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学生はいつ制限がかかるか戦々恐々――auの学割が「5GBプレゼント」になった理由
(2016/1/12 18:30)
日本の携帯電話市場が最も熱くなるのは春商戦だ。進学や就職など、新生活がスタートする時期にあわせて、携帯電話を新たに契約したり、これまで使ってきた環境を見直すユーザーが多いとされる。
2016年の大一番に向けて、12日、KDDIは2016年春モデルと若年層をターゲットにしたキャンペーンを発表した。KDDIの発表会の直前には、競合他社であるソフトバンクも学割を発表しており、戦いの火ぶたが切られた格好だ。
「いま、スマホは不自由だ」
1年前の学割では、毎月の割引を前面に押し出していたau(※関連記事)。今回も割引はあるものの、その金額は最大1000円/月と前年度より縮小した。その一方で、大きく打ち出されたのが「5GBプレゼント」という特典だ。
12日の発表会でプレゼンテーションを行った田中孝司社長は、その背景について、年齢層ごとでのデータ通信の利用動向を示しながら語る。
田中氏
「10代~30代のスマートフォン浸透率は80%を越えてきた。当社ユーザー1万人にアンケートをとったところ、8~15GBを使いたいという人は、10代で72%、20代で60%に達しており、若い人のデータニーズでは、こんなに(多くの通信量を求める人が)いらっしゃる。3~5GBを求める人は20~30%くらいいる」
「今の学生は、お金がないのではなく、データが欲しい。ヒアリングしたところ『通信制限が恐怖』という。気がついたらデータをたくさん使って、いつ制限がかかるか心配でならないという。Wi-Fiでオフロードしたいということで、カフェや学校などでなるべくフリーなWi-Fiスポットを使いたいということで、探すのも大変だという」
さらに3人に1人は、データ容量を超過する、というデータも披露。これはYouTubeやニコニコ動画などを利用していることが要因ではないか、と田中氏。
こうした点から「いま、スマホが不自由だ」というワードを掲げ、これまでと考え方を変えて5GBをプレゼントすることに至ったのだと語る。
他社の追随は難しい?
中学1年生から今回の特典を利用した場合、25歳までの特典は780GBに及ぶこともあって、KDDIでは今回のキャンペーンを「ドッカーン」と表現し、大きなインパクトがあるとアピールする。
質疑で他社が追随してきた場合の対抗策を問われた田中社長は「今回は相当ガツンといったので、なかなか大変かなと思う。(他社が対抗してきた場合は)そのとき考える」と余裕の表情。さらに新規・MNPだけではなく、既存ユーザーの機種変更でも適用することにも「相当踏み込んだつもり」(田中氏)と、大胆な施策であることを重ねて強調する。
若年層以外には……
商戦期にあわせたキャンペーン内容となる一方、質疑では若年層以外のユーザーに向けて、同様の取り組みを行うかどうか、問う声もあがる。
これに対し、田中氏は「その都度、いろいろ考えて、今年のauは何か違うよねと思われるよう新しいことをやりたい」と述べるに留まった。
今後はミドルレンジにも注力
オリジナルブランドとして投入されるQua phone、Qua tabはどういった狙いがあって用意されることになったのか。2015年後半に盛り上がった、総務省のタスクフォースでは過剰な割引や奨励金を避けるよう求める内容となっているが、田中氏は「奨励金の話もあるので、ミドルレンジを重視しなければいけない」とコメント。
またプロダクト企画本部長の小林昌宏氏は「求めやすい価格帯の端末は、それなりのボリュームがいるだろうと思っている。Quaシリーズはオリジナルブランドで、ベーシックラインを構築する流れを作りたいと思っている」と語った。
囲み取材一問一答
春モデル発表会の終盤、KDDI田中孝司社長が報道陣の囲み取材に応じた。主なやり取りは以下の通り。
――総務省からの要請はどう受け止めているか?
田中氏
そういった依頼があったので、それにあわせて出すつもりでいる。
――端末販売はこれから官製不況を懸念する声もある。
田中氏
全体のバランスをうまくとって、急激な変化にならないようにしていきたいとは思っているが、実際、代理店さんや端末メーカーさんにどういった影響が出るのか計り知れない。(徐々に減らすのか? という問いに)ある日突然、どかんとやるとみんな不幸になる。そう思っています」
――ソフトバンクが1GBプランを発表した。どう見ているのか。高くないか?
