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ソニー CLIE PEG-NX70Vを遊び倒す
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山田道夫 1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している |
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PEG-NX70Vを2週間以上使い続けてきた。発売以来、時間が経ったことで、わかったこと、気に入ったところ、残念に感じられるところが出てきたところだ。総じて、個人的にはなかなか気に入っている。筆者にとってベストの選択というわけではないが、筆者の使い方だとPDAとしてこれ1台で足りる点も多い。なにより気に入っているのは、デジタルカメラの部分だ。これは、筆者個人の嗜好の部分もあるとは思うが、なぜ、筆者が気に入ったかを中心にPEG-NX70Vを紹介する。
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筐体のデザインは相変わらずすっきりしている。液晶部を開くと非常に大きい印象を受ける
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前機種のPEG-NR70V(右)との違いは意外にない。デジタルカメラの形状が丸から四角になり、デジタルカメラの上部に3つの穴のマイクが見えるくらいだろう
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裏面の印象はCFカードスロットが存在することから前機種とは異なる。スピーカーの位置もやや上部に移動した
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無線LANカードはソニーのPEGA-WL100だけが対応している
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筐体を横から見たところ。CFカードスロットの出っ張りがやはり目立つくらいだ
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CFカードスロットにCFカードを挿入しているとターンスタイルの自由度やカメラの自由度はかなり下がる
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心配なのはソフトウェアの互換性?
PIMなどの内蔵ソフトウェアは、ようやく320×480ドットの画面にも対応し、ソフトウェアシルク部分を消した状態でも、画面が拡大されて表示されるようになった。PIMなども内蔵されているソフトウェアで十分というユーザーも多いだろうけれど、これまで多機能なシェアウェアなどを使ってきた筆者には物足りない部分もある。
PEG-NX70Vは、Palm OS 5になったこと、さらには前モデルPEG-NR70Vでは独自の拡張をしていたため、ソフトウェアの互換性はお世辞にも良いとは言い難い。Palm OS 5での前OSからの互換性は6割とも7割とも言われているが、その中でもPEG-NX70Vで動かないものもあるという状況だ。
筆者が購入しなかった理由の1つが、筆者にとってのPalmデバイスのキラーアプリであるザウルスショットの使い勝手を向上させたような画面イメージをhtml風(厳密に言うとリンクを階層で保存できるがテキストではないので使い勝手は異なる)やテキストで保存できるHandStoryや、定番のPIMソフトウェアAgendus(旧名Action Names)が最初使えなかったことによる。
しかし、米国でやはりPalm社がPalm OS 5対応のTungsten Tを発売してから、米国製や韓国製などのシェアウェアで対応しているものが増えてきている(まだ、ベータ版の場合もあるので油断はできないが)。
もっとも嬉しいことは、筆者にとってのPalmデバイスでのキラーアプリの1つ、HandStoryがPEG-NX70V/60に対応したことだろう。まだまだベータ版なため不具合もありそうだが、嬉しいことだ。さらに、筆者の愛好しているPIMであるAgendusもほぼPEG-NR70V/60への対応を終えている。
そういった意味で、発売以来数週間でPalmware環境は劇的に向上しつつあるとも言える。なお、対応ソフトウェアなどについては「CLIE User Club! NX-BBS」「SONY CLIE NX70、NX60対応アプリ情報」などのサイトが詳しいので、ご参照いただくと良いだろう。
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ラウンチャは一見便利だが、どうしても慣れることができなかった。新規にPalmを使い出してジョグダイヤルが気に入ったユーザーにはいいかもしれない
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筆者にとってのキラーアプリHandStory。一応、PEG-NX70Vにも対応してくれた。PCの画面でちょっとしたメモ代わりにWebサイトやテキスト、画像などを保存することができる
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もう1つのキラーアプリがAgendusだ。日の表示とToDoの一覧表示が可能な点が個人的な嗜好として気に入っている。同時に月表示で文字で予定の表示が可能なフリーウェアKsDatebookも気に入って使っている
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Webブラウズも簡単に?
