ドコモ上期決算、中期目標でスマホ契約数は4000万目標へ


NTTドコモ社長の山田氏

 NTTドコモは、2日、2011年度の第2四半期決算を発表した。また、あわせて2015年度を最終年度とする「中期ビジョン2015~スマートライフの実現に向けて~」を策定。そのなかで、2015年度のスマートフォンおよびタブレット端末の契約数を4000万契約に拡大し、LTE方式を用いた「Xi」(クロッシィ)の契約数を3000万契約を目指すことを明らかにした。

 2日には、都内で決算説明会が開催され、NTTドコモ代表取締役社長の山田 隆持氏から説明が行われた。

 

中期ビジョン

 スマートフォンの契約数は2010年度実績で240万契約、2011年度の見込みで1020万契約であり、今後4年間で4倍規模にまで拡大する。

 山田氏は「スマートフォンとタブレット端末を複数所有することなどを考えると、2015年度には6400万契約を想定しており、スマートフォンとタブレットの契約数は全体の約6割を占めるとみている。高速であることからサクサク利用していただけるというメリットがある一方で、電波の有効利用という観点もある。トラフィックは、2015年度には2011年度の約12倍、2010年度に比べて約24倍にまで拡大する。増大するトラフィックに対しては、Xiを中心としたネットワークの最適化により、安定した通信品質を提供する」とした。

 トラフィック増大への対応策としては、Xiへのマイグレーション促進のほか、新周波数の利用、小ゾーン化やセクタ細分化の促進。1%のユーザーが3割のトラフィックを利用しているというヘビーユーザー層に対する通信速度制御、公衆無線LANサービスであるMzoneを3万スポットへ拡大し、必要に応じて10万スポットまで拡大する計画、フェムトセルや宅内Wi-Fiの活用などをあげた。さらに、Xiについては、速度制限や段階型料金プランという新料金プランを、2012年10月から導入する計画を明らかにした。

 パケット収入については、2015年度には、2011年度の約1.5倍となる約2兆7000億円を計画した。

 山田氏は「Xiの普及拡大、パケット収入向上に向けた取り組みを推進する。だがその一方で音声通話への影響が読み切れない。2015年度にはVoIPが大きく影響すると考えており、3~4割がVoIPに流れる可能性がある」などとした。

 Xiへの投資額は2012年度までの投資額を従来の3000億円から3300億円へ修正。2013年度から2015年度までに5500億円を投資することを公表した。2014年度には人口カバー率を約98%とし、「エリア展開の前倒しを行う」とした。

 2015年度に向けて1GbpsのLTE-Advancedサービスの提供を開始。「ここには1.5GHz帯を使用することになるが、東名阪以外の場所からサービスを開始することになる」と語った。

 今回の中期ビジョン発表では具体的な業績目標については言及されていない。「VoIPなどの将来的に動向が不透明であり、数字目標を出すのが難しいこと、2012年度を最終年度とする中期経営計画に取り組んでおり、2012年度後半にも新たな経営計画を発表したい。モバイルの世界は動きが速く、それにあわせて意思決定を速めなくてはならない。それにあわせて、今回、中期ビジョンを発表した」とした。

 だが、新たな市場創出を重要な柱の1つに掲げており、現在、約4000億円の新領域での売上高を2015年度までに、約1兆円まで拡大する計画を打ち出している。

 メディアコンテンツ事業では2011年度には700億円の事業規模を、2015年度には約3~5倍に、金融・決済事業では1800億円を約1.5倍に、コマース事業で600億円を約3~5倍に、メディカル・ヘルスケア事業は40億円を約7~10倍に、M2M事業は100億円を約7~10倍に、アグリゲーション・プラットフォーム事業は100億円を約7~10倍に、環境・エコロジー事業は30億円を約10~20倍に、安心・安全事業は150億円を約3~5倍に拡大するとした。

