ニュース

「買ってもらう」から「聴いてもらう」音楽へ――「AWA」CM発表会

 エイベックスとサイバーエージェントが仕掛ける音楽配信サービス「AWA」。そのCM発表会が29日、都内で開催された。小室哲哉ら音楽プロデューサーをゲストに迎え、スマートフォン時代の音楽業界についてのトークセッションが開催された。

左から田中知之、大沢伸一、IMALU、小室哲哉、☆Taku Takahashi

 AWAは、5月より提供されている、定額制で聞き放題の音楽配信アプリ。iOS 7.0以降とAndroid 4.3以降に対応している。

 配信楽曲は洋楽・邦楽で数百万曲規模。2015年末には500万曲がラインナップされる予定。月額1080円(税込、以下同)のプレミアムプランと、月額360円で一部機能が制限されたライトプランが用意されている。サービス利用開始から90日は全機能が無料で利用できる。

 AWAのコンセプトは「好きな音楽との”出会い”と好きだった音楽との”再会”」。音楽をアーティストやアルバム単位で検索して聴くこともできるが、ユーザーが作成したプレイリストを聴くことにフォーカスして設計されている。

 ユーザーが作成したプレイリストを公開することもでき、他の人の作ったプレイリストを聴いたり、評価したりといった、ソーシャル機能を備える。

 今後の機能拡充では、Facebook、Twitter、LINEといったSNSへのシェア機能(6月下旬リリース予定)、オフラインモード、ローカルキャッシュ、ローカル音源再生(8月上旬)、PC/タブレット向けの対応(9月以降)などが予定されている。

 なお、AWAで再生された楽曲の著作権料は、再生回数に応じて売上から一定割合、著作権者に分配される。初回3カ月の無料期間中に再生された楽曲についてはAWAが著作権料を負担する。

 6月30日よりテレビ放映が開始されるCMは、音楽を楽しむユーザーをイメージした、ポップなもの。プレイリストやムードにあわせて曲を選ぶ利用スタイルを表現している。

AWA CM「誕生編」

「音楽の世界観を崩さない」デザイン

 発表会では、AWA株式会社の代表取締役会長で、エイベックス・グループ・ホールディングス 代表取締役社長CEOの松浦勝人氏と、AWA株式会社 代表取締役社長でサイバーエージェントの代表取締役社長の藤田晋氏のインタビュー映像が放映された。

 AWAは、聴き放題のサブスクリプション(購読)型の音楽配信サービスによって、新しい音楽の聴き方を提案するというエイベックスの松浦氏の考えから、サイバーエージェントの藤田氏に開発を持ちかけ実現したという経緯が紹介された。

 同様のサブスクリプションサービスは、アップルが30日に開始する「Apple Music」、LINEが11日に開始した「LINE MUSIC」といったサービスなど、新規参入が相次いでいる。松浦氏は、これらの音楽配信サービスが盛り上がることで、音楽の視聴スタイルが、変化していくと話す。

 藤田氏によると「AWAの名前には意味がない」という。音楽の世界観を前面に押し出すため、「どこか外国で作られたような」デザインとしたとしている。AWAでは、趣味趣向が似ている人とつながるために、プレイリストを前面に押し出しているが、プレイリストによる音楽のレコメンド機能を高めるために、リリース後1~2年かけて、ユーザーの視聴傾向のビッグデータ分析を行っていくという。

藤田晋氏(左)と松浦勝人氏(右)

AWAによって「聴いてもらう」音楽を作れるようになる

 トークセッションでは、音楽プロデューサーとして活躍している小室哲哉、大沢伸一、田中知之、☆Taku Takahashiと、松浦氏と藤田氏が登場。その中で、出演者それぞれが作成したAWAのプレイリストが紹介された。

小室哲哉

 小室哲哉は、AWAのような音楽配信サービスを「何年も待っていた」という。今までのレコード販売を主とした音楽制作を「買ってもらう」音楽だとすると、AWAでは、「聴いてもらう」音楽を作ることができると語り、アーティストとしての期待感を示した。作品を提供する立場としては、「店頭に並べてもどうせ返品されてしまう」レコードショップとは違い、絶対に返品されることのないAWAでの販売にメリットがあるという。

大沢伸一

 大沢伸一は、ベータテストの頃からAWAを愛用しているという。レコード販売が増え、手軽に音楽を聴けるようになった2000年代頃から、音楽を探しだす行為に苦労していたという大沢は、他人のプレイリストを通して音楽を発見できるAWAによって、新しい形での音楽の発見ができるのではないかと話した。

田中知之

 コレクターとして、レコードを2万枚以上所有するという田中知之は、当初AWAは「所有を否定するもの」ではないかと懐疑的だったという。しかし、利用してみて、プレイリストを作る行為を通して音楽を所有する感覚に通ずるものを体験し「デジタルでちょっと遠くなった音楽が近くなった」と感じたと語った。

☆Taku Takahashi

 DJとしても活躍する☆Taku Takahashiは「音楽業界は不況だと言われているが、音楽そのものは不況ではないと思う」と話し、AWAによって、YouTubeなどで音楽を聴いているユーザーに新たな体験を提供したいと話した。ライブの前にAWAのプレイリストをリリースしたり、パッケージ版の発売の前にAWA限定で先行リリースしたりといった、アーティストとしての使い方を示した。

IMALU(中央)

 サプライズゲストとして、タレントで歌手のIMALUが登場した。昔から携帯電話で音楽のプレイリストを作っていたというIMALUは、「AWAでプレイリストを公開することで、いろいろなアーティストやジャンルに出会えるきっかけになるのが楽しみ」と話した。

松浦勝人氏と藤田晋氏
登壇者が作成したAWAプレイリスト
作成者AWAユーザー名プレイリスト名
松浦勝人max matsuura ☆ 松浦勝人毎晩これです。
藤田晋渋谷で働く社長 藤田晋サマージャム2015
小室哲哉Tetsuya Komuroネタ帳 by 小室哲哉
大沢伸一Shinichi Osawaピアノ、弦などのクラシックエレメントと僕の感受性
田中知之FPMparis,june 2015
☆Taku TakahashiTaku Takahashifor AWA
IMALUIMALUSummer EDM 2015
Best of 00's
Best Collab Songs

石井 徹