レビュー
スマホでエアコンON/OFF、リモコンアプリが便利な「三菱アウトランダーPHEV」
スマホでエアコンON/OFF、リモコンアプリが便利な「三菱アウトランダーPHEV」
充電ハイブリッドカーとスマホが連携、その使い心地に迫る
(2014/9/24 10:00)
スマートフォンはアプリ次第で何でもできる。そこでスマホをリモコンにしようと思うのは当然と言えば当然の流れ。2012年にネットからエアコンをリモコン操作する機能について、物議を醸したのを覚えている人もいると思うが、その後、スマホでの遠隔操作は認められ、2014年の今、スマホによるエアコンのリモコン操作は各社に広がり、対応機種であれば、後からでも簡単なオプションを追加するだけで、外からスマホを使ってエアコンを付けたり消したり、温度調整をすることが可能になっている。
スマートフォンはアプリを入れれば何でもできるという万能さはもちろんだが、さまざまな通信機能を持ち、インターネットに接続していることで活用法を無限に拡大できるアイテムとなっている。そして、遠隔操作される側も、インターネットに接続できれば、世界中からリモコン操作を受け付けることが可能になる。今、流行りの言葉でいえばまさに「IoT」(Internet of Thing、モノのインターネット)となるのである。
前置きが長くなったが、スマホで遠隔操作ができるクルマがある。それが「三菱アウトランダーPHEV」だ。“PHEV”とはなんぞや、となるかもしれないが、まず基本はバッテリーを充電して走るEV(電気自動車)であり、バッテリーでまかないきれないときだけ、ガソリンエンジンが動いて発電や駆動を助けるという便利なクルマである。一言で言えばEVの充電忘れ(充電切れ)をガソリンでカバーできるクルマ、と考えてもらっても良いだろう。
と、簡単に言ってしまったが、「アウトランダーPHEV」は、ただ、充電切れのときにエンジンを回して発電して動かすだけはない。たとえば走行中、電気自動車よりもガソリンエンジンのほうが効率的な瞬間がある。それは高速道路を走っているときで、そのためにエンジンの駆動力から直接タイヤを回す(走行する)仕組みも備えているという、まさにいいとこ取りのクルマ。
今回はアウトランダーPHEVの遠隔操作について取り上げてみたい。先にすこし触れたアウトランダーPHEVの駆動メカニズムのすごさはここでは書き切れないほどなので、興味を持った方は、ぜひ、僚誌「Car Watch」のアウトランダーPHEVに関する記事(※関連記事)をご覧いただきたい。今回紹介する遠隔操作は、スマホで呼んだら自動運転で自分のところに駆けつける……とはいかないものの、真夏や厳寒期に便利な“エアコンのリモート操作やタイマー動作”が可能なのだ。EVにとっては、もっとも重要な充電管理も、スマホからのリモート操作により効率的に行うことができる。さらにクルマの今の状態や細かい車両設定等もリモートでできるというものだ。
バッテリー充電時間を遠隔&タイマー操作
充電が必要なクルマの場合は、充電管理は非常に重要になってくる。「アウトランダーPHEV」の場合、ガソリンを入れてしまえば完全に電池がカラになっても走ることは可能だが、やはり充電して使えることがこのクルマの特徴であり、ぜひとも電気による走行を活用したい。
スマートフォンや携帯電話ももちろんそうだが、充電というものは、完了まで時間がかかる。そのため充電時間というものを確保しなければならない。「アウトランダーPHEV」の充電時間は、家庭に設定されるEV充電用コンセントからの普通充電で空の状態から満充電まで約4時間かかる。
しかし、ただ充電すれば良いというものではない。最大15Aの電気を連続して使うため、電気代もそれなりにかかり、他の電力消費の大きな機器と同時に使うなど、場合によってはブレーカーが落ちることもある。今は電力にも、ケータイなどと同様に料金プランが複数あり、プランにもよっては、電気代が安い時間帯に充電したいという気持ちも出てくる。
そこで、役立つのは「充電タイマー機能」。夕方にクルマで帰宅、しかし、すぐに充電をはじめてしまうと、夕飯の支度、夕食後の映画や音楽の鑑賞でブレーカーに影響する恐れがある。かといって、一通り、プライベートな時間を過ごして、寝る前に充電をセットしようにも、夜中に外に出て充電プラグを差し込みに行くのは面倒。さらに充電プラグの差し込みそのものを忘れてしまう恐れもある。そこに、タイマーがあれば帰宅後、すぐ充電プラグを「アウトランダーPHEV」に差し込んでも、充電そのもののスタートを夜中にする、といったことができる。
今回は、実際に“23時充電開始”としてタイマーをセットしてみたところ、23時ピッタリに充電が開始された。これなら充電をし忘れることもなく、夜中にわざわざ外に出る必要もない。パジャマに着替えてしまった後にはうれしい機能だ。
また、たとえば東京電力なら、深夜1時から電気代が昼間の半額~3分の1になる「朝得プラン」というものがある。毎日、深夜1時まで起きて充電プラグを差し込むわけにはいかないが、タイマー機能があれば、その時間にセットしておき、お得な時間帯だけで充電することが簡単にできる。
タイマーだけなら、帰宅後、クルマから降りる前の車内で設定してしまえば良い。しかし、スマホで遠隔操作するとさらに便利になる。もし次の日、急に早朝、出発することになって、充電開始時間を早めたい場合も、いちいちクルマまで行かずとも、スマホから充電開始の指示が出せる。
タイマー充電機能にはクルマの位置情報と連動する機能もあるので、自宅駐車場に戻ったときだけタイマー動作させる設定ができる。タイマー設定をしていたため、時間外に外出先の充電器で充電できないということもない。