 山田氏は、「中期ビジョン2015は、2020年に向けたビジョンである『HEART~スマートイノベーションへの挑戦~』に向けた確実なステップとして策定したもの。サービスの進化と産業・サービスの融合への取り組みを、ドコモのクラウドによって加速させ、暮らしやビジネスが、より安心で、便利、効率的になることで、より充実したスマートライフの実現を目指す。今回、『効率化』という言葉が入れたことが新しい。また、ドコモでは、コンシューマ向けに幅広いサービスを支える基盤であるパーソナルクラウド、新たなビジネススタイルを提供するソリューション基盤であるビジネスクラウドに加えて、ドコモが作った新たな言葉として、ネットワーククラウドを提案する。ネットワーククラウドは、ネットワークでの高度な情報処理、通信処理に付加価値を提供する基盤になる」と説明。ネットワーククラウドで提供するサービスのひとつとして、通話中の自動同時翻訳サービスがある。すでにCEATECの同社ブースなどで参考展示されていたものだが、「2011年11月トライアルを開始する。近々正式にサービス内容を発表できる」などとした。

 

上期の業績

 2011年度上期(2011年4月~9月)連結決算を見ると営業収益は前年同期比1.2%減の2兆1130億円、営業利益は4.3%減の5085億円、税引前利益は2.9%減の5119億円、当期純利益は3.5%減の2990億円の減収減益となった。

 山田氏は、「昨年度から実施したポイント・故障修理制度の見直しによる引当金の減少があり、これを除くと、第2四半期(7~9月)は増収増益となっている」と説明。「上期の成果は順調であると判断している。第3四半期以降も同じ傾向が続くとして、通期の業績見通しを上方修正した」と語った。

 通期の見通しは、4月28日に公表された値に対して、営業収益は100億円増の4兆2400億円(前年比157億円増)、営業利益は200億円増の8700億円(同253億円増)とした。

上期決算のポイント概況
第2四半期単期(7~9月)の状況上期の増減要因

 

スマートフォン販売目標を上方修正、iPhone発売も巻き返しに意欲

 スマートフォンの販売台数は上期実績で363万台。すでに前年度の年間252万台を上回り、順調な売れ行きを見せていることから、通期の販売目標を850万台に上方修正した。

 山田氏は、「スマートフォンの2011年夏モデルの投入により、量販店における当社のスマートフォンにおける市場シェアは5割を超えた。また、女性をターゲットとした端末を複数投入したことで、女性の構成比は前年同期の28%から、44%へと増加した」という。

 競合他社からiPhone 4Sが発売された影響については、上期の業績には含まれていないが、「iPhone4Sの発売から4日間では、ポートアウト(携帯電話番号ポータビリティの転出)が前年同期の2.5倍、10月18日から月末まででは1.2倍。だが、その一方で、10月はドコモにとって、新製品発売前の買い控え時期であるにも関わらず、新規購入が前年同月比で1.3倍になっており、お客様にはしっかりと買ってもらっている。iPhone4Sの影響はあるが、それほど大きくはない。11月にはLTE(Xi)対応のスマートフォンも登場する。社内でも使っているが、なかなか使い勝手がいい。画像がどんどん飛んでくる」などと、11月以降の巻き返しに意欲をみせた。

スマートフォンの販売数女性比率が大幅増
シリーズを一新スマートフォンのラインナップを拡充
通話定額サービスは、FOMA宛、mova宛も対象

 Xiスマートフォン向けの新料金制度であるXiトーク24についても、「発表してからの反響がいい。このサービスは、Xi同士の通話だけが24時間無料だと誤解している人が多いが、相手がFOMAでも、mova(ムーバ)でも無料通話ができる」などと語った。

 2011年10月18日に、スマートフォンを含めて14機種を発表したのをはじめ、冬春モデルとして16機種を投入。「主力はAndroidを搭載した製品である。ラインアップは、NEXTシリーズとwithシリーズとなったが、基本的な考え方は、NEXTシリーズに、withシリーズを追加したというもの。withシリーズは、デザイン性に優れたスマートフォンであり、これまで黒と白しかなかったスマートフォンに様々なカラーを追加し、ブランドコラボレーションも行っている。持って楽しいスマートフォンとして展開していく」と製品ラインアップの広がりを強調した。

