「LINE」はFacebook目指す、コミュニケーションツールからの転換


写真左からNHNの舛田氏、森川氏、出澤氏

 NHN Japanは3日、スマートフォン向けアプリ「LINE」の発表会を開催、コミュニケーションサービスからプラットフォーム事業へと展開していくことが発表された。また、KDDIとの業務提携についても明らかにされた。

 「LINE」は、AndroidやiOS、Windows Phoneといったスマートフォンを中心に、フィーチャーフォンやパソコン向けにも展開されているコミュニーケーションアプリ。基本的には、電話番号に紐付いたサービス(フィーチャーフォンはメールアドレス)であり、電話番号を知っている現実の友人知人とのコミュニケーションを想定したサービスとなっている。

 「LINE」は2011年6月、VoIP機能やメッセージ機能が楽しめるアプリとして登場。スタンプと呼ばれる画像を介した感情のやりとりなどで話題を集め、現在までに世界で4500万ユーザー、日本だけで2000万ユーザーを超えるサービスに成長している。国内に限っていえば、スマートフォンユーザーの44%以上がLINEを利用しているという。利用者を性別年代別に見ると、女性の中では19~24歳の女性が43%と割合が大きい。職業別では会社員が40.5%で、学生の24.2%となっている。



「LINE」がSNSに

 「LINE」のアプリは、Skypeやカカオトーク、Viberといったメッセンジャーアプリの1つとして、これまでコミュニーケーションツールとして展開されてきた。3日の発表でNHN JAPANの代表取締役社長 森川亮氏より、コミュニケーションツールからプラットフォームへと展開することが語られた。

 具体的には、LINEのアプリ上にいわゆるマイページを意味する「ホーム」が追加され、ユーザー自身が投稿した近況が確認できるようになる。他社SNSと同様に文章だけでなく、写真や動画、位置情報なども投稿可能。

 また「ホーム」には、LINEでつながる友人達のリストがあり、投稿に対してコメントできるほか、LINEの特徴ともいえるスタンプで「かわいい」「残念!」といった感情も表現できる。

 さらに、SNS化の要素として「タイムライン」も導入する。「ホーム」に近況を投稿すると、LINEで繋がる友人らにはその投稿が時系列で表示される。LINEの友人関係のみに公開され、設定画面から友人毎に投稿内容の表示と非表示が選択できる。



「LINE Channel」でプラットフォーム化

 プラットフォーム化を進める「LINE」は、他のSNSと同様にさまざまなコンテンツを提供するエコシステムを構築する。それが「LINE Channel」だ。

 「LINE Channel」は、LINE上で繋がる友人らと楽しめるアプリやサービスを集約したプラットフォームサービス。今回第1弾として、ゲームや占い、クーポンなどのサービスが発表された。「LINE Channel」では有料コンテンツも提供される。ユーザーは新たに提供される仮想通貨「LINEコイン」を購入した上で、有料コンテンツを利用する。7月上旬以降、順次提供が開始される予定。



LINE Game

 「LINE Game」では、LINEの友人同士で楽しめるネイティブアプリが提供される。ゲームをプレイする場合はLINEの会員登録が必要となる。パソコン向けのオンラインゲームポータル「ハンゲーム」などを提供しているNHNでは、自前の開発部隊を持っており、第1弾のゲームではまず自社開発のタイトルを中心に展開する。NHNでは今後、スマートフォン向けゲームをLINEブランドに統一して提供していく方針。

 NHN JapanでNAVERやlivedoor、LINEの事業戦略およびマーケティング責任者を務める執行役員CSMO(Chief Stategy & Marketing Officer)の舛田淳氏は、ゲームのAPIを公開し、まずは共同開発タイトルから始めて、段階的に法人個人を問わず開発パートナーを増やしていく計画を示した。初期参加企業としては、gloopsやコナミデジタルエンタテインメント、サンリオ、スクウェア・エニックス、タイトーなどの名前が挙がっている。

 なお、パートナーとの利益の分配については今日の時点では明らかにされなかった。舛田氏は「あらためて個別に公開していく」と話している。



LINEで小説、占い、音楽

 6月27日より開始されたLINEのトーク画面(チャット画面)を使ったテキストノベル「LINE トークノベル」も「LINE Channel」に含まれる。現在第1弾の「リフレイン」が公開されており、8月にも新作が提供される予定。講談社など出版社との連携のほか、携帯電話がケータイ小説作家を生み出したように、トークノベル作家も輩出していきたい考えだ。

