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京セラが再生医療に参入へ~新技術でみんなフサフサ?

理研と男性の薄毛を再生医療で治療する共同研究

 京セラと理化学研究所(理研)、オーガンテクノロジーズの3者は、脱毛症(薄毛)を再生医療の毛包(もうほう)器官再生で治療する共同研究契約を締結したと発表した。すでに動物実験では治療法が実証されており、ヒトへの応用臨床に向けて共同研究を行っていく。京セラは2018年まで、治療に必要な細胞の大量生産技術の確立を研究・開発し、将来的なビジネスモデルにおいては、オーガンテクノロジーズと連携し医療機関から受託製造する会社も目指す。3者は、2020年の実用化が目標としている。

京セラ 執行役員 研究開発本部長 稲垣正祥氏

 理研の辻孝氏のチームが中心になって開発されたのは、「毛包器官再生による脱毛症の治療」という再生医療分野の技術。患者から採取した毛髪の“種”に相当する「毛包器官」を大量に生産し、再生毛包原基として患者に移植する治療法で、移植後の毛包は筋や神経とつながり、薄毛化する前の毛髪と同じように、自然に伸びたり生え変わったりする。すでにある治療法の、(薄毛化しない)後頭部から毛髪(毛包)を移植したり、薄毛化を阻止する服薬などの治療法とは根本的に異なり、課題を解決するという。

 器官(臓器)の再生医療は基本的に、胎児の段階で必要な細胞を採取する必要があるが、毛包は現在知られている中で唯一、出生した後に働き始める器官であるため、患者から検体を採取して治療を行える。

 研究段階の現在は、男性の脱毛症患者が対象で、炎症や傷のない正常な頭皮であることが条件。女性の休止期脱毛(生え変わり時期の異常による脱毛)は原因が解明されていないとして、今後の検討課題になっている。

理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 器官誘導研究チーム 辻孝氏

 京セラは重点分野として医療・ヘルスケア分野を掲げており、ファインセラミックスの応用を軸にして、医療機関向けの計測機器や、手術用の照明やカメラ、人工関節の製造なども手がけている。今回の共同研究では、理研が手法を開発した毛包再生原基を、安定して大量に製造する必要があるため、辻氏から京セラに声をかける形で共同研究が実現した。

 日本の再生医療分野は、男性の脱毛症(薄毛)をケアするような大きな市場をターゲットにした研究開発がこれまで行われてこなかったため、産業としての立ち上がりが遅れていたという。理研や京セラでは、今回の開発と実用化を契機に、次世代器官再生医療のビジネスモデルの構築を図っていく。