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iPAQ Pocket PC H3970を愛す
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


 まず、前回の訂正から。筆者はiPAQ Pocket PCが全世界で2番目に売れているPDAだと書いたが、ガートナー社のデータクエスト部門から訂正があってコンパックは世界で3番目に売れているPDAメーカーになってしまった。2番目はソニーとのことだ。また、市場は前年比2.4%の減少傾向にある。さまざまな要因があるだろうけれど、PDA自体が大いなる曲がり角に来ているのかもしれない。

 とはいっても、iPAQ Pocket PCは非常に魅力的な製品だし、PDAの役割自体が終わったわけでもないと思う。今後のさらなる魅力的な新製品と新たなコンセプトの提示に期待したい。今回も前回同様iPAQ Pocket PC H3900シリーズについて紹介する。他にも魅力的な製品を多数使用する機会を得ているのだが、今筆者がもっとも気に入っているのがiPAQ Pocket PC H3900シリーズだからだ。


筆者はなぜiPAQ Pocket PC H3970をメインで使っているのか

 引き続き借りている機種だがiPAQ Pocket PC H3970を使っている。これまではHandspringのPalm機、Treo 90をメインで利用していたが、今は借り物であるにもかかわらずiPAQ PocketPC H3970をメインで利用している。なぜそんなに惹かれたかというと、いくつかの理由がある。まずは、H3970の液晶が非常に美しいことだ。これは今まで使用してきたすべてのPDAと比較してもダントツでH3970の液晶が美しいと感じる。もちろん、320×240ドットの解像度しかないこともあってか、デジタルカメラで撮影した画像を見ていたりすると、かすかに液晶の横縞が見えたりして少しがっかりしたりはするが、ぱっと見た時の美しさは間違いなくH3970が一番だと思う。

 また、筆者にとってPDAにはキーボードが必須だ。さまざまな嗜好があることを十分承知しているが、さまざまなPDAを使った結果、筆者の場合は本体に取り付けてあるタイプのキーボードがないと、まず使う気がしないくらいキーボードに依存するようになってしまった。そのキーボードにもかなり個人的な好みがあって、親指で入力するタイプだと硬すぎるとだめだ(そのためHP100LX/200LXのキーボードは好きではない。親指が痛くなってしまうのだ)。もちろん、キートップがぐらぐらしていてもだめだし、柔らかくかつキートップがしっかりしていないといけない。

 そのため、非常に残念なことに、東芝のGENIO e550Gシリーズは購入の選択肢には入らない。大きな液晶ディスプレイや、本体のみでPHSを使った通信環境を簡単に構築できること、など非常に使い勝手のよいマシンだと思うのだが、日常的に利用するメイン機にはならない。筆者の使い方の問題でもあるのだが、立ちながらメモを取ったりするために利用している場合が多いからだ。そういった場合に、もう手書きはまったくする気にならない。ついでに言えば、紙に手書きすることも最近は苦痛でしかなくなっている。

 これまではTreo 90を愛用していたわけだが、Treo 90自体はいまだにとても気に入っているものの、通信環境の選択肢がかなり限られること、マシン自体が高速とは言い難いこと、ディスプレイの解像度が160×160ドットしかないこと、さらにはSTN液晶であるため外ではかなり見にくいこと、ボイスメモがないこと(筆者が利用する場合、ボイスメモは必須というほどではないが、かなりあった方がいい機能だ)、さらには筆者の飽きっぽい性格(PDAの環境を変更する余地があまりなくなるほど安定して使っていると、逆に飽きてしまうのだ)などにより、少し他のマシンを使ってみたくなっていた。


マイクロキーボードを使う

マイクロキーボードは拡張パックを取り付けたままでも利用できる。筆者の場合は、古いデュアルPCカード拡張パックがあるので通信したりCFカードが必要な場合は利用している。すごく巨大になるのが欠点
 iPAQ Pocket PC H3950/H3970は、もちろんキーボードを搭載していないが、H3800シリーズ用のマイクロキーボードが利用可能だ。本体の底面データ通信用ポートに取り付ける。各種の拡張パックを取り付けたまま利用することもできる。

