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スタイラスを巡る冒険
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


 PDAユーザーでスタイラスを使わない人はいないだろう。ほとんどのPDAは液晶ディスプレイにタッチパネルが組み込まれていて、スタイラスを使ってポイントしたり、文字や絵を描いたり、ドラッグしたりする場合に利用する。大体はPDA本体の脇に収納されているプラスチック系か金属の細長いペンのようなものだ。日本人にはペンとスタイラスの違いが直感的にはわかりにくいが、なぜペンと言わないかというとそれなりに歴史的な経緯があるようだ。絵画に興味を持っている人なら知っているかもしれないが、スタイラスは絵画でも利用する用語で鉄筆のことだ。まれにスタイラスペンといった表記も見かけるが、スタイラスだけで独自の単語なので間違いだと思う。

 元々は、ペンよりも古い筆記具だったとも言える。メソポタミアで楔形文字を粘土板に刻むのに使用した物が始まりのようだ。つまり、6000年を超える歴史があることになる。これだけ古い筆記具は他にない。また、PCというかコンピュータで使用されたるスタイラスの歴史も意外に古く、マウスなどよりはよほど先に開発されたようだ。描画を必要とするコンピュータなどで使用されていた。

 PDAの場合は、本体に標準のスタイラスを使うユーザーが多いと思うが、PDA自体が縦の長さがあまりないことで、収納する必要があるスタイラスは、必ずしも書きやすいとは限らない。そこで、さまざまなスタイラスがメーカーやサードパーティから販売されている。ここでは、秋葉原のショップなどで目に付いた製品を簡単に紹介する。


本体収納タイプ

 スタイラスと一口で言っても、PDAの場合本体に収納するタイプと、外付けに大きく分けられる。本体に収納する場合は、専用品ということになり、日本においては純正品以外にはPalmデバイスやザウルス、Pocket PC用の旧製品用として何製品かあるくらいで数は多くない。PDAに付属のものとあまり長さや重さで差をつけることができないし、PDAも販売中止になったり仕様が変わってしまって使えなくなってしまう可能性が高いからだと思われる。

 国内で発売されている物としてはパイロットの「ぺんとぴあ」シリーズが有名だろう。Palm用だけではなく、ザウルスEシリーズ用やiPAQ Pocket PC (H3630/H3660) 用、Palm m500シリーズ用、CLIE用が発売されている。価格は1500円前後で、製品によってスタイラスの先が光ったり、ボールペンやリセットピンが付属していたりするなど多機能だ。

 さらに、日本トラストテクノロジーでは、クリエPEG-T/NRシリーズ用の内蔵タイプの「Multi Styulus for CLIE T/NR」を販売中だ。キャップを外すとボールペンが使用でき、先端を外すとリセットペンが出てくる。純正のスタイラスよりもきちっと収納される気がするが個体差かもしれない。実売価格880円程度だ。

 また、通販ショップVisj-a-Visでは、やはりボールペン、リセットピン内蔵タイプの「Brando WorkShop 3 in 1 Stylus for CLIE T/NR」を販売。さらに、Vis-a-Visと秋葉館では金属製のスタイラス「Metal Stylus for CLIE T/NR」などを販売している。やはり、クリエシリーズが売れているせいか、現状ではクリエPEG-T/NRシリーズ対応の専用品が多いようだ。


クリエPEG-T/NRシリーズ収納タイプのスタイラス各種。手前からソニー製、日本トラストテクノロジー製「Multi Styulus for CLIE T/NR」、金属製のMetal Stylusが2本(2本で1980円)、BRANDO製3 in 1 Stylus(1250円) それぞれをばらしてみたもの。「Multi Styulus for CLIE T/NR」とBRANDO製3 in 1 Stylusはボールペンが収納されている。ボールペンとしての利用は、やはり細く短いのでとりあえずの用途だろう

 また、非常におもしろいのが、「すたQ」の愛称で知られる「すたQ Multi Function Stylus stylusQ」だろう。Palm V系やm100系、Visorなどに対応しており、ユーザーの間でも評判が高い。リセットピンやボールペンを内蔵している。独特な目立つボールを取るとボールペンが現れる。ボールは各色が別売もされている(1500円)。また、ザウルスMIシリーズ用のざうQも販売されている。ざうQではリセットピンが内蔵されておらず、長さがMIシリーズに合わせて短くなっている。

