DeNAとディズニー、国内外のソーシャルゲームで提携


 ゲームポータルの「Mobage(モバゲー)」を提供するディー・エヌ・エー(DeNA)と、ウォルト・ディズニー・ジャパンは、日本国内、および海外のソーシャルゲーム事業で提携することで合意した。

 第1弾として、Mobage上で新作ソーシャルゲーム「ディズニーパーティ」の提供を開始した。両社では30日、都内で記者会見を開催し、DeNA代表取締役社長の守安功氏やウォルト・ディズニー・ジャパン代表取締役社長のポール・キャンドランド氏からグローバルでの戦略や今後の展開が語られた。

左からDeNAの小林氏、DeNAの守安氏、ディズニーのキャンドランド氏、ディズニーのスカルポーネ氏

3作品が明らかに、1つはMARVELのカードゲーム

今後のスケジュール

 両社の提携では、今後、3つのタイトルをリリースする方針が明らかにされている。国内向けの「Mobage」に次いで、グローバル版の「Mobage」、中国版「Mobage」、そして韓国の「Daum Mobage」でアプリとしてサービスを提供する。いずれもアイテム課金型でレベニューシェア(収益共有)とのことだが、分配比率は明らかにされていない。

 第1弾となる「ディズニーパーティ」は、フィーチャーフォンおよびスマートフォン向けのソーシャルゲーム。DeNA内で開発されたゲームになる。ホームパーティを題材にしたもので、ユーザーが飲み物や料理などパーティの準備をしていくと、ディズニーのさまざまなキャラクターがパーティにやってくる、という流れ。登場するキャラクターは、その個性にあわせたアニメーションで動き、ユーザーのアバターと記念写真を撮ることもできる。ユーザー同士の交流も重要な要素になっているとのこと。

ディズニーパーティの特徴ディズニーパーティの概要
ホームパーティの準備をする、という内容(画面は開発中のもの)ディズニーのキャラクターとアバターの記念撮影、といったイベントも

 第2弾として4月2日より提供される「ディズニーファンタジークエスト」はカードコレクション型のソーシャルゲーム。こちらはDeNAとサイゲームス、ディズニーの3社が開発した。定番のジャンルとなるが、ディズニーのコンテンツでは初の取り組みとのことで、ディズニーの世界観を反映させた演出になるという。

ファンタジークエストの特徴ファンタジークエストの概要
バトル要素もある定番のカードゲーム(画面は開発中のもの)海外展開も
マーベルのコンテンツも

 今回の提携では、ディズニーが2009年に買収した米国コミック出版社のマーベル(MARVEL)のコンテンツもグローバルに提供する方針が示された。開発企業は明らかにされていない。ゲームのタイトルは未定だが、「X-MEN」や「スパイダーマン」「アイアンマン」といった、MARVELのキャラクターが登場するカードゲームになるとのこと。今夏にはディズニーの映画作品「アベンジャーズ」が公開される予定で、映画公開にあわせてソーシャルゲームも公開される予定。

 海外市場でのローカライズについて、DeNA取締役でソーシャルゲーム事業本部長の小林賢治氏は「サービスを通して改善していくのがソーシャルゲームだが、ローカライズは運用を通して、最適化を見つける」とコメント。同氏は「(地域ごとに)システムが分かれて、フラグメンテーションがあるとスピーディな展開が難しくなる。断片化を避けて、より早く各地で展開したい。その上で、各地ならではの試みに取り組む」と説明した。

ゲーム内外で連携

 30日の説明会で、プレゼンテーションを行ったDeNA代表取締役社長の守安功氏は「当社はゲームに限らず、Eコマースや(プロ野球球団の)ベイスターズもある」と述べ、互いのゲーム以外の事業を組み合わせることで、新たな価値を提供できるとする。