 ただし、これまでの製品では日本語の利用においては問題もあった。従来、製品に添付されていたドライバを使用すると、「、」「。」「ー」などの記号がきちんと入力できなかったのだが、対応したドライバが米HPではすでに公開されている。「iPAQ Micro Keyboard Driver」を選択し、「Japanese」を選択すれば日本語版を入手できる。Webサイトでは、H3800シリーズ対応となっているがH3970でも問題なくインストールして利用可能だ。

 マイクロキーボードは非常に入力しやすい。サードパーティからもSnapNTypeといったキーボードが販売されているが、H3900シリーズではどうもうまく動作しないようだ(筆者のやり方の問題かもしれないが)。また、SnapNTypeはややふにゃふにゃしていてマイクロキーボードに比べて入力しにくく感じる。マイクロキーボードは新ドライバを使用すれば、非常に使い勝手がよく入力しやすいキーボードとなっている。ただし、入力している時に突然母音を重ねて入力してしまうなど同じキーを重ねてしまうといった細かな不具合は残っているようだ。

 マイクロキーボードは、筐体の底面にがちゃっとはめ込む。そのため、クレードルに載せたりするといったことはできなくなってしまう。マイクロキーボードを取り外す時は底面のボタンを押すのだが、やや渋く感じて押しにくい。個体差の問題なのか製品としての特徴なのかはよくわからない。

 また、寒くなってきてコートを着るようになったので、ある程度大きなPDAでもコートのポケットに突っ込めばいいだけなので夏に比べて取り回しが楽だという点も見逃せない。Treo 90くらい小さくて軽ければ、シャツの胸ポケットなどに入れておいてかがんで落としても傷つくくらいで壊れる可能性は小さいが、iPAQ Pocket PCなどでは大きすぎて確実に壊れると思われるし、胸ポケットでは大きすぎて邪魔になるため、筆者は鞄に入れるかジャケットやコートの外ポケットに入れるようにしている。

 ただし、マイクロキーボードも万能ではない。一部、キーが重なるなどの不具合を別としても、底部に取り付けるため、持った場合のバランスが少し悪い気がする。また、キー配列についても27キーと4ボタンしかないのでやむを得ない部分もあるが、「数字キー」「、」「。」「ー」がファンクションと併用する必要があるなど、それなりな部分もある。もっとも、Ctrlキーがついているので、Ctrl+AとかCtrl+C、X、Vなどの基本的なコマンドがコンビネーションで利用できるのは結構便利だ。Ctrlキーは右下にあるので押しやすいといえば押しやすい。


筆者の愛用しているソフトウェア

 もちろん、ユーザーがどういった風に使うか、どういったマシンを使ってきたか、専用線なのかそうではないのか、日常的に外出が多いのか内勤が多いのかなどでも異なってくるだろう。あくまでも筆者にとって便利なソフトウェアということでご紹介したい。

 まず、PIMは今は「さいすけ2002」を中心に使っている。1800円のシェアウェアだ。Pocket PCではPIMソフトウェアとしては、アメリカでは定番のPocket Informantなどを長年愛用してきたが、バージョンアップ後日本語が一部文字化けするようになったことなどからあまり使用しなくなった。さいすけも長年愛用しており、月表示で予定が文字で表示されること、ファイルへのリンクが可能なことなどが気に入っている。PIMの中でもスケジューラとToDo、アドレス帳はすでに「さいすけ2002」だけですませるようになった。

 また、フリーウェアのTodayに予定や仕事を表示するアイテム「applus」と「ToDoWatch」も変わらず愛用している。電源を入れた場合に、何時間か使用しなかった場合、Todayを表示させるオプションがあるため、便利に使っている。


さいすけ2002。多機能な定番PIMで気に入って使っている applusとToDoWatch。起動した時にTodayを表示する設定にしておけば、予定などをすばやく確実に確認することができる。筆者は前回起動より12時間過ぎていればTodayを表示する設定にしている

