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キーボードにこだわるPocket PC選び
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


偏ったPocket PC 2002選び?

コンパック iPAQ Pocket PC H3850

店頭価格は7万円を切る程度。ワールドワイドではPocket PCの中で一番人気だろう。液晶の美しさや細かな使い勝手が良いPDAだ

東芝 GENIO e550G

店頭価格は6万8000円前後。GENIO e550Gは液晶が非常に大きく表示も美しい。これで取り付け可能なポケットキーボードがあれば即購入するのだが…
 ここしばらくPDAはPEG-NR70Vを気に入って愛用している。使っていた結果、筆者の好みではPDAではキーボードが必須と思えるようになった。もちろん、PDAは非常にパーソナルな製品のため、キーボードの有用性は用途によって違ってくるだろう。

 筆者の場合は、メモとしては比較的長文を立って記録することが多いため、一度味をしめてしまった後は、キーボードは必須条件になってしまった。というわけで、PIMブラウザとしてだけ使っているというユーザーならば、選択肢はまた異なってくるだろう。

 そんなわけで、Pocket PC 2002をOSとしたPDAを選ぶ際に“キーボード搭載機種”に限定した筆者には、選択肢は2つしかなかった。jornada 568か、iPAQ Pocket PCかだ。

 いずれも内蔵キーボードタイプではないが、小型のキーボードを本体に取り付けて利用可能だ。東芝のGENIO e550G(一度発売が延期されたが、6月6日には間違いなく発売されるようだ)も、試作機を数日試用して、液晶の大きさが非常に気に入って、電車の中でメールを読んだりするには最適だと思われた。しかし、惜しいことに取り付けタイプのキーボードが発売されるかどうかは現時点では不明だ。もしキーボードが利用できることがはっきりしていたら、間違いなくGENIO e550Gを選んだと思うので、残念だ。

 キーボードを利用可能なPocket PC 2002では、個人的にはjornada 568を非常に気に入っていたが、何度も借りてその使い勝手がよくわかっていたこと、HPとCompaqの合併によって、非常に残念なことだが今後製品自体が継続する見込みが薄くなってしまったことで、結局、iPAQ Pocket PC H3850を購入した。

 何度も使ったよくできた製品よりも、出来はわからなくても未知の可能性にふらふらっとしてしまうのが筆者の悪い癖だ。本当はBluetoothユニットを内蔵したH3870にするつもりだったのだが発売が遅れていることもあり、H3850にしてしまった。


iPAQ Pocket PC H3850を購入してみて

 実際使ってみて、H3850にはとても満足している。もちろん、日本でのPocket PC 2002の流行のCFカードスロットとSDカードスロットのデュアルスロットではなく、本体だけではSDカードスロットしか搭載していない。そのため、通信を行なうためにはカードジャケットを装着しCFタイプやPCカードタイプのPHSカードなどを装着しないといけない。筆者は、iPAQ Pocket PCの従来機種のH3630ユーザーでもあるので、デュアルPCカード拡張パックなど周辺機器が豊富に揃っているということもある。

 また、Pocket PC 2002は同じCPUでどれも似たような速度のような気がするが、これが実際に触ってみると少し印象が異なる。ベンチマークはともかくとして、画面の切り替えやさまざまな表示がiPAQ Pocket PCは高速なのだ。これは、実際に使ってみたり、比べてみたりしないとわからないようなことだが、H3850は切り替えも非常にスムーズで使っていて快適だ。

 筆者の前の利用環境が32MBの内蔵RAMだったため、64MBに増えた点も満足感を高めている。筆者の用途だと出先でちょっとメールを見たり、ちょこっとWebブラウズしたりといった用途がメインなため、本体のメモリだけでも十分利用可能なのだ。スタイルなどは多少の変更はあってもすっかり見慣れてしまった銀色の筐体だが、逆に見飽きることもなく、筆者はけっこう気に入っている。

