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送客と回遊――「Syn.」の連携で見えてきた傾向と課題

15社21サービスが横でつながるサービス連合体の次の価値とは

 Syn.ホールディングスは、加盟企業のサービス同士で横のつながりを実現する取り組み「Syn.alliance」(シンドット アライアンス)について、これまでの活動内容と、今後の事業方針を明らかにした。同アライアンスに参加する各社から人を集めて開催されたアイデアソンの会場で、Syn.ホールディングス 代表取締役CEOの森岡康一氏が記者向けに説明を行った。

「Syn.menu」で各社のサービスを移動するユーザーの行動パターンが明らかになった

 「Syn.」構想はKDDIが立ち上げたものだが、現在はSyn.ホールディングスとして会社化されており、オープンな取り組みを行っていく姿勢を明確にしている。ナターシャ、nanapiといった企業は同ホールディングスの傘下に収まっている。

 サービス発表時には12社でスタートした「Syn.alliance」は、現在までに15社が加盟し、20サービスが対応、8月中旬には21サービスになる見込みとなっている。各サービスを合計した、「Syn.alliance」でリーチできる月間利用者数(MAU)は、開始当初の4100万人から1億人へと大幅に拡大している。

Syn.ホールディングス 代表取締役CEOの森岡康一氏

 「Syn.alliance」の取り組みを開始してから約10カ月が経過し、森岡氏からは、Syn.menuの提供で顕在化したユーザーの行動パターンなどが解説された。

 ユーザーの行動パターンとして見えてきた、あるいは想定通りに可視化されたとするのは、ユーザーは、日常的に使うサービスを起点にするという点。

 例えばビジネスマンはカレンダーを起点に天気に移動し、その後に男性は交通情報、女性は占いやニュースといったコンテンツに分散していく。主婦層ではクーポンサービスを起点に、ファンションや占いに移動していく。若年層であれば、ゲームからブックマークその後にランキングといった具合だ。

 森岡氏は、横のつながりで実現する「送客」に加えて「回遊」も創出できているとした上で、こうしたスマートフォン上での(各社のサービスをまたいだ)行動をデータで示せていることが、アライアンスのひとつの成果だとする。一方、「やってみて、デイリーツールは強いと感じた。強力なデイリーツールが欲しい」と、起点となるツールの重要性を率直に語っている。

 また、同氏が「いちご大福」と例えるように、一見すると関係がない組み合わせで相乗効果を発揮している例や、アライアンス加盟各社から人が集まる協議会、分科会といった取り組みにより、「大手と張り合えるコラボが芽生え始めている」という。この日開催されたアイデアソンも、アライアンス加盟各社の人員を結びつけ、新たなサービス創出のきっかけを探るという背景で実施されている。

 「Syn.alliance」の取り組みは、企業やサービスの連携でスタートしているが、森岡氏は「本質的には、人をつなげていくこと」ともしており、各社のサービスの連携を通して人材が交流し、新たな動きを生み出すことにも言及している。

6日に開催されたアイデアソンの様子

集約されるデータの活用が新たな価値に

 今後の事業方針という意味では、構想発表時と変わらず、「インターネット上にあるサービスを連携させ、価値ある相互連動を実現する」というもの。

 一方、具体的な取り組みとしては、従来の統一メニューの提供に加えて「回遊」を強化していく方針であるとし、具体策の中心は、アライアンス加盟企業からのデータを集約する「Syn.DMP(仮)」(DMP:データマネジメントプラットフォーム)になるとする。

 「DMPは広告だけでなく、回遊対策にもしっかりと使い、アライアンスにフィードバックしていく。加盟全社が参加するかどうか分からないが、参加したいという意見は多い。実現すると、日本ではほとんどないDMPが完成する。各サービスのデータを連携して、立体的にユーザーの全体像を理解できる。ユーザーにはレコメンド、サジェストを届けられ、広告にも使えて、回遊だけでなく自社サービスにも取り込める。このDMPを次の新たな価値としていく」。

 森岡氏はさらに、このDMPの次の展開として「Syn.Extention(仮)」を紹介するが、こちらは近い将来に改めて発表するとした。プレゼンテーションのスライドでは「関連するコンテンツや機能をマッチングさせる基盤の構築」と案内、同氏は「次のキラーになる。立体的な回遊の構造をさらに作っていく」と意気込み、「(各サービスに)溶けこんでいくもの」などと表現した。

 森岡氏は「PV(ページビュー)も重要だが、最近は“回遊数”という指標で見始めている。それにどれだけ貢献しているかを重要視している。現在のスマートフォンは、個別にサービスが提供されており、興味の連鎖が止まってしまう」と語り、これを解決し、(データの裏付けで)より深く連携させるのがDMPやその次の「Syn.Extention(仮)」であるとしている。

太田 亮三