ARの「セカイカメラ」、表参道のロエベ直営店で運用開始


 革製品ブランドのロエベ(Loewe)は、表参道直営店で開催中のロエベ アマソナ展において、現実空間にデジタル情報を組み合わせるシステム「セカイカメラ」を初めて導入した。

セカイカメラの利用イメージ
セカイカメラの画面。ここでは実際の製品情報などではなく、ロエベのブランド情報などが表示されている

 セカイカメラは頓智・(トンチドット)がiPhone向けに開発したシステムで、仮想空間に登録されたテキストや画像などのデータを、カメラで撮影した現実の映像に重ね合わせて表示させる、いわゆる拡張現実(AR)となっている。セカイカメラのアプリはまだ一般公開されていないが、今回は一般公開に先駆けての初のセカイカメラの商用運用となる。

 セカイカメラは位置情報をアドレス代わりにしてデータを呼び出す。今回のシステムでは画像認識は行われていない。ロエベの店内ではGPSが使えないため、無線LANを使って測位を行う。無線LANを使う測位システムとしては、iPhoneにはSkyhook Wirelessによる主に屋外利用を対象としたシステムが標準搭載されているが、セカイカメラでは独自にクウジット社のPlaceEngineを搭載している。

 PlaceEngineは複数の無線LANアクセスポイントの電波強度から位置を測定するシステムで、今回の展示では通常の「電波をまんべんなく行き渡らせる」ではなく、「位置によって電波強度が変わりやすい」ように無線LANを設置しているという。無線LANの設置、データ入力などはソフトバンク テレコムが担当している。

 ロエベ表参道直営店では、セカイカメラにより店内でさまざまな情報を提供している。PlaceEngineによる測位には誤差が最大で数メートルあるが、実際に試したところ、店内のどこにいるかによって異なるデータが表示されることが確認できた。また、iPhone 3GSの内蔵コンパスにも連動し、iPhoneの向いている方向のデータが表示されるようになっていて、仮想空間と現実空間の重ね合わせがスムーズになっている。ただし展示物がバッグなどあまり大きいものではないため、測位精度の問題から、画面上の実際の対象物と仮想データが一致しない場面も見られた。

 ロエベ アマソナシリーズのバッグなどは、「アンテ・オロ」という一枚の革素材から裏張りせずに作られ、革の裏側が製品の表側になるスエードになっている。その手触りがアマソナの特徴のひとつとなっていて、ロエベでは、「この手触りを実際に確かめて欲しい」としていて、実際の店舗での展示と連携できる拡張現実技術を導入した。

アマソナの特製チェアー

 今回のロエベ アマソナ展は、ロエベ アマソナと「バルセロナチェアー」がコラボレーションした特製チェアーが展示されている。この特製チェアーはチャリティーに出される。セカイカメラで見ると、特製チェアーの情報だけでなく、チャリティー提供先のRoom to Readの情報も表示されていた。このように、ロエベ アマソナ展では、実物の展示をセカイカメラで情報を補うという運用がされている。

 ロエベ アマソナ展は、10月12日まで開催される。会期中は来場者にiPhoneを貸し出し、実際に店内でセカイカメラを体験できるようになっている。ロエベ アマソナ展の終了後も同店でセカイカメラが使われ続けるかどうかは未定となっている。

データのタグアイコンをクリックすると、その詳細データがネットワークからダウンロードされて表示されるテキストデータも表示される。こうしたテキストはロエベが提供し、ソフトバンク テレコムが入力しているという



(白根 雅彦)

2009/9/18 11:59