シャープ、光学式手ぶれ補正カメラモジュールを解説


 シャープは、NTTドコモの「AQUOS PHONE SH-01D」、ソフトバンクモバイルの「AQUOS PHONE 102SH」に搭載される、光学式手ぶれ補正に対応したカメラモジュールの解説を行う説明会を開催した。海外を含めて、ほかのメーカー向けにも提供される。

 今回解説されたのは、1210万画素のCMOSセンサーを搭載し、光学式手ぶれ補正に対応したカメラモジュール。1/3.2型の裏面照射型CMOSセンサーで、オートフォーカスに対応し、1080pのフルハイビジョンの動画も撮影できる。手ぶれ補正は静止画・動画の両方に対応している。レンズ部分はプラスチックレンズ5枚で構成され、明るさはF2.5、焦点距離は35mm判換算で29mmの広角レンズとなっている。NTTドコモの「AQUOS PHONE SH-01D」、ソフトバンクモバイルの「AQUOS PHONE 102SH」に搭載されるほか、今後は他メーカー向けにも提供される予定。

 ソフトウェア処理ではなく、レンズを移動させるレンズシフト式の手ぶれ補正機構を搭載しており、厚さ5.47mmと、従来のモジュールと変わらない厚さを実現しているのが特徴。これは、昨今のスマートフォンではボディを薄くすることへの要求が強まっていることが影響している。11mm角と大きさは従来のモジュールよりも一回り大きくなっているものの、大画面化するスマートフォンでは幅など広さへの制約はさほどでもないことから、シャープでは、厚さをおさえて光学式手ぶれ補正機能を追加したモジュールが、他メーカーに対してもアピールできるものと考えている。

製造技術の高さに強み、センサーはCMOS中心に移行

新開発のカメラモジュールを手にするシャープ 電子デバイス事業本部 副本部長の本道昇宏氏カメラモジュールの構成

 

 シャープ 電子デバイス事業本部 副本部長の本道昇宏氏は、「写メール」に対応したカメラ搭載端末からスタートする、同社のカメラモジュール開発の歴史について、オートフォーカスや光学ズーム、3D撮影ができる二眼レンズなど「特徴づけのあるものを業界に先駆けて開発してきた」と振り返る。また、5メガピクセルを超えるような、高画素化されたカメラモジュールは、微細なゴミやホコリでも画素がつぶれる原因となるなど、製造のハードルが上がっていると指摘。レンズ構成の複雑化に伴い、光軸や角度の調整など組立も複雑になっており、技術力で先行する同社に強みがあることをアピールした。

 同社のカメラモジュールはこれまでも他メーカーに提供されており、出荷数は累計で6億台を突破、同社推定で世界シェアがトップであるとした。最新の12メガピクセルのCMOSカメラモジュールについても大量生産体制を整えており、日本の広島で主に開発を行い、中国の無錫(ムシャク)にある同社の工場と、ベトナムのホーチミンにある2つの協力工場を中心に生産している。これらにより、カメラモジュールについて月産1600万個の生産体制を構築している。なお、CMOSセンサーそのものは他社(メーカー名は非公開)より供給されている。


カメラモジュールの内部構成の違いシャープがこれまでに開発してきたカメラモジュール

 

 本道氏は、光学式手ぶれ補正技術の必要性について、写真撮影の失敗で最も多い“手ぶれ”が、「暗い場所でも撮れるとアピールされるので、手ぶれは起こりやすくなっている」とますます顕著になっている現状を示し、「素人でも手ぶれのない写真が撮れるように、今回のモジュールを開発した」と経緯を語る。

 光学式手ぶれ補正を採用したメリットについては、有効画素をすべて利用でき、タイムラグの無い処理が行える点を挙げる。ソフトウェア処理の手ぶれ補正では、有効画素のうち、外側から約10%程度がダミー撮像領域として使えないこと、補正処理にタイムラグが発生することなどのデメリットを挙げ、「光学式手ぶれ補正はモジュールサイズが大きくなるデメリットがあったが、それほど大きくならずに搭載できるようにした」と、今回のカメラモジュールの特徴を示す。

 手ぶれ補正の仕組みについては、一部のデジタルカメラでも採用されているレンズシフト式を採用。5枚のレンズすべてをメカトロニクスによりシフトさせる仕組みを、同社独自の高密度実装技術を駆使して搭載した。レンズシフトの詳細な仕組みについては非公開となっている。また、一部で実用化されていた、カメラモジュール全体を制御するモジュールチルト方式では、ジュール全体が大型化するため、今回実装したレンズシフト式が薄型化に有利であるとしている。


電子式(ソフトウェア)手ぶれ補正と光学式手ぶれ補正の違いレンズをメカトロで動かすレンズシフト式の光学式手ぶれ補正を採用

 

 なお、同社では、これまでCMOSではなくCCDセンサーを搭載したカメラの搭載を、ハイエンドモデルを中心にアピールしてきたが、「CCDが優れていたのは、暗い場面でも明るく撮れるという点。一方で、CMOSの技術も発達し、CMOSがCCDに匹敵している。裏面照射型CMOSが開発され、暗い場面でもきれいに撮れるようになった」と説明し、特別なメリットが無い限り、今後CCDセンサーは採用しない方針を明らかにしている。

 

プレゼンテーション


 

 




(太田 亮三)

2011/12/1 13:09