 また、iPAQ Pocket PCといえばフロントライトのオン・オフが自動で可能なセンサが有名だが、旧機種では少しタイムラグがあって、電車の中などで利用しているとライトが点くまでに待たされる感じがあった。それが、H3850では即座に反応してくれるため「ちょっと暗いところに入ったな」と思った次の瞬間にはフロントライトが点いており、とても快適に利用できるようになった。ただし、目まぐるしく明るさが変わるような場合でも、ほとんど遅れることなく追従するため、フロントライトがついたり消えたりを繰り返してしまう場合もあるが、これは例外で、日常的な利用ではまったく不満がないレベルと言ってよいだろう。

 H3850のディスプレイは大変美しく、COMPAQはいい仕事をしたと思う。名称だけとはいえこのブランドがなくなるのは、残念なことだ。


iPAQ Pocket PC H3800シリーズで利用できるキーボード2種

 H3800シリーズで利用可能な追加タイプのキーボードは、コンパック純正の「マイクロキーボード」(コンパックの直販価格は7800円)とTTTechのH3800シリーズ用のキーボード「T302 - SnapNType」がある。SnapNTypeは、pocketgamesで購入した(送料込みで5980円)。

 iPAQ Pocket PC H3800シリーズ用のキーボードは、純正品もサードパーティ製も、“帯に短したすきに長し”といったところがある。キータッチなどは純正が好みだが、純正では日本語ドライバに不具合があるようで、日本語の記号が入力できない。これは早くアップグレードを待つしかない。一方、SnapNTypeは、Palm用とは異なってキートップが少しぐらぐらしている。このあたりは嗜好の部分ではあるが、筆者の場合はもっとしっかり硬い方が好みだ。また、文節の区切りを切り替える方法がわからない(もっとも、これは後述のフリーウェアを利用することで現在は解決している)。

 そのほか、純正だとCtrlキーがあるのでちょっとしたキーアサインに便利だ。両方ともさまざまな拡張ジャケットをつけたまま利用できる点はすばらしい。また、SnapNTypeではキーボードを装着したまま充電できる。


SnapNType T302(左)とマイクロキーボード(右)。マイクロキーボードの方がサイズは小振りだ。高さはさほど変わらない マイクロキーボードはクリック感も良く、親指入力がしやすい。4つのハードウェアボタンも丈夫に付属している。各種の特殊キーもあり、これでバグさえなければと思わせる

コンパック純正マイクロキーボードの使用感

マイクロキーボードを利用するためには「キーボードを有効にする」をタップする必要がある。ある程度細かな設定もできる
 コンパックのポケットキーボードは親指で押した場合のキータッチも大変素晴らしく、なかなか使い勝手がいい。ただし、残念なことに致命的なバグがある。それは、日本語の記号などを入力できないというものだ。そのため、ソフトウェアキーボードを併用する必要がある。「、」「。」「ー」などを入力したいと思ったら、ソフトウェアキーボードで入力する。はっきりいって面倒だ。この点について、コンパックコンピュータの広報にお聞きしたところ、コンパックでは「不具合は認識しており、現在アップデータを開発中」だという。アップデータは、公開時期は未定だが、Webサイトからダウンロード可能にするということだ。

 ただし、キーボード自体はサードパーティのSnapNTyeより気に入った。キーの配列も日本語版でもあるので、なかなかよくできている。まず、Enterキー、Backspaceが端にあるのがいい。Ctrlキーは右下のため使いにくいが、それでもないよりはずっといい。Escキーがあるのもいい。

 押下時には、クリック感に近い感触がある。押すと「ぷちっ」といった音がして、はっきりと押している感覚がする。静かなところではうるさいくらいかもしれない。1回押したのか2回押したのかも、はっきりと違いがわかる。

 前述の句読点入力については、少々面倒ではあるが、当面の対策として単語登録して使うことにした。困るのは文章中で使わざるを得ない音引き「ー」だ。音引きはソフトウェアキーボードで入力するしかない。「キーボード」など音引きが2つもある文字を入力するのは結構苦痛だ。

