NTTドコモ、株主総会で「iPhoneの発売はない」と断言
NTTドコモは、2011年6月17日午前10時から、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ東京で、第20回定時株主総会を開いた。
■震災への取り組みを紹介、スマートフォン販売は252万台に
開会宣言のあと、第20期の事業報告については約10分間に渡るビデオを放映。そのなかで、東日本大震災の影響および復旧への取り組みについても紹介した。
東日本大震災では、6700の基地局が被害にあい、東北地区の195店舗のドコモショップのうち、159店舗で営業ができない状況になった。NTTドコモでは、災害対策本部を設置し、4000人体制で復旧に取り組み、移動基地局や移動電源車を現地に送ったほか、無料充電コーナーを約300カ所に設置。衛星携帯電話を約900台、携帯電話を約1700台、タブレット端末を約300台を被災地に設置した。同社によると、4月末までに通信エリアでの通話をほぼ復旧することができたという。
ドコモ山田社長 |
一方で、2012年度までの同社グループの取り組む方向性を示す「新たな成長を目指したドコモの変革とチャレンジ」を策定していることを説明しながら、その成果を紹介。スマートフォンの販売が252万台になったことや、2010年12月24日からサービスを開始したXi(クロッシィ)などにも触れた。
議長を務めたNTTドコモの山田隆持社長は、2011年度の重点事項として、「安全・安心」「変革」「チャレンジ」をあげ、その内容について説明した。
「安心・安全」では、新たな災害対策として、震災から学んだ教訓を活かし、「重要エリアにおける通信の確保」、「被災エリアへの迅速な対応」、「災害時に置けるお客様のさらなる利便性の確保」をあげ、235億円を投資し、大ゾーン方式の基地局(カバーする範囲が広い基地局)を全国100か所に設置するなど、10項目の改善に取り組むとした。
「変革」では、お客様満足度の向上を掲げ、「2010年度はお客様満足度ナンバーワンを獲得した。2011年度はスマートフォンを含めて、お客様満足度ナンバーワンを維持する」と語った。
「チャレンジ」では、「スマートフォンの推進」、「Xiの拡大とネットワークの進化」、「融合サービスの推進」、「新たな成長分野の開拓」、「海外でのビジネス展開」、「パケットARPUの伸びによる成長」の6点をあげ、「2011年度には600万台のスマートフォンの販売を見込む。夏モデルでは、“選べる”“使える”“楽しめる”スマートフォンを目指し、おサイフケータイ機能なども搭載した。今後もスマートフォンのラインアップを強化する。また、パケットARPUの拡大は経営上、最重要課題になる。2012年度には総合ARPUを増加に転じさせたい」と説明した。
山田社長は、「2011年度は様々なチャレンジの実行の年、なんとしてでも5年ぶりの増収増益を実現したい」と語ったほか、昨年7月に策定した2020年ビジョン「HEART」について触れ、「モバイルを核とする総合サービス企業へ発展させる」と宣言した。
なお、説明のなかで山田社長は、震災での被災エリアでの通信回線の切断、6月6日に発生した関東甲信越地区での通信障害についても謝罪した。
■iPhone、PlayStation Vitaなどについて回答
午前10時35分過ぎからは株主の質問を受け付けた。
iPhoneの販売について、辻村清行代表取締役副社長が回答。「アップルが発売しているiPhoneやiPadは、世界的に売れており、ユーザーインターフェイスに優れた端末だと認識している」と前置きしながらも、「NTTドコモは、iPhoneを発売する予定はない」と断言した。
その理由として辻村副社長は、「ドコモには、約5000万人のiモード利用者がいるが、おサイフケータイ、iチャネル、iコンシェルといった機能をスマートフォンでも利用したいというユーザーが多い。ドコモにとって、いかにこれを広げていくかが大事である。しかしアップルの場合は、この機能を加えることができない。一方で、Androidを搭載したスマートフォンは、既存のiモードサービスを乗せることができる。5000万人のiモードユーザーが、気持ちよくスマートフォンを使っていただくために、ドコモはAndroidをベースにやっていく」と語った。
さらに、「スマートフォンの機種数が多いが、iPhoneに勝てないのはなぜか」との指摘に対しては、山田社長が回答。「2011年度には600万台のスマートフォンの出荷を予定している。年代、性別など、自分にあったスマートフォンを使ってもらいたいと考えており、実際、それぞれのスマートフォンには固有のお客様がついている。また、機種を広く展開すると、コスト負担が増えるのではないかとの指摘もあるが、GALAXY Sは日本では60~70万台の出荷規模だが、全世界では1400万台の出荷実績があるグローバルモデルである。負担にはならない」とした。
