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新しいドローン用電波の169MHz帯、NICTと産総研がリモートフライトに成功

 情報通信研究機構(NICT)と産業技術総合研究所(産総研)は、ロボットやドローン用として新たに使えるようになった周波数帯のひとつである169MHz帯を使い、ドローンの遠隔制御飛行に成功した。

 今回、利用された169MHz帯は、2016年8月からロボットやドローン用に利用できるようになった周波数帯のひとつ。これまでのドローンの多くは、無線LANと同じ2.4GHz帯を使ってコントロールしていたが、建物などによって遮られやすく、リモートで操作しようとしても1kmほど離れると安定して運用することが難しかった。一方、169MHz帯は2.4GHz帯と比べ、障害物を回り込んで電波が届きやすい周波数帯。ただし利用できるのはあわせて約400kHz幅(本実験で利用したのは約50kHz幅)と狭いため、伝送速度が遅くなる。そこで通常は920MHz帯でドローンを操縦しつつ、万が一のバックアップ用としての活用が想定されているが、これまで169MHz帯を使ってドローンの飛行評価は行われておらず、通信品質に関するデータもなかったという。

 実験では、920MHz帯の装置に169MHz帯のデバイスとアンテナを追加。同じケースに収納しつつ、手動あるいは自動で2つの周波数帯をリモートで切り替えてドローンの飛行に成功した。169MHz帯の帯域が狭いため、ドローンからの制御用データ(テレメトリ)が失われないかが試験の焦点だった。

 高度30m程度でテストしてみると、ドローンを操縦する際、920MHz帯では操縦コマンドが機体に届くまで60ミリ秒程度だったが、狭い169MHz帯では2秒ほどかかったほか、テレメトリの伝送速度も920MHz帯の半分に落ちた。そうしたデメリットはあれど、飛行そのものに問題はなく、遅延はあるもののほぼリアルタイムでドローンからのテレメトリもほぼリアルタイムで取得できたという。さらに今回は滞空するドローンを中継器にして、さらに遠くにあるドローンを遠隔制御するマルチホップ中継制御にも成功した。

 NICTと産総研の研究グループの田所 諭プログラム・マネージャーは、災害の予防や緊急対応、人命救助などにおいて、既存の周波数では、被災地域や山間部では安定した通信ができず、見えない距離でのロボットのモニタリングも不可能だったと説明。今回の実験を受け手、特に有視界外飛行でのドローンの実用性と安全性を飛躍的に高めることは間違いない、とコメント。今回は目視できる数十m程度の距離での評価だったが、今後はさらなる高速化やより長距離での実験、画像伝送の可能性にもチャレンジする。