PDAで本当にWebブラウズする必要があるのか、という根元的な問いに対する答えは、筆者の場合はっきりしている。たまには便利だし、やると楽しいのでやれる機種があってもいい、というものだ。メールの場合は今はかなり実用的になってきたと感じるが、Webブラウズは画面が小さいことや速度の問題などもあって、まだまだ完全に実用と言い切るのは難しいと感じている。
PEG-NX70Vでは、ディスプレイは320×480ドットとPDAとしては大きく液晶も美しい。PEG-NR70Vなどの旧機種で不満だった点は、通信をしようとするとIrDAなどの遅い赤外線通信を利用するか、機器や対応機種もまだあまりなくアダプタも高価なBluetoothか、非常にかさばってしまう通信アダプタを別途購入するしかなかった点だと言える。PEG-NX70Vでは、通信カードスロットを本体に搭載したため、対応機種は限られているが、直接本体に通信カードなどを刺して利用することが可能となった。もっとも、本体にCFカードスロットが付属したものの、現行機種では通信アダプタとしてしか利用できない。
発売以来、AirH"には対応しておらずDDIポケットのPHSカードCFE-02を使っていたが、ようやく12月2日にCF PHSカード(AH-N401C、AH-H401C)に対応したドライバが公開された。日にちがないためAH-N401Cでそれほど試せているわけではないが、印象としてはそれなりに速くはなった気はする。
ただし、AirH"自体、近くでDDIポケットを使っている人がいるだけで速度ががくんと落ちてしまうサービスでもあるため、その比較は非常に難しい。新幹線の中という極限状態だったが、AirH"がまったくつながらずに困っていたら、友人もDDIポケットだったため電波を拾うのを競合していた結果らしいことがわかったこともある。友人がPHSを切ったら、普通にデータ通信が可能になったりした。
試しに筆者の事務所でスピードテストサイト(インターネット回線速度調査)で試してみたら、27kbpsでがっかりだったが、その直後に調べたiPAQ Pocket PC H3850でNetFront 3で16kbps(IEはテストできず)、42kbpsだったため、DDIポケットの通信状況が悪い時期で誤差の内だったのかもしれない(通常は80kbps程度は出るはず)。一応の目安にもならないが、こういった結果があったということでご参考まで報告しておきたい。
NetFront自体は使い勝手は悪くはないと思う。巡回も可能だったり、PEG-NX70Vの美しくPDAとしては大きな液晶とソニーが採用したフォントの美しさとあいまって、小さな文字で表示させたらデータ量も多く、なかなかすばらしい。ただし、問題もある。まず、NetFrontはROMに内蔵されているわけではないので、インストールする必要がある。16MBのRAMのうちさらに2MBほどNetFront 3で占有されてしまう。さらに、インストール時には6MBもの空き領域がないといけないため、インストールすることだけでも結構大変なことになる。6MBのRAMというのは、PEG-NX70Vで可能なことを考えると、どう見ても少なすぎると思う。
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付属のメーラは表示領域が広くなった点だけでも使い勝手が向上した
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NetFront 3も使い勝手は悪くない。表示できるWebサイトもPDAとしてはなかなか多彩なようだ
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ただし、RAMの残りが少ないせいか、画像を表示できなくなることがよくある
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放っておくとメモリがすぐになくなってしまうため、比較的まめな管理が必要
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デジタルカメラとしてのPEG-NR70V
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デジタルカメラは1ボタンで起動でき、非常に使い勝手がいい。画質はそれなりだが、320×480ドットの美しいTFT液晶で閲覧できる
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前モデルに比べて約31万画素1/5.5インチCMOSイメージセンサを搭載するなど、カメラ部分はかなり改善されている。画質はそれなりだが、色味の再現性は悪くない。
ただし、相変わらずマクロがないのは筆者としては不満だ。名刺を撮ったり(将来的には携帯電話でもそういった方向性があるようにOCRソフトウェアで自動的にテキスト化できたりしたらさらに便利だろう)、ちょっと寄った撮影をしたい場合には、必須の機能だからだ。そういった場合には、筆者は東急ハンズで700円で購入した凸レンズをデジタルカメラの先に取り付けて撮影したりする。ただし、組み込みではなく取り付けに手間がかかるため、あくまで楽しみとして行なっており、実用的とは言い難い。カメラの先に凸レンズを付けるという方法は、固定焦点のカメラでは昔からわりと知られた方法のようだ。
なお、PEG-NX70V自体は、CFカードスロット部分が邪魔をして、カメラの使い勝手自体は悪くなった。ターンスタイルで、ほぼ直角に向けて撮るという場合がPEG-NR70Vでは多かったのだが、このスタイルだとCFカードが邪魔をしてしまう。撮れる角度もきわめて小さく、画質自体はまずまずなだけに、逆に非常に残念に思えてくる。
また、PEG-NR70Vでは撮影時に日付を画像に付けることができたが、PEG-NX70Vではそういった機能はなくなってしまったようだ。単純にメモとしてだけ撮りたい場合は、なかなか便利な機能だったので残念だ。また、クレードルは、CFカードスロット部の出っ張りのために支えがなくなり、前機種とは多少異なっている。PEG-NR70Vのクレードルを流用しようと思ってもCFカードスロットが邪魔になってうまくいかない。