 内蔵タイプを利用する理由の1つに、純正のスタイラスが抜けやすくてすでに紛失してしまったという場合もあるだろう。筆者の感覚に過ぎないが、PEG-T600CやTreo 90などはかなりスタイラスが抜けやすい気がする。個体差がある可能性もあるがもう少し落ちにくい製品にしていただきたいものだと思う。


ざうQはザウルスMIシリーズ用のすたQだ。すたQシリーズとは異なってリセットピンがない。書き味は短い分だけやや劣るようにも思える ざうQをTreo 90で愛用している。ボールペンにもなるがさすがにボールペン機能は使ったことがない

ペン兼用スタイラス

どれだけ実用的かはわからないが、マイナスドライバーも内蔵されている。価格は意外に安くて700円前後
 ボールペンやシャープペンシルの機能にスタイラスを追加した複合タイプもある。こうしたペン兼用スタイラスの長所は、ある程度の長さがあるため、本体に収納するタイプよりは手に持ちやすく書きやすい場合が多いことだろう。スタイラスの先の材質による書きやすさの違いもあるだろうが、筆者が試した限りでは、長さと重さの違いの方が、より重要な気がしている。本体に収納されるタイプだと、短すぎる場合があってある程度使っていると指の付け根がつりそうに感じられる場合があるが、ペン兼用タイプのスタイラスではそういったことはあまりない。

 ただし、欠点もある。最大の欠点は、筆者の個人的な問題かもしれないが、PDAの他に持ち歩かないといけない点だろう。ジャケットなどから移し忘れてしまうことがよくある。確かに収納タイプよりは書きやすい製品が多いが、他に持ち運ばないといけないわけで忘れっぽい人には向かない。

 スタイラスの他にシャープペンシルやボールペン(これは何種類も使えるタイプもある)などがあると1500円くらいだろうか。ボールペンとスタイラスだけのプラスチック製の物もあってこちらは200円くらいのようだ。

 各社から販売されているため、正直言って全部はとても取り上げられない。スタイラスの他にボールペン、他の色のボールペン、シャープペンシルなどが利用可能な、あるていど値の張るタイプと、スタイラスとボールペンだけのシンプルなものに大別できるが、ここでは、とりあえず筆者が所有している物を中心に簡単に紹介する。

 ボールペンやシャープペンシルなどを利用可能な複合モデルの場合、各筆記具の切り替えは目印が上部にある物が押した時に出てくるタイプが多い。一般的な多機能ボールペンなどにスタイラスがついていると思えばいいだろう。切り替える場合は、一度ボタンを押して現在使用している筆記具を戻し、再度使用したい筆記具のアイコンを上部に向けてお知りをクリックすればいい。利点は、基本的に筆記具なためあまり無駄がないことだろう。欠点は、忘れっぽい人は置き忘れてしまう危険性が高いこと、他の筆記具を利用している場合は、スタイラスを利用可能になるまでに2タッチ必要なことだろう。こういった細かなことも短気な人はイライラしてしまう場合がある。


 また、ボールペン(回して出すタイプ)とお尻がスタイラスになっているクロスの独特なペンとスタイラスもある。アジャストメントダイヤルを回すことによって、シリコン製のグリップが変形しその人に手に最適な形に調整することできるという。価格は実売価格で8500円くらいとかなり高い。筆者もたまたま持っているが、これはある記者発表会で配布されたもので、後日価格を見てびっくりしたことがある。他にも「CROSS MATRIX万年筆(万年筆、スタイラス、2色ボールペン。15000円くらい)」、ボールペンとスタイラスを両端に備えた「クロス マイクロペン」(2000円)、ステッドラーの「4 PENS in 1 for PDA」(2000円)などもある。

 また、掌極道(ぱーむごくどう)サイトでは、クロス製ボールペンをスタイラスにする替え芯(クロスバー)、各種のマルチペン用の替え芯を販売している。クロスおよびクロス互換のボールペン芯を採用していれば、気に入っている筆記具をスタイラスにすることができる。


