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“ノーリミット”でWiMAX 2+をアピール、下り220Mbpsは1年後

 UQコミュニケーションズは30日、約1カ月後にスタートする新サービス「WiMAX 2+」の概要を発表した。都内で開催された記者会見で説明を行った代表取締役社長の野坂章雄氏は、「業界最速に返り咲きたい」などと述べ、高速性や通信量制限といったあたりで、他社との差別化を図り、サービスを提供していく考えを示した。

一番評判が良かったのは「ノーリミット」、WiMAX 2+でも

 2008年にサービスを開始し、426万契約に達したWiMAXだが、「(月間の通信量制限がない)ノーリミットはWiMAXだけの強み」として、広告などで積極的にアピール。野坂氏もプレゼンテーションで「(WiMAXのサービス内容で)一番評判が良かったのはノーリミット」と語る。

 一方、WiMAX 2+は契約から2年間は無制限で利用できるが、3年目からは月間7GBと、通信量制限が設けられることになった。一見すると、これまでの姿勢を翻したような印象を受けるかもしれないが、仮に7GBへ達したとしても、たとえば今回発表されたWiMAX 2+対応ルーターは、既存のWiMAXもサポートしており、7GBに達したとしても、WiMAXへ手動で切り替えることで、無制限での通信を利用できる。

 野坂氏は質疑応答で「7GBという制限が適当かどうか、いろんな議論がある」として、今後の見直しを示唆しつつも、現状のモバイル通信市場で、他社が採用する7GBというラインをまず採用したと説明。

 この回答は、ヘビーユーザーは納得すると思うか? という囲み取材での問いにも用いられたが、さらに野坂氏は「コアなユーザーは、我々のファンになっていただいている方々。そうしたコアユーザーを裏切らないということでしていきたい」とも語り、7GBという基準は、増え続けるトラフィックの傾向、あるいはヘビーユーザーとライトユーザーとの間の公平性などを考慮した上での、当面のもの、と位置付けた。

 囲み取材で、通信量制限について問われた野坂氏は「ある種、うちの生命線だと思っていた。しかし言い過ぎると(今回のプランで)自分で自分を壊しているのでは、という議論もあるだろう。当社のユーザーも非常によく分かっていて、『使い放題はいい。しかし自分だけが良くて他が不公平でいいのか』という議論もちゃんとされている。そういう意味で今回階段(7GBという基準)を入れたことは正しいと思っている。UQも未来永劫、使い放題、というそれだけではない。今後、新技術の導入などで、その時々で常にベストなものを提供できる立場にあると思う。そこをうまく舵取りしないといけない。一気に右へ左へと(極端に)ということだけは避けたい」と述べた。

 続けて同氏は、値段とのバランスについて「なかなか解がなかった」とギリギリまで悩んだと吐露。今日の発表まで、さまざまな検討を重ねており、「感覚的に今回は難産だったと思う」とした。

機種変更の販促は行わず

 ユーザーが増え、通信が混雑するようになってきた、との声も聞こえるWiMAXだが、今回のWiMAX 2+が普及してユーザーが移行すると、既存のWiMAXの混雑緩和が期待される。

 この点は、今回のプレゼンテーションで野坂氏も指摘したものだが、現時点ではWiMAXの期間拘束型サービスでも契約期間は1年程度であるため、今後、徐々に買い替えが進むのでは、として、販売促進キャンペーンなど積極的なWiMAX 2+への移行策は実施しない考えとのこと。

WiMAX 2+対応の「HWD14」、SIMカードを採用

 これまでWiMAX対応機種は、SIMカードを用いない形だったが、今回発表されたモバイルルーター「HWD14」はLTE対応ということもあって、SIMカードを用いる。

 このため、これまでのWiMAXサービスで提供されていた「ファミ得パック」や「機器追加オプション」はWiMAX 2+向けサービスでは用意されていない。今後の対応について野坂氏は「(機器追加オプションなど)個人的には、UQの機器内で考えてみたいと思っている」とした。なお端末はいわゆるSIMロックが施されている。また1契約で複数のSIMカードを提供するようなプランは、現状考えていないとのこと。

 なお、都市部以外のエリアではまだまだWiMAX 2+のエリア整備に一定の時間がかかるため、既存のWiMAX対応機種も今後併売される。

 またHWD14を契約すると、UQに1契約、auに1契約、という形になる。

2014年度中頃、約1年後に下り220Mbpsのサービス

 まずは110Mbpsでスタートするが、アンテナを複数使う4×4 MIMOなどの技術によって、2014年度中頃、約1年後にも、下り最大220Mbpsのサービスが提供される。このサービスはWiMAX 2+用として、今年7月、新たに追加された20MHz幅だけで実現する。

 野坂氏は「既に基地局側はMIMOに対応している。あとはデバイス側」と解説。複数のアンテナを、サイズの限られるモバイルルーターなどユーザー向け端末に搭載されるには、もう少し時間がかかるとの見方が示された。また通信速度自体は、他社との差別化で最も重要な要素とした。

 WiMAX 2+のエリア自体は、主に既存のWiMAX基地局の設備を入れ替えていく形になる。UQのユーザーの7~8割は東名阪に在住とのことで、通信が多い都市部でまず展開する方針で、エリア整備状況は、随時、UQのWebサイトで紹介される。7月の免許取得から、3カ月でのサービス開始となるが、ある程度、エリアの広さが確保できるのを待ってからのサービス開始ではなく、通信が混んでいるところからどんどん入れるべきと判断したという。そのため、スピーディな端末、あるいは基地局設備の導入のためファーウェイからモバイルWi-Fiルーターを調達し、既存のWiMAXネットワーク設備を担当していたサムスンからWiMAX 2+の設備を調達した。

関口 聖