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ミニ四駆をスマホからコントロール、Cerevoが改造キット

 Cerevoは、タミヤの「ミニ四駆」をスマートフォンからリモートで操作できる改造キット「MKZ4」を発表した。価格は5980円(ミニ四駆別、税抜)。初心者向けにはMKZ4の組み立てに必要な工具セット「MKZ4TS」(9980円)も用意される。

 同社サイトで予約受付が開始されており、7月中旬以降に発送が開始される。東京・秋葉原にある秋月電子でも「MKZ4」が取り扱われる。

MKZ4とワイルドミニ四駆。今回は白いプラパーツだが、製品版は黒いパーツになる

 「MKZ4」は、Wi-Fiモジュールやサーボ、専用基板、電池ボックスなどがセットになっているキット。組み立ててソフトウェアを書き込み、タミヤのワイルドミニ四駆に装着すると、スマートフォンアプリからミニ四駆を操作できるようになる。利用時には、本来のシャーシを真っ二つにして「MKZ4」を組み込む。

 操作用アプリのインターフェイスは、ラジコンのプロポ(送信機)風ではなく、スマートフォンやタブレットの画面をスワイプする、というもの。前に進みたければ画面の上に向かってなぞり、右に曲がりたければ斜め右にスワイプする。

 アプリをカスタマイズして、たとえばスマートフォンの加速度センサーを利用することもできる。これであればスマートフォンを傾けるだけで操作できるようになるが、実際に操作してみると傾きと車両の行く方向がうまく意識できず、慣れが必要なよう。こうした操作系のアプリ開発も「MKZ4」の醍醐味のひとつだ。

 一般的にミニ四駆は前進することしかできないが「MKZ4」を利用すれば前後左右に操作できる。プラパーツはPOMと呼ばれる素材で、一般的プラパーツでもよく利用され、十分な強度・耐久性を備える。

 工具セットの「MKZ4TS」は、ハンダごてやハンダ吸い取り器、テスター、精密ニッパー、ドライバー、マスキングテープなどがまとめられている。

工具セットのMKZ4TS

 無線LANモジュールへのプログラム書込みキット「MKZ4WK」が別途、必要となる。MKZ4WKは1台あれば、複数の「MKZ4」に使える。

 MKZ4、MKZ4WK、ワイルドミニ四駆のセット3車種分(1車種30個限定)も用意される。販売価格は8888円。

 教育関係者向けパッケージとして、「MKZ4」20式と「MKZ4WK」1式が9万9980円(税込)で提供される。

電子工作、プログラミングを学べる初心者向けキットとして

 「グローバルニッチ」というコンセプトを掲げ、多くのロットは見込めないものの、中国などの企業からはキャッチアップされないような、独特の製品を多品種少量で取り揃え、さまざまな国で提供していくCerevo(セレボ)。

 「IoT(モノのインターネット)」は数年で消えるバズワードではなく、これから20年~30年という期間で身の回りの物がどんどんスマートになっていく中で、今の子供たちが将来のCerevoを支えるかもしれない――とCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏は語る。

 そこで岩佐氏は、物作りというハード開発と、ネットに繋げて楽しむためのソフトウェア開発が重要であり、Cerevoとして何か関われないかと模索を始めた。しかし、電子工作などで注目されたArduino、Raspberry Piといった製品も、LEDを繋げて点灯させれば満足してしまう人が少なくない。ソフトウェア開発に目を転じても、プログラミングを学ぶ際には、画面のなかだけで閉じてしまい長続きするためのハードルがある。

 そこでCerevoではDMM.make AKIBAと、2015年11月、ミニ四駆を使ったワークショップを開催。発表から数十分で満席になったほか、開催後も全国各地から問い合わせが相次ぎ、ニーズの高さを実感。ワークショップでは3Dプリンタで作っていたパーツも金型を起こして、POM素材のプラパーツとするなど、「MKZ4」として製品化することになった。

タミヤとの関係は?

 発売から30年以上経ち、今では子供のみならず大人からもホビーとして一定の支持を集め続ける「ミニ四駆」を自由自在に操縦できる……そんなチャレンジを、ワークショップではなく自宅でも体験できるようにするのが今回の「MKZ4」。ミニ四駆は日本のどこでも購入しやすく、今回、題材としたワイルドミニ四駆はちょっとした障害物も乗り越えられるため、より一層楽しめる。その一方で、ミニ四駆を提供するタミヤからはどう位置付けられているのか。

 岩佐氏は「タミヤさんとの関係としては、基本的に非公認商品。全ての責任はCerevoにある」とコメント。ただし、ワイルドミニ四駆とのセットを提供することが示唆する通り、タミヤ側にはCerevoの取り組みを相談しつつ、一定の協力も得ているのだという。

レーサーミニ四駆の改造は?

 一般的に「ミニ四駆」と言えば、スピードを追求するレーサーミニ四駆で、さまざまな改造パーツが用意され、カスタマイズが盛ん。

 そのレーサーミニ四駆を操縦できるキットは今後登場するのか、という問いに岩佐氏は「レーサーミニ四駆は(走行)スピードが(とても速く)難しい」と、技術的に難しさがあるとコメントした。

Kindleで解説書を提供、LEDでブレーキランプなどさらなる改造も

 付属の取扱説明書とは別に、Kindle向けの書籍として1000円で解説書も提供される。Cerevoブランドの書籍として登場するこの本では開発に携わったエンジニアが、1000円というコストを度外視したのでは、と疑わせるほど濃い内容になっているよう。

 たとえば、基板には余っているポートがあるとのことで、LEDを追加してブレーキランプとして点灯させる、といった仕掛けやA-D(アナログ-デジタル)変換を使ってステアリングの調整をするといった内容が紹介されている。さらにはサーバー経由で「MKZ4」を組み込んだミニ四駆を遠隔操作する仕組みも紹介されているとか。

 8月には再び、DMM.make Akibaとともに「MKZ4」を使ったワークショップが開催される。