ボールペン(黒)とスタイラス。TWIST JAPAN AUTOPOINT、brother DOUBLE ACTION、CROSSの物。価格は200円~8500円と物によって大幅に違う ステッドラー日本製Triple-Function Pen for PDAと日本トラストテクノロジー、スタイラス・ペン。他にも各種あるが、こちらは筆記具を選ぶついでにスタイラスがついてくるといった感じだろう。一番現実的な選択かもしれない

掌極道のクロス製ボールペンをスタイラスにする替え芯、各種のマルチペン用の替え芯クロスバーとMiniBar ダイヤテックの多機能ペン・スタイラス。通常はスタイラスかボールペンとして利用する

スタイラスではないスタイラス

 他にスタイラスというかペンの形状をしていないものもわずかにある。もっとも、スタイラスの形状ではないため他の呼び方をすべきなのかもしれない。たとえばCITIZENブランドの製品では、ストラップに取り付けるタイプだ。指3本で持つが意外に使いやすい。ただし、デザインは正直言ってビジネスマンにはきびしい気もする。また、価格も実売で780円は高すぎると感じた。なお、今回は購入できなかったが指先に付けるタイプも海外などでは市販されているようだ。普段は指輪のように指にはめておくタイプだ。

 また、スイスの折り畳みナイフで有名なVictorinoxのスタイラスペン内蔵ミニナイフを国内で通信販売しているところもある。筆者個人は利用したことはないが、スタイラスとしての使用感は疑問に思う(話の種やグッズ好きとしてはおもしろいのだろうけれど)。

 厳密に言えばスタイラスではないが、丑やでは、スタイラス用の革ケースを販売している。ストラップに取り付けるタイプだが、丑やの革ケースのオプション品という扱いだがおもしろい試みだと思う。1400円。


CBM(CITIZEN)製PDA用ポインタは、780円。普段はストラップ穴に通しておく 親指と人差し指、中指で持つ。意外に書きやすい。ストラップを兼ねるデザインだったらさらによかったかもしれない

究極のスタイラス?

究極のスタイラスは爪かもしれない。もっとも細く長くないのでスタイラスとは言わないだろうけれど。即座に使用できるが、欠点は文字を書いたりするのにはあまりむかないことだろう
 さらに、ある意味で究極のスタイラスもある。それは自分の爪だ。スタイラスの場合、利き手でない手でPDAを支え利き手で利用する場合がほとんどだと思うが、本体から抜いたり、胸元やペンケースから取り出したりする面倒くささがある。文字の入力などではなく、単純にポインティングなどで使いたい場合、スタイラスを抜いたりすること自体があまりに面倒に感じられる。

 そういった場合に活躍するのは利き手の爪だ。普通に指でタップしたりすると指紋が液晶ディスプレイについてしまったり、指の幅が広すぎてポインティングしたいところをタップしたりできなかったりする。そこで、手のひらを裏返して爪の先の部分でタップすると簡単にタップできまた指紋もほとんどついたりしない。慣れるとダブルタップやドラッグも簡単に行えるようになる。

 欠点は、文字の入力が難しいこと、長時間やっていると指をつってしまう場合があることなどだろう。しかし、余分な金銭も必要なくつねに携行し、簡単に利用できるため、筆者は究極のスタイラスだと思っている。


結論に代えて

 スタイラスといっても結局はユーザーのPDAの使い方、機種、筆圧の強さなどで好みは変わってくる。指の爪を除けば究極のスタイラスといったものはないと思う。筆者が試した限りでは、筆者はかなり筆圧が高いこともあって、どれが書きやすくどれが書きにくいということはほとんどなかった。実用として考えるなら、内蔵タイプと爪で十分ではないかと思う。バリバリと手書きで文字入力する必要があるという人や筆記具を必ず日常的に持ち歩く人であれば、シャープペンシルやボールペン内蔵タイプを別に持ってもいいかもしれない。本体に収納されているタイプでは、どうしても長さという持ちやすさにおいて、書き味でボールペンタイプには劣るからだ。

 PDAを道楽としても使っている人であれば、本体収納タイプに凝るのもいいだろう。現在は日本での販売はやめてしまっているが、ティファニーのPalm用のスタイラスなどというのもいいかもしれない。見た目が大事ということだろう。筆記具は落としてしまう危険性も大きいため、なくしてしまったショックは一般のスタイラスをなくしてしまう比ではないかもしれないが。



(山田道夫)
2002/09/27 12:11

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