 さらに、「LINE 占い」はWebアプリとして7月上旬から、リクルートの「ホットペッパーグルメ」と連携するクーポンサービス「LINE クーポン」は8月より提供される予定だ。占い結果や取得したクーポンをLINEで繋がる友人と共有できる。

 9月には、レコチョクと連携した音楽配信サービス「LINE サウンドショップ」も展開する計画だ。着うたや着ボイスをLINEコインを使ってダウンロードできるようになるという。



安心安全に向けた取り組み

 このほか、「LINE Channel」ではプラットフォーム化を進める中で、携帯電話事業者から年齢確認情報を得て未成年保護対策を実施するほか、トラフィック負荷軽減のため、各事業者のブラックボックスになっている部分の情報を開示を求めていく。NHNの舛田氏は、携帯電話事業者とは常日頃から話し合いの場を持っているとした上で、「制御信号の負荷は我々には関知できない。通信事業者と協力し最適なソリューションを研究開発していこうと思う」などと話した。

 また、LINEが提供されているApp StoreやGoogle Playではユーザーレビュー枠を使って、異性との出会いや交際を求める投稿がある。NHNでは該当する書き込みを見つけ次第、削除要請していくとともに、友達募集を目的として掲示板やWebサイトのリストを開示して注意喚起を図るとともに、運営事業者に抗議と差し止め要求を行うとしている。

KDDIと提携、auスマートパスで限定スタンプ提供

NHN森川氏(左)とKDDI高橋氏(右)

 発表会では、KDDIとの業務提携も明らかにされた。KDDIがスマートフォン向けに展開するポータルサービス「auスマートパス」の中で、9月にも「LINE for auスマートパス」が提供される。

 「LINE」は基本無料のサービスだが、「auスマートパス」は月額390円の有料サービスだ。auスマートパス版では、オリジナルキャラクターを使った限定スタンプなどが用意される。詳細について、9月の提供開始に向けて現在検討中としている。

 KDDIとNHN Japanでは、LINEの共同プロモーションのほか、未成年保護対策やネットワーク対策についても協力して進めていく方針だ。発表会で登壇したKDDIの代表取締役執行役員専務の高橋誠氏は、「スマートフォン時代はユーザー接点がすごく大事、LINEという新しいプラットフォームに感銘を受けた」などと語った。



まずは年内1億ユーザー

 「7月3日、LINEは新しいステージへ」――NHN Japanの森川氏はサービス開始1年を迎えたLINE事業についてそう宣言した。NHN Japanは韓国に本拠を置く外資系企業の日本法人だ。LINE開発当初は、あくまでも日本のユーザーに受け入れてもらうためのローカルサービスという位置づけで展開され、それがサービス開始1年で世界で4500万ユーザーを獲得するまでに急成長した。森川氏はそのサービスコンセプトを「パソコンではなくスマートフォンベース、オープンではなくクローズドサービス、(電話番号で繋がる)バーチャルではなくリアルな関係性」と説明する。

 また、舛田氏はプラットフォーム化を目指す上で、マネタイズ(収益化)について「多くのプラットフォームが答えを出せずにいる」と語っており、LINEのスタンプを有料販売した結果、4月~6月末までの売上高が3億5000万円に達したことを紹介した。

 同氏は2012年内に1億ユーザーを獲得すると話し、日本のコンテンツを世界へ、世界のコンテンツを世界に持ってくる方針を示した。現在のユーザー比率は国内40%、海外60%だが、今後海外の比率が拡大して国内30%、海外70%になる見込みとした。

 NHN Japanの取締役でウェブサービス本部長の出澤剛氏は、マーケティング関連の取り組みについて紹介し、電話番号で繋がる友人同士のコミュニティであるLINEは、人の繋がりが強く、感情の喚起や行動する動機になると説明した。



 プラットフォーム化を目指す「LINE」は、スマートフォンネイティブであること、リアルグラフ(現実の人間関係)を持っていることを軸に差別化を図っていく。舛田氏はプラットフォーム化を図る一方で、「コアバリューは友達とのコミュニケーション。そこは変わらない」と話した。森川氏も「プラットフォーム事業者としていの責任をはたし、世界規模のコミュニケーションサービスとして成長していきたい」としていた。



 




(津田 啓夢)

2012/7/3 17:33