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GENIO e550GS/GXとAH-N401Cはスマートフォンの夢を見るか
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山田道夫 1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している |
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東芝とGENIO eとその歴史
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GENIO e500GXとGS。見た目の違いはサイドパネルと左下のGXとGSのロゴ程度。GXのメモリ128MBというのは非常に魅力的だ。価格も安価ではないが、機能や付属しているソフトウェアからみたらかなり割安感がある
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東芝がGENIO eの発表会を行なったとき「企業向けのソリューション端末であり、コンシューマに向けた製品ではない」とはっきり語ったものだ。発表は2001年7月16日で、2001年8月20日発売された。正直なところ、筆者はかなり売れ行きを危惧した。初代のGENIO eは意欲作であったが欠点も多かった。小型軽量でSDIOに対応していたが、価格は7万円と当時としても少し割高感があったこと、全体の作りが少しきっちりしていないような印象を受けたことなどが気になった。しかし、その最大の理由はソリューション指向だという点だった。
それまで、PDAは一部企業での導入もあったものの、個人が使用する製品であり続けていた。ビジネスで利用する人が多いにしても、それは個人の判断での利用に留まっていたと思う。もちろん、ビジネスソリューションツールとして、バリバリ活用している人だっていただろうけれど、そういった企業のソリューションユーザーは、どちらかといえばPDAユーザー全体から見てかなり特殊なユーザーであったと思う。個人に1台のPCさえ必ずしも支給されているとは言えないオフィス環境において、PDAがどれだけ活用可能なものかという点では、大いなる疑問が生じてもしかたがなかったと思う。
また、ハードウェアの作り込みが甘かったのか、同じCPUを試用したiPAQ Pocket PCに比べて動作があまり機敏でない印象を受けた(その後、筆者は、あれはiPAQ Pocket PCが独自のチューニングをしていて高速に見せていたのだと気づくことになるが)。
もちろん、初代GENIO eの頃から優れた素性もかいま見られた。いまでこそ一般的になったが、SDIOに最初から対応していたことも見逃せない(ただし、対応した周辺機器は皆無だっが)。もちろん、CFカードスロットを搭載しているため、CFカードスロットを通信で利用し、SDカードスロットをデータで利用するという日本の実情にあった使い方が可能だった。
その後、2001年11月にPocket PC 2002を搭載したGENIO e550Xを経て、2002年4月にCPUにXScaleを採用し、反射型TFTながら4インチの液晶を搭載し、さらにバッテリ駆動時間を約13時間と大幅に増やしたGENIO e550Gを発表した。別売のUSBホストケーブルを利用すると、USBの周辺機器を一部利用可能な点も見逃せない。その結果、細かな改良を加えPDAとしては大型液晶を搭載したGENIO e550Gは、Pocket PCではもっとも売れる製品となった。PDA全体として見ても、ソニー CLIEに次いで2位、3位をずっとキープし続けている。7万円近い、PDAとしては高額な部類に入る製品であることを考えると、これはすごいことだと思う(もっとよく考えると、これだけ高額な製品がランキングの上位にいるということは他の製品がいかに売れていないか、ということを反映しているということにも気づくわけだが)。
これは、日本の実情にあった製品を、細かな気配りで提供してきた東芝の努力の成果だろう。液晶を大型化し、ストラップをつけ、別売ながら液晶カバーを発売する。こういったことは非常に細かなことだが、ユーザーの意見を聞く気がなければいずれも実現しなかったことだと思う。また、ROMやメモリのアップグレードなどのサービスや、ROMのアップグレードをこまめに実施したことでも、ユーザーの信頼を勝ち得ていったに違いない。こうしたことは必ずしも製品の販売につながるとは限らないが、狭いPDAの世界において東芝ファンを増やしていったことは確かだろう。
GENIO e550GSとGENIO e550GX
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GENIO e550Gの伝統でプロセッサはあいかわらず可変だが、100MHzが新たに追加された。CPUを遅くしてもそれほど体感が変わらない作業も多いので、ユーザーの好みでバッテリーとの兼ね合いで選べばいいだろう