内蔵デジタルカメラで撮影した写真や動画をすぐにメールで送信することもできる。誰を撮ったかをすぐに忘れてしまいがちで面倒くさがりの筆者などには、意外に撮影後メールですぐに送信可能なのは便利な機能だと言える。
■ 内蔵デジタルカメラでの撮影例
動画を撮る
CLIE PEG-NX70Vのスチル・ムービーカメラを使っていると、本体内蔵であることの使い勝手の良さをしみじみと感じてしまう。本体横のボタンを押しただけですぐに撮影できるし(本体横のキャプチャボタンは、CLIE Camera、Movie Recorder、Voice Recorderのいずれかを割り振ることができる。デフォルトではCLIE Cameraとなっている)、撮った画像や映像をその場で比較的大きな液晶画面で楽しめる。音声も録れる。もちろん、画質は160×112ドットなので今時のデジタルカメラにも劣るし、携帯電話にさえ劣っている場合があるかもしれない。しかし、それをそれなりの音を再現しながら320×244ドットで表示できる点はなかなかすばらしい。画質は荒れてしまうが、人に見せたり驚かせたりする場合には便利だろう。
動画の音も意外にきちんと大きな音で録音されているようだ(PEG-NX70Vで聴く場合は、背面にスピーカーがあるため大きな音にはならないが)。もちろん、昨今のデジタルカメラであればこれ以上の機能は普通にあるが、PDAに付属しているデジタルカメラとしては結構いい線はいっている気がする。特に動画を画面サイズほぼ一杯で表示できるのは、画質は荒れるが人を驚かせるにはなかなか楽しい。
PEG-NX70Vでは、すでに旧知の情報だが動画ファイルの拡張子mqvをQuickTimeの拡張子movに変更するだけで再生できる。ただし、PEG-NR70Vに付属しているQuickTime 5ではだめで、QuickTime 6をアップルコンピュータのWebサイトよりダウンロードする必要がある。有料版と無料版があるが、無料版の方で十分だろう。ファイルのダブルクリックでは開けないが、「ファイル」「ムービーを開く...」で開くことができる。
結論に代えて
正直なところ、多機能な製品のため、2週間程度試用したくらいでは、とてもすべてを使い切ることはできなかった。試していない機能も多い。
筆者の実際の使い方の場合、PDAでなんでも(多少無理をしてでも)やる時期が続き、それに対する反動なのか、ほとんどをノートPCでこなし、PIMブラウザを持ち歩く期間との繰り返しになる。
筆者が出先でしていることを考えると、まずはテキストの入力だが、これは立ったまま行なう場合と、座った状態で行なう場合、さらにテーブルのあるなしでも便利なデバイスが異なってくる。机がある環境なら、たとえ大型のキーボードを外付けしたり、さまざまな周辺機器を利用したとしても、PDAより、さすがにノートPCの方が使い勝手はいい。ちなみに、PEG-NX70Vのキーボードは前機種より改善され、押しやすくなっていると感じる。
次に多いのがスケジュールやアドレス、ToDoの確認などPIMなどを見ることだ。もちろん、スケジュールなどの入力もするがPIMは見ることの方が多い。筆者は標準のソフトウェアではもの足りないところがあって、AgendusとKsDatebook、Handstoryを愛用している。また、ゲームをしたり、テキストブラウザとして使うことも多い。時にはメールをダウンロードしたりもする。まれに返信を書いたりもする。さらに、Webブラウズする場合もあるが、頻度はそれほどでもない。ボイスメモとしてはよく使う。紙に手で書くことさえ面倒な場合があるからだ。
さらに、PEG-NX70Vのようにデジタルカメラを内蔵しているモデルだと、写真を撮ったりもする。日常的にデジタルカメラを持ち歩くことはしていないが、日常的に持ち歩いているPDAにデジタルカメラが搭載されていると、撮る機会も多くなる。筆者の場合は、現在使っている携帯電話にはカメラ機能が搭載されていないので、貴重なデバイスといえるのかもしれない。
ただし、欠点もある。CFカードスロットが邪魔をしてカメラが撮りにくくなったことや、対応ソフトウェアが増えているとはいっても、まだまだ未対応のもの・対応見込みのないものもある。CLIE Launcerにはどうしても慣れないので、従来のPalm伝統の標準画面に変更してしまった。個人的にはジョグダイヤルの使用が好みではないということが最大の理由かもしれない。
また、可能なことが多くなった分だけ、不満に感じる点もある。たとえば、ボイスメモを使っている最中に他の機能は使えない。メモリ16MBというのは、メモリースティックを併用することを前提としても、現在では少なすぎると思う。また、メモリースティックに撮影したデジタルカメラの映像が増えていくと、CLIE Viewerはインターフェイスや見た目はともかくとして、メモリースティックのデータの表示があまりにも遅すぎる。100個くらいデータがあると、1個ずつゆっくり表示されていく感じだ。
しかし、そういったことは、機能の向上とソフトウェアの改善によって解決していく問題だとも言える。Palmデバイスで多機能な製品を使いたいといったユーザーには非常に向いていると思う。対応ソフトウェアも増えてきている。すべての人に勧められる製品ではないと思うが、とても魅力的な製品であることも確かだ。個人的には機能向上したデジタルカメラを内蔵しているだけでも、非常に気に入っている。
・ CLIE PEG-NX70V/NX60製品情報(ソニー)
http://www.nccl.sony.co.jp/products/peg-nx70v/
・ NXシリーズ専用BBS(CLIE User Club!)
http://www.clieclub.jp/cgi-bin/c-board/c-board.cgi?id=NX_bbs
(山田道夫)
2002/12/11 22:36
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