 さらに、元々Palmで愛用していたHandStoryのPocket PC用ベータ版も使用している。PCにインストールすると右クリックで、画面全体のクリッピングか、選択したテキストファイルをPocket PCにコピーしてくれたり、グラフィックをコピーしてくれる。Palm版ではメモと同期してくれたが、Pocket PC版ではテキストとしてあつかわれるようだ。その点はやや物足りない。

 便利なのはWebページのクリッピングだろう。カラーだとかなり時間がかかるため、筆者は16階調でコピーする場合が多い。グラフィックの場合は、地図などを6万5000色でコピーしている。Pocket PCと同期する場合に、自動的にコピーしてくれるので便利だ。筆者の使い方だと、Webページの情報で気になったものをクリッピングしたり、路線探索の結果をクリッピングしたり、地図をコピーしたりしている。

 ただし、ベータ版なため、たとえば、Palm版とは現行のバージョンでは共存できないようで、メニューにはあるが、コピーなどはPocket PCにコピーされてしまう。既知の問題のようだが、どういった仕様になるかどうかはまだわからないようだ。また、テキストもあまり広大だとクリッピングの場合は時間がかかってしまうようだ。42KBくらいのクリッピングだと、画面のジャンプが結構待たされるように感じられる場合がある。

 筆者は長年、Pocket PC用のファイラはY.Nagamidori氏のGSFinderを愛用してきたが、更新が止まって残念に感じていた。GSFinder+TQは、同ソフトウェアを元にテキストビューアなどの機能も取り込んだソフトウェアだ。テキストの編集も可能だ。やや使い勝手が異なって戸惑っている部分もあるが、試用しだしているところだ。


筆者にとってのキラーアプリのひとつHandStory。簡単にWebブラウザやテキスト、グラフィックなどをPocket PCにコンバートしてくれる 使い出したばかりのGSFinder+TQ。長年愛用しているGSFinderとは多少操作性が違うので戸惑うこともあるが多機能だ

 また、H3900シリーズは液晶が大変美しいため、写真や画像の加工ソフトウェアUltraGやバンドルされているグラフィックビューアiPAQ Image Viewerで写真を見たりするのにもなかなか使い勝手がいい。ただし、大きな画像はそれなりに表示するだけで時間がかかってしまう。たとえば、iPAQ Image Viewerで300~400KB程度のJPEG画像を表示させると、写真が見えるまでに15、6秒程度かかってしまったりする。

 脈絡がないが、メーラはnPOPを愛用している。マルチアカウントにきっちり対応しており、PCでのメールのやりとりがメインで、出先で緊急の要件を確認したいといった用途には最適だと思う。


UltraGは定番のグラフィックソフトだ。デジタルカメラの写真を見たりちょっと加工したりするのに使っている H3850ではAH-N401Cを使ってPocket PCだけで音声通話が可能だ。イヤホンマイクなどが不要なため、緊急用としては悪くない

H3850でスマートフォン?

 H3970では、H3850とは異なって、AH-N401Cを使ったPHSの音声通話が実用的ではないようだ。H3970ではジージーという音が大きすぎて全然使えない。どこに原因があるのかはよくわからないが、H3900シリーズでの使用も楽しみにしていただけに残念だ。

 iPAQ Pocket PC H3850とAH-N401Cを使って、NECインフロンティアのWebサイトからソフトウェアを落として、音声通話を行なってみた場合について簡単に紹介する。NECインフロンティアがWebサイトで公開している動作確認機種一覧によると、PDAでは、GENIO e550G、GENIO e550XとiPAQ Pocket PC H3850だけが対応機種になっている。他のPocket PCではどうもうまくいかないようだ。

 実際に使ってみると、アドレス帳から簡単に電話番号をもってこれるなど、なかなかの使い勝手だ。通話品質自体は、iPAQ Pocket PC H3850側ではなかなかいい。音も大きく音質もPHSの専用タイプを使ったほどではないが、PDCなどよりはよほど良く感じる。問題となるのは、固定電話側だ。どうもH3850ではスピーカーとマイクロフォンが近すぎるせいか、自分の発言も少し遅れて聞こえてしまう。まあ、指向性がないマイクを使っているから、しかたのないことなのかもしれない。もっとも指向性が強すぎると、まったく発言を拾えなくなってしまうのだろうけれど。また、mdmlog*(*は数字)というログが勝手にルートに作成されるのもどうかと思う。