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そんなGENIO eの新作GENIO e550GSとGENIO e550GXを試用する機会があった。両モデルの違いは、e550GXが128MBのRAMを搭載した点だろう。e550GSには4000円相当のリモコンが付属しているし、ソフトウェアはPowerPointやExcelのデータを表示する「ClearVue Office」などe550GXの方が多い。価格は直販価格で、5万9800円と6万9800円だ。e550GXの方が価格は高いがソフトウェアも豊富で割安感が大きいかもしれない。筐体デザインは一緒だが、配色は変更されている。e550GXでメモリが増えたことが最大の変化だが、非常に日常の使用にあった実用的なマシンがさらに完成度を高めたという印象が強い。
正直に言って、筐体のデザイン自体が変わったわけではないので外観的な新味はない。サイドパネルの色が違うとは言ってもサイドパネル自体は別売されているということもある。ただし、付属しているのは別売品にもない色だ。個人的にはGENIO e550Gの頃から透明なサイドカバーを希望している。筐体側面の複雑な刻みが見える方がデザイン的にかっこいいと感じているからだ。もちろん、このあたりは好みの問題なので、松本零士的なSFっぽいデザインが好きかどうかで違ってくるかもしれない。
ちなみに、カタログスペック上のバッテリ駆動時間はGSにくらべてGXは10時間が9時間と約1時間短くなっている(400MHzで動作時)。
実際に使ってみて
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GENIO e500Gシリーズの数少ない残念な点は、CFカードで出っ張りのあるタイプを利用していると、SDカードが取り出せないことだろう。後はCFカードの取り出しボタンが欲しいくらいだ
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切実にCFカードの取り出しボタンが欲しくなったのは、まったく取っ掛かりのないType2のCFカードをうっかり入れてしまった時だった。取り出すために、少しだけ出っ張っていたCFカードにナイフで刻みを何度かつけ、ナイフの刃を少しずつ押し出すなど苦労してしまった
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GENIO e550GS/GXで、DDIポケットのPHSカードAH-N401Cで通信してみたがPHSカードを直接挿せるのは便利だ。特に、日常的に使用しているマシンがiPAQ Pocket PC H3850にSilverSlider IIIを装着し、さらにマイクロキーボードまで取り付けて利用している筆者からすると、そのままでPHSカードを利用できる点は大変素晴らしいと思う(まあ、iPAQ Pocket PCが、日本では今一つの仕様になってしまったということかもしれないが)。
ただし細かいところだが、気になる点もある。SDカードスロットが近すぎるため、厚みがあるタイプのCFカードだと一度CFカードを外さないと取り出せない点は、e550Gの伝統ともいえるがかなり不便だ。
また、CFカードの取り出し用スイッチがないのもどうかと思う。筆者は、うっかりまったく出っ張りのないバルク品に近いType2のCFカードをを挿入してしまって取り出すのに苦労したことがある。どうやって、こういったきついカードを取り出すのかと思って、遅ればせながらマニュアルを見たら、あらかじめCFカードに取り出し用のラベルを貼り付けておけと記載されていて呆然とした。今時まったくとっかかりのないCFカードというのも珍しいとは思うものの、CFカード取り出し用のボタンはやはりあるべきだと思う。
気になる点を先に述べたが、総合的に見て細かな使い勝手は悪くない。ボタンなども過って押しにくくなっているし、方向キーも使い勝手のいいカバーの方が最初から付けられるようになった。また、スタイラスも重さは足りないが、かなり長く使い勝手はいい方だろう。付属の東芝オリジナルのメニューも変わってはいないが、使い勝手については十分及第点だと言える。
バッテリ駆動時間などを試してみる
GENIO e550GSでWindows Media Playerで画面を消去し、音楽を連続再生してみた。5時間27分で最初の警告が出て、6時間40分で2度目の警告が出た。この時点で5%くらいはバッテリが残っているようだが、WMPの再生はできない。このくらい持ってくれれば、まずまずと言えるだろう。今回はテストのためにスピーカーで再生したのだが、イヤホンだったら再生時間は1割から2割くらいはさらに持つと思われる。また、CPUは400MHzで行なっているため、クロック数を低く設定することでも変わってくるはずだ。
CF型AirH"カード「AH-N401C」でスマートフォン?
