auのW52CA、W53CAなど3機種、電池パック交換


 KDDIと沖縄セルラーは、auの携帯電話3機種の電池パックで、電池内のセパレーター(絶縁シート)が損傷するような力が外部から加わった場合、ショートして発熱や膨張、さらに発煙、溶けることもあるとして、対策済の電池パックとの交換を行う。

カシオ、日立製の3機種が対象、電池パックは約201万個

 対象となる機種は、2007年6月発売でカシオ計算機製の「W52CA」(出荷数約54万台、稼働数約14万台)、同年8月発売でカシオ製「EXILIMケータイ W53CA」(出荷数約80万台、稼働数約26万台)、2009年7月発売で日立コンシューマエレクトロニクス製の「Mobile Hi-Vision CAM Wooo(HIY01)」(出荷数約15万台、稼働数約10万台)となる。オプションの電池パックを含めて、対象の電池パックは、「W52CA」「W53CA」用(商品コード:52CAUAA)があわせて約179万個、「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」用(商品コード:HIY01UAA)が約22万個で、あわせて約201万個となる。

 これまでにカシオ製2機種については、充電中に発熱、膨張して、煙が出たり溶けたりした事故が8件報告されている。一方、「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」では発生報告はない。事故の報告は2010年に2件、2011年に6件寄せられた。1件目の時点では、傷や凹みが電池パックにあったため、回収になるような問題と特定できなかったが、2011年に入ってあらためて調査を行ったところ、原因を特定できた。

W52CAEXILIMケータイ W53CAMobile Hi-Vision CAM Wooo
対象の電池パック

 原因は、電池パックに強い力が加わり、傷や凹みがついて、内部のセパレーターが損傷した後、充放電を繰り返すと内部ショート(短絡)が発生し、電池内部の化合物が相当な量、析出(溶液から結晶が出てくること)していると、事象が発生する。電池パックに傷や凹みがない場合は、発煙や溶解はしない。

 対策として、外部からの力への耐性を強化し、化合物の析出を抑える。対象ユーザーには、書面で通知し、これまでの電池パックの返却を依頼する。傷や凹みが電池パックにあれば、速やかに使用を中止して、サポートセンターへ連絡するよう案内されている。

 

安全基準はクリア、しかし

 同社では30日、都内で会見を開催し、KDDI執行役員商品統括本部長の牧俊夫氏、商品統括本部 プロダクト企画本部プロダクト品質管理部長の中村公彦氏、NECカシオモバイルコミュニケーションズ代表取締役執行役員社長の田村義晴氏、NECカシオモバイルコミュニケーションズCS品質統括本部 本部長の菅谷直樹氏による会見が行われた。

謝罪する4氏

 冒頭、牧氏は「お客様はじめ、みなさまにご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます」と謝罪し、事象の説明を行った。報告された事例の中では、昨年10月では寝具が焦げたこと、今年6月の事例では発煙しユーザーの指先で軽い火傷があり、火災と認定された。こうした事例を受けて調査を行い、9月27日付けで発生原因を特定した。その3日後となる今回、交換用の電池パックの準備が整う前に、まずはユーザーに周知を図るべく発表を行うことになった。

 牧氏の説明によれば、電池メーカーはソニーエナジーだが、電池パックそのものはKDDIやメーカーが掲げる安全基準を満たしており、電池パックに欠陥はない、としている。たとえば要因の1つに「化合物の析出」が挙げられているが、リチウムイオンバッテリーにおいて「析出」という、結晶ができる現象は普段から起こるものという。

 また、バッテリーを取り外すときに、工具のドライバーを用いたりして、誤ってバッテリーに大きな凹みができたり、高いところからの落下などで電池内のセパレーターが損傷してショートする。これだけであれば、他の電池パックでも発生するように思えるが、KDDIでは、「セパレーター破損」「充放電の繰り返しによるショート」に加えて「化合物の相当量の析出」という3つの要素が組み合わさったことが発生原因と説明する。安全基準をクリアした製品ながら、複数の要因が偶然重なって発熱・発煙に繋がった、ということになる。

KDDIの牧氏NECカシオの田村氏

 もっともドライバーの利用のほか、水濡れ、飼育している犬が携帯電話を噛んで電池パックも損傷する、といったことがあれば、通常の利用の範囲を超え、バッテリーの損傷、ひいては事故に繋がる。説明書でもそうした扱い方を避けるよう案内し、仮に事故が発生しても、出荷済製品全てを対象にした回収が行われることはあまりない。しかしKDDIとNECカシオでは今回、201万個に及ぶ電池パック全てで回収することにした。この背景について牧氏は「製造メーカーを含めて話し合いを行った。安全基準は満たしていた電池パックだったが、今年4月~8月まで毎月報告があったこと、人気のカシオ製品で対象数が多かったため、リコールすることにした」と説明し、影響範囲が多大だからこその措置とした。

凹み、傷がついた電池パック
対象機種

 なお、携帯電話における電池パックは、不具合もときおり確認されている。KDDIでも2006年春モデルの「W42K」(京セラ製)の電池パックに不具合があるとして、交換を実施してきた。KDDIでは「W42K」以降、具体的な数値は明らかにされていないが、安全基準を高めてきたという。

 対策済の電池パックでは、衝撃などへの耐性を高め、これから製造し、準備が整ってからユーザーの手元にある電池パックと交換することになる。その時期はまだ未定で、今後あらためて案内される。また携帯電話側の電池パックの脱着のしやすさについて、牧氏は「取り外ししやすいということは、少し携帯電話を落としても電池パックが外れやすくなる、ということになるが、今後は設計を含めて、取り出しやすいよう構造を変える必要があると思っている」とコメント。NECカシオ社長の田村氏は「対象の製品では、若干きつめかもしれないが、他機種と比べて、特段取り出しづらいとは思っていない。ただ、今後はできるだけ取り外しやすくしたい」と述べた。

 




(関口 聖)

2011/9/30 14:00