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2001年
GARMIN製ハンディGPS「eTrex日本版」を堪能する日々
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「
MOBILE NEWS
」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している
eTrex Vista(左)とeTrex Legend。左手での利用が前提だ。小型で非常に使い勝手がいい
筆者は子供の頃から地図が好きだった。小縮尺の世界地図から、大縮尺の5万分の1の地形図まで(筆者が子供の頃は2万5000分の1の地図はまだそれほどポピュラーではなかった)地図を見たり触ったり書き込んだりすることに喜びを見いだしていたものだ。また、いつ頃からか、世の中にはGPSというシステムがあり、自分の位置をおおよそ知ることができるらしいということを知った。最初は、データとして緯度と経度が表示されるだけで、それを地図で確認するといった感じだったと思う。やがて、ハンディGPSに地図を搭載したものも登場したが、まだまだ日本での利用は一般的ではなかった。
日本においても、カーナビの発達や携帯電話にGPS機能を組み込んだauのケータイGPSなどによって、GPSという概念自体もかなり一般化した。また、Pocket PCなどのPDAにCFタイプのGPSカードを使って位置情報を得たり、ルート情報を記録していたユーザーもいると思う。そういったGPSの一般化を喜んでいるのが、GPSマニアとも言うべき人たちだ。そのようなGPSマニアに定評があったのが、GARMIN社のハンディGPSシリーズだ。
今回ご紹介する「いいよねっと」が日本では販売しているハンディGPS「eTrex Vista日本版」と「eTrex Legend日本版」は、ハンディGPSとして非常に定評があるGARMINのeTrexを完全に日本語化したものだ。標準で日本全国の20万分の1の地図を内蔵し、16MBのメモリに8月に発売予定の2万5000分の1の詳細地図を格納できる。
ただし、ハンディGPSは目的と機能が専用機だけあってカーナビやケータイGPSとはかなり異なっている。ある意味でハンディGPSは、現状のPDA以上に実用的だが、必要のない人には当然のことながらPDA以上に必要のないものだ。そういった意味では、価格なども含めてユーザーをかなり選ぶ製品でもある。
ここでは、筆者が街歩きで利用したeTrexの魅力とある種の限界について簡単に紹介していく。もちろん、日本においてもハンディGPSをはじめとしたGPSに関するある種のコミュニティが存在しており、よりくわしい記事もあると思う。ここでの紹介は、あくまでもGPS専用端末初心者の筆者がどう感じたかということを紹介している。ハンディGPS初心者の感嘆と堪能の日々と受け取っていただければと思う。
ハンディGPSの魅力と限界
電源ボタンを押すと衛星が地球の周りをまわっているアニメーションが表示され、測位が開始される
本誌の読者であれば、GPSとカーナビをごっちゃにしている人はいないだろう。GPS(Global Positioning System)の詳細やなぜ位置を測位できるのかといった部分についての説明は、ここでは省略する。
実際のところ、GPSはカーナビの測位機能のほんの一部を担っているだけにすぎない。カーナビでは、衛星の電波を受信できない場所などで自車の位置が検出できなくなってしまうことを防止するために、進行方向を検知するジャイロセンサーと走行距離を測定する車速センサーからの信号を車載コンピュータで計算し、より正確な自車位置を求めるシステムが搭載されている。
また、auのGPSケータイもまたGPSだけではなく、携帯電話の基地局を利用することで、あらかじめGPSケータイの位置を把握しており、衛星の電波を受信できない状態でもある程度の場所を表示できるようになっている。
今回ご紹介するeTrexだが、カーナビやGPSケータイとは異なり、完全にGPSだけによって測位する、いわゆるハンディGPSというものだ。GPSだけを使用するため、ハンディGPSには電波が届かない場所では測位できないという制限があることは、まず最初に理解しておく必要があるだろう。
さて、そんなeTrexだが、どんな用途に向いているのだろう? 地下鉄の間違った出口から出てしまった時に自分の位置を把握したい、といった用途にも、GPSがビルの影で利用できない可能性を考えると、あまり向いていない。
もしそういった用途で使いたいのであれば、auのGPSケータイの方がいい。C3003Pであれば、自分の向きを常に上に地図を表示してくれる機能がある。GPSケータイの場合、測位までに30秒程度、地図の表示に15秒程度かかるが、何しろ手軽だし、ある意味でとても安価でもある。また、GPSだけを利用しているわけではなく、基地局による測位の補助も行っているため、屋内にいるとしてもある程度の位置がわかったりする。
