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PIMブラウザ vs マルチメディアPDA
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山田道夫 1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している |
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今回もTreo 90について紹介する。今回は、PIMブラウザとマルチメディアPDAについて考察しながら、最新のTreo 90関連の情報を紹介していく。
Treo 90を巡る良いニュースと悪いニュース
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Treo 90の液晶カバーを閉じたところ。独特のフォルムが非常に美しく見せてくれる
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まず、伝統に従って悪いニュースから。Handspringでは、Treo 90の液晶バックライトに不良があることを認めた。かねてから掲示板などで不良がある人の書き込みがあったために心配していたが、かなり広範囲に渡る不具合のようだ。不具合があるユーザーは修理する必要がある。日本のように正規代理店ではなく並行輸入の場合は、おそらく販売店経由で直すことになると思う。ただし、すでに再出荷された製品は対応済みのようだ。なお、まったく平気な人もいる。6週間経っても大丈夫だったら大丈夫という情報もあるが、真偽のほどはわからない。筆者のTreo 90の場合は、5週間目に入ったところだ。
いいニュースは、日本国内での販売店が少しずつ増えているようだ。たとえば、ツクモDOS/Vパソコン館でも取り扱いを開始している。価格は4万9799円。実機に直接触れる機会が増えるのはいいことだと思う。
その後の近況と使用しているソフトウェア
Treo 90は相変わらず気に入って使っているが、液晶カバーの傷がかなり目立ってきた。硬い物でこすれてしまったような感じだ。傷が気になる人はケースに入れた方がいいかもしれない。私は全然気にしないので、裸のままシャツの胸ポケットやジャケットのポケットに突っ込んでいる(これがいけないのだろうけれど)。
Treo 90のスタイラスが落ちたのかなくなっていた。掲示板などで抜けやすいときいていたが、ちょっとゆるいかなという程度だったのですっかり油断していた。クリエPEG-T600Cほどではないが、それなりに抜けやすいようだ。がっかり。pocketgamesでTreo 90のスタイラスを注文した。2980円。
Treo 90のゆるゆるのスタイラス入れにがまんができなくなり、マスターで直していただく。1000円。他にダイオードを青色に変更するマスターではおなじみのサービスもある。また、DDIポケットのAirH"用のケーブルも販売するようだ(2980円)。
現在は、Treo 90の環境はかなり安定しており、あまりソフトウェアを追加するということはなくなった。それでも、前回から2週間くらい使っているので、その後使用するようになったソフトウェアもある。それらを簡単に紹介した後で、マルチメディアPDAの王道を行くともいえるPEG-NR70Vとの比較を行なってみたい。筆者個人は、非常に気に入っているマシンだが、現在はリモコンとして使えなくても、デジタルカメラが使えなくて不便でも、TV番組がわからなくても、一度に表示されるデータが驚くほど少なくなってもTreo 90だけを使っている。
新しく使い始めたソフトウェアは、フリーウェアのスケジューラのKsDatebookだ。PEG-NR70Vとかの方がはるかに使い勝手がいいソフトウェアだが、Treo 90などの160×160ドットの画面でも月表示で文字が表示されるため気に入って使い出した。ただし、日本語2文字、英字が3文字程度だ。もっとも、予定は自分で入力したものなので、2、3文字わかるだけでも使いやすく感じている。
・KsDatebook http://kim.ponyoyo.jp/
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KsDatebookは月表示でも2、3文字の表示ができるため気に入っている
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CLIE PEG-NR70VでKsDatebookを表示。Treo 90とは情報量に格段の差がある
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また、これは前から使っていたソフトウェアだが、定番のストップウォッチのBigClock V2.2をTealLaunchのボタンへの割付機能で長押しに割り付けて使っている。時計を持たなくなって久しいので、時刻を知りたくて近くに携帯電話がない時によくPDAで時間を調べるのだが、Pocket PCなどとは違っていつでも時刻が表示されているわけではないので、ボタンに割り付けてみた。少し、Palm 100シリーズなどに影響を受けた使い方かもしれない。1ボタンで時刻がわかるのでなかなか便利だ。