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片手で持ちながら、CFカードのPHSカードを利用して電車の中などでも簡単にデータ通信が可能だ。AirH"によって定額でつながりやすい環境が実現した結果、PHSカードスロット用のCFカードスロットが日本のPDAでは必須となったといえるかもしれない
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GENIO e550Gでは、AH-N401Cを使っての音声通話が可能だ。iPAQ Pocket PC H3800シリーズと異なっているのは、さらに、Wake on Ringに対応しているため、GENIO eの電源をオフにしていても、電話の着信などで電源を自動的にオンにできる点だ。NECインフロンティアが無償でダウンロード配布する電話アプリケーションソフトにより、パワーオフ時に電話着信した場合でもGENIO eの電源が自動的にオンになり電話を受けることができる。
これはちょっとすごいことだ。いざとなったら、待ち受けにも使える。ここで気になるのがバッテリー連続駆動時間だ。スリープ状態でも大幅にバッテリーが減っていくようだったら、実用としてはとても使えないことになってしまう。そこで実際に待ち受けしつつ試してみることにした。
GENIO e550Gシリーズ用のAH-N401C dialerは他機種とは別のものを使用する。他機種用のソフトウェアも使えないことはないが、スリープ状態での待ち受けができなくなる。最初は単純にiPAQ Pocket PC H3850で利用していたAH-N401C dialerをコピーして使っていたので、なぜかスリープ状態での待ち受けができなくて悩んでいたが、NECインフロンティアのWebサイトを見に行ってようやく専用ソフトウェアがあることに気づいた。「Pocket PC 2002用音声通信専用アプリケーション(東芝Genio e550G専用)」をダウンロードする必要がある。自動解凍型のファイルを解凍し、CABファイルをGENIO e550G側で実行すれば「AH-N401C dialer」が展開される。
また、GENIO e550GS側では、「パワーマネージメント」「オプション」「CFカードに電源を供給する」をチェックする必要がある。AH-N401Cの左側のダイオードが点滅する。また、点滅は、AH-N401C dialerの「設定」「待受中のカードLED表示」のチェックを外すことでやめることもできる。
試しにバッテリーがどのくらい減るかをテストする気になった。しかし、5時間で95%残り(1時間に1度程度確認している)ので、100時間程度持つことになる(のか?)。そのため、テストは簡単にあきらめた。まあ、連続待受時間を気にしなくてよい程度は十分持ちそうだ。ただし、音声通話したら、5分程度話しただけで2%は減っていた。その後17時間6分経ったら82%にまで減っていた。大体、1時間1%くらいずつ減っていく感じで間違いないようだ。だいたい、3日以上は待ち受けできることになる。これだけ持てば、十分実用的と言えるだろう。
通話は、GENIO e550GS/GXをひっくり返して使用する。スピーカーが底部の向かって右側、マイクロホンが本体向かって左側面上部にあるからだ。
音声品質は意外にいい。好みもあるだろうけれど、PHS端末で直接通話するよりは劣るが、PDC携帯電話よりはいいかもしれない。GENIO e550GSでは、かすかに自分の声が聞こえる程度だが、固定電話側ではかなりはっきりと自分の声が少し遅れて聞こえてしまう。ただし、iPAQ Pocket PC H3850で通話した時ほどではない。嗜好性のないマイクロホンのため、うるさい場所ではかなり音を拾ってしまうようだが、それでもまあまあ実用的だといえる。
AH-N401C dialerは前回でも簡単に触れたが、「連絡先」との連携がしっかりしているなど、なかなか使い勝手がいいソフトウェアだ。着信履歴や発信履歴も残るし、マナーモードにしたり、非通知による着信拒否が可能だったり、番号通知を設定することも可能だ。
完全に携帯電話と置き換えてしまうわけにはいかないかもしれないが、これだったらかなり携帯電話代わりに使うこともできるかもしれない。もちろん、ビジネスでの常時利用などには向かないとは思うが、個人でたまに使う程度だったり、緊急用としては十分だろう。
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AH-N401Cを使って待ち受けをするWake on Ring機能を利用するためにはCFカードに電源を供給するオプションをチェックしておく必要がある。電話をかけたり受けたりするだけだったら、特に設定は必要ない
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シンプルだが必要にして十分な機能を持つAH-N401C dialer。GENIO e550G専用ソフトウェアをダウンロードする必要がある。連絡帳との連携がいいし待ち受けもかなり持つので、気分的にはスマートフォンとしての利用も可能だ
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・ ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2002_10/pr_j3101.htm
・ 製品情報
http://www.toshiba.co.jp/toshiba/ef-genio_j.htm
・ 「AH-N401C」ユーザー向けダウンロードサービス
http://www.necinfrontia.co.jp/products/cf/utility03.htm
(山田道夫)
2002/11/21 16:57
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