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「乳幼児のスマホ利用はテレビ、ゲーム機と同じ」、ただし睡眠の確保を~子どもネット研調査

 子どもたちのインターネット利用について考える研究会(子どもネット研、座長:坂元章お茶の水女子大学教授)は、未就学児のインターネットの利用動向を調査し、その結果を発表した。子どもネット研では、3月にも調査を踏まえた新たな取り組みを発表する方針だ。

 調査は、2016年10月21日~24日、ネット上のアンケートサービスを使って実施された。対象は第1子に未就学児(0歳~6歳)の子を持つ保護者で有効回答数は1149件だった。就学前の乳幼児を対象にした調査は、同研究会では初めて。

乳幼児のスマホ利用動向

 調査の結果、1歳児の4割、3歳児の6割がスマートフォンなどを利用したことがあり、ほぼ毎日使う乳幼児も半数いることが判明した。ただしその用途を見ると、スマートフォンやタブレット内にある動画や写真を見たり、ゲームをしたりするなど、ネットを使わない利用も多く見られた。動画については、おそらくYouTubeのようなサービスを利用するためか、ネットに繋がった形で利用するケースが多いが、ユースケースの多くはネットが必要ない格好で、「既存のテレビやゲーム機と同じで、過去の研究から学べることも多い」(坂元教授)。

 あわせて調査では、保護者が気にしているポイントも質問。その結果、視力の発達への影響や、勝手に課金してしまうこと、不適切な情報や画像に触れることなどが挙げられた。子どものスマホ・タブレット利用に懸念を抱く保護者が7割程度と、一定数存在する一方、コンテンツとの接し方や、乳幼児に必要な睡眠時間といった知識を質問すると、理解が不足していたり、保護者が知りたいと思っていたりすることが明らかになっており、子どもネット研では「懸念はあるものの、基礎的な知識が不十分な可能性がある」と分析する。

睡眠の確保が重要

 坂元教授からは、そうしたスマートフォンやタブレット、テレビやゲーム機といった“メディア”の利用が幼児におよぼす影響が紹介される。それによれば、ある程度歴史のあるテレビ視聴については研究が進み、乳幼児の発達への影響について知見が蓄えられているが、コンピューター利用については、研究が少ないという。それでも、教育目的のコンテンツを利用すると、良い影響が期待できるとのこと。また、乳幼児が1人だけで楽しむよりも「保護者と一緒に楽しむことが重要」と解説した。

お茶の水女子大学の坂元教授

 また相模女子大学学芸学部子ども教育学科の七海陽准教授は、「人は遺伝子の情報だけで行動するのではなく、環境のなかで行動を修正して発達していく。乳幼児の発達に与える要因は無数にあり、ICTはその一部にすぎず、それだけを取り出して因果関係を示すのは難しい」としつつも、睡眠時間が乳幼児の発達に与える影響については知見があるとする。つまりスマホ利用などで時間を使う=睡眠時間が減る、ということになれば、スマホの利用が子の発達を阻害する……と言えそう。

相模女子大の七海准教授

 七海准教授は、「眠りは脳を創り、育て、働きを守る」と述べ、夜間の睡眠時間量、時間帯、睡眠の質の確保が重要と位置付ける。

 睡眠に加えて、乳幼児期は視神経回路が形成されるなど、視力が発達する時期でもある。スマートフォンやタブレットの使いすぎで、目に負担をかけると、視力の発達を阻害しかねない、と七海准教授は警告。

 そして、「“スマホ子守”はあまり望ましいと言えないとは思う。でも、保護者は共働きなどで忙しく、就寝時間が努力しても遅くなることがある。保護者の責任にするのは本末転倒」と指摘し、子育て支援という大きな流れで、保育園や幼稚園、自治体、産業界がそれぞれ担える役割があるのでは、とする。

米国小児科学会は……

 乳幼児とメディアの利用に関する調査研究のひとつとして、坂元教授は米国小児科学会が2016年10月に発表した提言を紹介する。その内容は以下の通り。

「18カ月(1歳半)以下の乳児は、ビデオチャット以外のスクリーンメディアを避けた方が良い。18カ月~24カ月の子へデジタルメディアを紹介したい場合は、より高いクオリティのコンテンツを選ぶべき。そして、一緒に見て、何を見ているか理解するのを手助けすべき。

 また2歳~5歳は、質の良いコンテンツで1日1時間以内にすること。保護者は子と一緒に視聴して、何を見ているか理解の手助けをすべき。そして子のまわりの世界に適応できるようにする」

 この結果に坂元教授は「医学的観点から、こうしたアドバイスをするのは理解できる。一方で、保護者からすると現実的な取り組みとするのは厳しいところがある。家事しながら育児は大変ですからプレッシャーになって(イライラするなど)悪いことになるのは心配」と述べる。

 また七海准教授も「ビデオチャットはOKということで、離れてお話するのは問題がなく、使い方による。米国小児科学会の提言には家庭内のメディア視聴ルールについても提言があり、そうしたことが重要になるのではないか。長い時間、乳幼児が1人で見るというのは避けるべきだと思う」とコメントする。

 これらの結果を踏まえ、子どもネット研では、「睡眠時間はきちんと確保できていますか?」など、チェックリストのような形式にまとめて啓発に繋がるコンテンツを、3月にも提供できるよう、準備を進めていく。