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ドコモの第2四半期は減収増益、iPhone効果は下期から

決算の内容を説明するNTTドコモ代表取締役社長の加藤 薫氏

 NTTドコモは25日、2013年度第2四半期の決算を発表した。営業収益は2兆1990億円で前年同期比83億円(0.4%)減、営業利益は4732億円で同20億円(0.4%)増で、減収増益。四半期純利益は同145億円増の3004億円となった。設備投資は同592億円減という結果だが、これは前年度に災害対策、信頼度向上のための特別な設備投資があったため。端末の総販売数は同11.5%減の1047万台に落ち込むなどマイナス要因があったものの、パケット通信における収入は9493億円の同1.2%増と健闘し、スマートフォンの契約数は同47%増の2157万件と大幅な躍進を見せた。説明に立った同社代表取締役社長の加藤 薫氏は、「年間の利益目標達成に向けて、順調な進捗」と胸を張った。

 営業利益の増減に関わる項目を挙げると、モバイル通信サービスの収入193億円増、機器販売収入371億円増、その他の営業収入増691億円のほか、端末原価の低減などによる機器販売費用600億円減という4つが主な増加要因。機器販売費用や償却費などにおいては計670億円のコスト削減を達成し、構造改革への取り組みの成果を示した。一方、営業利益の減少要因において最も大きな額を占めるのは、月々サポートの負担分である1338億円となっている。

 端末販売については、ユーザーのスマートフォンへのシフトが相変わらず進んでいる。2012年度上期に54%だったスマートフォン販売比率は、今回2013年度上期で60%に。端末全体の総販売数は137万台減少したが、スマートフォンに限れば販売数は前年同期と同程度の632万台だった。新規の端末販売数も前年同期とほぼ変わらない342万契約だが、純増数は同42万件減の24万契約と大苦戦。0.86%の解約率と、同氏自ら「厳しい状況」と認識しているマイナス39万件のMNPによるユーザー流出が影響した。2013年度下期は新規販売数の増加と解約率の低減を目指し、「年間の販売計画である2450万台は据え置きたい」としている。

 Xiの契約数は前年同期比2.6倍の1640万件。年度末にはこれが2500万件になると見込んでいる。また、月々サポートの影響を除いたARPU(1契約あたりの売り上げ)は同80円増の5210円。Xi対応スマートフォンユーザーの増加によるパケットARPUの180円増が主な押し上げ要因となっており、年度末にはこちらも5250円にまで高めるとしている。

 同氏は、「下期は(iPhone5s/5cの影響で)競争環境が大きく変わる」としながらも、「モバイルの通信収入の減少、スマートフォン基盤の拡大、コスト削減の取り組み、これらをバランスさせながら補っていきたい」と述べ、2013年度の営業利益については当初予想の8400億円を堅持したいと語った。ただ、iPhoneの月々サポートの額が他の端末よりも大きいことから、iPhoneの販売実績が本格的に数字に表れる下期は実質的なARPUがさらに低下し、利益を圧迫する可能性は否定しきれない。

デバイス、ネットワーク、サービスに加え、料金・チャネルを軸に展開

 すでにスタートしている2013年度下期では、iPhoneの取り扱い開始だけでなく、Android端末の強化や新たなサービス展開なども伴い、加藤氏いわく「キャリアの総合力が問われる新たな競争ステージが始まる」ことになる。これに対応するため、従来から同社の強みとしていたデバイス、ネットワーク、サービスの3つの軸に「料金・チャネル」を新たに加え、「これらの総合力によってお客様にNo.1の価値を提供できるようになる」と断言した。

 この「料金・チャネル」のうち「料金」においては、多彩な施策や料金プランを活かし、既存ユーザーには「iPhone買いかえ割」や「Xiカケ・ホーダイ半額キャンペーン」、乗り換えユーザーには「ドコモへスイッチ割」、「ドコモへおかえり割」といったプラン・キャンペーンを用意していることで、さまざまなニーズに対応できることをアピール。ドコモの長期ユーザーに対しても、機種変更時の「はじめてスマホ割」や「ありがとう10年スマホ割」、利用年数に応じたドコモポイント付与の優遇策などを用意していることも訴えた。