 H3850は、マイクロキーボードを取り付けた状態でジャケットのポケットに放り込んで持ち歩き、ちょっとしたメモや思いつきの記録などを入力している。メールを読んだりする時は、デュアルPCカード拡張パックにPCカードタイプのAirH"カードを装着して利用していた。キーボードを取り付けると重量バランスが悪くなるので、手に持っているとちょっと重く感じられる。ただ、短い返信メールを送る程度なら、まったく苦痛でなく入力可能だ。PHSだとメールの受信も結構速いので、電車の待ち時間や電車の中で利用していた。

 メールが届いた時に起動すると便利かなとも思ったが、筆者のようにメールがめちゃくちゃに多いユーザーの場合は、逆にあまり意味がない気もしてきた。メールが多い場合は、移動中とかではなく少し手が空いた時に読んだ方がいい。そういった意味で、筆者の使用方法だとnPOPが手軽でいいようだ。後でPCでもメールを落とすため、出先ではサブジェクトや送信者名を見て、急ぐメールなどだけを選んで本文を読むようにしている。ちなみに、ザウルスMIシリーズの標準メーラーのように、整形のための改行を続けてくれると読みやすくなってさらに便利だろう。MIシリーズのメーラーは、マルチアカウントに対応していない点が残念ではあるが、よくできていると思う。


各種のiPAQ Pocket PC用拡張パックを取り付けたままキーボードを利用することができる。メールの返事なども非常に書きやすくなる 標準の液晶カバーは取り付けられないことはないが、キーボードにかかって少々窮屈な感じだ

取り外しは底部のボタンを押してキーボードを引っ張る
 ちなみに、PDAでメールを読む用途では、GENIO e550Gはますます魅力的に感じられる。とくに電車の中などでCFタイプのAirH"を使ってメーラーとして利用すると非常に快適だと思う。液晶が大きいというのはなんといってもすばらしい。GENIO e550Gに、小型の取り付け可能なポケットキーボードが登場してくれれば見るだけでなくメールへの返信も格段にしやすくなるだろう。ぜひ検討していただきたいものである。

 Webブラウザも、複数ウィンドウを開く必要がなければ、ザウルスMIシリーズのWebブラウザがもっとも高速でフォーマットも崩れず、使い勝手がいいと思う。ザウルスのキーボードでは、いろいろ制約がある点がちょっと残念だ。とくに、2、3回キー入力しないと日本語が表示されない点は、タイプミスも多い小さなキーボードなので、できれば今後変更してほしい点だ。


SnapNType T302を活用する

LS Landscapeと組み合わせれば、広い領域を見たりすることができて快適だ。ただし、液晶で見ている場合はソフトウェアで解像度を擬似的にあげているだけなので少しぼやける
 SnapNTypeでは、純正のマイクロキーボードは異なって、EnterキーやBackspaceがキーボードの端にないのが筆者の場合はつらい(慣れの問題だろうけれど)。また、CtrlキーやEscキーがないのもつらい。日本語を変換した後の文節の区切りができないのがさらにつらい。結構高速な入力が可能な分だけ、使用中はつらいところだらけに感じられていた。

 ただし、もうキーボードなしの入力には絶えられなくありつつある。キーボードで入力する場合は、キーボードの音が出ないように設定していたが、SnapNTypeを快適に使用するために音ありにしてみた。最初のキーが入力されない場合に気がついて便利かもしれない。

 また、日本語と英語の切替もソフトウェアキーボードを利用するしかないが、筆者の使い方だと通常は日本語入力モードにしておいて、時々シフトキーを使って英字にするのがいいようだ。Shiftキーを同時押せばMS-IMEでは英字の入力になる。

