、iチャネルのテロップ表示は切り替えが可能。壁紙と背景を合わせたスッキリ表示もできる

SD-Audioで音楽を楽しみたいなら「買い」

 さて、最後にSH902iSの買いのポイントについて考えてみよう。今夏、NTTドコモが市場に投入するnew9シリーズは、全体的に902iシリーズのバージョンアップモデルという印象が強い。そんな中、SHシリーズはSH902iの良さを継承しながら、ボディデザインの変更や機能のブラッシュアップにより、少し違ったテイストを出そうとしている。特に、SD-Audio対応の音楽再生機能は最大22時間の連続再生を達成し、本格的なデジタルオーディオプレーヤーにひけを取らない環境を実現している。カメラのコンティニュアスAFは実用性が高く、IrSimpleのような将来的に期待できる機能も搭載されており、ハイスペックな端末をバランス良くまとめ上げたという印象だ。

 これらのことを総合すると、SH902iSはやはりSD-Audio対応の音楽再生機能を十分に楽しみたいユーザー向けということになる。SD-Audioについては他機種でもサポートされているが、最大22時間の連続再生はSH902iSだけのアドバンテージであり、これをどう見るかが判断のポイントになる。連続再生を重視しないのであれば、従来のSH902i、兄弟モデルのDOLCE SLなどと比較して、選ぶことになるだろう。ただ、それでもSH902iSにはコンティニュアスAFやIrSimpleなどのアドバンテージがあることを覚えておきたい。もちろん、注目機能以外の基本的な使い勝手もよく考えられており、全体的に見て、完成度の高い端末であることは間違いない。



URL
  ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/20060511a.html
  ニュースリリース(シャープ)
  http://www.sharp.co.jp/corporate/news/060525-b.html
  製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/902i/sh902is/
  製品情報(シャープ)
  http://www.sharp.co.jp/products/sh902is/

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(法林岳之)
2006/06/27 11:09

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