繰り返しになるが、ハンディGPSの場合は、どの機種であるとしても、GPS衛星が3衛星以上(経験的に言えば多ければ多いほどいいようだ)見えていないといけないわけで、特に高いビルの多い都心などだと位置がわからなくなってしまう場合も多い。地下鉄から出てすぐ、といった場合には無理な場合が多い。
とはいえ、一度測位してしまえば、衛星が見つけられなくなっても、再度可能な状態になればすぐに位置情報を表示してくれるeTrexは“歩く人”にとっては非常に便利。逆に言えば、あまり電波信号が切れたことを気にする必要もないのだ。
測位の準備中であることが表示され、衛星のあるべき位置と信号の受信状況がわかる
測位が終わると地図が表示され「ナビ準備管理」と状況を知らせ、また、「位置精度」がどのくらいかを数字と円で表示してくれる
操作は左手で
筆者が借りているのは、6万7000円前後で販売されている「eTrex Vista」。製品版とは異なり、2万5000分の1の詳細地図の一部があらかじめ16MBのメモリに収納されていた。2万5000分の1の詳細地図の製品版は8月発売予定で、価格は1万円前後のようだ。この「eTrex Vista」には、「eTrex Legend」(5万円前後)には無い高度計や電子コンパスが付いている。
本体の手触りだが、ゴム製の部分は非常にいい。筐体は少し安っぽい気がしないでもないが、さすがにアウトドアでの用途を前提としているだけあって、十分実用性を重視した作りだ。ゴム風の部分に細かな塵がついてすぐに白っぽくなってしまうが、拭いてやればすぐにきれいになるようだ。
操作は左手での利用が基本。左手で筐体を持ち、親指で地図の解像度を変更する。人差し指などで画面の切り替えを行なう。
パソコンと接続すれば、移動した軌跡(ログ)の管理やポイント、ルートなどの管理も容易にできる。PCケーブルも標準で付属している。ただし、現状ではデータコンバートソフトなどは添付されておらず、後述のフリーソフトを利用する必要がある。
漢字やカナもシフトJISコードを利用すればアルファベットと同様に使うことができるが、日本語の入力は単漢字変換で、ジョイスティックでごりごり入力していくスタイルなので、正直言って携帯電話よりも面倒に感じる。それでも日本語での検索や日本語でポイントを入力できる点はすばらしい。
このほか、多機能トリップコンピュータを搭載しており、目的地、速度、進行方向、到着予測時刻、所要予測時間、移動距離など約30種類のナビ情報から8種類を選択して同時に表示できるのも特徴だ。
さらに、前述の通り、eTrex Vistaには電子コンパスと気圧高度計も内蔵されている。立ち止まった状態では磁気コンパスとして使うことができるし、目的地を設定すると方位ポインタで目的地までの直行ナビゲーションも行える。また、気圧高度計で現在地高度、上昇・下降率、高度推移グラフ、気圧グラフなども表示できるようになっている。
1/25000の地図は非常に細かい段階で表示を切り替えることができる。切替は高速というほどではないが、待たされる感じはそれほどない
ナビゲーションデータが一覧で表示されるページもある
実際に使ってみて
借りているeTrex Vistaを見ながら、あちこち歩いてみた。普段は歩くことなんてあまり好きではない筆者だが、eTrexを持ち歩くと、日常的に歩いてみるのも悪い気がしない。自分の位置がどこか分かるというのは思いのほか楽しいものだ。また、歩いた距離が軌跡として残るのも、なんだか楽しい。
先日は、京成江戸川から市川まで歩いてみた。さすがに高架の脇とかは無理だが、ちょっとした郊外といった風景だったら問題なく測位可能だ。多機能だし、地図も意外に満足できるクオリティ。簡単に縮尺を片手で変えられることが便利に感じられる。モノクロ液晶だが、室内でも屋外でもなかなか見やすい。測位の後が薄い線で引かれるため、道路などと重なった場合には多少わかりにくいが、まあ、これは仕方のないことだろう。
さらに、eTrex Vistaを見ながら秋葉原も歩いてみた。さすがに秋葉原のようにビルが近いと点々としか測位できない。都心ではかなり限られた場所でしか測位は難しいかなと感じた。地下鉄を出てすぐに測位するといった用途にも向かないかもしれない。電源を切った状態からだと、測位が終わるまでに58秒くらいかかる。測位自体は30秒くらいで終わるが、地図などの表示に残りの時間がかかっている感じだ。悪くはないが、急いでいる時にはちょっと厳しいかもしれない。