 キーボード自体については、前述の通り、純正品に比べて少しSnapNTypeの方がぐらぐらして、また文字の取りこぼしも多い気がする。

 そのほか、不満な点としては文節の区切りができないことが挙げられる。しかしこれは、一瞬ひらめいて、5つのハードウェアボタンにアプリケーションを割り付けることが可能なBtnPlusを利用してみることにした。BtnPlusでは、シングルタップだけではなく、ダブルタップやトリプルタップにもアプリケーションを割り付けることが可能だ。BtnPlusを利用すると、このほか、[Ctrl+A]や[Shift+→][Shift+←][Esc]なども割り付けることができる。そこで、左の方のボタン2個に[Shift+→][Shift+←]を割り付けてみたら、文節の区切りが可能になった。問題はダブルタップに割り付けたので、時々シングルタップと判断されてしまって、割り付けたアプリケーションが立ち上がってしまうことくらいだ。文章をよく入力する機会がある人は、シングルタップに割り付けてもいいかもしれない。Escも使えるようになってとても便利だ。これで、英字と日本語の切り替えも可能になったら言うことはないのだが。

・BtnPlus
http://www.momidi.org/software/BtnPlus/index.html

 また、JS Landscapeを利用するとなぜかSnapNTypeでは入力できなかった。確か純正のキーボードではできたので、なぜダメなのかはよくわからない。

 また、残念ながら、PDApexのPS/2キーボード用の赤外線アダプタ用のドライバをH3850にインストールしたが利用できないようだ。ドライバはインストールはできるようだが、キーボードの選択のところで「IrKB101 PS/2 Adapter」が選択できない。選択しても「ひらがな/カタカナ」になってしまう。Webサイトで公開されているドライバのバージョンをチェックしてみたが、CD-ROM付属のものと同じのようだった。これは、ドライバのコンフリクトの問題ではなく、iPAQ Pocket PC H3850では対応していないようだ。


SnapNType T302は、CtrlやEscなどがないのは残念だ。やや柔らかく押した場合に確実性が足りない気がする 日本語入力では、英字と日本語の切替、文節の切替などができないのは少し残念

SnapNTypeのドライバは、装着した時に自動的に起動するように設定しておくこともできる BtnPlusを利用すれば、ハードウェアボタンに各種のアプリケーションソフトウェアやコマンドを割り付けることができる。Shift+→やShift+←を割り付けることで文節の区切りを変更できる。Escも割り付けておくと便利だろう 顔文字のボタンを押すことで各種の記号や顔文字を入力できる

クリエTシリーズ用のキーボード発売

実売価格は5000円を切る程度。クリエTシリーズ用には、新たに外付けタイプのキーボードが利用可能になった
 クリエPEG-T650の発売に合わせて、Tシリーズで利用可能な追加の小型キーボード「PEGA-KB20」が発表された(発売は6月8日予定)。PEG-NR70Vの購入以降、まったく使わなくなってしまっていたPEG-T600を売ろうかと思っていた筆者は思わず喜んだ。使いにくかったハードウェアキーも改善されるようで、今から利用を楽しみにしている。

 また、Handspringでは、キーボードを本体に内蔵したカラー対応のTreo 270、無線なしのTreo 90を発売する。日本語化されての発売は残念ながらなさそうだが、こういったキーボード内蔵タイプのPDAが日本でも発売されることを期待したい。

 もっとも、今の若者は、QWERTYキーボードではなく、携帯電話タイプの入力に慣れてしまっているようなので、逆に日本ではQWERTYキーボードを内蔵したPDAは残念ながら登場しないのかもしれない。ポケットボードがもっと普及していたらと残念で仕方がない。QWERTYキーボードを搭載したPDAを求めるということは、今や携帯電話で高速で入力することができない古い世代であると宣言しているようなものなのかもしれない。それでも筆者は、言わずにはいられない。「もっとキーボードを!」


・ iPAQ Pocket PC H3850/H3870ニュースリリース(コンパック)
  http://www.compaq.co.jp/press/press787.html


(山田道夫)
2002/05/31 18:17

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