・BigClock http://www.rupp.paessler.com/bigclock.htm
また、シェアウェアのHandStory Browser(2200円。税込み)を使い出した。一見メモの置き換えアプリのようだが、その実は、PC側でWebブラウザを利用している時に、右クリックでWebページ全体をPalmに同期したり、範囲を選択していればテキストデータとしてPalmで利用可能になったりする。画像だけをコンバートしたりもできるので非常に重宝する。
ただし、画像の入ったWebページのデータは100KBから300KBと大きいので、外部メモリに保存するようにしている。そのためか動作速度はかなりゆっくりに感じられる。また、画像の重要度が低かったら16階調にしたりしてみるのも手かもしれない。
他にも各種の機能があってかなりお得な感じのするソフトウェアだ。筆者の利用は、Webページのメモ的な利用とメモへの情報の追加、メモ置き換えアプリの利用が中心だ。筆者の理解不足かもしれないが、分類がメモを書いている時にできないようなのは不満だ。
・HandStory Browser http://www.handstory.com/
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HandStoryは、PCでWebページや画像、テキストデータをPalmに同期してくれる。ブラウザは独自のようでPalm上ではテキストのコピーなどはできない
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HandStoryのメモ機能はシンプルだが普通にメモとして使える。ただし、分類は一度項目画面に戻らないと設定できないようだ
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XiinoとIrGearの利用でWebブラウズしてみた。なかなか美しく、速度は遅いががまんできないほどではない。ただし、情報量はかなり少ない
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さらに、Webブラウズとメールを利用してみた。Treo 90では、IrDAを利用して、携帯電話に赤外線通信機能を追加するIrGearを利用して赤外線通信でデータ通信を行なった。設定などは特に難しいことはない。日本語が利用できないソフトウェアもあるようなので、確かめる必要があることくらいだろうか。キーボードが利用可能なため、細かな設定の入力もさほど苦痛ではなかった。
利用したWebブラウザは、シェアウェアのXiinoだ。高速ではないし、情報量も多いとはいえないがなかなか快適にWebブラウズ可能だ。ただし、私は楽しみとしては行うだろうけれど、実用としてはあまり速度と情報量の問題であまり行ないたくはない。
また、メーラーはフリーウェアのtapmailを利用した。マルチアカウントに対応しており、複数のメールアドレスの利用が簡単に可能なため気に入っている。携帯電話を利用しただけなので、高速とは言いがたいが、十分実用的な速度で利用が可能だ。キーボードがあるため、ちょっとした返事くらいだったら簡単に書ける気もする。筆者の環境では必要性があまりないため、楽しみとして行なうくらいだけれど。
ただし、最大の問題点は速度よりも、赤外線利用による物理的な問題だ。つまり、Treo 90と携帯電話の赤外線ポートの向きを揃えておく必要があるのだ。机の上とかだったら問題はないが、立ちながらの利用はまず無理だと思われる。早くBluetooth内蔵が一般的になってくれればと思う瞬間だ。
・tapmail http://www.qtap.net/palmware/tapmail.html
Treo 90でATOK for Palmを使っている場合、英字と日本語の切り替えをスタイラスで行なわないといけないのは面倒に感じられる。そのために、シェアウェアなどを使ったりするわけだが、ATOK for Palmの英字と日本語の切替を行なうことが可能なDAが登場した。atokTdaだ。DAソフトウェアなためボタンに割り付けるためにはButtonDAなどのユーティリティを利用する必要がある。これらの情報は、treo.pocketgamesの掲示板に載っていたものだ。
・atokTdaなど http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/5391/
・treo.pocketgames http://treo.pocketgames.jp/
もっとも、筆者はATOK for Palmの重いのが気になるため、現在ではPOBox Inlineを中心に使っている。