また、別の日には、eTrex VistaでGPSを楽しみながら、秋葉原から銀座まで高速道路の下を中心に歩いてみた。普段はそんなことをする気にもならないが、どのくらい測位できるのかということに興味があったし、ある程度長い距離をeTrexを持って歩いてみたくなったのだ。秋葉原でちょっと試した感触では、ビル街だと測位はきびしいかと思っていたが、思っていた以上に測位できた。もちろん、高いビルが固まっていたり、道幅が狭いとダメなところもあるが、歩き続ければ交差点のあたりでまた測位できる、という感じだ。
秋葉原から銀座三越まで歩き出した。直線距離で2.96km離れており、おおよそ48分59秒かかることが予測されている
歩いているのは高速道路の高架の脇であまりGPSには条件がよくないような気もするが、かなり測位されていた
都心ではさすがに時々衛星の信号を見失ってしまう。画面の下部に「液晶ロスト」と表示され、「▼」の位置で「?」と点滅を繰り返す
歩き続けていると、また測位が復活した。ただし、誤差はかなり大きく、実際の位置からも大きくずれている。歩いてきた道のりが梯子状のラインで記されている
これだけ道路が入り組んでいても、軌跡や目的地の方向のラインはそれなりにわかりやすい
こういった場所でも測位できているから不思議だ
どういった人に向くか
価格から考えて、eTrexは欲しいと思った人みんなが買う製品ではないようにも思う。しかし、価格を半額にしたところで倍売れるかというと、そういった製品でもない。なんといっても、GPSが好きな人、地図が好きな人など、道楽としてGPSを楽しみたい人には非常に楽しい製品だ。もちろん、それだけではなく、趣味や仕事で自分の位置を的確に把握しておかないといけない人たちにも有用だろう。
郊外を歩く時などには非常に有効だ。高度計や方位を知ることもできるが、登山の場合は、電子機器だけに頼るという人はいないような気もする。落雷とかにあうかもしれないし、電池が切れたり、水で壊れたりといった可能性もないではない。本格的な登山はともかく、トレッキングや山歩き、釣り、狩猟、サイクリングなどには非常にいいんじゃないだろうか。私の場合、eTrexをより楽しむために、さまざまなアウトドアライフにチャレンジしてみたくなったほどだ。
自転車での利用については、専用の器具もあるようで、カーナビ代わりに利用しているユーザーも多いようだ。カーナビほどの機能はないが、だいたいどっちの方向へ行けばいいか、自分の位置がどのあたりなのかが分かるだけでも助かる場合が多い。
ただ、街での利用にはそれなりに制限はあるのも事実。eTrexに限らず、ハンディGPSみんなの宿命でもあるのだが、高いビルが林立していると測位できない場所が増えてしまうからだ。それについては、あまり窮屈に考えず、GPSを楽しむことから始めた方がいいかもしれない。
なお、現在のところ、2万5000分の1の詳細地図は8月に発売される予定で、希望するユーザーには一部の地域を切り取って提供するサービスが行なわれている。また、パソコン側で位置情報を表示するソフトウェアは付属しておらず、たとえば著名な3D地図表示ソフトである「カシミール3D」などのフリーソフトを利用する必要がある。「カシミール3D」では、GARMINの一部の製品からGPSデータを相互にやりとりすることが可能だ。
進行方向の方位は電子コンパスで知ることができる
高度計が意外に楽しい。もちろん登山などの用途のためだろうが、街歩きでも気づかない高度差に驚くこともある
歩いた軌跡が残されている。とぎれているのは信号をロストしたところだ。かなり狭くビルが林立している道だったが、意外に測位できていた。目的地へ行くまっすぐな道がないこともわかる。どこかで曲がらないといけない
高架の下は当然信号はロストしてしまうが、抜ければまた測位された。あまり信号のロストは気にしない方がいいだろう。都心では気楽に見た方がいい
歩いているとロストしそうな場所や、ロストから回復しそうな場所が段々わかってくる。もちろん、衛星の位置で異なっているが。こういった交差点はかなり再発見しやすい
とはいってもいきなり、こんな開けた場所で? といった感じのところでロストした時はがっかりする。地図もかなりおもしろいし、ランドマークはあらかじめポイントされている
目的地の三越前についたが信号の反射の影響か実際の位置とは異なった位置にいることになっている
目的地の三越。やはりビルが多いと電波信号の反射などで本来の位置からはずれてしまうこともある
・ 製品情報
http://www.iiyo.net/gps/j_modelM.htm
・ カシミール3D
http://www.kashmir3d.com/
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夏の旅行にGPSはいかが?
(山田道夫)
2002/07/11 11:36
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