 またウォルト・ディズニー・ジャパンのディズニー・インタラクティブ・メディアグループ、ゼネラルマネージャー/バイス・プレジデントのジャスティン・スカルポーネ氏は、ゲーム外の連携の在り方について問われると「映画の場合、劇場公開にあわせ、ゲーム内で映画のテーマにあわせたイベントを期間限定で提供できる。そうすることで映画の告知効果も見込める。物販などとの連携も考えている」述べた。

「海外のモバイルソーシャル市場はほとんどないに等しい」

 今回の提携は、両社にとって、どういった意義があるのか。まずDeNAの守安功氏は、ディズニーとの提携について、海外展開を図る上で重要な取り組み、と位置付ける。

 ディズニーは多くの人気キャラクター、作品を保有し、世界中で通用するブランド力を持つ。2011年度中に、サムスンやバイドゥなど、海外の大手事業者と提携を進めてきたDeNAにとって、これからの飛躍のためには、ディズニーのコンテンツが必要だった、と語る守安氏は、提携がもたらす今後の展開において、最も期待するのは「海外におけるソーシャルゲーム市場の創出」と指摘。

DeNA側の期待する3つのポイント海外展開する上でディズニーが起爆剤になることに期待

 「日本のソーシャルゲーム市場は4000億円を超える規模だが、海外市場はまだ小さい。特にモバイルは、日本と比べ、海外市場はほとんど立ち上がっていない」

 このように海外市場の現状を評価する守安氏は、国内のソーシャルゲーム市場が拡大したのは「怪盗ロワイヤル」が2009年10月にリリースされ、人気コンテンツとなったことがきっかけとして、ヒットコンテンツの登場が市場の拡大に繋がると指摘。海外市場を創出するには、ディズニーとのタイトルが起爆剤になることを期待する、とした。

世界展開における重要な施策との認識を示した守安氏DeNAのノウハウを評価し、日本発グローバル展開を狙うキャンドランド氏

 一方、ウォルト・ディズニー・ジャパン代表取締役社長のポール・キャンドランド氏は、日本市場では「大人の女性」をターゲットにビジネスを展開する中で、スマートフォンが普及しつつある現在、ビジネスチャンスが拡大していると分析。よりリッチなコンテンツが提供できるようになる中で、ゲームも重要な要素であり、マーケットリーダーであるDeNAとの提携は嬉しい、として、グローバルでコンテンツを楽しめることを目指すと語る。

 またディズニーのスカルポーネ氏は、DeNAには、グローバルでの実績や知識があると評価。日本を制作拠点として強化しようとしている、として、ゲーム分野では既に「キングダムハーツ」という成功例があるとして、日本で制作してグローバルで展開する、という流れを生み出すことに注力するとした。なお、グリーで提供するコンテンツについて問われると「ディズニーとマーベルのコンテンツを数多くのユーザーに届けることが使命」として、特に変化はないとした。さらにソーシャルゲームに対して、射幸性を煽るとの指摘があることについてスカルポーネ氏は「業界の動向を把握して、課題があるのは知っている。無料でもゲームを楽しめ、満足感を得られるようにしたい」と語った。

ディズニーと2011年4月からソーシャルゲーム「ディズニーマイランド」を提供してきた一方で、今回の提携に向けて、検討を続けてきたと語る。海外展開を図るDeNAにとって、ディズニーは多くの人気キャラクターを持ち、世界中で通用するブランド力がある、と評価し、その一方でDeNA側には月間10億円を超えるソーシャルゲームを自社開発できる能力がある、とアピール。2011年度は、サムスンやバイドゥなど、海外の大手事業者と提携を進めてきあたが、そのなかで「引きの強い、人気コンテンツが必要」と判断。ディズニーのコンテンツを起爆剤に、同社のソーシャルゲームプラットフォームを世界規模にする、と意気込んだ。

 このほか、DeNA、ディズニーそれぞれが協力関係にあるNTTドコモを加え、3社での展開を計画しているかどうか、という問いには「特に発表することはない」とした。




(関口 聖)

2012/3/30 15:05