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写真があると、かなり表示される面積が減ってしまうので難しいところだ
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tapmailはシンプルだがマルチアカウントに対応しており、なかなか使い勝手はいい
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マルチメディアPDAとPIMブラウザの戦い
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最大の問題点は、赤外線ポート同士を向けておかなければいけない点だろう。電車の中で立ちながら使用するといった用途にはあまり向かない
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本連載の読者の方々は、筆者の好みが多機能なマルチメディアPDAであるということをよくご承知だと思う。そんな筆者が小型のキーボードを搭載しているとはいえ、DSTN液晶で160×160ドットの解像度しかないTreo 90を1カ月以上使い続けているのだ。
それはもちろん、筆者の使い方にもよる。まず、筆者は日常的にノートPCを持ち運んでいる。本当に近所に買い物に行くといった場合を除いて、ほとんどどんな時でも外出する際には、ThinkPad s30を持ち歩いている。Treo 90でも携帯電話にIrGearを取り付けて、赤外線通信でWebブラウズとメーラを使ったが、基本的にはPDAではメールを読んだりWebサイトを見たりといったことはしない。座れるのであれば、DDIポケットのAirH"か、新幹線の中であればauのPacketOneでデータ通信をしているので、わざわざPDAで行なう必要がない。
ThinkPad s30はバッテリーはそれなりに持つし、また、Windows XPではバッテリの減りは多少速いがスタンバイにしておけば、起動もほんの数秒で可能なため、ハンドヘルドPCを使っているよりも画面が広く高速で使い勝手がよく感じている。欠点は重いことくらいだろう。
そういった筆者であるので、PDAで行なうのが、スケジュールやアドレスの確認と立ちながらのメモ作成くらいのものだ。そういった用途にはTreo 90は非常に向いている。
筆者は、嗜好の問題として、PDAは1台きりしか持ち歩かないことにしているので、デジタルカメラがなかったり、ボイスメモが使えなかったり(これはPEG-NR70Vでもできないが)、PIMの表示エリアが非常に狭くてもTreo 90のみを利用している。筆者にとっては、PDAの利用で一番大切なのがスケジュールの確認であり、次が立ちながらメモを取ることだということが明確になったからだ(座っている場合はノートPCで簡単にとることができる)。
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左からTreo 90、Palm m515、PEG-NR70V。Treoがきわだって小さいことがわかる。液晶も小さくそれなりなのは残念な点だ
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PDAと一口に言っても、PalmデバイスとPocket PCやザウルスでは、目指している方向性も嗜好も実現している事柄も大幅に異なっている。クリエなどのようにPalmの中で、異彩を放つマルチメディアPDAもある。
日本人の嗜好としては、どうもマルチメディアPDAのようで、売り上げランキングの上位は、クリエPEG-T650C、GENIO e550G、PEG-NR70Vなどのようだ。Palm m515の売れ行きが気になるところだ。
Treo 90はPIMブラウザの代表というわけではない。特に日本語化して利用すると速度的にはややきびしい気がする。もったりとした印象がある。
Treo 90 V.S. PEG-NR70V
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PEG-NR70VとTreo 90を持ってみたところ。写真のトリックで実際以上に大きさが違って見えるが、心理的にはこのくらいの差があるようにも思える
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Treo 90を購入してからずっとTreo 90を持ち運ぶ生活が続いている。PEG-NR70Vなどは、ほとんど持ち歩くことがなくなった。もちろん、Treo 90では機能不足の点は多々あるし、なにより速度が遅いのが辛い。また、画面も160×160対320×480ドットとブラウザとして比較すると比べモノにならない。それでも、持ち歩いているのはTreo 90なのだ。
そこでどこが気に入っているのか、どこに不満を感じているのかを簡単に書いてみる。まず、これは私の使い方、私の嗜好でしかないということでもある。仕事、趣味、生き方が違えば、最適なPDAも異なってくると思う。私にとってはどうかというだけの意味に過ぎない。そう言った点を割り引いて読んでいただきたい。
