富士通が「スマホで肌の色を測定できる技術」、肌の状態把握に


カラーパッチをあてて専用アプリで撮影

 富士通研究所は、スマートフォンのカメラと、基準となる色が塗られた専用の板「カラーパッチ」を用いて、人の肌の色を正確に測定できる技術を開発した。今後、化粧品メーカーなどとの協力を見込み、2012年度内の商用化を目指す。

 今回開発された技術は、「カラーパッチ」を肌に当てた状態で、専用アプリを用いてスマートフォンで撮影すると、肌の色合いを正確に測定できるというもの。現時点では「肌の色を正確に測れるようになった」というレベルだが、これにより肌の表面にあるシミ、毛穴の状態も数値で表せるようになった。「カラーパッチ」は、直径15mmの穴が空いており、その周辺に、日本人女性(約4000人)の肌色データをもとにした4つの“基準色”が塗られている。

 肌の状態が健康かどうか、あるいは美容の観点でどういった状態か、という判断については、今後、化粧品メーカーや百貨店などとの協力で作り上げていくことになる。富士通では、スマートフォンで抽出した“ビッグデータ”(多くのユーザーから収集する膨大なデータ)を同社のクラウド技術で解析できる環境を整え、市場創出を狙う方針。「これまで専門家が専用機で肌状態を測定することが一般的だったが、手元にあるスマートフォンで手軽に測定できるようになる。」(富士通研究所メディア処理システム研究所の手塚耕一氏)と、スマートフォンを使って美容関連のニーズに応えるサービスを新たに作り出したい、としている。

基準をもとに肌の色の“ベクトル”を算出

スマートフォンの下にあるのがカラーパッチ

 スマートフォンで肌の色を正確に測定するため、今回は「肌の色の補正技術」「カラーパッチの基準色部分を自動的に抽出、判定する技術」が新たに開発された。

 肌の色の補正技術については、カラーパッチの開発、肌の色の測定が主な要素。カラーパッチは、今回新たに開発されたもので、先述した通り、約4000人の日本人女性の肌を元に4種類の基準色が塗られている。この4色は肌を測定するために開けられた穴(直径15mm)の周囲に配置されており、照明の影響を除けるよう対称に配置されている。

 また、肌の色の測定については、蛍光灯や白熱灯といった照明に代表される環境の違いの影響を除くためのもの。色はRGB(赤・緑・青)で表現できるが、基準色と肌を同時に撮影すると、照明の影響で基準色がどの程度変化したか、その差分を測定し、補正量(ベクトル)を算出し、撮影された肌に適用して、実際の肌の色がわかる、という流れになっている。富士通研究所によれば、蛍光灯の下で撮影したときと比べ、白熱灯の下で撮影する際、カラーパッチなしの状態では色の違いが16.7あったのに対して、カラーパッチを用いると色の違いが2.7に留まり、カラーパッチによって色の測定の精度が高まった、としている。

カラーパッチを新たに開発肌の色の補正技術
基準色の判定技術シミや毛穴の状態も判定可能に

 柱となるもう1つの技術である「カラーパッチの基準色を判定」は、髪の毛などが写真に写りこんでも、正しくカラーパッチを認識できるようにするためのもの。カラーパッチの基準色周辺は縁取りが施され、富士通研究所が開発したアルゴリズムから、髪の毛、指などの写り込みを除外し、基準色周辺の輪郭を抽出、認識できるようになった。

 今回の「肌の色測定技術」は、判定するために必要な最低限の能力および、Androidスマートフォンに搭載されるメモリの限界から、400万画素~800万画素のカメラでの利用が適当、とされており、数機種のAndroidスマートフォンでの動作が確認されている。今後は対応機種をさらに拡大し、使い勝手も改良する。5月17日~18日に東京国際フォーラムで開催されるプライベートイベント「富士通フォーラム2012」で展示され、今後は他社との協力を模索し、2012年度内の商用化を目指す。その際、カラーパッチはパートナーとなる企業からエンドユーザーの手に渡る形が想定されており、使い方も「頬の1カ所を撮影する」「顔の中から3カ所撮影する」など、測定方法もパートナー企業によって異なる形になる可能性がある。

新技術の効果今後の展開

(関口 聖)

2012/5/7 13:15