 スマートフォン向けの専用サービスについては、新たなポータルサイト「dメニュー」の開始や、ドコモ直営のコンテンツマーケット「dマーケット」の開始に加え、通訳電話サービスの提供を新たに開始することなども示した。

Xiのエリア展開Xi対応スマートフォンを投入
Xi契約数についてdメニューの概要
dマーケットの概要通訳電話サービス提供へ

 

音声ARPUの減少は「節電の影響など」

総合ARPU

 第2四半期の総合ARPU(ユーザー1人あたりの平均収入)は、前年同期比230円減の4970円。そのうち、音声ARPUは380円減の2280円、パケットARPUは150円増の2690円となった。

 「音声ARPUの減少は想定よりも多い。スマートフォンへの移行により、音声よりもメールでやりとりする利用者が増えたこと、節電の影響で帰宅時間が早まったビジネスマンの通話利用が減ったことなどが理由に考えられる。音声収入とパケット収入は2010年度第4四半期で逆転しており、それ以降、パケット収入が上回る状況が続いている」などとした。第2四半期のパケット収入は391億円増の4612億円となった。

 なお、ARPUの通期見通しも修正。音声ARPUは当初見通しに比べて50円減の2200円、パケットARPUは30円増の2710円(いずれも月々サポートの影響を除く)とした。

2010年第4四半期よりパケットARPUのほうが音声ARPUより多い状況にパケットARPUは増加傾向

 上期の総販売台数は前年同期比110万台増となる前年同期比11.9%増の1035万台。スマートフォンの拡大が影響しているという。これにより、通期の販売目標を上方修正。当初は1980万台だった計画を、120万台上乗せし、2100万台を見込む。

 第2四半期の解約率は0.50%。上期の純増数は前年同期比21.0%増の98万台となり、これも通期計画を上方修正し、当初の195万台から、220万台とした。

総販売数バリューコースの利用状況
純増数解約率

 FOMAおよびXiへのマイグレーションも「おおむね順調に進んでおり」(山田社長)、2Gサービス(PDC方式)であるmovaおよびDoPaからの上期の移行数は38万件。残り74万契約となった。

 また、Xiの契約数は9月末までの契約数が39万件。2011年度には140万台の販売を計画。そこから一部解約などを想定し、130万契約を目標にしている。

 データ通信は、Xi対応データ端末の販売増加により、上期実績が76万台。データプラン契約数は214万契約となった。上期累計のデータプラン純増に占めるXiの割合は約6割となった。

 また、同社では、公衆無線LANサービスの強化ににも言及。spモードやmopera Uなどのオプションサービスである公衆無線LANサービスの月額使用料を無料とするキャンペーンを実施しており、あわせてアクセスポイントの拡大に取り組む姿勢を改めて示した。

movaからの移行状況データ通信端末の販売状況
設備投資Wi-Fiスポットの取り組み

 なお、タイの洪水被害の影響については、「スマートフォンに関してはまったく影響が出ていない。被害が出ているところでもバックアップが可能だと聞いている。フィーチャーフォンについては、2機種の生産で影響が出ている。これに関しては、数週間の遅れが出そうだ。また、伝送装置についてもバックアップが可能であり、全体的にみても、影響は極めて限定的だ」とした。

災害対策

 一方、決算発表のなかでは、東日本大震災以降の災害対策についても説明。「総額200億円をかけて災害対策を展開してきた。年度内完了を予定していた当初計画に対しては積極的に前倒しで完了させる。これは東海地震などを考慮したもの。大ゾーン基地局の設置では、東海地区で優先的に実施し、10月末までに関東、信越地区を含めて23局を設置した。12月までに104局の設置を計画している。さらに、東海地区の基地局を優先して、1000Ahが2基で約6トンとなる大容量バッテリーを設置した」としたほか、「首都直下型地震を想定し、首都圏に集中している重要度の高い設備を前倒しして、2012年度までに関西、九州へ分散する。対象となるのは、全国顧客情報管理システム、パケット通信プラットフォーム(スマートフォン)、インターネット接続の分散化。総額で550億円を予定している」などと語った。

災害対策の進捗状況バッテリー24時間化
大ゾーン基地局各県に設置される

 




(大河原 克行)

2011/11/2 17:30