 「チャネル」については、独自の満足度調査で総合No.1になったというドコモショップの「対応チャネル」が1つの軸となる。「この評価は一朝一夕で得られるものではなく、ドコモが長年にわたって築き上げてきた価値であり財産」と話し、iPhone専門のコールセンターを新たに立ち上げたことにも触れ、万全のユーザーサポート体制で顧客満足度を高める狙いだ。

iPhoneでMNPの数字は改善へ

 9月に発売したiPhoneの状況についても簡単に解説した。iPhoneの販売は、当初やや品薄で、取扱店舗も1050店からのスタートだったこともあり、「お客様および競争への対応が十分でなかった」が、導入による効果はMNPの実績などに着実に表れてきている。発売後1週目はMNP件数が前年同期比33%改善、spモードメールなどの対応により3週目は同54%改善し、この傾向は今も続いているとのこと。25日現在、iPhoneの取り扱い店舗数は1500弱だが、28日にはこれを2350店舗にまで増加させ、「ほぼ全国のドコモショップでiPhoneを買えるようになる」という。

 Android端末は、第三者の調査によると家電量販店での販売シェアにおいて約2/3をドコモ製品が占めているとし、同氏は「圧倒的な強みがある」と表現。秋冬モデルとして発表した端末ラインナップの電池もちの良さ、クアッドバンドLTEや150Mbpsの高速通信への対応、個性的なデザインなどを売りに、Androidの販売力をますます強化していくことを約束した。

 Xiの基地局は、2013年9月現在で3万7000局。2014年3月末までにこれを5万局以上にまで一気に拡大する。75Mbps対応基地局は28000局から4万局へ、112.5Mbps対応基地局は180都市から300都市へ広げる計画。150Mbps対応基地局については、2013年12月末の時点で山手線全駅をカバーし、2014年3月末に500局、2015年3月末に2000局へと順次増設する。2015年1月に予定している700MHz帯の運用開始や、独自技術による6セクタ基地局、ネットワークの最適化ノウハウなどを駆使し、「ユーザーにその価値が伝わるように、日々努力していきたい」と語った。

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ABCとの提携やグローバル展開など、新しい取り組みで1兆円を目指す

 前日の10月24日に提供開始した「ドコモメール」については、25日13時半時点でユーザー数が16万人になったことを明らかにした。クラウド型のメールサービスで、スマートフォンやタブレット、PCのマルチデバイスに対応。「一新して使いやすさを追求した。非常に細かい工夫をしているので実感していただけるはず」と、評価の芳しくなかったspモードメールの汚名返上に自信を見せた。

 また、当日の15時に発表したばかりのABC HOLDINGSとの資本提携についても言及。この資本提携には「教育・学び」の側面を見い出しているとのことで、「3月から連携して実験しながらお互いのシナジーを確認してきた。協力関係を一層強化するには資本提携という形が必要だと思った」と述べ、リアルな料理教室と端末を介したバーチャルな教室を融合させ、グローバル展開も視野に入れながらモバイルのイノベーションを起こしていきたいとした。

 さらに、大規模オンライン講座「MOOC」を活用した「反転学習」の研究を東京大学と共同で開始したことを改めて報告。その他、eコマース向けの決済手段を提供しているオーストリアのfine tradeの買収や、中国・韓国企業とのアプリの相互提供など、グローバルへの積極的な事業展開を進めていることも強調した。これら新しい取り組みにおける収入は、2013年第2四半期時点で累計3100億円となっており、通期では7000億円に、2015年度は1兆円へと拡大させていく。

 それと同時にコスト削減も進める。2012年度の500億円に続き、2013年度は1100億円の削減を目標とし、事業環境の変化に対応すべく、2014年第2四半期以降には全社規模の組織再編も実施する。「会社そのものの体質、構造を変えながら邁進していきたい」と力強く語り、営業利益9000億円の早期達成を通過点に中期的な成長を目指したいとした。

日沼諭史