【Treo 90の長所】
●小型軽量である どこでも持ち歩く気になる。シャツの胸ポケットに入れておいても、PEG-NR70Vなどとは異なり、屈んでもほとんど落とす可能性がない。もし、落としてしまったとしても、軽量なため大きなダメージを受けずにすむ可能性が高いと思う。実際、筆者は何度か落としてしまっている。
●キーボードが自然で入力しやすい これは、嗜好や慣れの部分もあるので一概には言えない。だが、私にとってキーボードは、Treo 90の方が好みだ。また、Treo 90が4列、PEG-NR70Vが5列の配列なため、PEG-NR70Vの方が使いやすいかというと必ずしもそうではない。慣れの要素が強いとはいえ、私にはTreo 90のキーボードの方が使い勝手がいい。アプリケーションボタンを簡単に押せる点もいい。
●液晶カバーが付属している 私は、液晶カバーや液晶保護シートが嫌いだ。PDAの傷は勲章として気にしないでいる。しかし、液晶カバーをつけたことで、安心してジーンズの尻ポケットに入れておくことも可能だ。夏場はジャケットを着ない場合も多いので、この点は素直にありがたい。ケースや鞄に入れてしまうと、PIMなどを見る場合でもワンテンポ遅くなってしまって、つまらないことだと思う。
【Treo 90の短所】
●CPUの速度が遅い たとえば、ActionNamesで、連絡先リストから新規電話連絡を作成しリンクし連絡先をタップした場合、PEG-NR70Vでは、ちょっと待たされるなという感じだが、Treo 90ではかなり待たされる。正直に言っていらいらするくらいだ。
●ディスプレイ関係 解像度が160×160ドットしかなく、STN液晶のためかやや黄色というかオレンジがかって見える。しかし、Palmデバイスでは、160×160ドットでも使いやすいソフトウェアがたくさんある。もちろん、解像度が高いにこしたことはないが、我慢できないというほどではない。また、液晶の色味は結構好みだ。直射日光の下でも、角度を変えたり、自分を影にしたりすることで結構見ることができる。私は気に入っている。
●筐体が少し安っぽい 金属ではなく、金属に似せたものなため、実際に手に取って触れるとやや安っぽく見える。デザインなどは秀逸だと思うが、やはり限界はある。なお、知り合いの女性にはみな評判がいい。
【PEG-NR70Vの長所】
●カメラ内蔵 最初は画質や解像度が低いからとか思っていたが、どこでも持ち歩くPDAに付属することのメリットを享受している。デジタルカメラを日常的に持ち歩いているが、鞄から出すことが面倒でつい、PEG-NR70Vで撮ったりしている。
●フォントがなかなか美しい これは嗜好の部分もあるだろうが、エヌフォー販売しているタイプバンクフォントをソニー CLIEで使用しているが私にとってはかなり好みなフォントだ。
●多彩なオリジナルソフトウェアをバンドルしている また、機能がオリジナルソフトウェアに対応している点も見逃せない。たとえば、PEG-NR70シリーズでは、同期用の赤外線ユニットの他に、リモコン用にわざわざ赤外線ユニットを用意している。また、音楽を聴くためには当然オリジナルなDSPを用意している。
筆者がPEG-NR70Vをあまり使わなくなって一番残念なのは、手元にリモコンがないことだ。それと番組表を自動的にインターネットからダウンロードしてくれるTVscapeが使えないことだ。
【PEG-NR70Vの短所】
●大きい 大きいこと自体はまったくかまわないが、その結果、鞄に入れたりしないといけないのが面倒くさい。私はジャケットにそのまま入れたりしているが、夏場になると、やはりすぐ取り出せるところには置けなくなってくる。また、大きいことによって重量が増し、落下した場合などのダメージが大きいと思われる。特にシャツの胸ポケットに入れておいた場合、屈めばほぼ100%落ちると思う。
さすがに、PEG-NR70Vでよく利用していることすべてを、Treo 90で利用可能になるとも思えない。しかし、2個持ち歩くのも面倒だ。その結果、テキストやグラフィックの一覧性を考えれば、PEG-NR70Vという選択になる、はずだ。しかし、実際に持ち歩いているのはTreo 90だ。使っていて楽しいといった要素が、本来のPDAはツールに過ぎないと声高に(時々主張する)私をもってしても、Treo 90を選ばせているようだ。日常的にどこでも持ち運びできるというのは、本当にすばらしいことだと思う(将来的には防滴、さらには防水を期待したいところだがコスト的には難しいか)。
今、本当に残念なのは、これでTreo 270のように携帯電話が使えれば、さらに持ち運ぶモバイルグッズが減るのにということだ。日本でもキーボード付きの小型のPDA型携帯電話の登場を期待したいところだ。
(山田道夫)
2002/08/08 16:18
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