また、充電プラグの差し込み忘れはないか? と気になった場合もドアの開閉やロック状況も含めてスマホの画面で確認できるため、安心して眠りにつくことが可能だ。
エアコンを乗る前から動かして快適な車内
「アウトランダーPHEV」のエアコンリモート機能も便利だ。エンジンを使ったクルマでは、冬の朝などにエンジンをかけっぱなしで暖房をつけて車内を暖めるということをしていた時代があった。事故を起こしたり、場合によっては法令にも違反しかねない行為で、決してすすめられるものではない。しかし、アウトランダーPHEVならエンジンをかけずにエアコンが使えるため問題にならない。エアコンをかけてもエアコンの動作音がするだけで、エンジン音もなく排気ガスも出さないからだ。
タイマー操作のほか、スマホのリモコンですぐにエアコンをオンすることもできるので、出発時間を変更した場合や、外出先で必要なときにすぐ冷暖房をスタートさせることができる。走行前に電気を使ってしまったらバッテリーの減りが心配だが、エンジンの回転からエネルギーをもらう従来のクルマのエアコンとは違い、アウトランダーPHEVは走行の有無にかかわらずバッテリーのエネルギーを使うため、エアコン利用を先にするか走行開始後にするかの違いでしかないだろう。
また、タイマーでオンにするだけではない。タイマー予約でエアコンが動作しはじめてから急遽、出発時間が遅れてしまっても、リモコンアプリからエアコンを止めることも当然できる。
そのほか、遠隔操作できる機能は意外に多い。面白い機能として、広い駐車場でリモコンでヘッドライトやスモールライトを点灯させ、自分のクルマの位置を確認できる機能があり、夜の外出先で非常に便利だ。また、自宅にいてもこの機能を使って遠隔操作でライトを点灯させれば、防犯に役立てることが可能かもしれない。応用次第で便利に使えそうだ。
また、車両の各種設定もアプリから可能だ。今のクルマは細かい設定を行うことで、自分に合った便利な使い方ができる。例えばドアロック連動でミラーを畳む機能も場合によってキャンセルしたいときもある。リモコンドアロックも運転席だけ動作させたい場合もある。オートライト点灯のしきい値も変更したい場合もある。そんな設定はすべて車両からでもできるが、このアプリを使って車外から落ち着いて設定することも可能だ。
最初にアプリのインストールと設定を行えば後は簡単
この便利なアプリ「三菱リモートコントロール」の利用はそれほど難しくない。まずは、iOSならAppStore、AndroidならGoogle Playストアからインストールする。次にアウトランダーPHEVから出ている無線LAN(Wi-Fi)の電波を探し、通常の無線LANの親機(アクセスポイント)へ接続するようにWi-Fi設定(SSIDや暗号キーの情報はクルマに添付)を行う。最後にアプリを起動すると自動で設定が行われ、完了の表示がでたら設定は終了だ。
詳しい手順はアプリを起動すると表示される説明画面があるので、その説明通りにやれば決して難しくない。
クルマとの接続は無線LANだが、この状態ではWi-Fiによるインターネット接続ができない点に注意したい。クルマとスマホの間だけで通信していることになっているからだ。逆に言えばクルマから直接インターネット側と通信できない仕組みなので、万一、インターネット側から「アウトランダーPHEV」にアクセスしようという悪意を持った人がいてもできない仕組み。「アウトランダーPHEV」は、いわゆる「IoT」になれないのかもしれないが、現状、インターネットからいたずらを心配する必要もなく安心だ。
到達距離は無線LANに準じるが、意外に届く
電波の到達距離も無線LANに準じるため、一般的な戸建て住宅で「アウトランダーPHEV」が停めてある駐車場と、室内では、問題なく通信が可能と思われる。途中にぶ厚いコンクリートや大きな金属製の遮蔽物があれば別だが、庭先のある駐車場に止めてる「アウトランダーPHEV」に、庭が見えるリビングから操作するようなら問題ないだろう。
また、駐車場で試したが、50m程度でクルマが見通せるのであれば、おおむね問題なく電波は届いた。周りの電波状況や使うスマホの機種、装着するケースの利用によって利用できる範囲は異なるが、高速道路のサービスエリアで、充電スポットに「アウトランダーPHEV」を置いて充電しておき、すぐ近くの休憩所から状態を確認するということもできそうだ。充電具合を確かめながらクルマに戻ったり、場合によってはエアコンを遠隔でオンすれば、快適にクルマに乗り込むことも可能だ。
充電できるクルマだが、ケータイの充電機能も充実
最後に「アウトランダーPHEV」はただ電気で走るだけではない。車内にコンセントを備え、給電機能を持っている。容量は通常のコンセントの上限いっぱいの1500W供給で、電源供給能力で言えば一般家庭のほぼ丸一日分の給電が可能。しかも、バッテリーがなくなればエンジンで発電できるので、ガソリンも満タンなら合計で約10日分の電源供給が可能だ。
車内で電源を使う場合は、シガーライターソケットではなく普通のコンセントが使えるので、コンセントに差し込む急速充電器でケータイを急速充電したり、ノートパソコンをACアダプターにつないで使うこともできる。これなら移動オフィスとしても使いやすい。もちろん、車内掃除では、家庭用の一般的な掃除機でしっかりゴミを吸い込ことも簡単にできる。
いまや電気は不可欠という世の中になっている。電気で走れて電気の供給もできる、充電切れを起こしてもガソリンでリカバー、そんな万能なクルマ「アウトランダーPHEV」をぜひ活用してほしい。