 長時間の待ち受けをするのは難しいだろうし、iPAQ Pocket PCの場合は固定電話側が二重に聞こえてしまうなどの問題はあるが、輻輳でPDCが使えなかったり、うっかり携帯電話を持ってくるのを忘れてしまったり(筆者の場合は数カ月に1度くらいある)した場合にはなかなか便利だろう。いまさら、公衆電話を探す気にはとてもならないからだ。また、イヤホンマイクなども不要な点も便利がいい。さらに、Pocket PCのアドレス帳からきちんと電話データを取り込んでくれるのも便利だ。複数の電話がある場合は、最初に携帯電話か固定電話かを選択することができる。スマートフォンにはほど遠いが、楽しんで使うにはなかなかいいんじゃないかと思う。

 こうなってくると、CFカードタイプの拡張パックも欲しくなってくる。今は旧型のデュアルPCカードジャケットを使っているので、非常に重くて通話は結構つらい。バッテリなんかは外部バッテリしてしまうという方法の方がいいかもしれない。


直射日光の下のH3850とH3970。暗いところほどではないが、やはりH3970の方が美しく感じられる。もっとも比べなければH3850を使用していてもそれほど気にならなくなってくる iPAQ Pocket PC H3970とGENIO e550GS。GENIOは本体だけで通信が可能なのはとても便利で液晶も大きい。H3970は液晶の美しさは特筆ものだ。どちらが良いかはユーザーによって異なるのだろう

結論に代えて

NetFront V3がリリースされたり、ATOK for Pocket PCがリリースされるなどPocket PCを巡る情勢も少しずつだが好転する予感を感じさせる
 iPAQ Pocket PC H3970の液晶の美しさは特筆ものだ。日常的に使っていると余計そう感じる。もっとも並べて見る場合を除くと、H3850とかGENIO e550GS/GXでもそれほど液晶は気にならない。見比べてしまうとつらいというだけだ。筆者の場合、本体に取り付けるか内蔵タイプの小型のキーボードがないとPDAを使う気がまったくしなくなっている。筆者の嗜好でしかないのだが、そうするとかなり選択肢は限られる。特に、Pocket PC 2002ではiPAQ Pocket PC H3800シリーズかH3900シリーズしかなくなってしまう。かえすがえすもHPとCOMPAQの合併が残念なところだ。

 筆者の場合は、今買うのであればH3950にするかもしれない。Bluetoothは筆者の場合は必須ではないからだ。これから充実していくだろうけれど、そういった機能は充実してから機種を買い換えても遅くはない気がしている。前述の通り、日常的にH3970を使うようになって、非常に気に入っている。

 もちろん、やや大きいことによる取り回しの煩雑さや、液晶の解像度が320×240ドットしかないことなどは不満だが、さまざまなソフトウェアや周辺機器によって気に入った使い勝手になっている。鮮明な液晶も非常に魅力的だ。もっとも液晶の明るさについては、最初はやや暗いなと感じていても、じきに慣れてしまうものだ。そんなわけで、筆者はいまだに購入を迷い続けている。AH-N401C用のダイアラーがバージョンアップしてからになるかもしれないが、買い換えるかもしれない。


・ iPAQ Pocket PC H3900シリーズニュースリリース(コンパック)
  http://www.compaq.co.jp/press/press872.html
・ iPAQ Pocket PC製品情報
  http://www.compaq.co.jp/products/handhelds/pocketpc/
・ AirH" AH-N401Cダウンロード
  http://www.necinfrontia.co.jp/products/cf/utility03.htm
・ AirH" AH-N401C動作確認機種
  http://www.necinfrontia.co.jp/products/cf/pc_list03.htm
・ AirH" AH-N401C動作確認機種
  http://www.necinfrontia.co.jp/products/cf/pc_list03.htm


(山田道夫)
2002/11/08 20:10

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