田中氏
何か期待してるでしょ?(笑) ガイドライン通り出されたのだと思うし、もうひとつ、端末とのセットも考えなきゃいけない。我々ももう少し検討したい。
――奨励金についてはいつから、どれくらい?
田中氏
まだ決めていない。1月末までに、どうするか出すことになっている。まだ少し時間がある。今日は、前々から注力していた学割と春モデルに集中して発表することにした。
――ソフトバンクが電力サービスを発表した。
田中氏
(ソフトバンクのサービス発表は)今朝ですよね。来週くらいに発表しようかなと思っている。
――今年の端末販売はどう変化していくとみているのか。
田中氏
どんな影響が出るのか、計り知れないところがある。ガイドラインが出てくるので、それに従ってやっていくのかなと思う。ガイドラインの影響があるところ、ないところを含めてまだまだ検討を進めている。もう少しお待ちください。
――総務省からの要望は、段階的に対応するのか。
田中氏
そんな話を聞いているが、具体的にはまだもう少し考えようかなと。
――auのなかで、ミドルレンジの機種はどういった売れ行きなのか。
田中氏
やはりハイエンドが先に出ていく。ミドルレンジはハイエンドに少し負けてしまうところがある。今回、Quaシリーズを出して、我々の考えを入れることで、なんとかミドルレンジのビジネスを成り立つようにしていきたい。そのひとつのテストケースだと思う。
――長期利用者への還元として、今日のデータ容量の追加以外に、料金の割引なども考えられるのか。
田中氏
そういうのも含めて、一体的にタスクフォースの結果をいろいろ検討している段階。いわゆる1GBなり、5000円以下といった料金の話、そして奨励金の話、MVNOの話とあった。一筋縄ではいかない課題。
――学割の内容で、業績への影響は?
田中氏
前々から検討していたもので、業績には織り込み済。心配していない。
――ソフトバンクも今朝、通信量をプラスするキャンペーンを発表した。業界の流れになるのか。
田中氏
学生がデータ容量を必要としているのは明らかで、それに応えるのは、普通と言えば普通。25歳まで踏み込んだので、そう劣後するものではない、自信がある。
――10GBでも手軽なプランである格安スマホにも影響すると思っているのか。
田中氏
影響はあるかなと思っているが、ハイエンドが欲しい人もあれば、スマホであればなんでもいいという人が別れている。それなりに取り込めるのではないかと思っている。
――機種数は絞り込まずにいくのか?
田中氏
しばらくはこれでいきたい。春になるともう少し増えたり……って、ちょっと言っちゃいけないと(笑)。
――安倍首相からの指示は、家計の負担感を軽減すべきという話だった。消費者の不満感は解消できるか。
田中氏
できるだけお客さまの声を聞いて対応していきたい。1GBの人と15GB欲しいという人が同居している市場であり、セグメントアプローチにならざるをえない。今回は25歳以下でやらせていただいた。1GB以下はカミングスーンでやってくる。あったものをやるしかない。全て無料にすれば喜ばれるだろうが、それではビジネスが成り立たない。
――3GBではなく、5GBからのキャンペーンとなったのはなぜか。最低、5GBから使ってもらいたいということか。
田中氏
それもあるし、これくらいの(学生の)世代は、だいたいそれくらいなんですよ。みなさんおっしゃるほど、下の方が文句を言われているものではなく、もっと上のほうがリニアに上がるのではなく安くしてという声がある。
――3社から実効速度の調査結果が出た。
田中氏
そんなもんかなあと思う。今回、5GBのプレゼントをしたのは、WiMAX 2+が空いてきたので、容量がどんと増えたため。
――データチャージカードやau WALLETチャージカードは、10%割引などの販売施策を行うことはあるのか?
田中氏
今回出したが、まだauショップだけだが、他にも拡げたい。自由な使い方ができればと思う。
――キャッシュバックの代わりに配る?
田中氏
それをやると怒られますから(笑)。