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auの「LISMO Unlimited」、3キャリア対応の「KKBOX」に
auの「LISMO Unlimited」、3キャリア対応の「KKBOX」に
(2013/4/9 06:00)
KDDIと沖縄セルラーは、定額制楽曲配信サービス「LISMO Unlimited」を6月にリニューアルする。これにより、サービス名称は「KKBOX(ケーケーボックス)」となり、auだけではなく、NTTドコモやソフトバンクモバイルのユーザーも利用できるようになる。また離れた場所にいる人と一緒に楽曲を楽しむ機能なども追加される。利用料は、現在と同じく月額980円。
2011年6月にスタートした「LISMO Unlimited powered by レコチョク」は、月額1480円(2012年3月から980円)の定額制楽曲配信サービスとして提供されてきた。6月にリニューアルすると、サービス名称が「KKBOX」に変更され、聴き放題のほか、ソーシャル機能などが追加される。
もともと「LISMO Unlimited」では、仕組みとして、台湾のKKBOX社(KDDI子会社)のシステムが採用されている。リニューアルによって、auだけではなく3キャリア対応サービスとなることで、LISMOブランドから離れ、「KKBOX」ブランドに変更されることになる。6月までまだ2カ月ほどあるため、リニューアル後のサービスについて、その具体的な内容はまだ最終的に決定していないが、台湾の「KKBOX」とほぼ同様のサービスが提供される見込み。邦楽や洋楽のほか、台湾などのC-POPについても、取り揃えられる。継続して利用するユーザーには、リニューアル時の月額利用料が無料となるキャンペーンも実施される。
3キャリア対応にあたり、リニューアル後の「KKBOX」は、KKBOXの日本法人、KKBOX JAPANが提供するサービスとなる。
台湾版「KKBOX」のサービス内容
日本でのサービス内容は、今後、あらためて案内されるが、ベースとなる台湾のサービスはどうなっているのか。
海外での「KKBOX」、台湾・香港あわせて1000万を超える無料会員、数十万の有料会員を獲得。アーティストは、同サービスを新曲をアピールする場としても活用しており、実際に「KKBOX」のランキング内で上位に入ると人気曲として認知されることもあるという。音楽誌も出版しており、オンラインでシンプルな音楽関連のニュース記事を配信し、より深いインタビュー記事などは雑誌のほうで紹介する。無料会員の多くは台湾のユーザーとのことで、人口約2300万人の台湾において、半数近くのユーザーに認知され、利用されているサービスだ。
「KKBOX」の主な機能としては、AndroidやiPhone、パソコンで利用できる「マルチデバイス」、先述した「音楽情報の配信」、そしてジャンルごとに用意されたチャンネルを選択してラジオのように楽曲を聴く「ミュージックチャンネル」がある。また、歌詞も配信されているが、これはユーザーがテキストを書き起こして投稿する仕組みとのことで、台湾では、ファンが好きなアーティストの新曲に対して“一番乗り”で歌詞の提供を目指す、という。
楽曲のプレイリストを作成することもでき、聴いた曲をキャッシュして圏外エリアでも聴けるようになっている。
最も大きな特徴の1つは「Listen with」と呼ばれる機能。これは、ユーザーが自分の聴いている曲を公開し、他のユーザーもその曲を聴ける、というもの。公開元のユーザーが再生中に曲送りすると、聴取しているユーザーの曲も次の曲になる。「KKBOX」を通じて、ラジオのDJのように選曲することから、人気となるユーザーも存在する。KKBOXのスタッフが楽曲を紹介することもあるとのことで、台湾本社の編成チーム出身という、KKBOX JAPANの藍●華(●は王へんに凧)氏は、音楽事務所の規模やアーティストの人気度にとらわれず、より良い楽曲があれば紹介するのがKKBOXの方針という。
さらにこの機能を通じたユニークな取り組みとして、台湾などで人気のアーティストが登場することもある。好みの曲を選ぶこともあれば、自らの新曲を流すこともある。同機能ではチャットも可能で、ファンとアーティストの距離を縮めることもある。台湾では、1日で最大2人、週に数回のペースでアーティストが「Listen with」を利用している。その登場時刻は事前に予告されるが、日によっては、アーティストが予告なしで登場することもあるのだという。KKBOX JAPANの松山泰士氏は、「日本で大きな特徴になるだろう」としており、リニューアル後の目玉機能になりそうだ。
LISMO Unlimitedが「KKBOX」へ変身する理由
これまでLISMOブランドでとして提供されてきたサービスが、なぜ「KKBOX」という、日本では無名のブランドになるのか。
KDDIメディアビジネス部の里隆弘氏は、「auのコンテンツサービスは(使い放題・聴き放題)のパス系サービスが主流になってきており、楽曲系ではうたパスが中心になってきている。これまでのLISMOは、1曲○円という形でフィーチャーフォン向けサービスで展開してきた」と語り、LISMOブランドとは別のサービスとして、新たなブランドが必要だったとする。さらに、3キャリア対応という、これまでのサービスとは一線を画す展開を進めるためにも、“au色”を薄めるブランドを採用する狙いがあるようだ。
“聴き放題は当たり前”
ソニーの「Music Unlimited」など、今春は月額980円の聴き放題サービスがいくつか登場している。また、ディー・エヌ・エー(DeNA)がスマートフォン向け音楽配信サービス「Groovy」をスタートするなど、さまざまな楽曲配信サービスが登場しており、ユーザーとしては選び甲斐のある状況だ。国内サービスの競争が激しくなる一方、北欧発の人気サービス「spotify」が日本へ上陸する可能性もある。こうした状況に対して、KKBOX JAPANの松山氏は、「spotifyに対しては、日本市場にマッチした楽曲ラインナップが強みになるのでは」と予想。さらに、日本国内の他のサービスとの違いとして、コミュニケーションに繋がるサービスを目指すとも説明する。
同じくKKBOX JAPANの高橋典子氏も「(これまでのLISMO Unlimitedとの最も大きな違いは? との問いに対し)一緒に聴く、というソーシャル機能が一番の違い。聴き放題は当たり前。“次世代の聴き放題”です」と述べる。
電車に乗りながら、あるいは部屋の中でと、1人で音楽を聴くスタイルに加えて、離れた場所にいる友人や恋人とともに、話のタネに音楽を気軽に楽しむ。6月のリニューアルによって、新生「KKBOX」は、音楽を音楽として耳にするだけではなく、コミュニケーションツールとしての楽しみ方を提案するサービスになるようだ。