KDDI、次世代非接触IC「NFC」対応ケータイの実証実験


 KDDIは、次世代の非接触IC技術である「NFC(Near Field Communication)」に対応した携帯電話を用いた実証実験を5月1日~12月31日に実施する。さまざまな企業が参加し、電子マネーや電子チケット、ロボットへの応用、運転免許証などとの連携といったの実験が行われる。

 鉄道乗車券やおサイフケータイなどで採用されている非接触IC技術は、国内やアジアを中心とした海外の一部エリアではソニーが開発したFeliCaが主流となっている。一方、欧米ではMIFARE(マイフェア、ISO/IEC 14443 TypeA)と呼ばれる技術が多く利用されている。また国内でも免許証やパスポート、住基カードで利用されているICチップは、ISO/IEC 14443 TypeBと呼ばれる技術を用いている。ICチップやそのリーダーライターが技術ごとに分かれているが、次世代の非接触IC技術であるNFCでは各技術方式と互換性があり、1つのNFCチップ、NFC対応リーダーライターであれば、TypeA/BとFeliCaとやり取りできる。電子マネーなど非接触ICを使ったアプリケーションのほか、NFC搭載のプリンタに携帯電話をかざして紐付け、BluetoothやWi-Fiでやり取りする、といった使い方も期待されている。

 KDDIでは、これまでもクレジット決済に限ったNFC対応携帯電話の実証実験を実施。今回は、リーダーライター機能やBluetoothとの連携機能など、複数のアプリを無線通信経由でUIMカード(USIMカード、ジェムアルトおよび東芝が開発)へダウンロードし、動作を検証する。アプリは、ジェムアルトが開発したTSM(Trusted Service Manager)サーバーからダウンロードする。UIMカードには、クレジットカードであれば数枚分、クーポンや会員証であれば数十枚分、収納できる。実験のうち、クレジット決済や決済用リーダーライター機能は、マスターカードのPayPassの認定取得を目指す。

 実験に用いられる携帯電話(東芝製)は、リーダーライターとしても機能し、BREWアプリに対応する。携帯電話通信事業者の業界団体「GSMA(GSM協会)」の分科会であるPay-Buy-Mobileが指定する仕様のうち、既にICカードへアプリを入れる技術や、NFCコントローラーとチップの通信に「Single Wire Protocol」と呼ばれるプロトコルを用いるといった点をクリアしており、海外との国際互換性をはかり、仕様の共通化を目指す。

 現時点で実験を行う企業は、アイワイ・カード・サービス、クレディセゾン、じぶん銀行、ANA(全日本空輸)、TOHOシネマズ、トヨタ自動車、ビー・ユー・ジーなど。今後、参加企業は拡大する可能性もある。またKDDIもIC運転免許証の実験を行う。実験は1カ所にまとめて行われるものではなく、企業によって実験を行う場所や時期は異なる。それぞれの立場からNFCの可能性を検証していくという。

 



(関口 聖)

2010/4/22 16:27