AdMob事業説明会、スマートフォン広告は新たな成長ステップに


ラーゲリン氏

 スマートフォンを中心としたモバイル広告配信プラットフォームを提供するAdMob(アドモブ)は、16日、同社の事業を紹介する説明会を開催した。

 AdMobは、米国に本拠を置くモバイル向けの広告配信プラットフォームベンダー。日本法人は5月に設立され、実際に動きだしたのはまだ2カ月足らずという。プレゼンテーションは日本法人の代表取締役社長であるジョン・ラーゲリン氏より行われた。なお同氏は、グーグル日本法人のモバイルビジネス部門を統括していた人物だ。

 ラーゲリン氏はAdMobの広告配信プラットフォームの特徴として、リアルタイム性や透明性、世界市場にアプローチできる点を挙げた。iPhoneやAndroid、一般的な携帯電話向けの広告配信プラットフォームを手がけており、アプリ内に広告を配信するソリューションなども展開している。同氏は「媒体社側がフルコントロールでいかに使えるかが勝負だ」と話した。

 日本のモバイル広告市場についてラーゲリン氏は、「日本は世界最大の市場だが少し偏っている」と語る。全国的に広告展開が可能な、いわゆるナショナルクライアント(大手広告主)がモバイル向けの広告費用を割り振っていないのがその理由だ。日本では、パソコン向けインターネットの広告費用の中に、携帯向けの広告費用が含まれていることがあるという。同氏は、「欧米では、(モバイル広告を)ナショナルクライアントもプロモーションに活用している」と述べた。



 また、RBC Capital Marketsの資料を元に、2011年にはスマートフォンがパソコンの販売数を超えると話し、スマートフォン上でのマーケティングが重要になってくるとした。「日本でも明らかに“アキバ系”ではない人たちがiPhoneを持ちはじめている」などと語った。

 さらに、米スマートフォン市場のプラットフォーム別のシェアと、シェアに対するページビュー(米AdMobのネットワークへのリクエスト数)の比較を紹介した。プラットフォームシェアはRIM(38%)、Windows Mobile(27%)、iPhone(21%)、Palm(8%)、Symbian(3%)、Android(2%)であるのに対し、Admobへのリクエストは、iPhoneからが59%と圧倒的で、RIMは17%、Windows Mobileは8%と及ばない。以下、Androidが7%、Palmが5%、Symbianが1%と続く。

 ラーゲリン氏はこの結果を踏まえて、「iPhoneは端末1台あたりの利用頻度が高く、Androidもその傾向にある。単純なシェアではなく、スマートフォンが新たな成長ステップを踏み出しているのがはっきり見える」と語った。

 また同氏は、従来の携帯電話向けの広告とは異なり、スマートフォンではよりリッチな表現ができる点も特徴とした。iPhoneでは、アプリケーション自体をブランディングに活用する企業が増えているという。ファッションブランドのシャネル(CHANEL)や万年筆などで知られるモンブランといった企業がブランドアプリを提供したのも、エモーショナルな表現ができる技術レベルになってきたためではないかと分析していた。

 なお、AdMobでは、独自調査として、日本国内のiPhoneの契約者数を150万人と想定しているという。ユーザーは、20~30代の都心型のトレンドセッター(流行を生み出したり、発信して広めたりする人)が中心で、「発信力のある人たちが持っている」という。これに、iPod touchのユーザー(想定70万人)を含めると200万台以上にアプローチが可能とした。iPod touchユーザーは10代が多く、ネットワークは主に無線LANを利用しているとのこと。同氏は「モバイル広告ネットワークといえども、必ずしもキャリアのネットワークにつながっている必要はない」と話した。

 現在、iPhone向け無料アプリの3割に、AdMobのアプリ内広告配信ソリューションが採用されているという。AdMobは今後、国内において服飾やデザインなど、ターゲット層に合ったナショナルクライアントの獲得を目指していくという。


 

(津田 啓夢)

2009/10/16 18:24