また山田社長は、「ソフトバンクが純増数を伸ばしているのはiPhone 4が大きいと認識している。だが、ドコモのスマートフォンは、日本のお客様の声を反映した機能を搭載しており、ナンバーワンを取れる。また、ドコモでは、純増数だけでなく、解約率も重視しており、解約率は0.47%と一番低い」とした。
一方で、SIMロック解除に対する状況についても説明。「6月12日時点でのSIMロックをはずした件数は1850件。海外で使用する場合などでの利用があるようだ。そのなかで、ドコモの回線を解約した人は55件に留まっている。また、microSIMカードは、5000件弱の購入がある。そのうち75%がiPhoneでの利用である。あわせてiPadにも使われているようだ。想定したよりも少な目の動きであり、SIMロック解除が収益に与える影響は軽微である。だが、今後、動向には注視していかなくてはならない」(熊谷取締役常務執行役員)と語った。
■増加するトラフィックへの対策なども
無線LANやSkypeへの対応についても、辻村副社長が回答。「スマートフォンの増加によって、どうやって容量を拡大するかが鍵になる。これはLTEやFOMAだけでは間に合わない。Wi-Fiを使って、データオフロードするといったミックスした使い方も考えたい。Skypeについては、auが積極的に搭載しているが、110番や119番などの緊急呼には使用できない、インターネットが混雑しているときには利用できないという課題がある。だが、Skypeのような、音声をデジタル化して、インターネットを利用して通話する方式と、携帯電話の音声通話とをミックスしていくことも考えたい」とした。
さらに、ソニー・コンピュータエンタテインメントが発表した次世代ゲーム「PlayStaion Vita」への3G回線の搭載については、「個別の案件なので回答できない」(辻村副社長)としたが、「ゲーム機にしろ、デジカメにしろ、今後は携帯電話が付いてくることになるだろう。当社の回線が使っていただけるようにメーカーと話を進めている」と述べた。
movaからFOMAへのマイグレーションに関しては、「5月末時点でmovaの契約数は106万契約となっており、これらのユーザーには、料金メリットやmovaにはないFOMAの機能をきちっと説明をして、来年3月までにFOMAに移行していただきたいと考えている」(熊谷文也取締役常務執行役員)としたほか、「DoPaについては、モジュールをFOMAでそのまま利用できるアダプターの提供や、システム交換費用の低減など個別対応を図っていく」(大嶋明男取締役常務執行役員)と語った。
1回線で2つの端末を利用したいという株主からの要望に対しては、「確かにSIMを抜いて、別の端末に差し替えるのは面倒ではあるが、1つの端末にした場合には、着信時の着信設定端末を間違う可能性があるなど、2台で1回線を利用するのは使いにくいと考えている」(辻村副社長)と回答した。
携帯電話に発ガン性があるとのWHOの報告については、「携帯電話が健康に与える影響はない。ドコモとしても、ガイドラインに則ってしっかりと対応している」(岩崎文夫取締役常務執行役員)としたほか、海外戦略に関する質問では、「ドコモにとって海外戦略は必須である。アジア太平洋地域のキャリアへの出資やアライアンスを進めており、おおむね成果があがっている。だが、スマートフォンの浸透とともに、インターネットの世界が広がり、配信や知的な情報の提供、生活や社会の成長に役立つ情報の利用領域が重要になっている。そこに歩を進めていきたい」(鈴木正俊代表取締役副社長)、「アジアでは、3Gネットワークへの構築支援、欧州ではスマートフォンの広がりにあわせて上位レイヤーの領域で展開していきたい。インドではタタとの合弁で事業を進めているが、すでにドコモのブランドが浸透している」(山田社長)などとした。
今後の設備投資については、「スマートフォンの広がりによってデータ通信が増加し、ネットワークの容量をいかに確保するかが課題。Xiへの投資や、IP技術を使ってシンプル化、高度化していくことで対応する。Xiについては、3年間で3000億円を予定しており、この水準で推移すると考えている」(岩崎文夫取締役常務執行役員)、「クラウドをネットワークのなかに入れて、ドコモのお客様向けならではのサービスをネットワーククラウドとして展開したい」(山田社長)と語った。
また、災害対策については、「国の中央防災会議で想定される基準をベースに対策を施しており、基地局施設は震度6強、震度7にも対応できる。基地局のなかにある通信設備にも同様の強度を持たせている。しかし、長時間の広域停電もあり、想定した範囲をもっと厳しく見直していく必要がある」(辻村副社長)と回答した。
なお、第1号議案の剰余金の処分の件、マルチメディア放送事業を追加する第2号議案の定款の一部変更については緊急動議が出されたものの、第3号議案の取締役3名選任の件、第4号議案の監査役4名選任の件を含めた4つの議案について、いずれも可決され、12時3分に株主総会は終了した。
2011/6/17 13:06