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ドコモの会話AI対応「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」、4月4日発売
Raspberry Pi 3を活用、2018年9月完成予定で全70巻
2017年2月22日 14:14
講談社、手塚プロダクション、NTTドコモ、富士ソフト、VAIOの5社は、「ATOMプロジェクト」と題し、往年の人気アニメ「鉄腕アトム」を題材にしたコミュニケーションロボットを開発する「ATOMプロジェクト」を開始する。
第1弾として、講談社から週刊のパートワーク(毎週、部品を追加購入)「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」が4月4日に発売される。創刊号は830円で、通常は1843円。高価格号として2306円~9250円で提供される場合もある。パーツはモジュール化され、ドライバーひとつで組み立てられる。アトムの声は2003年から担当する声優の津村まこと氏。7号目で通電チェックのスタンドが完成する。
ロボティクス、ロボットのOS、AIは富士ソフトが手がける。会話AIはNTTドコモの自然対話プラットフォームを活用。電気系統の基板の製造や組み立て代行サービス(料金は3万円程度)をVAIOが提供する。
身長は約44cm、重さは約1400g。頭部2軸、腕部6軸、脚部10軸で稼働する。CPUボードはRaspberry Pi 3。Wi-Fi(IEEE802.11b/g/n)、Bluetooth 4.1に対応する。
顔認識機能を搭載、家族を覚えて会話を学習
筐体設計は富士ソフトが新規に開発。身長は実際のアトムの約1/3。特注のサーボモーター18個で二足歩行を実現した。胸にタッチ操作対応の2.3インチ液晶ディスプレイを搭載し、絵本コンテンツやラジオ体操、YouTubeの動画を表示できる。
フロントエンドAIも富士ソフトが手がけ、VAIO製のメインボードと、Raspberry Pi 3で制御する。カメラを内蔵しており顔認識に利用。相手の目を見つめるように会話する。LEDと音声処理は頭部に内蔵するヘッドボードが担当する。顔認識で最大12名の家族を登録し、その家族にあわせた会話をする。家族の誕生日なども記録でき、バースデーソングを歌うといったこともできる。
肝となる会話部分は、NTTドコモの自然対話プラットフォームをベースに、講談社もその内容を協力して開発している。
会話を通じて表現される「アトム」の性格は、やや正義感が強く、友人としておせっかいを焼きたがるというもの。講談社 代表取締役社長の野間省伸氏は「アトム」について、「キャラクター性、自然対話、エンタテイメントの3つを重要と考えた」と説明。家族の一員になること、そして成長することを重視する方針と述べており、今回の「アトム」では原作での正義のヒーローのような面よりも、ユーザーにとってパートナーたり得る存在を目指す。
若手女性が開発をリード
プロジェクトリーダーを務めた講談社の奈良原敦子氏は、どんな技術を用いても今はまだ手塚治虫が描いたアトムには及ばないが、今回は会話などで進化していくと説明。
手塚治虫先生は性格や行動全てを現代っ子に変化させたい、という構想を持っていた、と奈良原氏。利便性よりもパートナーとしての存在を追求することにし、今回は女性スタッフが「アトム」開発で大きな役割を担い、イマドキのアトムとして開発したのだという。
自然対話プラットフォームを担当するNTTドコモのエンジニアである角野公亮氏によれば、個人の趣味嗜好や会話内容を学習して会話することはこれまでもあったが、「アトム」では家族に関する記憶と個人に関する記憶を両方活用できることが大きな特徴という。たとえば、家族内で父親が語った内容をもとに「さっきお父さんはこう言っていたよ」と他の家族へ喋る……といった会話が可能になり、角野氏はこれを「想い出活用側のフレームワーク」と表現する。
手塚治虫氏の子息、手塚眞氏の挨拶全文
手塚氏
「みなさんこんにちは、手塚プロダクションの手塚眞です。さきほど父親の写真が写し出されましたが、わたくし、顔だけはどんどん似てくると言われております(笑)。本日は新しいアトムの誕生にお立ち会いいただき、ありがとうございます。
素晴らしい企業が集まりまして最先端の技術を集めることができました。これは漫画やアニメというファンタジーの世界と科学が結びついた、初の試みだと思いますし、まさに夢のプロジェクトです。手塚治虫は1951年にアトム大使という作品でアトムを作り出しました。1963年には日本初のテレビアニメシリーズとしてテレビにも登場し、大変な人気を博しました。そして2017年、ついにロボットとして再デビューを果たすわけです。
手塚治虫はだいたい50年後の未来を考えてロボットの世界を作りだしました。最初のアトム大使からは66年経っておりますが、いよいよ本当のロボットになります。今回のアトムはまだ生まれたてで、空を飛んだりしません。10万馬力もまだないと思いますが、未来に向けてどんどん進行していくプロジェクトです。まだまだたくさんの可能性を秘めているのではないかと考えます。大変楽しみにしているプロジェクトで、手塚本人の想いを継いで、日本から世界に向けて発信していける、平和の大使となっていくことを心から願っております」